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ナッシュビル #64

’75年、アメリカ
監督:ロバート・アルトマン
製作:ロバート・アルトマン
キャスト:ロニー・ブレイクリー、キース・キャラダイン、リリー・トムリン、カレン・ブラック、ヘンリー・ギブソン、ジェラルディン・チャップリン、ネッド・ビューティ、シェリー・デュバル

 

友人の一人に、アメリカ出身のゲイの大学教授(専門:映画史。日本語・フランス語、恐ろしく堪能)の方がいるのだけれど、彼に一番好きな監督はと訊いたところ、ロバート・アルトマンと答えた。私はアルトマンは幾つかしか見ていないので、中でも一番好きな作品を尋ねたところ、この作品と答えたのでした。そこで、ちょうど武蔵野館でやっていたこの作品のリバイバルを観に行ったという次第。

アルトマンの作品て、それほどDVD化されてないのよね。というのも、たくさん劇中で歌が歌われているので、権利関係が難しく、なかなかDVD化にならないとか。アルトマンを見れる機会を、もっと注意深く見張らなければ。

3時間という長い時間の割に、退屈せずに最後まで見れてしまう。しかし中には、こういうタイプの映画を苦手とする人も居るかもしれない。こういうタイプの映画というのは、ハリウッドで構築されたストーリーテリングが施されることなく、そのような映画言語を壊すタイプの作品。こんな説明でいいのかしら。とにかく、物語がどんな風に運んでいくのか、気が短い観客には全容が掴めないかもしれない。「これ、一体何が言いたいの!?」と迷子になってしまう人もいるだろう。でも、インディペンデント映画をこよなく愛する人には、きっとこの映画の魅力に取り憑かれるだろう。

会話・会話・会話の応酬。全編を通して会話だらけ。なのに、それら全てのコミュニケーションが、決して成立していない。対話している時ですら、同じ方向を向いていないカメラ運び。こうした点を指摘したところ、その大学教授は嬉しそうに微笑んだ。

「70年代はこういう映画が多かったんだよ」と彼は言う。そうした流れを打ち壊すべく、『ロッキー』が作られた。などと教えてくれた。当時アメリカで公開された時、ロッキーがアフリカ系アメリカ人を殴り飛ばすシーンでは、白人のアメリカ人たちが最高潮に興奮し、口々に叫びながらロッキーを応援したのだとか。リベラル派の彼は、『ロッキー』という映画を親の仇のように憎んでいる。当時の空気を伝えるような彼の話に、私はとても興味深く耳を傾けた。私は特に、ロッキーシリーズの後半の作品群が嫌で、スタローンを長い間誤解していた。『ロッキー』の好きな別の友人は、1は少なくとももっとパーソナルな男の物語だ、と、スタローンの野心に燃えた成功話を引き合いにして熱心に反論するけれども。

アメリカ建国の式典で、白い作り物の銃を持ってパレードする描写がある。これは、『シカゴ』でもオマージュとして使われていたよね?と私が言うと、もっとたくさんの映画でパクられた、と彼は教えてくれた。マイケル・ムーアの好きな方は、『ボウリング・フォー・コロンバイン』などにおけるアメリカ人の銃社会ぶりや、全米ライフル協会などの描写についても同時に思い出される方も居るだろう。また、最後のライブ開場のところでは、パルテノン宮殿を模した場所になっているけれど、それは何故だか分かる?と彼は私に尋ねた。実際にアメリカに現存する場所らしい。彼曰く、パルテノンの象徴の示すところは、アメリカの民主主義の崩壊を表しているらしい。そういえば、ロッキーが階段を登り下りして個人練に励む、あのフィラデルフィア美術館も、ちょうどパルテノンを模した入り口だったな。などと思い出すではないか。

ナッシュビル@ぴあ映画生活

 

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コメント(2件)

  1. なんかすごくいい記事だなーやるなー
    アルトマンがDVDになってないのはそういうりゆうなのかーーーー悲しいな

  2. manimaniさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    まにたんのレビュー大好きなので、とりわけ君にそう言ってもらえると、冗談抜きにめっちゃ嬉しいですね〜。
    アルトマンDVD化いつするのかなあ。




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