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SUPER8 スーパーエイト #40

’11年、アメリカ
原題:Super 8
監督・脚本:J・J・エイブラムス
製作:スティーブン・スピルバーグ、J・J・エイブラムス、ブライアン・パーク
撮影:ラリー・フォン
美術:マーティン・ウィスト
編集:メリー・ジョー・マーキー、メリアン・ブランドン
音楽:マイケル・ジアッキノ

ジョエル・コートニー : ジョー
エル・ファニング   : アリス
カイル・チャンドラー : ジョーのパパ
ライリー・グリフィス : チャールズ
ライアン・リー    : ケリー
ガブリエル・パッソ  : マーティン
ザック・ミルズ    : プレストン

 

スピルバーグのオマージュが逆に新しい、とは!なるほどそうか。最先端を行きすぎて、すでに一回転した感じのJ.J.エイブラムス。やっぱやり手ですわー、この人。一本取ったり!・・・て感じの、爽快な佳作。

タイトルに『SUPER 8』とあるだけあって、映画作りと、そこに偶然映ったもの、これが物語のポイントにもなってくる。作品タイトルが昔の8ミリフィルムの登録商標であった、という、ここが自分には面白く思えたのだ。映像技術がどんどん革新され、新しい時代の到来を感じさせながら、むしろ行き止まりのような息苦しさすら感じはしまいか、この現在の映画業界を鑑みるに?そんな中、堂々の「スーパー8ミリ」と来たもんだ。

嗚呼、80年代のスピルバーグ!僕らはこの黄金期のスピルバーグに、どれほど夢を与えられたことだろう!この名に関連する新作の一作一作を、どれほど楽しみにしていたことだろう。洋画を初めて見たのも、洋画が好きになったのも、スピルバーグから、という人も世界中にいるのではあるまいか?SFの楽しさが科学と未来への憧れに直結していた、そんな時代。

J.J.エイブラムスのスピルバーグオマージュは、懐かしさいっぱい。まるで宝の山を前にした少年少女の気持ちに戻る。主人公もそれぐらいの歳なのだもの、スンナリ子供心に帰ることが出来た。
まるで『未知との遭遇』に『E.T.』が出会い、『グーニーズ』のエッセンスを加えたような楽しさ。『ニューヨーク東八番街の奇跡』、『宇宙戦争』、etc,etc…。

私はついこないだ、偶然にも『世にも奇妙なアメージング・ストーリー』を片っ端から借りて見ていた。すると不思議なことに、スピルバーグが監督をした回のみ、強烈な印象で心に残っていたのだった。「これが面白かったんだよー、この後が楽しくてさ・・・」などと言いながら見ていたのだが・・・。告白するが、今見るとかなり陳腐な話であった。単純明快。善意は通じ、悪は必ず露見する。そこには明らかな物語の定型パターンがあり、だからこそ安心して楽しむことが出来た。子供の頃の私には。ところが今見ると、「安全に着地するはずの価値判断」は、単に退屈に感じてしまうのである。特に短編の「奇妙なお話」を揃えたシリーズであるからこそ余計に。

同様に、この作品のラストで描かれたような「善意が必ず通じるお伽話」的な唐突さには、途端に興味がしぼんでしまった。ラストのクリーチャーがいかにもアレな風貌であるから、このラスト部分が何にオマージュを捧げているかは一目瞭然だ。

しかし、子供の真っ直ぐな心だからこそ、善意は通じ、共感が生まれる。だが、この単純な善意の呼びかけこそ、911を(そして311も)経験した我々に、逆に新鮮に感じさせるものでもあるのだ。

 

※ストーリー・・・
’79年、合衆国政府はネバダ州の空軍基地エリア51を閉鎖。すべての研究素材はオハイオ州の別施設に極秘のうちに列車で移送されようとしていた。だが、列車が事故に遭い、荷の中から“何か“が姿を現わす。スーパー8ミリ・フィルムが捕えていた、その正体とは!?・・・

 

SUPER8/スーパーエイト@ぴあ映画生活

 

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コメント(29件)

