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■15. NINE

nine’09年、アメリカ、イタリア
原題:Nine
監督:ロブ・マーシャル
製作:マーク・プラット、ハーベイ・ワインスタイン、ジョン・デルーカ、ロブ・マーシャル
製作総指揮:ライアン・カバノー、タッカー・トゥーリー、ボブ・ワインスタイン、ケリー・カーマイケル、マイケル・ドライヤー
原案:アーサー・コピット
原作戯曲:マーク・フラッティ
脚本:アンソニー・ミンゲラ、マイケル・トルキン
撮影:ディオン・ビーブ
音楽:モーリー・イェストン 
美術:ジョン・マイヤー
振付:ジョン・デルーカ、ロブ・マーシャル

イマイチならぬ、イマニブンノイチ。

この作品、褒めているとは言わないまでも、楽しめた方が大多数のようでしょうか?
最近はあまり記事を更新できないのに、毒舌ってのもどーかな、と、恐る恐るの更新だったりする私。

そもそも、この作品でフェリーニのオリジナルと比べてしまうなんて、そんなの無粋なんでしょうね。
だから比べるつもりなんて毛頭ないんだけど、あまりの内容の薄っぺらさに、ちょっぴり腹が立ってしまった。それは元々私が、ロブ・マーシャルとの相性が良くない、ってのが理由なのかもしれないんだけどさ。

『シカゴ』は、主人公の腹黒さに心の中で怒りを覚えつつも、派手派手な世界観を楽しめてしまう作品ではあった。
主人公ロキシー・ハートは、事件すら利用して名を挙げる浮気女。世間もマスコミも舐めてかかった究極のビッチが、まるでショービズの世界に突如としてやって来た天使のように、時の人になってしまう。
その辺りが空っぽな現実世界と、ケバケバしいエンタメの世界とでちょうどバランスを保ち、ダブって見えることとなった。寒気を覚えるほどの計算高さは、むしろ「してやった」度を高くし、世界の空虚さと、その換骨奪胎さとが、まるで当を得ているように思えてしまう。

おかげで、この作品に取り組むその意図すら、『シカゴ』の成功とロキシー・ハートの成功とをダブらせて見せてしまうかのようだ。
この作品『NINE』は、名作とされた極めて有名な芸術作品、『8 2/1』と、それを撮った監督フェリーニを、やたらグダグダして仕事も出来ない、ダラダラした単なるチッポケな女好きとして描くことで、分かりやすくそのオリジナル作品を解説するという構図すら見せている。

ここで裏で操っているのは、あのロキシー・ハートだ!ロキシー・ハートがいるぞ!操り人形を使って世界を踊らせる、あいつだよ。気をつけろ!
ショウビズ界に住む者=大監督フェリーニの苦悩を、歌とダンスとでアッサリ描き、エンタメ形式にサラリ扱って世界を踊らせるロブ・マーシャル。

セクシャルでパワフルなダンスがごっそり盛られた、イタリアン風のアメリカ式ピザ。乗られた具は、みんな大好きで知名度も高く、実力のある、「文句の出ない」豪華なキャスト陣ばかり。

私はちょっぴりお腹を壊しちゃったけど、好きな人は大好き、っていう作品なのかな・・・?

ストーリー・・・
フェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」のミュージカル版「ナイン」を、「シカゴ」のロブ・マーシャル監督が映画化。ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クル ス、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレンら豪華キャストが集結。映画監督のグイドは、クランクインを目前に控えながら脚本を書く ことができず、プレッシャーと女性たちとの複雑な関係に追い詰められていた。そんなグイドは妻にも愛想を尽かされ、いつしか自分の幻想世界へと溺れていく・・・

NINE@ぴあ映画生活

 

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コメント(18件)

  1. NINE

     『映画史上最もゴージャス&ファッショナブル!』
     コチラの「NINE」は、フェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」を半歩進んだ解釈に音楽とダンスを加えミュージカル化した舞台を「シカゴ」、「SAYURI」のロブ・マーシャル監督が映画化した3/19公開のミュージカル映画なの…

  2. NINE

    NINE’09:米
    ◆原題:NINE◆監督: ロブ・マーシャル「SAYURI」「シカゴ」◆出演: ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、 ジュディ・デンチ、ケイト・ハドソン、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレン、ファーギー
    ◆STORY◆イタ…

