■9. グッド・シェパード
’06年、アメリカ
原題:The Good Shepherd
監督・製作:ロバート・デ・ニーロ
脚本:エリック・ロス
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
撮影:ロバート・リチャードソン
音楽:マーセロ・ザーボス、ブルース・フォウラー
マット・デイモン エドワード・ウィルソン
アンジェリーナ・ジョリー マーガレット“クローバー”ラッセル
ロバート・デ・ニーロ ビル・サリバン
ビリー・クラダップ アーチ・カミングス
ウィリアム・ハート フィリップ・アレン
ジョー・ペシ ジョセフ・パルミ
ジョン・タトゥーロ レイ
マイケル・ガンボン ドクター・フレデリックス
マルティナ・ゲデック ハンナ・ミュラー
俳優が監督する映画、というと、ついつい構えて見てしまって、後回しにしてしまう。
実際のところ、過度な期待なんてヤボだと思うし、それがよっぽど好きな俳優だったとしても、「ガッカリするのが嫌で」あまり手を出すのに気が重かったりする・・・それが、私にとっての“俳優の監督する映画”だ。
本当に、ショーン・ペンみたいな人こそ珍しいし、あとはついでに言うなら、私はエドワード・ノートンの作った映画もすごく好き。そうなってくると一目置いて俳優を見てしまう。
それを考えても、ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノ、となると別。この人なりのテイストというものがどこか感じられ、長年俳優をやっていただけあって、「こういう風に撮りたい」という気持ちが感じられるような気がする。それで、すごく味があるように感じてしまうんだ。
『ブロンクス物語』も好きだったな。自分は、トライベッカからもっと映画を作っているような印象だったんだけれど、デ・ニーロって、監督としてはこの作品で監督としては二作目だったんだ。
静かでミステリアスで、時系列がバラバラに並んでいて、ついでにナレーションもほとんど使われることなく物語が進められていく。こういうテイスト、私はとても好みでドンピシャ!にツボなのだけれど、人によっては「わけが分からない」と言われてしまうタイプの映画だと思う。
CIAの情報部という組織が生まれる前に、スカルズ・アンド・ボーンズという秘密結社の存在があって、そのエリート組織からCIAの枠組みとなる情報部が出来てゆく。
主人公のエドワードは、その最も古い立ち上げ当初のメンバーだ。何とも秘密めいていて、不思議な味わいがあって、スリリング。全体的に孤独感や、憂鬱感とが合わさった、微妙な味わいがまたいいのだ。
主人公エドワードの、極めて冷静な性格でありながら、自分の感情をどこまでも隠した、秘めたところが気になる。
任務を遂行するのに、激昂するタイプの感情はそぐわない。そのため、冷静に人を観察しながら、彼の人生はまるで他人の人生のように過ぎていく。彼の心のベースに流れる空気が、何とも憂鬱で、その感情に私は共感すら抱いた。
マット・デイモンは、やはり優れた役者だと思う。『リプリー』とか、この役のように、何か仮面をかぶった人生、という“演技するところの人物”を演じさせると、ピッタリくる。たとえば、『ディパーテッド』なんかもそうだった。『ボーン・アイデンティティー』のような役柄も、彼がボーンを演じることによって、不思議にキャラクターに深みが出ていたような気がするのだ。
(P.S.余談ですが、正直この作品で一番見たかったのは、自分にはマルティナ・ゲデックだったりしましたが・・・。)

1961年、キューバのカストロ政権転覆を目論んだピッグス湾侵攻作戦がCIA内部の情報漏れで失敗し、指揮をとったベテラン諜報員エドワード・ウィルソン は窮地に立たされる。第二次世界大戦前夜、イェール大学在学中に秘密結社スカル&ボーンズに勧誘されされたのを機に、この道に足を踏み入れて以来、戦中、 戦後と優秀な諜報員として暗躍してきたが、その陰で妻と息子は孤独な生活を強いられていた・・・
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(6件)
前の記事: ■8. 倫敦から来た男
次の記事: ■10. 誰がため
グッド・シェパード
『いくつ愛を失くせば、 この国を守れるのか。』
コチラの「グッド・シェパード」は、名優ロバート・デ・ニーロの監督2作目となる”CIA誕生にすべてを捧げた男の物語”で、10/20公開となっていたサスペンス・ドラマなのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪
製作総指揮…
とらねこさーん、こんばんわ!
