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■27. コララインとボタンの魔女

コララインとボタンの魔女’09年、アメリカ
原題:Coraline
監督・脚本・美術:ヘンリー・セリック
製作:ヘンリー・セリック、ビル・メカニック、クレア・ジェニングス、メ アリー・サンデル
原作:ニール・ゲイマン
撮影:ピート・コザチク
編集:クリストファー・ムリー、ロナルド・サンダース
コンセプトアーティスト:上杉忠弘
音楽:ブリュノ・クーレ

『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』の監督、ヘンリー・セリックによるCGアニメ。原作は、『スターダスト』のニール・ゲイマン。ちなみにティム・バートンではない。

パラレルワールドの世界へと行き来することができる扉を発見した少女の話だ。両親もいるし、何不自由ない家庭で育つ彼女だが、引越しをしたばかりだ。遊び友達がいなくて退屈しているが、両親は最近忙しすぎて、彼女を構ってくれない。

そこで彼女は、別世界へと抜けていくトンネルを発見する。
ここまでの物語は『千と千尋の神隠し』と同じだ。その後、どんな風に違いが現れるんだろう。そこが自分には楽しみだった。退屈でウンザリしていた、想像力豊かな少女。そいつはいつかの私だから。いや、彼女の方がもっと生意気だったけど!

別世界へと抜けていくトンネル。
これがとても、懐かしいものに見えて来た。
私は随分これに憧れたっけ!

私があのトンネルの画を初めて見たのは、いつだっただろう?何の作品だったか?それこそ、タイムトンネルでもないと思い出せないのか。
初めて異次元トンネルを見た時、とてつもなく感動したのを覚えている。今まで見ていたこの世界から、別の世界に行くトンネル!そこは、全てが可能で、何が起きても不思議じゃない。

この作品は怖かった。全てがどことなしに怖くて、最初から最後まで、見ていて不安感がつきまとった。この不安感はどこから来るんだろう。

トンネルの先の「何でも出来る想像力の世界」は、現実と地続きの、いかにもありそうなフェイクの世界だった。
別世界へと繋がるトンネルなのに、行ってみれば、自分の家に繋がっていて、自分の部屋もあって、別の両親がいる。目を見晴るような美しさを誇る理想郷が拡がっているわけではなく。現実からちょっとスライドした別の世界。少女が本当はこうあって欲しい、とちょっぴり願っただけの平行世界。
しかも、この世界に生きるには、目をボタンにされてしまう・・・!

料理を作ってくれる優しいお母さんに、遊んでくれる、ヘンテコなスリッパを履いたお父さん。うるさい少年は口を永遠に封じている。
こうであればよいのに、と願う願望そのものの現実。現実そっくりの、フェイクな現実が理想郷、ってのがまず恐ろしい。
大好きなかけがえのないお父さんやお母さんが、すぐ何か別のものと代替可能だったら、なんて世界、こわくてたまらない。この女の子は何故こんなに勇敢なのだろう。
彼女自身だってもしかしたら、本当の自分よりもっと良い子で、もっと人に可愛がられる、自身のドッペルゲンガーが居たかもしれないじゃないか。

目をボタンにされてしまうなんて、そんな魂の抜け殻みたいな絵がまた、怖かった。
自分の世界が、足元から崩れてしまいそうな、そんな不安と地続きの仮想現実。
自分は自分しかいないし、母親だって父親だって、彼らが生気のある人間で、自分が願っただけじゃ、絶対変わらない人だからこそ愛しい世界。

二つの世界を行き来しても自分のままでいる、猫が一番頼もしい存在だった。
怖い怖いストーリー。

ストーリー・・・
新しい町へ引っ越してきたコララインは、新居で不思議なドアを見つける。それは“もうひとつの世界“への入口、そこにはコララインの願いを何でも聞 いてくれるボタンの瞳をしたパパとママがいた。やがて現実の世界のパパとママが消える事件が起き・・・

コララインとボタンの魔女 3D@ぴあ映画生活

 

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コメント(15件)

  1. コララインとボタンの魔女 3D

    コララインとボタンの魔女 3D’09:米◆原題:CORALINE ◆監督・脚本: ヘンリー・セリック「モンキーボーン」「ジャイアント・ピーチ」◆声の出演: 榮倉奈々、劇団ひとり、戸田恵子◆STORY◆ピンク色の古いアパートに引っ越して来た11歳の少女コララインは退屈し切って…

  2. コラライン、私すごく好きでした。
    可愛いのに本当に怖い話ですよね。
    これ観た後、しばらくボタンが怖くなりました(笑)

  3. コメントありがとうござます!
    コチラの映画、凄い好きでした♪
    ダークファンタジーが元々好きなのもあるのですが、コララインの逞しさがなんかよくて、観ていて気持ちよいですよね♪
    やはりお子様には怖すぎる物語ですよね〜(><)
    となりで観ていた女の子がブルブルしてましたよ〜

  4. ●コラライン ボタンの魔女3D(CORALINE)

    コチラなかなか日本公開されなないので待ちきれず海外版BDを輸入して鑑賞してしまった作品です。
    とはいえ、英語音声 英語字幕での鑑賞の..

