動くな、死ね、甦れ! ▲179
’89年、ロシア
原題:ЗАМРИ−УМРИ−ВОСКРЕСНИ!
/FREEZE−DIE,AND REVIVE
製作:アレクセイ・プルトフ、ワレンチーナ・タラソワ
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
撮影:ウラジミール・ブリリャコフ、N.ラズトキン
美術:ユーリー・パシゴレフ
音楽:セルゲイ・バネヴィッチ
ユーロスペースがとにかく激混みしていた。蓮實重彦(google日本語入力では「蓮實重彦」が一発で出てくる!)が「これを見逃せば大きな損失」と言った、カネフスキーの『動くな、死ね、甦れ!』。「では逃せん」とばかりに、映画好きの人たちがこぞって見に来ていたのか。私が見たのはレイトショーの21:20の回であったのに、通路にもビッシリ人が埋まり、最後尾の壁際には二列の立ち見が出来ていた。私が行った時はすでに立ち見席しか空いていなかった。映画館で立ち見で見るなんてことは、ほとんどしないので、自分にとってはレディースデイの『プルートで朝食を』以来。
画面全体から流れ出すエネルギーに目を奪われる。ぐわしっと胸ぐらを掴まれたような気分になる。53歳で初めてメガホンを手にした、カネフスキーの処女作は、「ここは昭和初期の日本か」と見まごうような風景を映し出す。極東ロシアの小さな炭鉱町、絶望と貧困とが大人たちを襲う中、子供たちはまるで意に介さず瑞々く煌めく。いたずらっ子そのものの悪ガキ、ワレルカは便所の中にイースト菌を入れて便所を破壊し、列車を転覆させてしまう。そんなワレルカの守護天使のような存在の、少女のガーリヤ・・・。
「『小さな恋のメロディ』を超えた」という触れ込みには、ちょっと賛同できないけれど。ワレルカとガーリヤの二人のような、意地悪したり時には仲良くしたりの幼馴染的関係はツボ。いつも少女の方が、少年よい大人で冷静で、かつ寛大で。だから余計、最後は残念だったなあと。
ラストだけを思えば悲しい物語ではあるけれど、少年の演技のみずみずしさによって、画面全体から魅力が漂ってくるよう。力のある画だった。

母親とふたりでバラックに暮らす少年、ワレルカ。いたずら三昧の彼も、自分が起こした列車の脱線事故にはさすがに恐れをなして家出。その先で彼は強盗団の一味となり・・・
・動くな、死ね、甦れ!@ぴあ映画生活
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コメント(8件)
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おいーっす!もいっちょ、ぅおぃーっす!
とーらーぬぇーこーターンv ワンバンコ☆
かなり昔〜、かな〜りの小劇場公開で、
どないせーっちゅうねんっ!
っつーパンチの効いたタイトルに魅かれて予備知識なくみたら、
あらあら、結構なスターリン政権批判だわ
かぁちゃんはアレになっちゃうわで、
うっかり、タイトルに突っ込み入れるつもりが、
どっかり、突っ込まれてブルーになった事を思い出したYO。
なにもこんな大寒波の中、こんな薄ら寒い映画みなくても・・・(哀)
あえて極寒の地でガリガリ君を食うのがとらねこスタイルではあるけれどさー
「動くな、死ね、甦れ!」ヴィターリ・カネフスキー
動くな、死ね、甦れ!ZAMRI, UMRI, VOSKRESNI!
1989ロシア
監督・脚本:ヴィターリ・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ他
もう一度観たい!
これが89年の映像だとは信じられない。
もうすでに50年くらいは映…
TBしましたよ〜
好きとかキライとかを飛び越して大切な映画をまた一つ発見したです〜って感じでした。
ラストはほんとうに悲しくて、でもどこかあっけらかんとしているのは、なにやらロシア的達観のようなものを感じましたです。
1月にアンコール上映があるみたいなので、モウイチド観てやろうと思っています。
>「『小さな恋のメロディ』を超えた」という触れ込みには、ちょっと賛同できないけれど。
まったくだ。。
白髭タンへ
ワンバンコ〜!!久々のコメントありがとうです〜♪
本当、久しぶり〜!
へえ、白髭タンもこれ、映画館に観に行ったのね!珍しい。
確かに、これは評価が分かれそうかな。
ハハハ、極寒の地でガリガリ君を食うって・・・ww
うん、私はどこかロシア映画がしっくり来るところがあるかも。
確かにこれはいまいち、明るい感じのする映画ではないんだけれど・・。
んー、この作品は三部作だから、他の作品とセットにして考えるべきかもしれない、なんて思ったりもする。
私は実は三部作の一番最後を見たんだけれど、それとまるで表と裏のようになっていると思ったんだ。
大戦後のロシアで混迷の中にあると、人間はよりアグレッシブに生きるんだな、と思ったよ。生きることに必死にならざるを得なければいけない精神性が必要になる、というか。
まあ、正直言ってしまえば、面白い映画とは全く違うんだけれど、その三部作の最後の『僕ら、20世紀の子供たち』の方はなかなか面白かったんだよ。
mani_maniさんへ
おはようございますー!コメント返し遅くなって、本当にすみませんでした!ちょっと失念してました。赦して下さい、、、。
>好き嫌いを超えて
本当に。ラストはショックではありますけど、ラストの展開に全体の印象が引きずられるのは、もったいない気がしますね。
>ロシア的達観
なるほど。こういう見方がさすがまーにーさんですよね。
ども。わたしは横浜のジャック&ベティという粋な名前の劇場で観てきましたが、そこでは七割くらいの入りでした。古本売り場などもあって、なかなか雰囲気のよいところでしたよ
ワレルカ君の彼はまさに弾けるような演技でしたね。公式サイト見ると監督は「終始すねていた」と言っているんだけど、それにしてはスケート靴を取り返した時の笑顔などは、とても自然で朗らかに見えました。子供にとっては爆笑する演技ってのも、かなり難しいと思うんだけど
二年後の『ひとりで生きる』ではまた違った顔を見せてくれています
順当に考えるなら彼はいま33歳のはず。カネフスキー監督同様、いまどうしてるのかな、とついつい考えてしまうのでした
よさこい節は凍土に流れて ヴィターリー・カネフスキー 『動くな、死ね、甦れ!』
♪ 土佐の高知の播磨屋橋で 坊さんかんざし買うを見た 年明け一発目はとっても明る
SGA屋伍一さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
横浜のジャック&ベティ!?私そこ、映画館でなく、ライブを見に行ったことありますよ。つってもずっと前のことですが
ノイズ系の音楽がすごいたくさん集まるイベントで、友人のバンドが出てたんですよ。という余計な話はさておき・・
ワレルカ役の少年、なかなか良かったですよね。ああいう面構えの少年て、なかなかいないですよね。
ただの悪ガキではなく、どこか別の影の部分を持っていそうな少年、というか。
『ひとりで生きる』はこの後のアンコール上映で見に行こうと思ってます。
うん、ワレルカ同様、今どうしているのかが気になりますね。
げげ、それにしてもワレルカ、33歳なんですね。自分とあんま変わらないとは!全然少年じゃないじゃん・・