おぉーなんか懐かしい作品です。これ、観た時に難しくてわからなかったんですよね。でも、優れた作品だと感じて、わからなかったのは映画が悪いんじゃなくて自分の力不足だと思いました!デニーロが凝って凝って作った事が何か響いてきますよね。またいつか観たいと思っている一作です。
とらねこさんの俳優が監督をするのはちょっと心配っていう気持ちわかります。でも最近はホント、ショーン・ペンやクリント・イストウッドやらみんな作ってますね。ベン・アフレックも俳優よりも監督として良い線行ってると思いませんか?びっくりさせられるもんですね。俳優って、、、怖いなぁ。笑
アヤさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
おお、そっかー、アヤさんにとっては懐かしい作品なのですね^^;;;
これ、’06年の映画ですが、日本の公開は’07年の秋以降なんですよ〜
確かに、小さくまとまるタイプの映画じゃないですもんね。分かりずらく感じてしまうこともあるかも?
自分は、割とCIA秘密諜報部、みたいな話が大好きでして。この作品もツボでした!(爆)
エリートだけのイニシエーションが妙ちくりんな儀式で、しかも男同士だけで行われて、どことなくエロい、・・・なんていうのも、いかにもありそうじゃないですか?(爆)
そうそう、クリント・イーストウッドは、もう「俳優出身の監督さん」には含まれないかなあ、なんて。
彼はもうすでにその域を凌駕していると思うんです!どうかな?
ベン・アフレックの作った、となると、特に朋友マット・デイモンとの共同作、彼らがまだ売れなかった時代に作った『グッド・ウィル・ハンティング』なんかがすっごい良かったですよねー。しかも、この作品は脚本としてだけだったら、もっと高く売れたはずなのに、自分たちが出演することを条件にして、そのためにハリウッドへデビューする成功への道になった、というのも面白いし。
私はこの二人だと、マット・デイモンの方が好きですが・・。
ああ、『インビクタス』も良かったですよね!!
とらねこさん、こんばんばん
デ・ニーロに関してはそんなに詳しいわけではないけれど、ちょうどこの映画が公開された時期に『スターダスト』もやってまして
フリフリのドレスを着て踊りまくる一方で、こんな重厚な作品も撮っていたりして「幅の広い人だな・・・」と思ったものでした
細かいところなんかはもう忘れちゃいましたが、マット演じる主人公がじいちゃんの先輩からスパイのイロハを教わるところなんかが特に面白かったです。スカル・アンド・ボーンズのえぐい入会式も強烈でしたね
ところでマルティナ・ゲデックって何の役の人でしたっけ?(^^; 他にはどんなのに出てるんでしょう?
嘘つきは絶望の始まり ロバート・デ・ニーロ 『グッド・シェパード』
CIAが作り出した恐るべき人間兵器ジェイソン・ボーン。彼の正体は実はクローン人間
SGA屋伍一さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
あ、これ『スターダスト』の時期でしたか。そうですか、デ・ニーロを『スターダスト』で幅の広い人、と思ったのですね。
デ・ニーロの代表作は『タクシードライバー』とか『レイジング・ブル』辺りは見といて損はないですよ〜
特にデ・ニーロ・アプローチと言われるキッカケにもなった『レイジング・ブル』辺りは見るべき。
私は実は以前、アル・パチーノよりデ・ニーロの方が好きだったんですよね。
『ヒート』の頃とか、アル・パチーノは声が高くて嫌だ、なんて思ってたんですよー
スカル・アンド・ボーンのイニシエーション面白かったですよね。
マルティナ・ゲデックは、すぐにスパイと分かってやられちゃう役で、この映画ではあっという間にいなくなってしまいましたが^^;
マルティナ・ゲデックでオススメは、『善き人のためのソナタ』、『素粒子』、『バーダー・マインホフ〜』です。
彼女はケイト・ブランシェットと肩を並べるぐらい、カメレオン女優ですよ。
今のうちにチェックしよう!