  3. み〜ん。。。まさに『逆境ナイン』(島本和彦)。。。
    ロブマーシャルさんの新作ごきげんミュージカルとして、楽しもうと思って出かけたのだが、、、
    なんであのみんなで踊るシーンを、最初にもって来たんでしょうね。あのシーンがいちばんよくて、そんで次にペネロペのセクシーダンスがよくて、けっきょくいいシーンから先に見せられてしまった尻つぼみ感。。。
    >『シカゴ』は、主人公の腹黒さに心の中で怒りを覚えつつも
    そうそう、『シカゴ』のインモラルな感じで、この性の饗宴も描いて欲しかったのに。。。まさかあのグイドの妄想ハーレムシーンがないとはなぁ。。。
    けっきょくなんで投げ出した映画を、2年経ってまた撮りに戻るのか、、、って話じゃないですか、あんな感じで終わらせるなら。。。時が解決したとでもいうのだろうか? 
    イタリア人はどう思ってるんでしょうね。。。

  4. んじゃ私は、それこそ、イマハチトニブンノイチ。
    グイドのキャラはイタリア映画じゃお馴染みの情けない愛しいオトコなんだろうけど、ダニエル・グイドはそうはならず。ただの中途半端に情けないオトコなだけで魅力の欠片も感じられず、逆に腹立つ。
    ダンスシーンは楽しい。ケイト・ハドソンの“Cinema Italiano”なんか最高なんだけどね。

  5. NINE / NINE

    {/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/}
    ←please click
    フェデリコ・フェリーニ監督作「8 1/2」(1963年)を原作とする、
    ブロードウェイ・ミュージカル 「ナイン(Nine)」 (1982年初演)をさらに映画化{/ee_3/}
    豪…

  6. 裏山&さんへ
    み〜ん♪コメントありがとうございました。
    >けっきょくいいシーンから先に見せられてしまった尻つぼみ感。。。
    あー、確かに。最初にインパクトを与えようと思っているんだろうな、というのは分かるんですけど、本当ソレだけなんだもん・・・。
    >そうそう、『シカゴ』のインモラルな感じで、この性の饗宴も描いて欲しかったのに
    うーんそれね、そのインモラルさだけど、それが今回は裏目に出たんじゃないかな、と。
    いわゆる芸術監督を自分(=ロブ・マーシャル)のレベルに落とし込んでるという・・・そのインモラルさが、計算高い薄っぺらさで、図々しく世間を欺くロキシー・ハートにそっくり、って私は思っちゃった・・・という。
    >けっきょくなんで投げ出した映画を、2年経ってまた撮りに戻るのか、、、って話じゃないですか、あんな感じで終わらせるなら。。。時が解決したとでもいうのだろうか?
    ラストはちゃんとやって欲しかったけれど、あれやると同じになっちゃうからあえてやめたのかな?
    イタリア人がどんな感想持ったのか知りたいな。

  7. めかぶさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
    >イマハチトニブンノイチ
    ハハハ!随分マイナスがたくさん行きましたね〜!
    「いまいち」って、「あと一つ」という意味じゃないですか、だから「あと1/2で」8 1/2、という意味で、「イマニブンノイチ」といったのですけど(笑)、
    「イマハチトニブンノイチ」だといっぱいマイナス〜^^;;;;
    うん・・グイド、ただの情けない男に見えましたね
    ダニエル・デイ・ルイスはせっかくカッコいいのに、もったいない・・・。
    そうそう、一番上手かったのはケイト・ハドソンでしたよね。
    でも年取ってたなあ。ちょっとショック。前はかわいかったのに。

  8. 豪華ミュージカル映画<NINE(ナイン)>

    舞台はイタリア――。
    天才映画監督のスランプ。
    彼に夢中な女達。愛を選びきれない男。
    彼が見つける9つめの愛とは?
    世界は、男と女で出来ている。。。
     
    見終わった後、踊りだしたくなる映画でした!
     
    歌もまた、耳に残ります!とくに「CINEMA…

  9. 『NINE』’09・米

    あらすじイタリアが世界に誇る映画監督、グイド・コンティー二。だが、新作の脚本を一行も書けずにいた・・・。感想ちょっと難解そうで、いまだ未見なんですがフェデリコ・フェリーニの『8 1/2』をミュージカルにした舞台の映画化し数多くの映画賞にノミネートされた作…

  10. NINE

    「自分で道をみつける」
    【STORY】(goo映画様より引用させていただきました。)
    『シカゴ』のロブ・マーシャル監督がメガホンを取り、『イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ監督が脚本を手掛け、トニー賞受賞の同名ブロードウェイ・ミュージカルを…

  11. とらねこさん。こんにちは。
    ずいぶんとご立腹のご様子ですね。
    ミュージカルが苦手な私は、なぜだか楽しめてしまった作品でした。
    だからこそ、そこに思い入れの深い方にはいまいちなのかな。
    何だか、それなりに楽しんじゃいましたよ。

  12. de-noryさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    ハハハ、立腹というか・・・自分はちょっと合わなかったんですよ。
    でもde-noryさんが楽しめたのなら、それで良かったのではないでしょうか

