恋人たちの食卓 ▲137
’94年、台湾
原題:飲食男女 Eat Drink Man Woman
監督:アン・リー
製作:シュー・リーコン
撮影:リン・ジョング
音楽:メイダー
美術:リー・フーシン
ロン・シャン チュ氏
ヤン・クイメイ チア・ジェン(長女)
ウー・チェンリン チア・チエン(次女)
ワン・ユーウェン チア・ニン(三女)
シルヴィア・チャン ジン・ロン(隣人)
ウィンストン・チャオ リーカイ(エリート社員)
チャン・ロン 三女のBF
ルー・チンチョン シンタオ(長女の恋人)
チャン・チエウェン 次女の恋人
『ブロークバック・マウンテン』、『ラスト、コーション』のアン・リー監督の、台湾時代の作品。
いや〜、こんないい作品も撮っていたのではないか!なんて思ってしまった。
主人公は、三人の姉妹を育てる、やもめの父親、チュ氏。彼の佇まいが、渋くてなかなかいい。
一流ホテルのシェフという職業であるが、腕に衰えが見え始めたチュ氏。彼の三人娘も、そろそろ一人立ちし、それぞれを嫁がせなければならない、彼の心境がある。
日曜の度に、食事会が行われ、これに対する三姉妹の出席は、家族の義務でもある。
そこで父親は週に一度、腕をふるい、豪華な料理を囲んで家族で話し合いが広げられる。
だがこの食事会では、彼女らは、ここ最近は、口を開けば、料理を中断する形で、重大なことを告げるのだ。
少しづつ、父親の手を離れていく彼女たち。
チュ氏は最近、「料理の味が分からなくなり始めている」。それはつまり、彼の腕が落ち始めている、ということを意味する。
彼にとって、人生の楽しみ、生きがいが、見出せなくなっていた、という心理がそこにあるのだ。
娘たちは、三者三様、違っていて、特に次女との関係は、悪化し始めていた。
だが本当は、彼女のことが心の中では、一番気にかけていた父親。
彼の自宅のキッチンは、亡くなった妻の写真が、今でも飾ってある。2、3度しか映らない妻の遺影を見ると、亡くなった妻に瓜二つなのは、次女のチア・チエンだ、ということが分かる。
10年前の失恋以来、恋することができなくなっていた、頑固な長女。学校では物理を教えている。
航空会社に勤めている、キャリア・ウーマンの次女。彼女には彼氏がいるが、アムステルダムへの転勤話(栄転)が転がり込んでくる。
友達の彼氏から、友達に対する恋の悩み相談を聞かされているうちに、次第にこの彼と仲が良くなり始める三女。
物語が進むにつれ、彼女たちの人生も少しづつ変わっていく。
いろいろなことを経験し、大人になっていく彼女たち。
物語最後には、チュ氏の人生にも、大きな変化が訪れる。
原題は、「飲食男女」。
食卓と、それを囲む家族との、心温まる物語だった。
台湾の料理って本当に量が多かったなあ。
食卓を囲む時間て、本当は幸せな時間なんだ。
そして、一緒に食べる家族も、本当はとても大切なもので。
この作品を見ると、そうした幸せな気持ちが、フツフツと沸いて来るようだった。

現代の台湾・台北を舞台に、三姉妹が繰り広げる三者三様の恋愛模様と、台湾5つ星ホテルのシェフである、彼女たちの父親が作り上げる料理の数々が織りなす ホームドラマ。日曜日の晩餐は、中国料理の鉄人だった父の手料理を前に円卓をにぎわすのがこの一家の習わしだ。敬虔なクリスチャンである長女、航空会社勤 務のキャリア・ウーマンの次女、女子大生で無邪気な三女。人間の根源的な欲求である“食欲”と“性欲”を通して、彼女たちの初恋や不倫、セックスに妊娠、 結婚、父と娘、家族や人間関係、そして“人生”を描きあげた意欲作。
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コメント(2件)
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とらねこさん☆
これって、なかなかいい映画でしたよねー
台湾の人の、食事を大切にする気持ち、よく判りました。
っていうか、ガイドさんによると台湾人は朝も昼も夜も外食って多いって。
じゃあ、このお父さんはすごーく珍しいのでしょうね。
勿論家に料理人がいるのは珍しいことなのでしょうけど。
そうそう、台湾映画の「西瓜」って見たことありますか?
途中高尾も出てきたり。きっととらねこさん、好きだと思いますよ。
ノルウェーまだ〜むさんへ
こちらにもありがとうございます♪
そうなんですよね、中国文化圏は、大量に作るのが人をもてなすことで、客は残すのが礼儀で、全部たいらげると満足してないことになるらしいですね。だから大量に作るんですって。それって、環境に良くないよなあ…なんていつも思うんですが。作る方だって大変そうですよね〜^^;
でも、本当美味しそうでしたね!そうそう、私もみんな外食するって聞きましたw。朝から外食したり、職場に早めに行って、みんなで朝食食べたりして、その後仕事するんですって。
うんうんそうですよね!このお父さんは、自分が料理人だから自分の料理をふるまいたい、ってことらしいですよね。
私は『西瓜』好きでしたよ〜。ツァイ・ミンリャンは気に入って、入手出来る限り全て家にありますw。
台湾絡みでツァイ・ミンリャンとホウ・シャオシェンは結構見たんですよ〜。