高慢と偏見(BBCミニドラマシリーズ) #19
’95年、イギリス
原題:Pride and Prejudice
監督:サイモン・ラングストン
原作:ジェイン・オースティン
製作:スー・バートウィッスル、ジュリー・スコット、マイケル・ウェアリング
音楽:カール・デイヴィス
撮影:ジョン・ケンウェイ
コリン・ファース : Mr.ダーシー
ジェニファー・イーリー : エリザベス・ベネット
デヴィッド・バンバー : Mr.コリンズ
スザンナ・ハーカー : ジェーン・ベネット
ジュリア・サワラ : リディア・ベネット
アリソン・ステッドマン : Mrs.ベネット
ベンジャミン・ウィットロー : Mr.ベネット
クリスピン・ボナム=カーター : Mr.ビングリー
TVドラマと言って、馬鹿にしてはいけません!これは、誉れ高きイギリス文学の傑作中の傑作を、一番見事なやり方で映像化した作品なのだから。ジェ イン・オースティンの原作『高慢と偏見』を、正しく理解し心の底から愛したら、こんなに素晴らしい仕事が出来上がったという、幸せな結婚だった。さすがは輝かしき文学と演劇の伝統を誇る、イギリスはBBCの作るドラマ。
17世紀のイギリスを描いているからといって、年頃の女性の花婿探しがテーマのこの恋愛物語が、決して古臭いものに感じたりはしない。それどころか、時代は変われど人の心はほとんど変わりはしないのだ、と実感させられる。
1回に1時間で全部で6回、ちょうど6時間という時間は、この物語を堪能するのにちょうどいい長さだった。’05年のジョー・ライト監督『プライドと偏見』 は、登場人物の心理の動きを思い切り端折っていたように感じて、原作Loverとしては「注文したものと出てきたものが違う」と言いたくなる作品だった。まだこちらを見てない人は是非こちらを見て欲しい!・・・と言っても、どこにニーズがあるかな?原作好きにというよりは、コリン・ファース好きにどうっスか?私も友人に進呈していただいた。(シャーロットさん、ありがとう~!!)
物語はまず、女性側・エリザベスの方が、男性・ダーシー氏の性格を、第一印象で徹底的に嫌うことから始まる。ダーシー氏は、その家柄においても富裕の度合いにおいても、 女性たちの憧れの的になるような好条件の相手であるのに。”好条件”と切り出したのは、彼女達、年頃の娘は全部で五人姉妹、その全員が社交界にデビューしているから。母親の興味はもちろん、彼女たちの興味も今や、どんな相手を見つけるべきかということに終始する。
ちょっぴりネタバレするが、 ダーシー氏は物語半ばのところでエリザベスに求婚する。エリザベスの方から見れば、彼のことを一番嫌っている、その最悪のタイミングで。第一印象が悪かったことに加えて、その他の要因も加わり、全てのことが悪い方に向かってしまう。二人のスレ違い様が甚だしい。これがちょうど物語の半分のところだ。これ以 上語るのは、物語を楽しめなくなってしまうので、やめておこう。後半部分では、それがどのように誤解が解けて、大団円へと向かうか。お互いが自分は賢いと 思う、”自尊心”がどんな風に働くか。また、”偏見”というものがどんな風に作用するか。自分の価値観を信ずる者ほど、偏見に気づかないことは多い。
人 間を見つめるのに鋭い諷刺の精神と、その愚かさを笑う事のできるユーモアの精神。これらのバランス感覚が非常に優れた、オースティンの世界観。このドラマ はこれらを崩すことなく、繊細に纏め上げられた愛すべき作品だった。誰かが誰かを「誤解」し、その間違いに「気づく」、これを描くのにはどうしても「時 間」が必要なのだ。
この作品でのコリン・ファース(ダーシー氏)は本当に素敵。『ブリジット・ジョーンズの日記』の作家・ヘレン・フィールディングが、同作品中に同名の「ダーシー」を登場させたのは、このドラマの大ファンだったからだとか。私は『ブリジット・ジョーンズ~』は、『高慢と偏 見』に似ている上に、映画中に「ダーシー」が出てくるので気になって、わざわざ本まで読んだ。映画のダーシーは、変てこな真っ赤なトナカイのセーターを着 ているけれど、原作はキャプテン・サンタの(見ているだけでウンザリするような柄の)トレーナー。あの可笑しなトレーナーを着て登場したコリン・ファース がキュートで!以来気になってしまったのだ。
