ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー ▲158
’89年、イギリス
監督・脚本・製作・撮影・ニック・パーク
音楽:ジュリアン・ノット
編集:ロブ・ドープランド
このウォレスとグルミットのシリーズのような、クレイアニメと呼ばれるものを私が初めて知ったのは、『チキンラン』の時。雑誌の記事で読んで途方もなく驚いた。このウォレスとグルミットのシリーズもどうせ見るなら最初から見ないと、と思っていたら遅くなってしまった。
見てみたら、これは感激もの!完成させるまでに6年を費やし、ようやく23分のこの作品が出来上がったなんて・・・本当に何て言ったらいいのか、とにかく凄いなあ。
一番嬉しいのは、この発想の豊かさ。
そして、温かい色使い。なんて美味しそうな黄色!見ていて、ほっぺが落ちそう♪
チーズが切れたから、月に行こう!月はチーズから出来ているから・・・なんて思いつくウォレス。そこで宇宙船を材料から作り始める。間違っても「コンビニ行けばいいのに」なんてツッコミは、このクレイの世界に向かっては、とても思えない。
宇宙船も、見る限り「完成するわけないだろう」と思えるような、有機素材?からいつの間にか、立派な宇宙船が完成してしまう。
完成すると今度は、「まさか飛ぶ訳はないだろう」とか、「たとえ飛んでも宇宙圏に達しないだろう」とか、大人ならではの貧弱な発想が嫌でも頭にチラつく。ところが、宇宙船は見事月まで飛んでいって、着陸するのだ。・・・
ここにあるのは、貧困な発想を裏切る自由なイマジネーション。
「まさかそんな」と驚きが続くことで、不思議な快感が次第に生まれる。
そして見ている私も自由になれるような気がするのだ。
ラストの驚きは本当に心地が良くて、思わずまんまるの笑顔になった。
最近、大人な映画ばかりを立て続けに観てしまった私。また頭が固くなりそうになったら、ウォレスとグルミットシリーズを楽しんで頭をほぐそうっと。
ちなみに、これを見て思い出したのだけれど、
昔大好きだったバンド、Primusのアルバムに、『The Sailing Sea of Cheese』というのがあって(←)、
http://www.amazon.co.jp/Sailing-Seas-Cheese-Primus/dp/B000001Y57
こちらも、「チーズの海への航海」。アルバムジャケットも、クレイアニメのようなもので作られていてカワイイ。
あと、同じバンドのこのPVで、こんなのも見つけましたよ。これ、ちょっとすごいですよね?クレイアニメタッチで。
http://www.youtube.com/watch?v=s7aGLY92B6s
ストーリー・・・
ウォレス(声=ピーター・サリス)と飼い犬のグルミットは連休の旅行を計画中。ちょっと一息、お茶にしようと思うと、クラッカーにのせるチーズが切れている。よし、それならチーズの名所に行こう。チーズと言えば、月はチーズで出来ているらしい?ウォレスは月ロケット製作に着手。
・ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー@映画生活
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20周年記念はシーリーズ最強 「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」
「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」も自分的にはアカデミー賞もんやね
シリーズ中 最速のテンポ スリル&サスペンス
お子様にはきっつい 連続殺人 と毒婦 こりはヨイです
お子様にはじゃんじゃんトラウマを植え付けてあげないとね
映画館では泣いて…
とらねこさん。こんにちは。
なかなか観ている映画がかぶらないので、久しくお話してないな。
これならお話できそう。てな訳でコメントです。
なかなか、コマ撮り撮影のアニメは製作が大変と聞きます。フィルムの一枚一枚撮影するのですからそりゃそうですよね。23分で6年ですか。
89年作品ということはDVDですよね。
早速レンタル屋を探してみます。
アニメ好きの私にとっては「観るべし」と思ってしまいました。
de-noryさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうなんですよ、本当は新作も観ているのですがまだまだUP出来ずじまいになってます><
こうしてお話しに来てくださってありがとうございますー!
クレイ(粘土)アニメ、製作するのに恐ろしいほどの長い時間がかかるんだそうです。
初めて聞いた時は本当にビックリしてしまいました。
それにしても、粘土ならではの独特なタッチ、観ていると段々愛おしいものに思えて仕方がなくなってくるんですよ。
シンプルなのに、とっても素敵な物語ですよ♪
私はこのシリーズ、大好きになりました!
de-noryさんも是非、経験してみてくださいませね。
驚異の真実ですよね。「月はチーズで出来ている」
そういえば昔、月をチーズと信じてどこまでも追いかけていくネズミの童話を読んだことがありました
わたしが一番ツボだったのは、いざ発射!というところで飛び立てないロケット。そこでグルミットがパチンと指を鳴らしてサイドブレーキを下げるシーン
「ロケットにはサイドブレーキがある」
これまた驚異の新事実です
このあまりにもシュールでまったりとしたテイストにはまってしまうと、この後の作品には多少あてがはずれるかもしれませんが、とりあえず引き続き見ていってください
SGA屋伍一さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
これ、そう言えば以前SGAさんのところにコメントをしに行った時、あれ観てから書いたんですよ〜。勘違いされてた模様だったのですが訂正せず仕舞いにしてしまいました
そうですねえ、こうしたアニメの中ですと、私はチェコアニメ(こないだK’sシネマの特集で見たやつ)がイッチバン!面白かったです。
でも、私この作品もかなり好きでしたねー!
これ以降の作品は、最初のとはちょっと違うテイストなのでしょうか?
