127時間 #44
’10年、アメリカ
原題:127 hours
監督:ダニー・ボイル
製作:クリスチャン・コルソン、ダニー・ボイル、ジョン・スミッソン
製作総指揮:バーナード・ベリュー、ジョン・J・ケリー、フランソワ・イベルネル、キャメロン・マクラッケン、リサ・マリア・ファルコーネ、テッサ・ロス
原作:アーロン・ラルストン
脚本:サイモン・ビューフォイ、ダニー・ボイル
撮影:アンソニー・ドッド・マントル、エンリケ・シャディアック
編集:ジョン・ハリス
美術:スティラット・アン・ラーラーブ
音楽:A・R・ラフマーン
キャスト:ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ、アンバー・タンブリン、リジー・キャプラン、クレマンス・ポエジー、ケイト・バートン、トリート・ウィリアムズ
よくもまあ、こんな題材を映画に出来たもんだ。と、ダニー・ボイルには驚かされながらも、「ああこりゃ、この作品ずっと挟まったまんまだぞ」と一気に途中でドンヨリさせられるという(笑)。途中飽きない工夫もある、映像として面白い箇所ももちろんある。だが・・・
主人公の気持ちを追い、そこにある映像の中に一緒に旅するのを楽しむという、いわゆる映画ならではの面白さ。これらを全て文字通り遮断、シャットアウトして、それでも魅せるという・・・ダニー・ボイルの何かの挑戦に、確かに付き合わされてしまったのだ。「しまったあ!!」とヤラレタ感を感じ無いではない。「何が面白くてこんなもの見なきゃいけないんだ」という苦しさと、「それでもどっか画面を見てしまいたくなる諦めの境地」に、文字とおり「挟まれて」しまった私たちは、あーこんちくちょっ、この監督の手の内で踊らされているわけだ。
冒頭の開放感や調子に乗った感(笑)を経験した後だから余計に辛いw。自由の喜び、スピードに心酔する心持ち。楽しい俺最高!人生調子イイ俺最高!・・・な、ダニー・ボイルならではの音楽のカッコ良さを味わわされた後の、あの一気にしぼむ気持ちが、何とも言えないw。
それでもこうして画面を見る楽しさをどうにか覚えてしまうのは、ジェームズ・フランコのおかげ以外の何モノでもない。後半、恐ろしくドンヨリした気持ちを抱えたまま、それでもちょっぴり「ジェームズ・フランコのアップ素敵ー♪」な単純バカな気持ちになってしまう辺り、素直に後悔も出来ないという苦しみまで味わわせてもらったw。
人の気持ちのギリギリ限界の苦しさが描かれている作品は、それだけで評価に値する、とは思う。分かってはいるんですよ。死ぬほどの退屈さと、心掻きむしる苦々しい思いの中で、「見るのは一度だけなんだから、いっそのこと見てやろうじゃないか、クソぉっっ!」と自分を鼓舞しなければいけない観客たち(笑)。
自分が司会し、自分だけの番組に出演するアーロンの「自作自演劇場」も、何か心に残る。こんなギリギリの最悪な状況下、可笑しなユーモアセンスで、自分の滑稽さを笑うことが出来る。こういった辺りにとても共感を覚えたし、愛される人ならではの魅力ってものを見せつけられた。チャーミングたっぷりに演じるジェームズ・フランコはさすが。もっと彼の姿を見ていたい、などと思い始めるんだから、クレイジーなことだ!
未来へと思いを巡らし、何か不思議なビジョンを得るところも、心の奥がキュンとしてしまった。「もう戻って来ない、こうなっていたはずの現在」だったのか、「生きてさえいれば見れるはずの未来」なのか。こんな経験さえしなければ、もしかしたら一生落ち着けなかったかもしれない、心の境地に辿り着けたのだろう。
人生フラフラ、自由に生きる人に、何となく味わわせてやりたいような悪夢ではあった(とか言ってたらこの監督の思うツボなんだってば!)。
※ストーリー・・・
’03年4月、アーロン・ラルストンは仕事を終えると誰にも行き先を告げずにブルー・ジョン・キャニオンに向かう。現地につくとクライマーの彼は早速岩壁を登り始める。ところが落石に巻き込まれた彼は、右腕を岩に挟まれ、断崖で身動きがとれなくなってしまい・・・
2011/07/11 | :ドキュメンタリー・実在人物
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コメント(23件)
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とらねこさん
今晩は☆彡
本当にジェームズ君につきます!
ずっと見ていたい気がしました。
監督は、ア―ロンの本の愛読者だったそうです。
ドキュメンタリーというかたちでア―ロンさんは映画化を望んでいたようですが。
監督の熱い思いにOKしたらしいです。
こんにちは。
私もジェームズ・フランコのファンなので、彼をずっと見ていました!
