リミッツ・オブ・コントロール ▲136
’09年、スペイン、アメリカ、日本
原題:The Limits of Control
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
製作:ステイシー・スミス、グレッチェン・マッゴーワン
製作総指揮:ジョン・キリク
撮影:クリストファー・ドイル
美術:エウヘニオ・カバイェーロ
編集:ジェイ・ラビノウィッツ
音楽:ボリス
イザック・ド・バンコレ 孤独な男
パス・デ・ラ・ウェルタ ヌード
ティルダ・スウィントン ブロンド
ビル・マーレイ アメリカ人
工藤夕貴 分子(モレキュール)
ガエル・ガルシア・ベルナル メキシコ人
ヒアム・アッバス ドライバー
アレックス・デスカス クレオール人
ジョン・ハート ギター
たとえば、自分の中に、音楽が流れる瞬間。
たとえば、好きな映画や、好きな音楽。好きな事象。
誰かが、何か心惹かれる言葉を吐く瞬間。
そういうものが何となく好きだ。
珈琲を飲みながら、(もしくは酒だともっといいんだけど)、
近くに来て誰かが面白い話をするのを聞いているだけで、何か共感を感じるような気がする。
誰かの何かについての言葉とか、なんとなく共感する何かとか、
一緒に居て心地が良くなる誰かとか。
そんなものを掻き集めた、意味の無い散文的な何か。
この映画はそんなもので出来ていた。
だから、別に大した映画、ってわけじゃないですよ。
この映画を観た私は、一つだけ、スペイン語を覚えた。
「La vida no vale nada」
ヒアム・アッバス(『シリアの花嫁』、『扉をたたく人』)の運転してたピックアップトラックに書かれていた言葉。(ガエルくんが乗ってた)
“人生に意味はない”
そう、この映画にも大した意味なんてないのよね。
だけど、ゲージュツがケイザイモンスターを殺すのには、賛成しちゃう。
コードネーム:アメリカ人という名のケイザイモンスターを殺すのだ。
しかもそれは、事細かに書かれた指示書などは何も無く。
インスピレーションだけで物事を進めるんだ。
つまり、普段の生活で私たちが必要としない何か。
何か一つだけ殺すとしたら、私もやっぱり、
そういうもの全てを信じていない人、を選びたい。
いろんな場所でいろんな人とお話をすることで、孤独な男は
みんなから共感を得ていく気がした。
みんなの力を借りる気がした。
想像力という名の元気玉を掻き集めて。
想像力によって物事を成すんだ。
理知的な解決法だけでは、取りこぼれてしまう事象を
ホントはコントロールのしきれないモノタチを
掻き集めたらこんな風になるのかな。
裸にレインコートの眼鏡の女の子が、何となく好き。
胸の大きさが右と左で違っていても、好き。
私もこんなレインコートが欲しいな。そんで、誘惑するの。
「我慢できる?」
眼鏡に寝癖ヘアーって、やっぱ似合う。
ティルダ・スウィントンが、お洒落コスプレをしている姿がなんだか、好き。
私も特別な任務を帯びたら、こんな格好してみたいな。
こんな風に、意味のない映画だった。
「人生に、意味なんてないんだ。」

ある孤独な男は、任務を遂行するために一切他人を信用せず、計画の目的など謎に包まれたまま、スペインの様ざまな街をめぐる。ありのままの現実と、夢の中をさまようかのように非現実的な光景が交錯する男の旅。男は自身の意識の中をもさすらう・・・
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コメント(19件)
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とらねこさん、ぶえのすのーちぇす。
詩的に哲学的に散文的な映画は基本的に好きなんですよねー。
ヌードちゃんの存在は私も好きでしたよー。
全裸でベッドでもめがねは外さないってのがキュート。
スケスケレインコートもせくしーラブリー
みんなのサングラスもそれぞれによかったな。
そうですね。彼は皆に会って、話を聞くごとに、何らかの力を膨らませていったのかもしれませんねー。
それが夜の太極拳でより確かにモノになるのかも?
