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チェコアニメ傑作選 ケイズシネマ Aプログラム ▲167

ぼくらと遊ぼう

新宿、ケイズシネマのチェコアニメ傑作選を見て来ました。
すごいすごい、本当に面白い。あまりに濃密で、その象徴するところを、じっくり考えようと思っているのに、どんどん進んでしまうので、思わず「ちょっと待って」というぐらい、濃い内容だ、と思いました。
プログラムは、一日に1本以上見ようか、とも話していたのだけれど、短編集であれば、一回に二つのプログラムを見てしまうのは覚えきれないかなあ、なんて。もったいない、と一つにしたけれど、自分的にはやめて正解でした。本当に面白くって、そして鋭い作品が満載で。うーん、凄い。
ケイズシネマのチェコアニメは、見逃せません。特集がもしまた組んだら、一回に一つづつのプログラムでもいい。来るたびに行こう、と思いました。

『パットとマット / クロスワードパズル』
監督:ベネシュ ’82年 8’50”

アイロンがけをしながら、クロスワードパズルに熱中するパットとマット。

『樫の葉が落ちるまで』
監督:ポスピーシロヴァー ’91年 28’08”

「自分の家にある自分の知らないこと」を渡す、と悪魔と契約し、大豊作を手にする。しかしその後、自分の子供をいつか悪魔に手渡さなければいけないと知り、悪魔の裏をかく。悪魔を手玉に取った男の半生の話。

今回、一番心に残ったのがコレ。悪魔がまるで「笑うせえるすまん」のように、なんだかビジネスライクなのです。悪魔に勝つには、悪魔より変な乗り物に乗って登場しないといけない。この乗り物というのが、また凄いんですね。

それを聞きつけたホームレスのお婆ちゃんが、突然自分の体に蜂蜜を塗りたくり、あちこちに鳥の羽をくっつけて、自分に乗れ、というのです。主人公はこんな奇天烈な格好をしたお婆ちゃんに乗り、その姿で悪魔の面前まで来る。そこで初めて、このお婆ちゃんも実は昔、以前悪魔との契約をして、魂を取られるはずの人だった、というのが分かります。お婆ちゃんは、人の役に立つ事が出来たため、悪魔との約束はこれで反故になるのです。こんなことがアッサリと語られていくのだから、ボヤボヤしていられません。
ここで主人公の子供の魂も、取られなくて済む。つまり、男にとっては、悪魔に勝ったことになります。

しかし、この話はここで終わらないんですね。まだ続きます。男は、自分の成功にいつしか酔い、大酒呑みになってしまう。しかし、このままでは自分の身が滅んでいかざるを得なくなる、と自分で途中で気づきます。そして、悪魔をまた呼び出して、禁酒を誓うんですね。
悪魔は、「人間が酒を呑まなくなったら、自分の商売が上がったりだから」と、今度の契約には難色を示します。
しかし、また悪魔を無理やり説得して、禁酒を手伝わせるのでした。
禁酒をするために、悪魔が連れて行く場所が凄い。まるで地獄のようです。いや、ここで奴隷として使われる人間たちは、なんだか機械の一つみたいだったんですよ。
氷付けにさせられたり、ひいこらひいこら働かされたり。禁酒をするためには、そうか労働か!なんて。

とにかく、一つひとつのシーンが忘れられなくなりました。なんだか、目からうろこが落ちそうな思いを、何度も味わわされちゃった気分。

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『手』
監督:トルンカ ’65年 10’19”

花を愛するアルルカンが、巨大な手に彫像を彫れと命じられる。トルンカの遺作。

大きな手が人間に命じる、というところに、たくさんの意味が含まれて居そうで、見ていてハッとする部分が多くあります。
狭い部屋の中に閉じ込められているのが人間の方で、破壊行動をする手と格闘するところも、心に刻みつけたくなる映像でした。

ライオンと歌『ライオンと歌』
監督:ポヤル ’59年 16’03”

