ぼくら、20世紀の子供たち ▲180
’93年、ロシア
原題:NOUS,LES ENFANTS DU XXE`ME SIE`CLE
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
脚本:バルバラ・クラシルコワ
撮影:ヴァレンティン・シドリン
出演:パーベル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ

サンクト・ペテルブルグ。作者は10歳にも満たない少年たちにその“犯罪歴”を問いただす。最初は警戒していた彼らだが、一人が口を開くと堰を切ったよう に告白が続き、あどけない表情からは想像もつかない言葉が並ぶ……。廃ビルをねぐらにする一団は残飯を食べており、栄養状態が悪そうだ。10歳までの子供 らの施設。坊主頭の少年たちの単調な告解を、一杯のウォッカのために売春を強要された–という少女の叫びがつんざく。11〜15歳の施設。木の綿毛が舞 う夏の日、バラライカで美しい旋律を弾く少年たち。16〜18歳の鑑別所。母親も刑務所に入っていると語る少年。女子刑務所に子殺しの女囚を訪ねると、今 は改心したという彼女は里子に出した下の娘を抱いていた・・・
『動くな、死ね、蘇れ!』、『一人で生きる』、『ぼくら、20世紀の子供たち』の3部作を撮って、そのまま忽然と映画界から居なくなったという、ヴィターリー・カネフスキー。最後のこの作品はドキュメンタリーだ。ストリートにたむろする若者たちに、宝石の原型を見たという監督。『動くな、死ね、蘇れ』、『一人で生きる』は、この作品(『ぼくら、20世紀の子供たち』)に綴られた「現実」を背景にして作られた物語なのだ!こちらとセットにして見ると、より厚みが増してくる。20世紀最後に「若者たちの今」を描き出し、21世紀のもっと先の未来を見つめている。
ストリートの旧体制が崩壊して後の世界、ストリートの若者たちの今が遠慮なしに描かれる。生きるのによりシビアな社会をありのままに映し出した姿。きっと自分が今まで経験したことのないような厳しい世界を生き抜いてきたのだろう。野良犬のように自分の生きるための術を磨き、餌に対する感度を上げて、より生々しい生を生きる彼ら。絶望やシニカルさなどを身にまとう暇もなく・・・。
牢屋にいる若者たちのインタビューが続く最中、そこにふとパーベル・ナザーロフの姿がいる。『動くな、死ね、蘇れ!』『一人で生きる』の主人公ワレルカを演じたかつての少年だ。間違った道に進んでしまった彼。そこに面会に来たのは、少女を演じたディナーラ・ドルカーロワ。4年間で、彼らは驚くほど大きくなっていて、少年も少女も、大人になっている。
この3部作には、ドキュメンタリーであるこの作品の、この部分が必要だったんだ!などと思った。映画に出演し、主人公を演じた少年が、リアルの世界でその数年後には牢屋の中に入っていて、そこで監督と遭遇するだなんて・・・。そこで少女と再開して、未来の自分について、未来のロシアについて語る終わり方は、とても心に残った。
2009/12/23 | 映画, :ドキュメンタリー・実在人物
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「ぼくら、20世紀の子供たち」ヴィターリ・カネフスキー
ぼくら、20世紀の子供たちNOUS, LES ENFANTS DU XXEME SIECLE
1993ロシア/フランス
監督:ヴィターリ・カネフスキー
脚本:ヴィターリ・カネフスキー・ヴァルヴァラ・クラシルコワ
旧体制崩壊後のロシア・サンクト・ペテルブルグのストリートチルドレンの生活を描い…
>この3部作には、ドキュメンタリーであるこの作品の、この部分が必要だったんだ!
そうですね〜そのとおりだと思いますです。
未来に希望があるとは描かないですけど、でも希望を感じないでもないのはこのふたりがいるからですよね。
ところで、製作国ですが、ロシア/フランスではないかしら?ソ連て93年にはなくなっていた?
こんにちは☆はじめまして!
映画大好きなトラヴィスと申します。
映画大好きなのでオイラのブログにリンク貼らさしてもらいました♪
よかったら相互リンク宜しくお願いします。
また遊びに来ますね☆
manimaniさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
そうなんですよ。あの二作のフィクションと、この作品のノンフィクションとで、非現実と現実とが立体的に浮かび上がってくる、そんな印象に思えました。
事実は小説より奇なり。まさかまさかのワレルカが!
ああごめんなさいませ、ロシアの分は訂正いたしましたよ。
トラヴィスさんへ
はじめまして、こんばんは!コメントありがとうございました。
相互リンク申請は、実は相互リンクのページからお願いしているのですが、今度手が空いた時にでもリンク貼らせていただきますね。
ご訪問ありがとうございました。