  5. とらねこさん、こんばんわ!
    『千と千尋の神隠し』と同じって事に全く気づきませんでした!でも言われてみると、本当ですね。どの国でも親に構ってもらえない寂しさによって違う世界に入ってしまうって発想は同じなんですね。なんかそれって、悲しい、、、。
    この作品を観た時に、なんでなのかわからないけど、面白いって思ったんですよね。とらねこさんのレビューを読んで、何だかあの時に感じた気持ちがわかった気がします。これって何気に大人向けのホラー映画ですよね。最近の「子供映画」って中々鋭いものばかりですね。

  6. あすかさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    アハハ!あすかさんてば、ボタンが怖くなったってw
    私、裁縫が苦手なので、取れたボタンを見ると「ひえーボタンつけ嫌い!面倒くさい!」見るのも嫌だったりします^^;
    あすかさんは家事得意ですかー?

  7. コブタさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    あ、コブタさんはこちら、そんなにお好きだったんですね。
    うん、絶対子供には怖いと思います。私子供じゃないんですけど、正直途中からずっと、怖くて見てるの辛かったです・・・。
    コブタさんが終わり方について言及されているのを読んで思わず共感しました。
    私はいつもラストについて書かず仕舞いになってしまうんですよね。
    あのラストは「ヒエッ、最後まで怖いなんて!」と引きました。こういうラストはアリですよね!

  8. コララインとボタンの魔女 3D・・・・・評価額1600円

    「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」や「ジャイアント・ピーチ」で熱烈なファンを持つ人形アニメの鬼才、ヘンリー・セリック監督の最新佮..

  9. 心地よいホラーテイストですね。
    この作品大好きで、日本版出る前に海外版のブルーレイも買っちゃいました。
    千と千尋との類似は宮崎アニメフリークのニール・ゲイマンつながりでしょうね。
    どっちの話も子供にとってはかなり恐怖なシチュエーションでした。

  10. アヤさんへ
    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    そうなんですよ、千と千尋。千尋もやっぱり「引越ししたばかり」だったんですよね。
    しかしある心理学の先生が、千尋の「引越し」が芸術表現として何に当たるかということで、面白い解釈をしていました。
    少女にとっての「引越し」は、「思春期などの何か突然来た望まない変わり目」、「今まで知らなかった世界から別の世界に行くような、たとえば「初潮」のようなものだ」と言うんですね。
    だから彼女たちは「今まで居た世界から別の世界に行く」という体験をします。
    それは何も悲しいばかりでなく、こうやって人は成長していくものなのだ、ということなんですよね。
    「引越し」はつまり、「親の力を借りる事もできず、何か自分だけで自分の運命を切り開いてゆかねばならない一つのイベント」。
    だからこそ、両親は少女にとって「不在」もしくは「肝心な時に役にたたない」「心が離れた存在」として描かれます。
    今回の場合ですと、親の力を借りず、たった一人で、魔女の仕掛けた罠をきちんと見抜き、正しいものを選択することが出来た、少女の一つの成長を描いている、と見ることが出来るかもしれません。
    子供が成長する時、違う世界に行く時に、本当はそこにたくさん危険を孕んでいるんですよね。
    この描き方は、本当に子供にとっては怖い描き方だったんじゃないかな、なんて。

  11. ノラネコさんへ
    おはようございます〜♪
    ホラーテイストでしたが、ナイトメアみたいな作品があれだけヒットするんですもんね。どこか怖いのは実はみんな、本当は好きなんんですね。
    ノラネコさんも、コブタさんと同じく公開待てなくて、海外版を買ってしまったなんて!
    なるほど、ニール・ゲイマンは宮崎駿フリークだったんですか!

  12. 説明ありがとうございます、とらねこさん、
    なるほどね!面白い面白い!!!
    ただ単純に子供は一歩一歩大人になるという事より、そこまでの裏が有るって言う事ですね。心理学って知れば知るほど何でも見方が変わったり深読みできる様になるから素敵ですよね。
    「引っ越し」のテーマを今までそんな考えかたした事有りませんでした!勉強しなきゃ!

  13. アヤさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    面白がってくださりありがとうございます
    そうなんです、心理学的に見ると、大体の文学作品は見方が変わってしまうんですよね。
    特に、児童文学に関しては、より原初的なものに結びつくことが多いので、心理学的解釈が面白くなるんじゃないかと思います。
    私は文学を専攻したのですが、その後専攻した心理学の方が、芸術に関しては広がりをもって考えられるようになりました。
    普通のアクション映画とか恋愛映画などを見る時は、こんな見方は必要ないと思うのですが^^;
    ちなみに私の場合、夢をテーマにした深層心理なんかに惹かれちゃうんです♪
    とか言いつつ、『特攻野郎Aチーム』も見るぞ!と思ってたりします〜^^*

  14. コララインとボタンの魔女

     『扉のむこうは理想の世界。 でも気をつけて。かなえてはいけない願い事がある。』
     コチラの「コララインとボタンの魔女」は、「ベオウルフ 呪われし勇者」の脚本、「スターダスト」の原作を手掛けたニール・ゲイマンの原作を3D映画化したストップ・モーション・アニメ…

  15. 【映画】コララインとボタンの魔女…とほぼ関係無いバトンの話

    本日{/kaeru_fine/}から夜勤の私ですが、今週って間に休みを挟んでいるから、すぐに終わっちゃうんだね{/face_nika/}
    割と楽に過ごせそうでホッとしているところです{/face_warai/}…まぁあくまでも多分楽だろうという段階ですが{/face_ase2/}…。
    以下は映画観賞記録{/m_…




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