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モレク神 #60

’99年、ロシア、ドイツ
原題:moloch
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
撮影:アレクセイ・フョードロフ、アナトリー・ローディオフ
美術:セルゲイ・ココーフキン
出演:レオニード・マズガヴォイ、エレーナ・ルファーノヴァ、レオニード・ソーコル、エレーナ・スピリドーノヴァ、ウラジミール・バグダーノフ

 

ソクーロフ、歴史4部作のうちの第一弾、モレク神。ヒトラーを描いたこの作品と、レーニンを描いた『牡牛座 レーニンの肖像』 、昭和天皇を描いた『太陽』と、ゲーテを描いた『ファウスト(原題)』。最終章となる『ファウスト』は今年のヴェネツィア映画祭に参加するらしい(ソースはこちら)。日本には来年辺りには公開になるかな?(待ってますよ〜、ユーロさん!)

このシリーズは権力者の晩年の姿を、「人間」としての視点から描いたもののようだ。この作品はさすが、ソクーロフっぽさに満ちていて、面白い。ヒトラーを描いたこの作品は、死の直前のある一日、という不気味な醜さ静けさ、迫力に満ちた力作。愚かで、凡庸な人間ヒトラー。馬鹿馬鹿しさがいっぱいで、ウンザリするほど凡庸そのもの。ヒトラーを「こういう人はいかにも居そうだ」、と誰もが思うような、ただの困ったちゃんに描いて、リアリティを感じさせるところが凄い。つまらない生活習慣と、くだらないピクニック。それを真面目に守るナチス親衛隊。起立したままそのピクニックを見守っている。

「女は愚かだ」と言いながら、その愚かなエヴァの前でのみ本音を言い、自分をさらけ出す。誰もあなたには恐れて本音を言えない、医者すらあなたの望むカルテを書くのだ、と言い放つエヴァ。エヴァが夜現れると、子孫を持つことや凡庸な生活を否定する。凡庸を否定することがまるで独裁者であることのエヴァそのものに対しても否定して見せる。いかにも「淫売」ぽく(ヒトラーがそう言う)、浮気を堂々と告げてみたり、子供を求めてレーニンを描いた『牡牛座』も、生涯の「最後の一日」と言えるかもしれない。『太陽』も決定的な一日とは呼べるかもしれない。どうかな?

 

※ストーリー・・・
腹心のゲッペルスらとともに山荘を訪れたヒトラー。ここで愛人のエバと休日を過ごす彼は、時に残虐性を垣間見せる。だがエバとふたりきりになったヒトラーは、子供のように駄々をこねたり、奇妙なことを言い出したり・・・

モレク神@ぴあ映画生活

 

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