二つのロザリオ ▲150
’09年、トルコ
原題:Uzak Ihtimal
監督:マフムト・ファズル・ジョシュクン
ナディル・サルバジャク ムサ
ギョルケム・イェルタン クララ
エルサン・ウィサル ヤクプ
TIFFにて鑑賞。
なんてことない物語だけれど、人々の純粋さが心に沁み入る。
イスラムの教会で朗誦人の仕事をしているムサは、「恋人の一人ぐらい作れ」などと言われる年頃の男。結婚したいとボンヤリ思っているものの、内気な性格のせいか、いつの間にか今になってしまった。
物語が進むにつれ、ムサがとても善良で純粋な人なのだと分かってくる。隣の部屋に住む女性が気になるけれど、声もかけることが出来ない。
トルコのイスタンブルという大都会に住んでいるのに、今時とてもオクテな男性なのだ。
映画の中でも「騙す連中が多いから」とムサの親戚が言っていたが、そのムサの親戚こそ、怪しい商売に手を出したようで、ムサとヤクプは二人とも警察に連行されてしまう。
私の印象のイスタンブルという街は、ボヤボヤしていると人に出し抜かれそうな、詐欺のような商売を行っている人も多い、というイメージがある。
私がおそらく、ブルーモスクの辺りで、いかにもカモっぽく見えたのが災いしたのだろうけれど。
その一方、親切にしてくれた人も本当に多かった。・・・私は、人を見る目に多少自信があるつもりだったけれど、途中でちょっと怖くなってしまったことを思い出す。
このムサは、とても純粋な心の持ち主であり、ヤクプに出会って彼の仕事の手伝いを始めるが、このヤクプもとても心の美しい人であった。
ヤクプは、ムサのために面倒に巻き込まれるが、ムサの「自分は知らなかったのだ」という言葉を信用する。
この二人の男と、とある女性・クララとの関わりを描いた物語。二人ともクララに話したいことがあるくせに、彼女の気持ちや言うタイミングを気長に待ち、二人が二人ともその時期を失してしまうのだった。
何故だろう、ここまでまっすぐで不器用な二人に、私はなんだかとても癒された。
この優しくて静かな映像にも。
言葉にならない優しさが漂う作品だった。
ストーリー・・・
イスタンブールのガラタ地区を舞台にした3人の物語。田舎からやってきたばかりのイスラム教の礼拝時刻を告げる係と、修道女になりたいと教会の世話になって暮らしている孤児の少女、そして年老いた古書売りもまた、イスタンブールに長く暮らしている・・・
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コメント(2件)
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再めるはばー。
とらねこさんは、TIFFでご覧になった映画のレヴューを全部書いてくれるのかしらん?
これは地味だけど素晴らしい映画だと思いました。
今回観た中で、演出・画作りが完璧!と思ったものが二作あって、そのうちの1本がこれなのです。(もう1つは香港の『夜と霧』)
ムサの奥ゆかしさがせつなかったですよねー。
かえるさんへうう・・・。
めるはば〜♪コメントありがとうございました。
そうなんです、TIFFで見た映画を、普段見る映画となんら変わりなく、全部サクサクUPするつもりなんですが、いやあ大変ですね。溜まって溜まって仕方が無いですー
古いDVDを挟んだりしてますが、出来るだけ順番通りにUPできたらいいな、なんて思っています。
かえるさんは、こちら大分お気に召されたようですね。
私、こないだまで台湾映画をいろいろDVDで観るに当たり、ホウ・シャオシェンだとかツァイ・ミンリャンなんかを観ていて、「かえるさん好み」、というのを考えていました。
で、この映画「かえるさんはお好きだろうなあ」なんて思ったのですよ。
この作品も、ちょうどそんな、優しい空気が流れている作品でしたね。
ムサも、奥ゆかしい優しい人で・・。二人ともイイ年した大人が、なかなか言いたいことを言えないんですよね。
ただ私、ムサの方はあれで良かったと思うのですが、ヤクプが言いたいことを言えなかった理由が描けていたら、もっと良かったのにナ、とラストで思ったりもしました。
確かに言い出しずらい面もあったとは思うのですが、肉親なのですから・・・。