  13. こんばんは!いつも読ませてもらっています!
    先日NINE観に行ってきました。81/2が大大大好きな自分としては、楽しみだと思いつつもやっぱり観る前は不安半分、いや7割といったところでした・・・
    それでもはじまった瞬間にとりあえず頭をリセットして最後まで観てみると、意外や意外結構楽しめる!確かにラストの演出やら、妄想ハーレムシーンやら、アサニシマサやらetc…の素晴らしいシーンはごっそり削られていますが(うーん削られすぎか?笑)、それでもできるだけ派手派手にわかりやすく行こうぜ!という監督の気概の中に見え隠れするフェリーニへの淡いオマージュ(というか原作をなぞったというか)。
    ぺネロぺのセクシーなダンスはもちろん、清純そうなマリオン・コティヤールが結ったバッと髪をほどく荒々しさのギャップにもドキドキ。というかそれしか印象に無いかも・・・
    でも観終わった後は「あーまぁこれもありなんじゃないか」などと思った自分は、よっぽど胃もたれに強かったのかもしれません(ラストはだいぶがっくりきましたが)笑
    何より「よし、また81/2観るか」という気持ちをますます起こさせてくれたという逆説的な意味でも印象深かったですね!長々と失礼しました〜

  14. shimamuraさんへ
    こんにちは、初めまして!コメントありがとうございました。
    この作品、世間では割と評判が良かったようですね!
    shimamuraさんもなんだかんだ楽しまれたご様子。
    いやあ、私みたいにゴチャゴチャ言っている方が珍しいみたいで^^
    すみませぬー。
    そうそう、ペネロペのセクシーシーンすごかったですネ。女の私も、ついついウットリ見てしまいました!
    マリオン・コティヤールも、彼女が歌うだけで思わず『エディット・ピアフ』を思い出して。胸がいっぱいになってしまいました。
    彼女に主人公が見捨てられた時は、なんだか酷く悲しくなってしまいましたよ・・・。あんなにまっすぐな瞳の女性に、あんなふうに言われたら、私だったら立ち直れないけどなあ・・・。(確かに、印象薄くてもったいないキャスティングでした。)
    うん、『8 1/2』がもう一度見たくなりましたね!
    ラストはみんなで踊ってくれても良かったんですけどね??

  15. 映画:NINE

     ミュージカル好きとしてはこの映画ははずせません。と言うわけでNINEを観てきました。

  16. 「NINE」

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  17. こんばんは。
    この映画、とらねこさんは、えらいご立腹のようやけど、ぼくはあなたの言うように、<好きな人は大好き>だったのね。
    確かに、ロブ・マーシャルのフェリーニ理解とは甘いと思うけど。でも、ぼくは、この映画はフツーのミュージカル映画の概念を超えて、フェリーニの人物像にある程度、迫ったという意味で績はあると思うんよね。
    「8 1/2」や、「そして船は行く」などで、尊敬はするけど、フェリーニという人はぼくには、田舎のおっちゃんに見えて、洗練されたヴィスコンティなどに比べ、あまり好じゃないんだけど、でもこの映画を見て、奥さんジュリエッタ一筋だった人が、愛人や大女優、女性ジャーナリストとの関係があったんだろうかとか、またフェリーには「アマルコルド」で、大女が好きだったなあ、など想像力をかき立てられて、興味深かったのね。

  18. デイヴィッド・ギルモアさんへ
    こんにちは〜。お久しぶりです。コメントありがとうございます。
    そうですね、自分はこれはちょっとダメでしたが、この映画、ギルモアさんのように、好きな人はだいぶ好きだったみたいですよね。
    私はロブ・マーシャルはこう言っているかのように感じました。
    「フェリーニを難解だとか何だとか言う輩は多いが、どうだ?こんな風に解釈すればフェリーニもだいぶ分かりやすくなるだろう?」「フェリーニだって俺と同じ、下世話な人間なんだ」「『シカゴ』のような大衆娯楽映画を作る俺とね」
    私は、「なんてずうずうしい!」と見た後プンっプンでした。
    でも、私が一緒に見た方はとても満足されたようでしたよ。観終わった後、一緒に「ROTA」というバーに行ったんです。ニーノ・ロータの名前を取ってロータというフェリーニオタクのバーテンのやっているバーに。
    いろいろキツイことを言ってすみません。
    私が何よりこの作品が嫌いなのは、ロブ・マーシャルが自分のレベルにフェリーニを落とし込んでいる作品だと思ったからなのです。
    つまり、この作品を見て、フェリーニの人物像に迫ったところが素晴らしい、と言っているデヴィッド・ギルモアさんと全く逆で、そこが何より嫌だったと、こういう訳なのです。




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