  1. こんにちは。

    >スピルバーグのオマージュが逆に新しい

    これですよこれ。
    このことに、なんとも言えない感慨を抱きました。
    思えば、スピルバーグが次々と傑作を連発している80年代。
    そんな彼と同時代を生きていることに
    なんとも言えない喜びを感じていたものでした。
    (これは『スター・ウォーズ』もそう)。
    でも、いつしか、スピルバーグは
    青い光のフレアーに象徴される
    甘酸っぱい、同時進行のノスタルジーから
    時代の最先端を行くべく、
    さらに先を駆け抜けていった。

    それでも、あの時代の“想い”と“映画体験”は大切な宝物。
    J.J.エイブラムスは、
    そんなぼくらの気持ちを代弁してくれたような…。
    巧く言葉になりませんが、
    それだけでも嬉しかったです。

  2. どうもです!
    また何かあったら行きましょう~。

    最後ねえ。 確かにあの時代っぽくはあったけど、まとめて投げられた感じもしなくもなくてね。
    途中まではとってもよかったのですが。。
    それでも、そんなにきっちり言わないで許してあげましょうよ的な雰囲気がありましたね。

  3. えいさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    先日、twitterでちょうどノラネコさんやえいさんと、80年代のスピルバーグ作品についてチラっとお話ししていましたよね!
    そのタイミングでこの作品が来たので、なんだかハッとするものがありました。
    えいさんにとってはもっと大事な意味を持っているのですね。

    JJは時代を見る目があるなあ、と思います。確かに甘酸っぱいノスタルジーさに包まれてはいますが、それだけではない「物語の面白さ」確かに存在していますよね。
    私にも80年代のスピルバーグ作品は強烈な印象で心に焼き付いています。

    ところで、記事中に『未知との遭遇』『ET』『スタンド・バイ・ミー』と書いてしまったのですが、えいさんの記事を読んで、「あ、『グーニーズ』を忘れてた!」なんて思ってしまいました。確かにスタンド・バイ・ミーというより、グーニーズですよね!

  4. rose_chocolatさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    お誘いくださり、嬉しかったです♪これ、すごく気に入りました。

    roseさんはそれほどでもなかったという感じでしたもんね。
    自分の場合は、たとえ粗があっても、映画の面白さ楽しさに包まれていて、気持よくノレた感じではありましたよ。
    文句を言いたい部分がないではありませんでしたが、とても好みな作品ではありました。

  5. 今日はごちそうさまでした!
    これも含めてエイリアンSFの夏ですね。
    2002年に「E.T.」の20周年アニバーサリーで、スピルバーグや当時のキャストとの座談会企画をアメリカの雑誌がやっていました。
    その席で、ドリューが『「E.T.」の続編はやらないの?』と聞くと、スピルバーグは『私はもうあの世界を撮るには邪悪を知りすぎてしまったよ』と言う様なことを答えたのです。
    つまり、もうあの頃の様な映画はスピルバーグ自身にも撮れない。
    だからこの企画をエイブラムスが撮りたいと持ち込んだ時、凄く嬉しかっただろうと思います。
    世代の違う二人からの素敵な映画へのラブレターでした。

  6. ノラネコさんへ

    こんにちは~♪コメントありがとうございました。
    エイリアンSFの夏!ふふふ、本当にそうですねw
    子供たちには、こういう楽しい作品を見て大きくなって欲しいなw
    あと、精神年齢の低い大人も、こういう作品を見るべきですよね!

    なるほど、スピルバーグにはもう撮れない作品が、この作品だったのですね。
    この作品が好きな人は、80年代のスピルバーグに対する愛情を皆それぞれが思い出して、「まるでもう死んでしまったかのよう」という言葉にはウケましたw

    E.Tの20周年、ありましたね~!2002年でしたか。あれも確か夏だったような?
    当時、ニュージーランド出身の友人たちがいて、彼らのほとんど全員が皆映画好きでとても気が合いました。「『E.T』は観に行かないの?」と聞かれて、私は初めて見た洋画が『E.T』だ、でも今見たら正直面白いと思えないの。と答えました。彼も、初めて観た映画が『E.T』だったよ!なんて言ってました。彼も確かに今見るとちょっとあれかなーなんて言ったのですが、やはり観に行ってましたね。全世界的に大ヒットしただけあって、こうやって文化を超えて、映画や音楽について語り合えるんですよね。

