ドリームホーム #36
’10年、香港
原題:Dream Home
監督・原案・製作:パン・ホーチョン
製作:コンロイ・チャン、ジョシー・ホー、スービ・リャン
製作総指揮:アンドリュー・オーイ
脚本:パン・ホーチョン、デレク・ツァン、ジミー・ワン
撮影:ユー・リクウァイ
美術:マン・リンチュン
編集:ベンダース・リ
音楽:ガブリエル・ロベルト
ジョシー・ホー : チェン、プロデューサー
イーソン・チャン : シウトウ
デレク・ツァン : チェン
まったく前情報なしに、ただ「シアターNで特集を組むなんて、どういう監督なんだろう」という疑問を抱いた、それだけで見てきた。結果、大正解!以降の「パン・ホーチョン、お前は誰だ?!」特集の日程を見て、「こりゃ全部見れば良かったな。」と早くも後悔してしまった。見せ方がなかなかに上手くて、冒頭10分で思わず心踊る。私は見てないながら、『冷たい熱帯魚』と見比べるのも良さそう。(DVDになったら早速見てみようっと。)
スプラッターではあるのだけれど、中国返還にまつわる香港の経済問題や、リーマンショック、高すぎる不動産、高齢者介護・・。娯楽としての面白さと、社会問題を絡ませてくるバランス、これが絶妙なブレンド加減で、ズッシリ来る。
香港の土地の高さは異常、というのはよく聞く話。実際に行ったことのある人には、あまりに高いマンションに驚いてしまうと思う。日本が一番ニワトリ小屋のような小さい部屋に住んでいる国だろうと勝手に思っていたので、香港のビルの高さにはかなりビックリした。私が香港に行ったのはちょうどブログを始める直前なので、’06年。新築のビルを作るのに、かなりの高層ビルにも関わらず、竹で足組を組んでいるのに驚いてしまった。中国や台湾でも見たけれど。竹がしなっている上を歩いている様は驚きだった。「土地代が世界一高いのは香港だ」、と通訳の人が言ってた。何たって、平方メートル当たりに住んでいる人の数が多い、って。
スプラッタ描写はかなり残酷ではあるのだけれど、同時に心の闇を鮮やかに浮かび上がらせてくる。残酷シーンも、様々な殺し方をするので、目が離せない。とにかく、殺し方一つとってみても、創意工夫が施されていて、どんなホラー好きもきっと喜ぶハズ。あまりに残酷なので、人によってはキツイかもしれない。女性として、本能的に見ていて目を背けたくなるシーンもあった。『屋敷女』同様に、妊婦が酷い殺され方をするのは、正直心が痛んでしまうから。
そう、『オーディション』『屋敷女』に続き、フェミニズム・ホラーと並び称される傑作には違いない。それにしても、女性が主人公になると、不思議と業の深さというか、余計心の闇がドス黒く感じさせるのは、何故なのだろう?
この作品が面白いのは、主人公のチェンが、会社で様々なストレスに耐えていたり、恋人に不倫相手にされていることにジッと我慢していたり、どこか社会の歪みそのものを一身に請け負っているように思えるところだ。それら全てがヒックリ返される残酷な殺害シーンは、そうであるはずなのに、これら二つを交互に見せてくる。こちらは、悲しんでいいのやら笑っていいのやら、よく分からないのだ。むしろ殺害シーンは、こんなに派手であるにも関わらず、まるで仕事のように(本人の台詞にも「仕事」と言っているところもある)淡々と行っていたりもする。しかも、ところどころ笑えさえする。残酷すぎて笑える、というこのギャップを上手に描く。このテンションの持って行き方がハンパない。とにかくすごい技の持ち主だ。ラストに明かされる事実も、してやったり。重苦しい割に、なんだか妙に楽しかったりもして、とにかく凄い才能!
※ストーリー・・・
香港の湾岸エリアにそびえる超高級マンションの管理人が、突然侵入者に殺害された。犯人は銀行勤めのOL・チェン。彼女には、このマンションの海が見える部屋を絶対に手に入れたい事情があった。やがてその部屋に向かったチェンは、住人に襲いかかっていき・・・
2011/06/24 | :ホラー・スプラッタ
関連記事
-
-
『ヒメアノ~ル』 塚本遺伝子の本気汁
今年の邦画ベスト1はこれでしょう。 テンポの上手さに心を掴まれてしまう...
記事を読む
-
-
『アイアムアヒーロー』 邦画ゾンビのイキのイイ傑作!
「邦画にしては、珍しく出来の良いゾンビ映画」との呼び声の高かった今作。...
記事を読む
-
-
『ノック・ノック』 浮気男はとりあえず、ぷっころす♪
時々やり過ぎがちなボクちゃん、イーライ・ロス 前回の『グリーン・インフ...
記事を読む
-
-
『グッドナイト・マミー』 未公開映画特集の中に優れたホラー発見!
こんなに面白い作品が未公開だなんて、勿体無い! マンション内で繰り広げ...
記事を読む
-
-
リア充がセ●クスババ抜き&鬼ごっこ 『イット・フォローズ』
タランティーノ絶賛の声が聞こえてきたが、どんなもんかと。 開けてみたら...
記事を読む
前の記事: フィッツカラルド #35
次の記事: アリス・クリードの失踪 #37
コメント