ただ、私は、意味のない映画とは思わなかったし、人生に意味がないとも思わないかな。
でも、それって、「意味」という言葉の定義/解釈がとらねこさんと私とではちょっと違うのかもしれないので、そのへんの反論は留保します。
※この映画に意味はないと思わないけど、そもそも全ての映画に意味なんてない、という風になら思うかも。
※「La vida no vale nada」は字幕に「人生に意味はない」って出たのですっけ?
人生に生きる意味はない、なら少し納得。
人生に価値はないっていう日本語の方が私にはしっくりきますかな。
値打ちなんざーない、的な方が。
とらねこさんのジャームッシュ映画のお気に入りはなんですか?
私はナイト、ダウンあたりかな。
みんな好きだけど。
かえるさんへ
おっら!かえるさん♪ぶえのすでぃあす、コメントありがとうございました!
>詩的に哲学的に散文的な映画は基本的に好きなんですよねー。
ですよね!なんか、ただただつまらん、と切って捨てられてしまうのはとても勿体無くて。繰り返しの多さで、そこに退屈するのは分からないでもないんです。
※印のクオーテーション付で反論を保留にしていただき、ありがとうございました☆
ええと、まず、二つ目の※印の、「La vida no vale nada」のスペイン語の訳について、ですが。
今、ゲットしたばかりのスペイン語の電子辞書を手元に置いていますw
この一文は本来は、直訳すると「“その”命に価値はない」になるんじゃないか、と思うんです。
la vidaの部分について話したいのですが、laという“冠詞つき”なんですよね。あのおんぼろピックアップトラックでビル・マーレイの住んでいる居城(面白い建築になってて、寓話的でしたね。)へと進むので、むしろ“その命”の意味は、“彼”を意味するのでは?とも思うんですよね。でも、訳者は、冠詞付の訳にしなかった。私は、これはむしろ、その“彼”というのを、ただ一人の命とせず、“ある象徴”として描く方が、この映画の本質であると。そのために、わざわざ冠詞を無視した一文にしたのでは、と思っています。
日本語の訳では「人生に価値はない」になっていたと思います。
丞相さんが、ピカソのキュビズムを挙げられていましたね。私は、ピカソよりブラックの象徴絵画だと思いますwギターのところでも使われていたから、というのが理由ですけど。でも、この二つには共通がありますね。
私の好きなジャームッシュ作品だと、やっぱり『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』『ナイト・オン・ザ・プラネット』ですね♪
『リミッツ・オブ・コントロール』 The Limits of Control
物語なんていらないんだよ。想像力さえあれば。芸術があれば、哲学があれば。問答無用。というか永遠に問答を続けるってこと。SUSPICION!『ブロークン・フラワーズ』 はさほどお気に入り度が高くなかったんだけど、それは他の誰もが題材にしそうな物語の色が濃かったからな…
リミッツ・オブ・コントロール / THE LIMITS OF CONTROL
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個人的に苦手なジム・ジャームッシュ監督の4年ぶり最新作!
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これまで監督・脚本した作品数は13作。
半分は観ているんだけど…
リミッツオブコントロール LIMITS OF CONTROLちょっと不思議な出来のジャームッシュ新作
『ブロークン・フラワーズ』(審査員特別グランプリ受賞)以来のジム・ジャームッシュの新作。
メンバーは、お馴染み郡が、イザック・ド・バンコレ(主演 写真右)、アレックス・デスカス、工藤夕貴、、そしてビル・マーレイ。
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The Limits of control
千葉でやってないので新宿まで観に行って来ました。「The Limits of control」孤独な男が、「自分こそ偉大だと思っている男」をやっつける話。わたしイザック・ド・バンコレっていう俳優さんは初めて観たんですけど、この人の顔、雰囲気、とてもよかったです。映画は大きなア
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ジム・ジャームッシュ監督の新作。分かりにくいとの評判が立ってクチコミは良くないようである。この映画の主人公の男は寡黙で気功のような動作で精神集中のようなことをしていて、特務を実行して旅をしていくに当たっても、欲望に負けずに行動している。そうした映画中の主…
リミッツ・オブ・コントロール
9月中旬の旅行から10/3の同窓会まで、
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>胸の大きさが右と左で違っていても、好き
おっぱいネタには必ず喰い付く口唇期障害のわたくしが吸い寄せられましたヨ!
