5分間の天国 ▲148
’09年、イギリス
原題:5 minuites of heaven
監督:オリヴァー・ヒルシュピーゲル
脚本:ガイ・ヒバート
リーアム・ニーソン アリスター・リトル
ジェームズ・ネスビット ジョー・グリフィン
アナマリア・マリンカ ヴィカ
サンダンス映画祭で監督賞を受賞した作品。
『ヒトラー 〜最後の12日間』のオリヴァー・ヒルシュピーゲル監督。TIFFにて鑑賞。
一見とてもシンプルな、だが力強い物語だった。
たった二人の被害者と加害者の対決を描いたこの物語は、そこに含むあらゆる感情を、ごくシンプルな構図の中にしのばせている。
人が人を許すことがいかに難しいか。心から謝罪する、ということの意味についても。
この物語をいかに見るかというところで、その人の価値観を露呈してしまいそうだ。
様々な角度から物事を見ることを可能にし、それぞれの立場についても平等に、誠実にこの問題を提示してみせた。
さらに、世界に起きてしまった出来事の縮図でもあるかのようにすら、感じさせられる。そのシンボリックな深さに唸ってしまう。
物語の発端は、30年前の北アイルランド紛争に遡る。14歳でタータン・ギャングに加わり15歳でUVFに加わった、当時のアリスター・リトル少年。脅しと報復のため、主には自分の力を誇示するために、ジム・グリフィンを殺した。だがその殺人は、当時11歳のジョー・グリフィンに目撃されてしまう。
その30年後、TV局が彼ら二人を引き合わせる会合をセッティングするのだった。被害者と加害者。
30年の時を隔て、彼らが出会い、どのようなことを話し合うかをカメラは追おうとする。
真に難しいのは、心の問題だ。
当然ながら、他人を許すのも、口で言うほど簡単なものではなく。
本当は、許す自分を許せないのかもしれない。
「物事の解決の仕方」というものがもしあるなら。
「怒りを受容する」という器について。。
真の悔恨とは何か、真実を話すという勇気。未来に向かってゆくためには、過去と直面しなければならない。
垂直に横断歩道を映す、一縷の望みが見えるラストに、じわじわと感動が押し寄せてきた。
ちょっとだけとりびあ。
リーアム・ニーソンも、被害者役のジェームズ・ネスビットも、北アイルランドの出身だそうな。
アナマリア・マリンカは、見たことがあると思ったら、『4ヶ月、3週と2日』の人ですね。

1975年、北アイルランドのラーガン。市民戦争のさなか、激しい憤りを覚え、アイデンティティを主張する 16歳の少年アリスター・リトルは、報復とIRAへの警告としてカトリック教徒の男を殺害する。一方、被害者の弟ジョー・グリフィンはこの惨劇を目撃してしまう。アリスターは服役し、30年後、テレビ局が被害者と加害者を同席させようと画策する。ジョーは、生放送の現場でアリスターにナイフを突き立てよう と咄嗟に思い付くが、アリスター自身も過去の記憶に苦しみ続けていた。ふたりは自分たちの間に残る深い葛藤に向き合うため、すでに廃墟となった殺害現場を訪れる・・・
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『5分間の天国』(TIFF)
年に1度の映画祭。やっぱりテンションがあがりますね??。
六本木ヒルズ周辺をうろうろしてたら、めちゃくちゃ楽しくなってきちゃいましたw。
ということで、自分にとっての第22回東京国際映画祭のスタートは、リーアム・ニーソン主演の『5分間の天国(FIVE MINUTES OF HEA…