■22. 告白
’10年、日本
監督・脚本:中島哲也
プロデューサー:石田雄治、鈴木ゆ たか、窪田義弘
原作:湊かなえ
撮影:阿藤正一、尾澤 篤史
照明:高倉進
美術:桑島十和子
松たか子 森口悠子
岡田将生 寺田先生(ウェルテル)
木村佳乃 犯人Bの母
日本の中で、一番病んでいて、一番不気味に感じるところはどこだろう?
世代感覚的についていけない、と、思わず「ノーカントリー(フォー・オールドメン)」と口をついて言いたくなるような、感覚を覚える場所。
日本で言えばどこを舞台にした物語が、一番衝撃的に思えるだろうか?
私には間違いなくそれは、学園モノだった。もう何年も。
「教室の中」に紛れ込んで、菌が繁殖するみたいに、内部から腐っている場所。大人の社会構造ソックリで、だけど閉鎖的な、一つの完璧な檻の中・・・。
一見綺麗に見えるその世界観は、インターネットそっくりに、誰かの毒がみんなに伝染して行く場所で。病的な感覚は麻痺したまま滞っている・・・。
ネットの世界の、例えば2chのような場所の空気感を、
物語で表現するとしたら、この作品はなんて当を得た表現になっていることだろう。
壮絶で、何より不気味で、人間不信に陥るような物語。
とにかく面白い作品だった。退屈するか、と尋ねられたら、中島監督に退屈を感じることはほとんどない。いつも。これがありがたい!
日本人特有の「多くを語らずして通じ合う感覚」ではなくて、外堀を埋めるかのように世界観を作りこんで、とことん言葉で伝えていく。サブカル感満載のポップでキャッチーな感性。言いたいことがハッキリ言える饒舌さを、中島監督にはいつも感じる。
今回は、これまでの色彩を極力抑え、晴天の青空を描かない作品を作り上げた。最新作は一皮剥けたような印象。
自分にとってそれは、ちょうど『稲中卓球部』の古谷実が、『ヒミズ』を描いた時みたいに、「この人にこんな病的な感覚があったなんて」と、空恐ろしくなるような感覚。
古谷実の『ヒミズ』はどこか、見てはいけない世界を覗いたような、心底恐ろしいものを感じたけれど。この作品はちょっと違う。
鳥肌が立ちながらも、恐ろしさを楽しむことができる、もっと気楽さのある作品だった。スプラッタ映画の血だらけなシーンの、その残酷っぷりを楽しむのと似ているというか。
『リリィ・シュシュのすべて』を思い出したりもした。

女教師・森口悠子の3歳の一人娘・愛美が、森口の勤務する中学校のプールで溺死体にて発見された。数ヵ月後、 森口は終業式後のホームルームにて「私の娘はこの1年B組生徒二人に殺されたのです」と衝撃の告白をし、ある方法にてその二人の生徒に復讐する。そして4月、クラスはそのまま2年生に進級。犯人のひとりAはクラスのイジメの標的になっていた。そして、もうひとりの犯人Bは登校拒否し、自宅に引きこもっていた・・・
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コメント(26件)
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告白
命を知るための課外授業。
映画『告白』(お薦め度★★★★)
監督・脚本、中島哲也。原作、湊かなえ。2010年日本。R15 指定。ヒューマンサ
原作を読んで映画も見たいと思ってましたけど、なんか余計にその思いが強くなりました。
映画館・・・行ける余裕あるかな?
余談ですが、最も好きなマンガは稲中卓球部です。
恨み晴らさでおくべきかファンタジー映画版「告白」
テレビとかに出てくる人で 生理的にムリって人が 数少ないんですが います
飯島愛と松たか子です
飯島さんは死んでしまったのでヨカッタのですが 松さんはまだ生きていてテレビとかにも時々見かけてしまいます
そんな時は チャンネルを変えるか お嫁様が熱心に見て…
こんばんは。
見てきました!
原作は読んでいないのですが、原作者は中学生をどのような立ち位置で捕らえているしょうか?
おっしゃるとおり、現実感がないせいか、中島監督作品として、恐ろしさを楽しみ、気楽さを感じました。
中学校が舞台なのにR15の映画って!(でも納得)
3人の母親の母性が恐ろしく、とくに松たか子の演技には鳥肌でした。
実は私、10年以上中学生の悩み相談(受験雑誌)のレターカウンセラーやっていましたので、中学生の抱える恐ろしい内面は承知していたつもりでしたが・・・
以前観た「バトルロアイヤル」以上の衝撃でした。
やっと、とらねこさんと観た映画について話ができる!と嬉しくなりました。
私も観ましたよ!一人で見てきました。
原作は読んでないのですが、その分余計な情報がなかっただけに素直に楽しめました(楽しめると言ってよいのか…)
私も男の子の母親としてこの映画に登場する3人の母親について考えまた中学生という思春期モンスター(と言ってもいいのか?笑)にどう立ち向かっていけるのかといろいろと考えさせられました。
まぁ、森口先生の仕返しを素直に受け止めて大騒ぎするあたりは中学生的考えだなと。高校生になったらあんなこと素直に受け入れないだろうなぁと。
原作も読んでみたくなりました。
あと、中島監督の撮り方って。うまいと思いました。(偉そうに言ってスイマセン)下妻物語、嫌われ松子の色彩バーンの映画と同じ監督とは思えませんでした。サッポロ黒ラベルの卓球のCMの監督と聞いてなるほどと思いました。
ヒツジさんへ
こんにちは〜♪お久しぶりです〜!コメントありがとうございました。
この映画、どうやら結構なヒットになってるようです。
映画館、行きましょうよ♪
『稲中卓球部』大好きでした。
私の中の「笑える漫画部門」でかなり上位に居ますね。
いまだに、白い白鳥の乗り物や、トルカデロ見るたび、稲中を思い出します。
「前が見えないよ〜」ってギャグは自分一人でもやったし。
cinema_さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
>原作は読んでいないのですが、原作者は中学生をどのような立ち位置で捕らえているしょうか?
