AV #39
’05年、香港
原題:AV
監督:パン・ホーチョン
脚本:パン・ホーチョン、ヴェンダース・リー(ツン・チェン・リー)、ヒロシ
キャスト:ウォン・ユーナン、ローレンス・チョウ、デレク・ツァン、天宮まなみ
『ドリーム・ホーム』で初めて見た、パン・ホーチョン監督。特集がシアターNにて行われていた。その名も「パン・ホーチョン、お前は誰だ」特集。『ドリーム・ホーム』が面白かったから他の作品も見てみたくなったのだけれど、すっかり魅せられてしまった!これまたイキのいい香港の監督が現れたものだなあ。ハマりました。もっと早く特集に行けば良かった!
この作品、タイトルの思い切ったシンプルさに笑ってしまった人は、是非ともチェックですよ。AVって何だろう?って観に行ってみたら、笑える青春映画なんだもの。なんだか得した気分になれる。パン・ホーチョン、どんどん好きになりそうでっす!
映画の中で映画を作る映画。これって結構楽しいんですよね、映画好きにとって。『虹の女神』も好きだったし、最近だけでもいくつかあって、『リトル・ランボーズ』、『SUPER8 スーパーエイト』、『見えないほどの遠くの空を』もそう、そしてこの作品も。この中で一番勢いがあって、ボンクラ全開の楽しい作品はどれ?と聞かれたら、この『AV』と答えますヨ。
ただヤリたいだけの若者たちが、映画と称して本番アリのAVを作ってしまおう!なんて言うんですね。でも本番アリなんてそんなのは香港の女の子は無理だから、日本からAV女優を呼ぼう、っていう。「清純派でエロい」を理由に、天宮まなみ、という実在するAV女優(芸名も同じ)を呼ぶ。お金がないから、学生を応援する起業家奨学金に応募して、なんとか騙くらかし、奨学金を得てさあ撮影だ!・・というストーリー。
全体的に、あちこちで楽しそうな笑い声が起こってましたね。なんだか好意的な笑い声というか、馬鹿にした風でもない、本当に喜んで受け入れられている、って感じの温かい笑い。シネマヴェーラでよくあるような「通はこういう時笑うんだよね」って笑いでもなければ、黒沢清の映画で、可笑しなタイミングで笑うような、ああいう響きのものではない「笑い」。とにかく雰囲気がいいんですよ。今後も人気が出るだろうな、って実感した。
起業奨学金をもらうために、一人ひとりがこれから起業する事に関する自分のビジョンを言うシーンがあるんですよ。皆それぞれに口から出任せを言う。もちろんここは笑いのシーン。でもこの世界的不景気の中で起業をしよう、という気持ちになれる若者って、そうは居ないんじゃないか、とも思ったりする訳で。一人ひとりの馬鹿馬鹿しい思いつきは本当に可笑しい。でも笑いながら、ふとこんなことを考えてしまったのです。たとえば、彼らはただヤリたいだけなのだから、AV映画を作らなくったって、風俗に行けば手っ取り早いわけじゃないですか?誰かのシステムに乗っかってやるのではなくて、少なくても自分たちで作ろう、っていう勢いがある。もしかすると、自分の人生を楽しいものに変えていく人と、そうでない人との違いはこれだけかなあ、という気がし始めた。起業する人とそうでない人との違い、それって案外ほんの少しの差かもしれない、なんてね。パン・ホーチョンもそんな気持ちなのかもしれない。「俺ら、好きなことやってるだけなんだよ」、って。「楽しみながらやりたいことやってるんだよ、だから、怖がらずにみんな、好きなことやればいいんだよ!」意外と、これが本当に言いたいことだったりするんじゃないかなあ。馬鹿映画、エロ映画、青春映画の中に、ふとそんなメッセージがあるんじゃないかなってね。カッコつけないからカッコイイ、ドキッとしちゃいましたよね。
2011/06/29 | :ピンク・ロマンポルノ, :青春・ロードムービー
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コメント(2件)
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天宮まなみと本宮まなみと2つ表記がありますけど・
「天宮まなみ」が正しいみたいですが・
typo?さんへ
こんばんは!いつもご丁寧にご指摘ありがとうございます。
直しておきました。
いつも拙記事を読んでいただきありがとうございます。
本作のようなマイナーな特集上映の作品は、おそらく見ている人も少ないと思います。ご覧いただいたかどうかは分かりませんが、こうして細かいところまで読んでいただいているなんて、とても有り難い限りです。