  7. 私がこの映画を強く感じたのは、J.J.エイブラムスやスピルバーグの映画作りの原点を見つめ直すような視線です。それは劇中で少年たちが作るロメロ風なゾンビ映画に集約されていたのかなと思います。

    多額の資金を投じ超ハイテク技術によって具現化される映画スケールには圧倒されますし、観る側もその映像力に感覚が麻痺されてるような気がしますが、未知なるものへの夢や希望や畏敬の念、家族の普遍的愛情とか本来この手の娯楽映画がとても大切にしてきたことをこの作品はあらためて思い出させてくれたように思います。

  8. かのんさんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    そうですね、JJの自分自身の原点として「真っ直ぐなスピルバーグへの憧れ」というものを感じますもんね!
    私は、この人はすごく時代に対する嗅覚を持っていて、「スピルバーグへのオマージュ」という「人がまだやっていないもの」を、「正しいタイミングで」やろうと思っていたのではないか、なんて思ったりもします。

    あの最後のロメロ風のゾンビ映画、面白かったですね〜。これを見るためにもう一度見たくなってしまうぐらいです!ただ、「ついこないだ見たアルジェントに似ているような」なんて思いながら、見てしまったりもしましたw

    そうですね、スピルバーグの時代には科学や技術に対する憧れや、未来への希望、というものが本来はあったよなあ、と私も思います。超ハイテク技術へと日進月歩で革新化が進みますが、時代と技術は新しくなったものの、そういうものがどこか追いやられてしまったような。そんなことを思いました。

  9. こんちは♪

    「メイクするから目を閉じて」(トクン…)
    「(ゾンビて)こんな感じかしら?カプ」(か、肩に口紅が、トクン…)
    とかもうね キ ュ ン 死 に するかと思たわ!

    夜、彼女が家へ忍び込みに来る→模型男子ウェザリングについて熱く語りて曰く「グレーつっても14種類あってね…」→彼女ドン引か、、ない!むしろウットリだと!?

    えーい!リア充爆発しろ!いや、リア充関係なくてもとにかく爆発しろ!

    つー訳で、ちょいミリヲタの火薬班ケリーに感情移入
    うん、爆竹バラして爆弾て作るよねー殺傷力高める為にセルロイド下敷き削って混ぜたりしてね。恋?なにそれ食べれんの?ヤ、ヤツは俺だ…(笑)

    思うにJJはモテ組ポイんですよね
    空気ヨミつつ濃度調整できる嗅覚、センス、要領よさ辺りが…
    スピはきっと非モテのGジャンズ!会ったことないけど(笑)
    で、本作、あのオチにするなら人喰い設定いらないんじゃないかと思うのですが、そこはJJのコダワリなんですかねー
    ジュブナイルに徹してくれた方がのどごしは好みだったかなぁ

  10. みさま

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!

    ドキドキゾンビメイクシーン!「私のゾンビどう〜?」
    ここら辺、メチャメチャ来てましたよね〜。まさかの!ゾンビでワクドキ♪
    「カプ♪口紅ついた」ってワハハハハ!細かいところ拾ってますね〜。さすが。

    JJはモテ、ってなるほど、さもありなん。この主人公のジョーとカブってしまいますよね。頭イイし才能あるし、でも要領が良すぎてw
    >スピは非モテのGジャンズ!
    思いっきり噴きました!w た、確かに(爆)
    年取っても「俺、ジーンズとか休みの日には履いちゃうんだよ」とか言ってそうなタイプww

    そうそう、あのオチで人食い設定は確かに完全に要らないですねwその辺は、JJらしさなのかも!?そこら辺の余計な部分は、私は気にならなかったりして。むしろ、ラスト部分のヒューマニズムが要らないって思っちゃった。唐突すぎるんですよね。でも、JJはなんかこう言いそうなんですよね。「あ、お気に召しませんでした??ただこれ、スピ先輩風なんで!そしたら、この終わり方っしょー?」とか言いそう・・・w




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