砂漠を旅するライオンだが、腹の中で楽器が鳴り続ける。
カンヌ映画祭受賞作品。

うん、これまたとっても面白い作品でした。何とも味わい深い音色。

『棺の家』
監督:シュヴァンクマイエル ’66年 10’19”

モルモットを巡って争う道化たち。スプラスティック・グロテスク・コメディ。
マンハイム映画祭などを受賞。

テンポがとても音楽的な作品でした。争い合う人々も、お互い戦うことにばかり夢中。自分たちが愛する対象自体はまるでどうでもいいのか、戦うことで日々が過ぎていくのです。
なぜか、とても恐い作品でした。音楽的に面白くて、とてもリズムはいい。でも、同時になんだか恐ろしくてたまらない作品でした。心の中が、冷たくなった気がしたのです。
道化たちも、人間の本質をリアルに感じ取るのではなく、どこか人間性を失った存在として描かれているんですね。象徴として描かれるスプラスティックさに、機械的な感じを足したこの感覚が、なんだか余計にそら恐ろしく感じるのです。うーん、面白いな。

『ぼくらと遊ぼう』(画像は、一番上のもの)
監督:ポヤル&シェテェパーネク ’66年 12’06”

頭が良くなるおかゆを作ろうと料理を始める小さなクマ。
これは、私の友人いわく、「人形アニメなのだけれど、2Dの世界に3Dを足した、半3Dの作品」、なんだそうです。
3Dのものを、置いて作って見せているため、3Dでありながら、2Dに見えるんだ、とか。
そうか、だからこうして見た時の感覚が、何となく不思議な感覚に陥るんだなあ、なんて、それを言われてすっかり感心しました。
話も、本当に面白かったです。自分は思わず、『ウォレスとグルミット』を思い出しました。二人の

 

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コメント(3件)

  1. とらねこさん、こんばんは
    確かに一度に二つのプログラムを観たら、頭がパンパンになってしまいそうですね。つか、自分がそうだったし(^^;
    でもとらねこさんにはぜひDプロにあった『ナイトエンジェル』『電子頭脳おばあちゃん』も見て欲しいです。ここだけの話(小声で)『電子頭脳〜』の方はようつべでも見られます・・・ 「ト○ンカ」で検索すると、「サイバネティックなんとか」という題で出て来る・・・かもしれない
    『樫の葉〜』は人形だったかクレイだったか。パンパンだったため記憶が不確か(笑) お酒の恐ろしさを訴えるお話でしたが、見終わってすぐ一杯やりたくなってしまったのはなぜなんでしょう〜
    >「2Dの世界に3Dを足した、半3Dの作品」
    なるほど。言われてみればこれだけ背景に奥行きがないというか、ぺったりしていましたよね。でもそれが作品に絵本のような温かみを添えているように感じました

  2. 15分くらい六本勝負 チェコアニメ傑作選?? シュヴァンクマイエル・その他編 

    続けていっちまうか! というわけでチェコアニメ特集上映レビュー、後編でございます

  3. SGA屋伍一さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    そうですね、長編映画だったらまだしもなのですが、短編映画だと特集二つ見ると、一つひとつの印象が薄くなってしまうもので。。。
    とは言え、わざわざ遠くから来るSGAさんが、せっかくだから二つ見よう、と思うのも当然。
    私は近場であることをいいことに、、、すいません
    おおーう!Dプロの映画の一つが、ようつべで見れてしまうんですね。
    ではでは、今度早速見ておきますとも。
    こういう時、短編だとちょっと可哀想な気がしてしまいますね^^;
    『樫の葉〜』、クレイだったと思いますが。。。違ったかしら?
    見終わった後、あの日は飲んでしまいましたね、、ジンギスカン美味しかった♪
    >半3Dの作品
    このポヤルのシリーズは、とっても人気の作品らしいです。
    どのプログラムも、全部トリがこちらの作品でしたね。




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