■43. エッセンシャル・キリング
’10年、ポーランド、ノルウェー、アイルランド、ハンガリー


ギャロを匿(かくま)う聴覚障害者の娘役を、ロマン・ポランスキーの嫁が演じている。
ここでは一言も喋らないギャロが、なんとタリバン兵を演じている。
拘置所から事故で思いもかけず逃亡する身となった主人公は、逃げる中でいつしか3人のアメリカ人を殺める。
劇中ずっと、苦しい逃亡劇が繰り返される。台詞のない演技の中で、それでもスクリーンから溢れるばかりの力強さを感じる。
この後ネタバレで語りますが
の
後
ネ
タ
バ
レ
飢餓のため木の皮や虫をさえ口にする主人公は、道で出会った乳飲み子を抱えた女性を、銃で脅し、乳を口にする。
何とも凄まじい痛みを感じるシーンだ。
そして次のシーン。ここで思わず感情が溢れてくる美しいシーンが待っていた。
まさか得られるとは思わなかった人の温かさ。そんなものに触れたように感じて、思わず心が熱くなってくる。
そうした奇跡はまるで”救い”のようだ。
言葉でのやりとりを全て廃したものであるがゆえに、力強くシンプルこの上ない。
余計な物を取り払った、人間が本来必要であるもの。これについてのみ描いているように思えてくる。


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コメント(2件)
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流石、押さえるべき作品は観てらっしゃいますね(w
ポーランド頑固爺が自己愛ギャロをどう使いこなすか興味シンシンだったんですが…こうきましたか。
流石スコリモフスキーって感じ。
エマニュエル・セニエっていうと(中年映画オタには)『赤い航路』の神秘的な美人、その後『潜水服〜』で経年劣化(失礼)がちょっと痛々しくもまだまだいい女、でも・・・本作品はちょっと?でした。
ところで『エリックを探して』Dir:ケン・ローチ
やっと公開ですね。
Longislandさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
本当!この作品前評判もあって、すごく楽しみでしたよね。
これは公開されるのかな?スコリモフスキ監督の最近の人気の定着ぶりを見ると、公開はされるんじゃないかなあ、なんて思います。
いやあ、押さえてるだなんて、全然ですよ。今回のTIFFは半分はエジプトと重なってしまっていて、予定的に無理でした。忙しくて映画見れないとなんだか寂しいですね。・・・
よりによってヴィンギャロ!w実はすごく楽しみでした^^
エマニュエル・セニエ、『赤い航路』ですか!ああ、私もこれ見ましたよ。随分前のことですけど。忘れてましたね。
私は実はついこないだ『ジャーロ』で見たところなのです
http://www.rezavoircats.com/archives/65417346.html
『潜水服〜』の時の痛々しさは、役柄にピッタリ合ってて素晴らしかったですよね。
ジャーロが一番「?」かも・・・。
『エリックを探して』公開ですね!私は大好きだったので、すっごく嬉しいです。