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英国王のスピーチ #18

’10イギリス、オーストラリア
原題:King’s Speech
監督・脚本:トム・フーパー
脚本:デビッド・サイドラー
製作:イアン・キャニング、エミール・シャーマン
撮影:ダニー・コーエン
音楽:アレクサンドル・デスプラ

コリン・ファース     : ジョージ6世
ジェフリー・ラッシュ   : ライオネル・ローグ
ヘレナ・ボナム・カーター : エリザベス
ガイ・ピアース      : エドワード8世
ティモシー・スポール   : ウィストン・チャーチル
デレク・ジャコビ     : 大司教コスモラング
ジェニファー・イーリー  : ローグ夫人
マイケル・ガンボン    : ジョージ5世
デヴィッド・バンバー   : 劇場監督

アカデミー作品賞は1シリング賭けてもいいけど、きっとこの作品が獲るね。・・・と見た人全員が言っていたとか、いなかったとか?今日はさきほど、ちょうどアカデミー賞授賞式が終わったところ。作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞と、主要部門を総ナメ!おめでとう。アカデミー中継の際には、批難じみた意見が多くて、この作品がアカデミー賞体質に合った映画だから、と不満の声も聞こえたけれど。ともかく、私はこの作品とっても好きでしたよ。映画ファンは文句言わない作品だと思うけどね。私は俳優の演技を見ているだけですごく満足できる人だから特にそうかもしれない。コリン・ファースの演技を見ているだけで満足出来てしまったから。個人的には『ブラック・スワン』の方がもっと好きかもしれないけど、それはまた別の話。

なんたって、この完成度の高い品の良さ、実直なヒューマニズムを感じる温かさ。ほんのりしたユーモアを感じるから余計、豊かな物語になっている。「英国史上、もっとも内気な王の物語」という呼びこみ文句の、現在の女王の父親に当たる”善良王”ジョージ6世の物語。

人が何かしら困難や障害を克服する物語は、それだけで心に訴えかけるけれど、とてもすんなり心に響く作品。吃音のため喋ることの苦手な王の、極度に緊張した心理を表したカメラワークが印象に残る。人の目線に沿っていて、ローグが宮殿に来た時は、上を見上げるように撮したり。

コリン・ファースの演技の完璧さといい、ジェフリー・ラッシュの佇まいの安定度、二人の俳優の掛け合いが本当に楽しくて。吃音矯正に関して、技術的なことではなくその心理を理解するという自己流のやり方を貫き、王に対しても誰に対しても、公平さを求めるローグの、キャラクターもとても魅力的。そして、自己評価の低そうな、自信が無さそうな吃音で喋るコリン・ファースが、キュートでたまらないんですけど!普段禁止されているであろう、汚い言葉を思い切り吐き出す姿や、王になりたくなくて泣きながら愚痴をこぼす姿に愛情を感じてしまう。思わず寄り添ってあげたくなる感じ。おかげで、子どもの頃に矯正をさせられた王を思わず不憫に思う。他の人が演じたらイラついていたかもしれないのに。自分も反対の気持ちがある戦争についてのスピーチを行わなければいけないという難しい地位に立たされた王を、いつしか観客である私たちは本気で心配してしまっている。

コリン・ファースは、王を演じることに対する不安から、夜も眠れなくなり、左手が痺れてしまうといった症状も起こしたらしい。それってまるで、アクティング・メソッドを自ら行ったかのようだね!きっと、ジョージ6世の抑圧された心まで理解出来たのでは?ともあれ、本当におめでとう、コリン・ファース!演技、本当に素敵だったよ。

P.S…そうそう、『高慢と偏見』(’95年、BBC放送ミニドラマシリーズ)の主演、エリザベス役のジェニファー・イーリーがローグ夫人、そしてミスター・コリンズ役のデヴィッド・バンバーが劇場監督役で出演していたよ。コリン・ファースが主演男優賞を獲ることになったこの作品に、出世作となった俳優たちが出ているところが面白いキャスティング。ついでに、ヘレナ・ボナム・カーターは、ミスター・ビングリーを演じたクリスピン・ボナム・カーターの親戚だったのね。

