あの日、欲望の大地で ▲140
’08年、アメリカ
原題:The Burning Plain
監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ
製作:ウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルド
製作総指揮:シャーリーズ・セロン ほか
撮影:ロバート・エルスウィット
音楽:ハンス・ジマー、オマー・ロドリゲス・ロペス
シャーリーズ・セロン シルヴィア
キム・ベイシンガー ジーナ
ジェニファー・ローレンス マリアーナ
ヨアキム・デ・アルメイダ ニック
ジョン・コーペット ジョン
ホセ・マリア・ヤスピク カルロス
J.D.パルド (若い頃)サンティエゴ
ダニー・ピノ サンティエゴ
テッサ・イア マリア
ディエゴ・J・トレス クリストバル
そもそも『バベル』と『21グラム』の脚本家、ギジェルモ・アリアガの監督作・・・と聞いただけで、「これは見に行かなければ」とグッと心を惹かれるものがある。
とはいえ、私は決してイニャリトゥのファンというわけでもない。それなのに、そこには何かありそうな気がして、とりあえず足を運んでしまう。
メキシコとアメリカとの国境、という場所的な吸引力もあるのかもしれない。しかし、この二つの国で起こる物事が錯綜する物語、これが旬であった時期は、もう過ぎたように思える。なのに依然として魅力的に感じるのは何故だろう。
乾いた大地と、荒れた都会での人びとの心が、どこか共通点を持っているように感じてしまう。
ただ佇んでいるだけで、何か途方も無い苦しみを抱えているように見える、シャーリーズ・セロンの姿がまず圧巻。
私生活で男の出入りが激しく、愛のないセックスを繰り返す、有能なレストランのマネージャー、シルヴィア。
バラバラに切り貼りされたような、時系列の並べられ方ではあるが、砂漠の上でトレーラーハウスが燃える映像と、その前の時間軸、とに簡単に分けて見ること、これを大前提にしている。
そのため、整然とした印象になり、物語がごちゃごちゃにならずに見ることを可能にする。
しかし、後にそのバラバラな物語が劇的に繋がってくる瞬間がある。
その瞬間にこそ、トレーラーハウスは燃えていたのだ。そして、若い彼女の心は、夫と子どもを捨てたその時に、永遠に失われてしまう。
ゆきずりのようなセックスの後、自傷行為を繰り返すシルヴィアは、罪の深い自分に刻印するようだ。
心ここに在らず、といった感じのシルヴィアの姿は、実はその母ジーナの罪の物語から始まっていたのだ。
人間の罪業と再生の物語。
欲望から逃れられない人間である我々が繰り返す罪。それは原罪の形をも思い起こさせる。
苦しんだ後に、ようやく再生の糸口がそっと見えてくる。

行きずりの情事を繰り返し、孤独を守る謎めいたレストランマネージャー、シルビア。ある日、彼女の元にシルビアの娘と名乗る少女マリアが、夫の危篤を伝えに現れた。突然の出会いに戸惑うシルビアに、国境の町ニューメキシコの荒野での若き日の過ちがよみがえる。かつて、不倫の恋に走った母ジーナ、母と同じ宿命をたどることを恐れ、すべてを捨てて逃げたシルビア。灼熱の大地で渇きを満たすように愛を求めた女たちの秘密とは・・・
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コメント(13件)
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映画 『あの日、欲望の大地で』
{/m_0058/}映画『あの日、欲望の大地で』@文化村 ル・シネマ
脚本・監督:ギジェルモ・アリアガ
出演:キム・ベイジンガー、シャーリーズ・セロン
あの日、欲望の大地で – goo 映画
{/m_0058/}行きずりの情事を繰り返し
孤独を守る美しきレストランマネージャー
シ…
あの日、欲望の大地で
『愛の傷なら、いつか輝く。』
コチラの「あの日、欲望の大地で」は、「21グラム」、「バベル」の脚本家のギジェルモ・アリアガの長編監督デビュー作で、9/26公開となったPG-12指定の愛と宿命の物語なのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪
主演は、シャーリーズ…
とらねこさん、今晩は。
凄い映画でしたね、エンドロールを見ながら思わず
凄いなー、と呟いてしまいました。
若き日に犯した余りにも大きな過ちからは逃げてきたが、逃げる先はどこにも無い
自分自身の心の傷が彼女を追い詰めているから。
『バベル』のように時間軸と場所が行き来するが、すべての場面に意味が有る
やがてすべての場面と時間軸が結ばれた時に新しい希望を感じさせる。
巧みな場面と時間軸の切り替え、映画ならではの演出で主人公の逃げ場の無い心の傷の痛みが伝わってくる。
tatsuさんへ