対なるエスプレッソ、「宇宙には端も中心もない」、夜な夜な太極拳…
ポクポクポクチーン!ひらめいた!
あのヌードちゃんのおっぱいは陰陽魚太極図を表してるんですヨ
ツンと上向いた左チチが上昇する陽の気を、やや垂れの右チチが下降する陰の気を、ニップルがそれぞれ陰中の陽、陽中の陰を!
そんな監督も意図しない深ヨミする妄想力が
No Limit, No Control(笑)
ツンしかなくてデレがない突き放しっぷりがあいかわらず見事ですねージャムやんは(笑)
いやもう、ド!バンコレの顔面りょ
途中送信失礼しました…続きです
顔面力とか、エスプレッソは必ず2つなのにビールは適用外な不思議ルールとか、他は皆見た目なのになぜか語りの内容がコードネームになってる分子とか、「スペイン語は話せないのか?」で始まるミニマル感とか、美術館の絵とか
観おわった後に語りたくなる余白のある映画好きなんですよねー
その美術館でも作品でてたタピエス曰く、
「ある作品の意味は鑑賞者の協力の可能性の上に成り立っている(略)イメージを持たない人、つまり、心の内部で思考と感情が結びつくために必要な想像力や感受性が欠如している人は何も見ることができないのである」
この上から目線なえらそー感がむしろイイ!(笑)
リミッツ・オブ・コントロール
公式サイト。ジム・ジャームッシュ監督、イザック・ド・バンコレ、アレックス・デスカス、ジャン=フランソワ・ステヴナン、ティルダ・スウィントン、工藤夕貴、ジョン・ハート、ガエル・ガルシア・ベルナル、ヒアム・アッバス、ビル・マーレイ。“LA VIDA NO VALE NADA”(人…
みさま
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>胸の大きさが右と左で違っていても、好き
ナント〜!もしかして、この一言が無かったら、カキコんでもらえなかったのか?なんて冷や汗をかく私が居ましたよっっ・・
>対なるエスプレッソ
も、も、もしかしてあのおっぱいは、ひっくり返せばエスプレッソが入っていたのか・・・?いや、そんなわけないか。
>ポクポクポクチーン!ひらめいた!
その後の陰陽魚太極図、ふむふむ!しかしこの出だし、「ポクポクチーン」て、一休さんじゃん。。。
>ツンと上向いた左チチが上昇する陽の気を、やや垂れの右チチが下降する陰の気を
あの片乳の垂れップリは、異様なものがありましたよネ〜。ねこりん、びっくりしちゃった・・・(垂れるほど大きくなくて、良かった>私。)ずっと横になってたから分からなかったけど。
確かに、そのままムニュッと動けば、ちょうど陰陽図のよう!(なのか?)
>ツンしかなくてデレがない突き放しっぷりがあいかわらず見事ですねージャムやんは(笑)
ですよね〜。突き放してあるが故に、むしろ「ここから何かを伝えよう」とか、「自らを表現しよう」とすら思ってないんじゃないか、なんて穿って見たくなったりして。
>観おわった後に語りたくなる余白のある映画好きなんですよねー
そこなんですよ〜!自分にとってはこれはどう感じたのか、そういう話をすることが出来る映画でしたよね。
これちょうど、こないだ睦月さんと呑みながらお話してたのでした。でね、やっぱりこの映画について、なんだかんだアレコレ・ド・バンコレと、いや違うか、いろいろしゃべってたのでした♪
みさんもそこに居たら良かったのにナ〜なんて思ったりしましたよ。
みさま
(つづき)
>「ある作品の意味は鑑賞者の協力の可能性の上に成り立っている(略)イメージを持たない人、つまり、心の内部で思考と感情が結びつくために必要な想像力や感受性が欠如している人は何も見ることができないのである」
まさにしたり、ですね!