確かに5分で語り終えるストーリーだけど、この監督だからこんなにドラマチックに
観客を引き込ませることができたのでしょうね。
ラストはわかっていても手に汗握る、スリル満点の映画でした~
こんばんは。
>「自作自演劇場」
予告編から想像したのはノーテンキなアーロンくん。
ところが本編観て驚いたのがこのシーンでした。
すでに挟まれながらも“それ”をしていたことに^^;
「、、、大失敗」ジェームズ・フランコ巧いね~。
そして、ダニー・ボイルの演出にしてやられた!って感じです。
あの状況、ワタシだったらどうしてただろう?
想像するだけで貧血起こしそうです(笑)
mezzotintさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ジェームズ・フランコ!絶対的に彼のおかげでした。
もう、どんなにダニー・ボイルが画面分割したり、ノリノリな音楽をかけたりなど、趣向を凝らしても、ジェームズ君じゃなかったらブチ切れてたと思います、私ー。
私、なんとなく『イントゥ・ザ・ワイルド』を思い出しました。
この作品もそうですし、ドキュメンタリーがブームだからといって、そして原作がドキュメンタリックだからこそ、ドキュメンタリーでやらない良さ、というのもありますよね。
cinema_61さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
本当、ジェームズ・フランコだからこそ、持った95分だったと思いますw。
ジェームズ・フランコは『容疑者』以来、注目して見ている私ですw。
『ミルク』といい、今回といい、酷評の嵐だったアカデミー司会者といい、面白い俳優さんで、目が離せませんよね!
>5分で語れるストーリー
いや、実は1分・・・30秒もかからないような気がしますw。
見ていてすごく力が入りましたね!とても痛そうでした!「ここ骨だ」っていうのも良かったです。
ご無沙汰しております。
僕はこの映画トコトンハマってしまいました。場面が一切動かないのに、主人公の極限状態に終始手に汗握ってました。
脱出の場面なんかホントにヤバかったですね。ジェームズ・フランコと一緒になって、指を噛んで悶絶してました(笑)。
itukaさんへ
こんにちは~♪コメントありがとうございました!
自作自演劇場、なかなか見事でしたよねー♪
ほんと、どーしょーもない状況になると、逆に冷静になったり、自虐的なユーモア精神が芽生えてしまう自分には、あの感覚分かるよなあー、なんて共感してしまいました。もう笑うしかないよ、って感じ。
日本語訳「大失敗」は「Oops!」って言ってましたね。これだけの台詞で笑わせるシーンでした!(しかも三度言いましたよね)
中国製の切れないナイフであれだけやるのは、本当死ぬ思いだっただろうと…
えめきんさんへ
こんにちは~♪コメントありがとうございました!
おおー、えめきんさんはこれハマってしまったんですね!
確かにこの作品て、これだけの題材でここまで描くんだから、見事なモンだと思います(笑)
私は昨日、「とてつもなくひどい映画が観たい」という人に、この作品を勧めてしまいました(汗
しかも劇場で観てくれ!っつってw
私的には「ひどい映画」ではあるんですけど、「ひどいはひどいけど、観て良かった」、と言ってもらえそうな映画、と言いますか(笑)
しかし皆さん、結構絶賛されてますねー、みんなMだなあ…
こんばんは♪
>全て文字通り遮断
ですよね。条件縛り大好物のわたくしでもこりゃ無理筋!と思いました故(笑)
でもさすがダニーシェフ、小粋な調理で食べれるように仕上げてきたんではないかと
一番ゾクゾクきたのがタイトルの入り方
イェーイ人生サイコー!からガラガラムギュ~で一拍間があって
小さ目のフォントで『127hour』がスッと…恐ろしいですねー
極限エピ中で驚愕したのがあの状態で1本ヌこうとするアーロン!
お前ってヤツは…
それじゃ生命賛歌じゃなくて散華ダヨ!
でも生理的にそうなっちゃうのかなーエクストリーム疲れマ○で(笑)
そしてどんだけ ス ク ー ビ ー ド ゥ ー よ!
うん、観終わってみればおいしく頂けたかな(笑)
閑話休題、横槍失礼します
>おすすめのバカ映画
遂に公開が決まった『ピラニア3D』でよいんじゃないかなー
http://www.piranha-3d.jp/
「おっぱい、血みどろ、アジャ監督」なら白飯3杯づつで計9杯
おなか一杯でもう食べれないよー域まで連れてってくれるんではないかと(笑)
こんばんは!
ふらり、酔っ払った状態で再び訪問です!
横槍の横槍で申し訳ないですけど、今日『ピラニア3D』が偶然公開されることを知りました!実は忙しい理由の一つが某資格の試験があるからなのですが、その試験が終わるのがちょうど『ピラニア3D』が公開される時期とかぶさります。
これはまさに天のお告げですね。試験会場から『ピラニア』直行ですよ(笑)!
実は3D映画って未だ観ていなくって、『アバター』はもちろん、ベンタ先生の3D映画『完全なる飼育 メイド、for you』も観ていません。やっと時代の波に乗るべきが来たのかなと言った感じであります。
色々と余計なものが飛び出るらしいですし、楽しみですね。出川が声優というのはどうかと思いますが・・・。
以下、横槍の横槍の上に余計な追記。
子供は生まれました。もうすぐ一歳です!