私と気の合うブロガーさんが、その後の作品も楽しまれているようなので、多分自分も好きかな?なんて期待しているのですが。
ただ、私はもしかしたら、長編じゃない方が好きなのかも、なんて思い始めてます。
そうそう、「月がチーズで出来ている」というのがまた、単なる思いこみかと思ったところ、本当にチーズで出来ているんですよね。本当に愉快で気持ちが良かったです!
SGAさんが挙げられた、「月をチーズと信じて追いかけていくネズミの童話」、これもなんだかかわいい話ですね♪
もし作者など、思い出したら、教えてください。
あ、そう言えば私、昔大好きだったバンドのアルバムに、『The Sailing Sea of Cheese』というのがあります。↓
http://www.amazon.co.jp/Sailing-Seas-Cheese-Primus/dp/B000001Y57
これまた、「チーズの海への航海」。アルバムジャケットも、クレイアニメのようなもので作られているんですよね。
あと、同じバンドのこのPVで、こんなのも見つけましたよ。これ、ちょっとすごいですよね?クレイアニメタッチで。
http://www.youtube.com/watch?v=s7aGLY92B6s
この作品、もちろん大好きです。
日本で初公開の時、それはもう大喜びで観にいったもんです。
あー、もう20年近く経つのか?!ぎゃー。時が経つのは早いっ。
このシリーズはどれも好きですが、私の一番の好みは2番目の
「ペンギンに気をつけろ」ですね。痛快でサイコーです。
この作品が出るまで、世界にはイギリス産のアニメって、ほとんど
出回っていなかったと思います。スノーマンくらいかな?
それがニック・パークのお陰でイギリスアニメが4度のアカデミー賞ですもんね。
『チキンラン』で初めてクレイアニメをご覧になったんですか?!
クレイアニメは昔からの手法で、子供番組やCMなどでも使われて
いるから、意外と気がつかずに見ているものも多いんじゃないかしら。
「ミルミル」のCMとか、ペンギンの「ピングー」のアニメとか
見たこと無いですか?
そう、クレイアニメは、人形アニメを作るより、更に大変!
粘土の特性を生かした柔らかい動きや、うねうねと生きてるかのような
動きを付けられますが、それは粘土造形物に少しづつ手を加えながらの
撮影の為、やりはじめたら1カット撮り切るまで休むことが出来ない。
その場でリアルに手を加えながらだから、紙で書いたアニメのように
失敗した部分だけ差し替えて、というのも難しく、粘土は長時間の撮影で
型崩れを起こすこともあり、人形アニメより扱いがデリケートなのです。
特に、チーズ・ホリデーは、ニックパーク本人が制作のほとんどを
手がけたので、物凄く時間がかかったんですよね。
でも、それだけに、原石というか原液と言うか、シンプルながら
濃厚な美味しさを放ってる。熟成されたチーズみたいにね♪
ochiaiさんへ
おはようございます〜!コメントありがとうございました。
ochiaiさんはこれを、当時に劇場でご覧になったのですね〜。うわあ、さすが早耳!
次の『ペンギンに気をつけろ』が一番お好きなんですね!それはそれは。早く見なくっちゃ。楽しみにしています。
そうですねー、私はミルミルのCMはちょっと記憶にありません。ピングーも、アニメを見たことはないかも。それどころか、アニメがあることすら知らなかったですー。
クレイアニメ、一度作り始めたら1カット撮り終わるまで一気に作ってしまわなければいけないんですね。
微妙な動きを、少しづつ粘度を動かして、ひたすら地道に撮影していくという。。。
そうか、型崩れなんかも起こしてしまう可能性もあるんですね。
でも、出来上がったものは、クレイアニメならではのフェチ感があって素敵でー。「てこてことしている」、というか。粘度の質感がとても好き。
完璧に作りすぎない方が特に私は好きみたいで。
無機質な物すら、有機的に見えてしまう視覚効果の優しさが好きなのかも。
原液!まさに。
本当、シンプルで濃厚ですね。
なるほど、「熟成されたチーズ」とは、したり!な表現で素敵です。
遅ればせながら、リンク先の動画観ました
・・・これは動物の乱獲を批判しているのかな? わけがわからない。でも楽しい(笑)
ダンボの向こうを張って空を飛ぶゾウさんがかわいいですね。これ欲しいなあ。せめて某牧場で飼えないかなあ
「ネズミが月をチーズだと思って追いかける童話」、検索を重ねて見つけました
さとうわきこ著 「ちいさいねずみ」
http://www.muchcolor.com/index.php?mode=detail&cate=3235&id=4417
外国の童話かと思ったら、日本の話でした・・・ こういうところで発想が重なるのって面白いですね
ochiaiさんがベストに推しておられる『ペンギンに気をつけろ!』、実は自分もこれがベストだったりします。レビュー、気長に待ってますね〜
SGA屋伍一さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>これは動物の乱獲を批判しているのかな?
うん、確かに良く分からないですw 私が考えたのは、「悪者のボスだった人が、象を一心に追うあまり、悪者の王国をも手放して、象と一緒に南に向かってしまう」という話なのかなって。ラストが見所なのでしょうか?それとも、ただ間違えて象に乗って飛んで行ってしまうだけなのかな。
>ちいさいねずみ
探してくれてありがとうございます!
ちゃんと読んだわけではないんだけれど、月を追いかけているうちに、孤独だったねずみに、家族が増えてゆくのね。
うん、大きな夢を持って、冒険する人生っていいな。夢が叶っても叶わなくても。
という話なのかな?
そうですね、同じ発想なところが面白いですよね!
へえ、SGAさんも『ペンギンに気をつけろ』が一番好きなんですね。じゃあ、次がますます楽しみ