私も原作読んでないんです。本屋大賞にはなったようですから、映画館大賞を取った映画みたいに、その筋の人に評価される本、って考えて良いのでしょうかね?
>中学校が舞台なのにR15の映画って!(でも納得)
確かに。でも、もしかして一番見せたくないのは、影響を受けやすい年代かも?
>3人の母親の母性
本当、それぞれの母性が、皆が皆どこか狂っていて、すごくすごく怖かったですね。
しかもどれが一番怖いか、判定がつきません!
>中学生の悩み相談のレターカウンセラー
へえ〜、そうだったんですか!なるほど、インターネットに代替するような機能を持っていそうですよね!
普段思っていることが言えない子でも、手紙の中だけ自分の心の内面について語る、という子が居そうです。
私も中学生の頃、「心を美しくする」みたいな通信教育を何故か受けていたことがありました。
親が離婚して、すごく悩んでいたからですが・・。
その時、手紙相談を書かなければいけなかったのですが、私は思わず、自分の精一杯の妄想を書いてしまいました。
「私はこないだ、売春をしてしまいました」とか、相手はどうだったとか、「万引きしました。」みたいな、ないことばかり書いて。読む相手を怒らせたかったんですよね。たぶん。
悩み相談で、本当のことを書かない子もいたでしょうね。恐ろしい!
鉄犬子さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
おおっ、私も、鉄犬子さんとお話ができて、とっても嬉しいです!
いやー、映画感想ブログはこれだからやめられませんよ!^^*
>私も男の子の母親としてこの映画に登場する3人の母親について考えまた中学生という思春期モンスター(と言ってもいいのか?笑)にどう立ち向かっていけるのかといろいろと考えさせられました。
全くですね!・・・と言っても自分には子供は居ませんが、「自分がもしこの子の親だったら、どうすれば良かったのだろう」と考えてしまいました。
犯人Aのお母さんの、自分の遺伝子を必要以上に優秀と考えて、父親をケナすような行為。
犯人Bの母のような、自分の子を溺愛するあまり、その罪すら直面できないこと・・・
ここで描かれているのは大げさに思えるかもしれませんけど、その本質は誰もがやってしまいそうなことだったりしますもんね。
確かに、森口先生の仕返しを素直に信じてしまう辺は、中学生的ではありましたよね。
でも、「血液」を「飲む」という行為、これは中学生でなく大人でも、過剰に反応してしまうような気がします。
自分の「体内」に「血液」が入る、って、病的に感じてしまいそうですもん。
そうですね、カラフルな色彩のこれまでの作品と比べると、随分と変わったな、って印象を受けますよね。
PVやCM出身だと、1シーン毎に情報を整理し、見せるテクニックが上手い、と言えるのでしょうか?
映画「告白」
話題の映画「告白」を観てきました。
映画館に置いてあるリーフレットや予告編を観てから、ずっと気になってたんですよ。
テーマからしてちょっと重くて怖そうですし。
原作も話題になってましたしね。
2009年本屋大賞に輝いた、湊かなえのベストセラー小説が原作の….
「告白」
過酷という種類のエンタテインメント。
「嫌われ松子の一生」が06年2位。「パコの魔法の絵本」が08年1位。
競馬予想で言えば連対率10割、本命ぐりぐり二重丸の中島哲也監督作品と来たら、期待しないわけがない。
しかし果たして、その大きな期待を決して裏切らない、とい…
告白
苦手な分野の話だと踏んで、2009年本屋大賞を受賞した湊かなえさんの原作は未読。映画もノーチェックで観る気はなかったが、評判がいいようなので、悩みに悩んだ挙句恐る恐る観に行ってみた―【story】とある中学校の1年B組、終業式後のホームルームで、担任の森口悠子(松た…
『告白』
□作品オフィシャルサイト 「告白」□監督・脚本 中島哲也□原作 湊かなえ□キャスト 松たか子、木村佳乃、岡田将生、西井幸人、下村直樹、橋本愛■鑑賞日 6月13日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> こ…
告白
告白’10:日本 ◆監督:中島哲也「嫌われ松子の一生」「下妻物語」◆出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃◆STORY◆女教師・森口悠子の3歳の一人娘・愛美が、森口の勤務する中学校のプールで溺死体にて発見された。数ヵ月後、森口は終業式後のホームルームにて「私の….