※ストーリー・・・
子供の頃から重度の吃音に悩まされてきたジョージ6世は、自分に自信が持てず、内向的な性格でいた。しかし英国の王として、言語障害の専門医ライオン・ローグを雇い吃音の克服に挑戦。第2次大戦下でのジョージ6世の言葉は、国民の力強い支えになっていく・・・

英国王のスピーチ@ぴあ映画生活

 

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コメント(30件)

  1. これは評判どおりの出来のよさですね。
    非常に上品で、英国映画らしいウィットに富みつつも、王の孤独な情感もある。
    すばらしい演技者たちのパフォーマンスと、繊細な演出を楽しめる見事な一本でした。
    ソーシャルはソーシャルですばらしいけど、個人的にはこれオスカーは納得です。

  2. ノラネコさんへ

    こちらにもありがとうございました〜♪
    本当に評判通りでしたね。期待以上でも以下でもなく、まさに程良く。
    こうした優等生的な作品がオスカーを持って行ってしまうのを見ると、
    なんやかや言いたくなる気持ちは分からなくはないですが(笑)
    『ソーシャル・ネットワーク』は良かったですが、オスカーを獲らないことで逆に奮起して、
    フィンチャーはもっとどんどん、素晴らしい作品を今後も作ってくれると信じます!

  3. 本当に二人の掛け合いがよかったですよね。
    ヘレナ演じるエリザベスのそっと夫を支える姿も良かったです。
    彼女と一緒に祈るような気持ちでみてました。
    アカデミー、作品賞と主演男優賞、納得でしたね!

    そうそう、本当にコリンが演じたからこの王はものすごく人間味が出て
    またなんだか母性心をくすぐる感じでしたよね。
    思わず応援したくなっちゃうんだもの!

  4. あすかさんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
    二人の掛け合い、ユーモラスで思わず笑ってしまうセリフがあったりして、楽しめましたね。
    エリザベスが寄り添っていく姿が本当に優しくて、あれっ?これ、
    ヘレナ・ボナム・カーターなのよね、なんてw。イメージ違うけど普通にしてれば
    ちゃんと美人さんなんですよね、よく考えたら^^;
    コリン・ファースずっとあの演技を無理なくこなしていて、凄かったですね。
    しかもめっちゃかわいかったですー。

  5. とらねこさーん、アカデミー賞終わっちゃいましたね。
    私もこの作品が凄く好きだったので、ちょっと複雑な気持ちでした!やっぱり、今年こそは今年ならではの「ソーシャル・ネットワーク」に取って欲しいなぁって気持ちが強かったので。この作品ももちろん素晴らしかったんですが、どしても「今」を思わせる作品にあげたらアカデミーもちょっとは変わるんじゃないかなって期待ですかね。

    と、この作品はこの作品で良いものが全部揃ってたんですけどね。うーん。難しいなぁ。
    やっぱりジェシー・アイゼンバーグよりかコリン・ファースの熱意かなぁ?コリン・ファースは本当に見違えますね。何だか急に大人になった!って感じじゃなかったですか?笑

  6. アヤさんへ

    おはようございます~♪コメントありがとうございました。
    本当、アカデミー賞は最後までどっちが獲るか?分からなかった
    ですよね。私の周りではSNを推す人の方が多かったので、
    改めてフィンチャー人気すごいなあ、とつくづく思いました。
    でもフィンチャーは逆に、オスカー獲らないまま、今後もどんどん
    面白い映画を世に産み出してくれるんじゃないか?なんて
    期待してしまいます。スコセッシみたいにw
    この作品は本当、優等生的な作品でしたけど、だから逆に文句が
    出ちゃう気持ちも分かるんですよね^^;
    でもコリン・ファースには本当におめでとう!って言いたいです~。




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