パチャママの贈りもの ▲181
監督・脚本・編集:松下俊文
エグゼクティブプロデューサー:小森桂子
撮影:グスタホ・ソト、ギジェルモ・ルイス、カルロス・クレスポ、セサル・ペレス・ウルタド
音楽:ルスミラ・カルピオ
映像でこうやって旅行が出来るなんて、なんて素敵なんだろう。
自分にとって映画を見る理由は、時にこうした素晴らしい景色に巡り合う妄想旅行に、連れて行ってくれるから。予告を見た瞬間から、絶対見てみたい!と思っていた。だって、ボリビアの民族、ケチュアの人々の人生を間近に見ることができるなんて。そして、彼らと一緒に塩キャラバンの旅に出るなんて、めったにないチャンスだもの。
ドキュ・フィクションと呼ばれる手法で撮影されていった本作。基本となるストーリーをベースに置き、その場の思いつきや偶然の天候まで、即座に取り込んでいく、きわめてドキュメンタリーに近いテイストで描かれたのだという。
まるで、彼らの姿をただカメラが追い、いかにも偶然にも撮れたシーンであるように感じさせるのはそのせいか。目を見張るような美しい映像に、思いもかけず素朴な魅力を感じさせるのはそのせいか。
もぎたての、素朴な味のする青々とした果実のように、彼らの等身大の姿がそこにあるような錯覚を起こさせる。見事!
この作品が初の長編映画であるという日本人監督、松下俊文氏は、この作品を作るにあたり、監督・脚本ばかりでなく、製作・編集・音楽構成、撮影、出演、車両の運転すらしたという。
そのカメラや編集のやり方は、時に、切り替えが早すぎるように感じたり、物足りなく思えるシーンもいくつもある。もっとゆっくり見ていたかったのに、と感じさせることもままある。
いや、言うまい。同時にとても嬉しく感じたのも事実なのだから。日本人監督が、こうした素敵な映画を作って、私たちのもとに届けてくれた、こんな仕事を成し遂げる人がいた。それだけで、とても嬉しくて胸がいっぱいになったのだから。冒頭の少年たちがレールに耳を傾けるシーン、夕日のオレンジ色を背景に影絵を作り、少年たちが汽車の真似事をするシーン。これだけで私は、思わず涙が溢れてしまったのだから。
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コメント(5件)
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とらねこさん、こんばんばん。わたしもこれ見たの去年の年末でした。
ドキュ・フィクションというこのやり方、面白いですよね。目には見えない苦労もいろいろあるんだろうけど、映画の可能性を広げてくれる手法のひとつだと思います
日本人が撮ったのに丸きり日本色が見えないところが驚きでした。この驚きは、イーストウッドが『硫黄島からの手紙』を撮ったときのものと似ているかな?
こんなほがらかでだだっぴろい土地にも、それなりにお化けの言い伝えがあるところは、なんか嬉しかったですね。コンドリ君の夢に出てくるお化けがまあ、明らかに着ぐるみなんだけど(笑)、なかなかにファンキーな造形で。まさに「人の住むところに妖怪あり」と思いました。可愛らしいミイラにお参りにいくところもツボでした
SGA屋伍一さんへ
こんばんばん〜♪(古くね?)コメントありがとうございました!
そうですね、この撮り方、なかなかに面白かったですよね。
おそらく半分は、目にしたまんまを撮ったのではないか・・なんか、そう思わせるところもありました。
ボリビアのケチュア民族を題材にしているし、日本ぽさは感じませんね。松下監督の今後の作品も、とても楽しみになりましたね♪
コンドリくんの夢は、部族で一人前になれない不安の姿なのかな、なんてヨギったりもしました
とっても素敵な作品でしたよね。大満足です
パチャママの贈りもの
原題:EL REGALO DE LA PACHAMAMA
“パチャママ”は、先住民の言葉で、”母なる大地”という意味である。
京都シネマにて鑑賞。今週で上映終了ということで慌てて行って来ました。何と監督さんは日本人で、松下俊文さんという方です。長年NYに住み日本人向けの放送局でCMやド…
とらねこさん
今晩は☆彡
6年の歳月をかけて撮られたとのこと。
素晴らしい作品でしたよね。
私たちが忘れかけているピュアなものを
この作品から改めて感じることが
出来た気がします。
mezzotintさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
>6年の歳月をかけて撮られたとのこと。
そうなんです!なんだか、とっても大事に撮った宝物、という気がしますよね♪
見ているだけで、とても温かい気持ちになりました。
まさに映像旅行でしたよ!
mezzotintさんが、こういう作品をちゃんと見てくれるところがうれしくなりますね。