『雅山流』って日本酒は昔呑んだことがあります。水のような酒と聞いて呑んだら本当に水のようで驚いた。でも後でほんのり味わいが出てくるんですよね。「裏雅山流」って酒もあるはずなので、そちらにもいずれ挑戦したいです。
名古屋じゃなかなか手に入らないけど。
今年に入って日本酒に費やしている時間がちょうど127時間くらいだろうってことで、この映画の話題に軌道修正しておきたいと思います。半年ちょっとで127時間呑んでいるって意外に凄い…いや、そうでもないか。
因みに映画に費やした時間はおそらく7,8時間・・・だめじゃん(笑)!
みさま
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
>でもさすがダニーシェフ、小粋な調理で食べれるように仕上げてきたんではないかと
この辺の小粋な仕上げ具合、全然アリですよね〜!でもやっぱり、『スラムドッグ〜』での成功(復活)がなかったら、ここまで注目されなかったと思うんですよ、この作品。
この内容にして世間の高評価?って不思議だったりもするんですが、おかげで余計に実力を感じさせるんですよね。
『トレスポ』後に『普通じゃない』でブランド力下げた俺はもういない!ていう。
チラっと内容聞いた限りで、一人延々モード入るところから『ザ・ビーチ』っぽい退屈さに行くのかな?それはもう勘弁!と思ってたので、上手く裏切ってくれてさすがだな、と。ダニー・ボイルは今後もやってくれそうですよね!
ああ、確かにあの状態で無理やり抜こうとしてましたねw
オカズは最後に見たフレッシュな残像w
みさん的にはオカズが想像力?って無理なんでしたっけ(『ハイ・テンション』を思い出すなあ)?笑
>ピラニア3D
とある大陸で、アジャがリメイクするのを知って以来、私も漏れなく楽しみにしてましたー♪ヒャッホーイ!
上の蔵六さん同様、私もピラニアの吹き替えの声優に関するニュースを聞いたばかりで。「エーっ?!」なんて思ってましたw
出川とか本当やめて欲しい・・・。私大っきらいなんですよ。でも、それ以外の声優さんは、アニメ界のビッグネームのようですけど。
楽しみですよね〜!キテレツなアジャワールドになってるといいけど。ちゃんとオリジナルはすでに入手済みでっす!ジョー・ダンテだしね♪
蔵六さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
また酔っ払っていたのですね。私も昨日は朝まで呑んでいたところでした!
夜の9時から4時まで呑んでました・・・。
で、ピラニアの公開が決まってそのまま試験から直行ですか!
それはいい気分転換になりそうですね。終わったらピラニアで打ち上げとは!
「公開が危ぶまれた」とか言いながら、なんだかんだ言ってTOHOの全国拡大ロードショーじゃないですか!ねえ。
私も3Dは好きじゃないんですが、飛び出す血!おっぱい!とか言ってるHPに吹き出しましたよ。今年のビッグ目玉級!どうなるのかな〜♪
それにしても未だに『アバター』も見ていないなんて!本当、この作品で3Dデビューとは、蔵六さんらしい。遅いデビューですが、功を奏してすっごい楽しいかもしれませんね!w。
そうそう、吹替版なんて要らないのに、出川が吹替だなんて、全くもうー。
お子さん、もう1歳になったのですね!おめでとうございます。
どうでしょう?お父さんになるって、やっぱり気持ちが変わったりするものですか?可愛くて仕方がないんじゃないかな。
雅山流、蔵六さんも呑んだことあったんですね。私は生より大吟醸の方が好きみたいで、スッキリしてる方が飲みやすいな、なんて。裏雅山流なんていうのもあるんですね!知らなかった。
そうそう、東京でいい店を見つけたんです。
http://www.akaoni39.com/
14代を全て置いている、というのが売りらしいです。14代の生は、Amazonで売ったら買った客の管理が悪くて、酒蔵が懲りて、以来一般には売らなくなってしまったんだそうです。
ご興味があるようでしたら、また東京にいらした時にでも連れて行きますよ〜。なんて。みさんにも声かけて、一緒にどうかな?
もちろんお子さんが小さいし、忙しいだろうと思うので、無理にとは言いません。
こんばんは。ご無沙汰しています。
登山ものには色々と思い入れがあるのですが、どちらかというとクライミング/ボルダリングなのでノリが軽かったですね。
実話ベースなのでシリアスなシーンが多く、思わず目を背けたりもしましたが、陽気さ?が映画にも染みていましたね。
とても楽しめました。
健太郎さんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました!
おっ、登山モノに思い入れがあるのですねー♪
これだけの内容で、ここまでエンターテインメントに仕上げるのは大した手腕ですよね。
ボルダリング、私も今ちょうど、友人たちとやろうって話になってるんですよ。
と言ってももちろん、本物の山じゃなくて練習場ですが。