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■46. プチ・ニコラ

プチ・ニコラ’09年、フランス
原題:Le Petit Nicolas
監督:ローラン・ティラール
製作:オリビエ・デルボスク、マ ルク・ミソニエール
原作:ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ
脚本:ローラン・ティラール、グレゴワール・ビニュロン
撮影:ドニ・ルーデン
音楽:クラウス・バデルト
美術:フランソワーズ・デュペルトゥイス
編集:バレリー・ドセーヌ

マキシム・ゴダール  ニコラ
ヴァレリー・ルメルシエ  ママ
カド・メラッド  パパ
ヴィクトール・カルル  クロテール(劣等生)
ヴァンサン・クロード  アルセスト(デブ)
ダミアン・フェルテル  アニャン(メガネ)

笑えて、泣けて、最高にキュートでハッピーなコメディ。

これ、本国フランスでは『アメリ』や『コーラス』並の、なんと観客動員が552万人を超える、’09年のメガヒットのコメディだとか。
フランスの国民的絵本が原作のこの作品。日本で言えば、サザエさんやクレしん、ちびまるこちゃんみたいに、誰もが知ってる有名な作品なんですって。
でも、「プチ・ニコラ」っていう名前からすると、「ちびまるこちゃん」が一番近い、なんて思うんだけど。

私はこれ、前評判も前情報もいつものごとく全く仕入れず、全然期待しないで観に行ったんですよ。
親友が『プチ・ニコラ』の絵本を知っていて、すごく可愛くて良い絵本、彼女はこれが大好き、なんて言うので、だったら見てみようかな?なんて興味を引かれただけ。

開けてみたら、やっぱりさすがのフランス映画!と言いたくなるような大満足の出来。
子どもを主人公にしておきながら、思わずブブっと笑っちゃうようなブラック・ジョークやエスプリは、ちゃんと大人向け。

子どもならではの突飛な行動や、途方も無い想像力が、いかにもありそうなの。子どもなりの悩みには、思わず「分かる分かる!自分もそうだった!」と頷きたくなってしまう。
気の利いた笑いは随所に散りばめられていて、可愛いくもあり、時々本気で憎たらしくもあり。

何より上手いな、と思ったのが、冒頭の子供たちの紹介の仕方。「大きくなったら何になりたいか?」という授業でやった課題で、ニコラとその他たくさんいる子どもたちを一気に紹介する。

それから、「これから弟が出来るかもしれない」、というニコラの思い込みで、どんどん彼が悩み出してしまうところ。
これは今回の騒動の出だしでもあるのだけれど、それって実は、子どもにとっては自分の人生にかかる深刻な一大事でもあるのだ。

私は自分が長女だったから、その点すごく気持ちが分かるの。
長男や長女でなくとも、子どもを二人以上持つお母さん(やお父さん)であれば、言わずとも分かってくれる、と思うんだけど、どうかな?

お母さんのおなかに赤ちゃんが出来た時から、自分に対する愛情は目減りしてしまったように感じたの。お母さんの興味の対象が、これまでは自分一人だったのに、すっかりおなかの赤ちゃんに移ってしまって・・・。重たいお腹をお母さんは大事にしないといけないので、間違えて蹴ろうものなら、すごくおっかない顔で怒られた。実はその時が初めてお母さんに怖い顔をされた時だったように記憶している。
それに私の場合は、実際に妹が出来てから、もっと深刻に孤独を感じちゃった。
「これまで自分のものだったお母さんの愛情を、全部妹に取られた」と思っちゃったモン。
(それについてのエピソードもあるんだけど、長くなるからやめとこうかな。笑)

ニコラのこの悩みは、ちゃんと真剣なものなんですよ。わざとフザケて馬鹿をやってるって訳でもないのね。だから分かる。すごく共感できちゃう。

ここに出てくる子どもたち、ドイツモコイツモ本当に個性溢れる子どもばっかり。
でも子供の頃って、案外みんなこんなものかも。
いつも物を食べてる子がいたり、警察のお父さんが自慢の子がいたり、
会社を経営しているお父さんの片腕になるのが夢の子がいたり。
ちょっと嫌味で憎たらしい優等生(すぐ言いつける嫌な奴)とか、三歩歩けば覚えたことすぐ忘れる劣等生の子とかね。

さらに、ニコラのお母さんはお母さんで、社長夫妻をハリキッて家に呼ぶんだけど、そのための勘違いなんて、ニコラ以上で爆笑モノ!
ついでに今まで引け目を感じていた、運転免許を取っちゃうエピソードもすっごく可笑しくて。

とにかく、ニコラの一つの悩みを手はじめに、途方もない騒動を巻き起こし、あっちこっちをしっちゃかめっちゃかにして、
なのに気づけば、何もしないのに自然と騒動が鎮火して、メデタシメデタシの大団円を迎える。
この辺りが物凄く上手で、この作品にピッタリの結末の迎え方なのでした。
とにかくゲラゲラ大笑い!してしまう、可愛くて楽しい作品。

ニコラの悩みが解決した、と見えて実は、ニコラだけじゃない、家族みんなが成長してたりする。(お父さんは何故か昇進しちゃうし)

さらに最後に、一番最初の紹介の標題に戻ってくる。「思いつかなかったニコラの夢が決まった」なんて来た日にゃ、思わずニヤリ。
おやもしや、この映画を作った監督や、誰かの話なのかな、なんて。
今は小さいニコラの、その後成長した姿を、思わず思い描かせるところがまた上手。満足度はさらにUPして、「これは大傑作!」と頷かざるを得ないという。

その辺りがさすがなんですよ。こりゃ「ちびまるこちゃん」を優に超えてるわ、と実感した次第。

見て絶対損しない大傑作!

ストーリー・・・
両親に愛され、楽しい友人に囲まれて毎日楽しく過ごしていたニコラ。だがある日、偶然耳にした両親の会話から、母親が妊娠したと勘違い。赤ちゃんが 生まれたら僕は捨てられてしまう!と思い込んだニコラは様々な作戦を決行するが、ことごとく失敗してしまい・・・

プチ・ニコラ@ぴあ映

 

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