ところで、この作品の好きな人には、上記の『ブリジット・ジョーンズ~』よりも、是非『ジェイ ン・オースティン 秘められた恋』を見て欲しい。ちょうど劇中でのジェインの恋が、『高慢と偏見』でのダーシーとエリザベスを彷彿とさせるもの。原作者・ジェインの恋が、現実にどのような結果に終わったのかを見届けるのも、一興かと思う。
また、コリン・ファースが主演男優賞を受賞した『英国王のスピーチ』を見た人は、この作品でのキャスティングが生かされているのに驚くはず!まず、主演のジェニファー・イーリーはローグ夫人(言語療法士の 妻)。ミスター・コリンズを演じたデヴィッド・バンバーが劇場監督役で出演。そして、ミスター・ビングリー(姉ジェインの結婚相手となった男性)を演じた クリスピン・ボナム・カーターは、ヘレナ・ボナム・カーター(英国王~では王妃役)の親戚だとか。コリン・ファースが主演男優賞を獲ることになった『英国王のスピーチ』に、彼の出世作であるこの作品の俳優たちが出ているのは、面白いキャスティングよね。
で、次は『高慢と偏見とゾンビ』だ・・・(爆)ナタリー・ポートマンが主役で映画化ですって!
2011/03/02 | :ヒューマンドラマ
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コメント(2件)
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またまたこんばんはー。
楽しんでいただけて私も嬉しいです。
でも、私はキーラ・ナイトレイの「プライドと偏見」もなんだかんだ言ったって好きなんですよ。まあでもどちらかというとあの作品は「無愛想と偏見」だって思いますけどw
とにかくキョウレツなキャラクターばっかりで「画」的に萌える事ができるのはコリン・ファースだけだったりしましたけど爆
なので「英国王のスピーチ」はそんな懐かしいキャラクターに会えるのが楽しみです。
(早く見に行きたいけど混んでるよねえ;;)
それと今の時代にもこんな母親とかいますよねえ。結構シニカル。そうそう人は変わらないものです…
まあとにかく音楽的美術的には大好物なドラマで。演奏シーンやダンスシーンは心踊っちゃいました。
それとコリンのMrダーシーはホントにはまり役ですが、個人的には「シングルマン」の彼がサイコーですぅ♡
シャーロットさんへ
こんにちは〜♪DVD本当、ありがとうございました!
これ、本当にコリン・ファースが若くてカッコいい時期でしたよね!
ダーシー役が似合ってて素敵でした。
シャーさんところで、『ジェイン・オースティン〜』はご覧になってくれました?
この作品をお薦めしてくださったお礼に?って言ったらおかしいですけど、オススメ返し(笑)
すっごく素敵でしたよ〜。ホロ苦いので、噛みしめて見てしまいましたけど。
そうそう、この母親についてですけど、シニカルに描かれてますよねえ。
洞察力が鋭いオースティンならでは。でもコミカルにも描かれていたと思うんです。
あんなカン高い声で「Mr.Benett! Mr.Benett!!」て言う登場の仕方からして、
私笑ってしまいました。でも正直、自分の母親を見ているようで
すごく居心地が悪い気持ちにもなりました。うちの母親もちょうどあんな感じで、
遠慮がなく自分の意見をズケズケ言うんですが、その場にいる人の気分が
母親にいつも振り回されてしまうのでちょっと迷惑なんです・・。
シングルマンのコリン本当に素敵でしたよね!あれはもう一回見たいですね。
渋めの魅力全開のコリンさんでしたね。私としては『真珠の耳飾りの少女』の
フェルメール役が好きでした!て前も言ってたらごめんなさい★
私的には「髪が長い」「アーティスト」の役をやられると、一番ズキューン!と来ちゃいます。