こちらにもコメントありがとうございました〜♪
そうですね、逃げても、自分の罪に追いかけられる。
そんな表情を、無口な顔で見せたシャーリーズがなかなかでした。
重い内容の話なのですが、最後で再生へとようやく向かっていくところに、希望が持てるラストでしたね。
これだけの重い話を前に、それぞれの時間軸が見事に重なってき、それらが必然的に繋がっている様は、まるで『21グラム』のようにも感じさせました。
『バベル』の方で、必然性を封じたことよりも、自分には納得の行く物語構成でした。
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アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と組んだこと数回、
『アモーレス・ぺロス』『バベル』『21グラム』『メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬』の…
あの日、欲望の大地で
ポートランドの海辺にたたずむ高級レストランのマネージャー、シルヴィア(シャーリーズ・セロン)は、心に傷を抱え自らを罰するように行き…
こんばんは。
この映画すごく観たくて〜
長期旅行中、まだ上映中か心配だったけど、今日ル・シネマで観てきました!(結構な入り)
「21グラム」がよかったし、2人の実力派女優の競演といことで期待していましたが、やはりすごかった・・・・。
シャリーズ・セロンはすごく存在感あったけど、私はキム・ベイシンガーが大好き→期待以上でした。
(欲望に逆らわず自然に流れるように演じる彼女が好きです。)←いつまでもセクシーで・・・
そしてストーリーも!時系列が交錯するなかでラストになるころ全てが解き明かされる〜
映画の醍醐味を味わいました。
cinema_さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
cinema_61さんもご覧になりましたか〜!
これ、なかなか面白かったですよね。
ギジェルモ・アリアガの監督作品であるなら、「こういうタイプの映画なんじゃないかな」、そう予想して行ったら、まさしくその通りの作品が出てきて満足です^^*
私もこういうの決して嫌いじゃないんですよネ。
cinema_61さんは、キム・ベイシンガーがお好きでいらっしゃるんですね!私も好きです〜。
キム・ベイシンガー、いい女優ですよね!私は『LAコンフィデンシャル』が本当に好きでした!
私も、彼女は年を重ねてもなお輝く女優さんだと思います。
「ハリウッドでは、女優は40歳までで、その後は仕事が来なくなる」と『デブラ・ウィンガーを探して』の監督をした、ロザンナ・アークエットが言ってましたね。
年を重ねたら、重ねたなりの女性の役があるはず・・それなのに、残る人は圧倒的に少ないんですよね。
私は、キム・ベイシンガーと、ミシェル・ファイファーには、女優生命を出来るだけ長く、出来るだけ頑張って欲しいと思っているんです。
ローレン・バコールや、カトリーヌ・ドヌーヴのように。
『あの日、欲望の大地で』:寄木細工のように断片化され、有機的に組み合わされた脚本。すべてが解き明かされたとき、観客は映画という表現形態の無限の可能性を実感する。
(C) 2008 2929 Productions LLC, All rights reserved.断片化された映像のピースが寄木細工のように次第に組み合わされていく。2つのストーリーがみごとに連結するときの映画的な高揚感。ギジェルモ・アリアガ脚本・監督の『あの日、欲望の大地で』は時間の流れにいたずらを…
ある日、欲望の大地で◆THE BURNING PLAIN
2008年第65回ヴェネチア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞!
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あの日、欲望の大地で
あの日、欲望の大地で’08:米
◆原題:THE BURNING PLAIN◆監督:ギジェルモ・アリアガ「バベル(原案)」「21グラム(脚本)」◆出演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ブレット・カレン、テッサ・イア
◆STORY◆断崖にあるレスト…
mini review 10446「あの日、欲望の大地で」★★★★★★☆☆☆☆
『21グラム』や『バベル』などの脚本家として知られるギジェルモ・アリアガが、監督として長編デビューを飾った壮大な愛の物語。愛を渇望する悲しい宿命を背負いながらも、一筋の光に導かれる3世代の女性たちの生き様を真摯(しんし)に描く。ミステリアスな主人公とその母親…
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