こんばんは♪
意味あり気に空のシーン挿入、俯瞰ショットと来たらば…もう、ずばこーん☆オチでいんじゃね?とか思いつつw
エンタメ作品としての面白さ加減が程よく絶妙で感心することしきり
面白くし過ぎると間口狭くなりますからねぇ…
特殊なひとしか寄ってこなくてw
レディオヘッド、Boris、やくしまるえつこ、AKB48…て青春ノイローゼ患者が自家中毒起こしたようなサントラのラインナップも素晴らしい!
一番衝撃を受けたのはエンドロールでの「タンバリン指導ゴンゾー」ですかね
ちょwあの1シーンの為だけに呼んだんかいッ!てw
傑作!
闇は闇のままで供された方が好みなんですけどね…
あんまポップふりかけいらねっつーかw
>古谷実が『ヒミズ』
おー!振り巾の良い例だなぁ
「これより不道徳の時間を始めます」て、はみチンサーブからは振り巾あり過ぎですよねw
みさま
おはようございます〜!コメントありがとうございました!
エンタメとしての徹底ぶり!まさにまさに。
中島監督の作品て、こういうところが好きなんですよね。
しかし、「面白すぎると間口が狭くなる」この辺の納得の仕方が、みさんらしいっていうか(爆
青春ノイローゼ患者が自家中毒!w
ブハハ、自分はそこに普通にあるAKB48の何気なさに寒くなりましたけどね。
すんごくこの作品には合ってるし、こええ〜って
AKB48の曲で、ぞっとさせるのが凄ぇーよね。うん、嫌いじゃない。
タンバリン指導ゴンゾー?
うー、細かいところによく気づかれてますね、自分は気づきませんでしたゴメンナサイ。。
ポップふりかけ要らない?確かに、その方が伝わりやすくはあるけれど。
ただ、この手の闇系って、日本だと映画には珍しくて、もっぱら漫画の天下だと思いません?
そこに殴り込みをかける中島監督。しかも大ヒットさせちゃうのがすごいよなあ。
この食い合せの悪さが、自分は結構好きだったっちゅうか♪
ただこの人、いっつもラストがテンポが悪いっつーか。
説明過多なんだよなあ。
告白 (松たか子さん)
映画『告白』は、『嫌われ松子の一生』、『パコと魔法の絵本』などで有名な中島哲也監督が、2009年本屋大賞を受賞した湊かなえ氏の同名小説にほれ込んで映画化した作品です。松たか子さんは、主演の教師・森口悠子 役で出演しています。先日、劇場に観に行きました。●導入部…
告白
2010年6月14日(月) 21:50?? TOHOシネマズ日劇3 料金:1000円(TOHOシネマズデイ) パンフレット:600円(買っていない) 『告白』公式サイト 中学校が舞台。 松たか子演じる教師、娘が生徒に殺されたと復讐に燃えるミステリー。 原作は本屋大賞受賞。例によって読ん…
AKB48には全く興味ないんだけど、初日舞台挨拶に行けなかったので、どうせだから第2回選抜総選挙で1位になった大島優子を見てきた『告白』大ヒット御礼!舞台挨拶@TOHOシネマズ日劇1
基本、キャストが見られないと映画を見ない人w 今回は、速記というよりただ書き殴ったメモから、エジプトの象形文字を解読するようにしてお届けする、超アナログ式“そんじょそこらの映画サイトやワイドショー、芸能誌、スポーツ新聞より無駄に詳しい舞台挨拶レポート…
No.220 告白
予告編から、そのストーリーに惹かれて
これは映画館で観るべき、1800円払っても問題ないと
思いました。元はベストセラー小説ですが、
原作が注目されている事は知っていましたが、
冒頭からラストまで中だるみがなく、釘付け状態でした。
映画:告白
予告編の短い告白だけで惹き付けられてしまった映画、告白を観てきました。
映画「告白」
映画「告白」公式サイト
映画「告白」映画情報(eiga.com)
○作品情報(eiga.comより)
監督・脚本:中島哲也
プロデューサー:石田雄治、鈴木ゆたか、窪田義弘
原作:湊かなえ
撮影:阿藤正一、尾澤篤史
照明:高倉進
美術:桑島十和子
製作国:2010年日本映画
上映時間:106…
告白
中島哲也監督といえば下妻物語や嫌われ松子の一生ですよね。
この2作品は作りがよく似ていたのでああ、同じ監督だとすぐわかる映画のはずなの..
『告白』 はじけたのは何か?
「私には判っている。」
『告白』の登場人物たちが、何度か口にするセリフだ。
「私には判っている。」
そう云いながら、判ってい…
『告白』
この映画、実は公開当初に一度観に行こうと思ってました。ところが劇場が混雑していて結局観ることが出来なかったのです。
そして今回公開から随分と時が流れてからこの映画を観ることとなったわけですが、その理由というのも我らがシャマラン先生の新作『エアベンダー』…