タピエスですかふむ、これは評論文レベルですね。
確かにその一言は、ジャームッシュを始めとした他の作家主義の作品にも、当て嵌めることが出来そうです。
特に「鑑賞者の協力の可能性」、これはこの作品のキーワードになりそうですよね。
自ら感じていこうとする姿勢がなければ、何も見たことにならなくなってしまう映像たちでした・・・。
その人が持つ思考能力、というよりむしろ、そこから自分の内部へと結び付けていく、想像力・感受性、これ私も普段からすごく思うところがあるんですよ。
「行間を読む能力」、と言い換えてもいいかもしれませんね。映画作品中で、そこに表現されていることだけでなく、自分の想像力を働かせなければ見えないことってありますもの。
>途中送信失礼しました…続きです
ところで、これ新しかったですね!
私の想像なのですが、みさまが深夜に仕事中、誰かのっぴきならない訪問者(お客さんか、もしくは上司)が現れた!
いちいちコピーしてどこかメモ帳へと移す時間はなく、途中送信の方がずっと早かった。
そんな感じで途中送信されたように思ったのですが、いかがでしょう!?(いや、もちろん途中送信歓迎ですよ。私も時々、やりますから)
これは、行間を正確に読めてはいるでしょうか?いかに!?
昼間っからこんばんみ♪
>タピエス
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891763442
オススメです
なかなか示唆に富む内容なんですがヨミ方によっては飲み屋でメートルあげてクダ巻いてるだけのようにも…戦闘的って言い得て妙(笑)
>「行間を読む能力」
正直なとこ行間ヨメてる気はしないんですよねぇ…
でも意味不明=ツマンネと斬って捨てないで勝手に解釈して良いんだラッキー!とは思うのでやぱし「妄想力」つった方がしっくりくるかなぁ
言い回しのどーでもいい微妙な差異なんですが制作者の意図を汲み取らんとする意思強度の多寡によるかと
>いかに!?
タッチパッドに指が触れてしまったため…
あーツマンネと斬って捨てないで〜(笑)
みさま
こんばんみ〜♪コメントありがとうございました!
>タピエス
スペインの画家なんですね、戦闘的美術大論・・・
確かに、これこの作品のテーマの中心になりそな感じでしょうか。「ペンは剣より強し」みたいな・・。
>でも意味不明=ツマンネと斬って捨てないで勝手に解釈して良いんだラッキー!とは思うのでやぱし「妄想力」つった方がしっくりくるかなぁ
うん、その言い方いいですね。自分なりの解釈や、もしそうでなくても、最低限「意味分からなくてもなんか良かった」、って。これが一番正しい楽しみ方って思うこともあります。これもその手の作品だったように思ったり。
あと私はですね、繰り返し、とか反復、って一言で言い表したくないな、と。
このロードムービーの中で孤独な男は、出会う人出会う人、みんなタイプが違う相手に遭遇しますよね。確かに、常に同じ暗号の会話から始まりこそしますが、そこに話された内容は、一つとして同じではなく。相手も決して一様のアプローチではなかったんですよね。
それに対し、常に同じような平常心で臨むのは、むしろ高い集中力の表れ、サムライスピリットに似たものだったんじゃないか、と。
なので、この人は「よなよな太極拳」で五感やインスピレーションを研ぎ澄ますべく、内なる力を高めていた、というか。
つまりは、この人はもう一人のゴーストドッグ、じゃないか、なんて思いましたよ。
映画「リミッツ・オブ・コントロール」
監督:ジム・ジャームッシュ(大好き)
出演:イザック・ド・バンコレ(◎)ジョン・ハート 工藤夕貴 ガエル・ガルシア・ベルナル
出演:パス・デ・ラ・ウエルタ(美しい)ティルダ・スウィントン ビル・マーレイ(◎)
とある任務を与えられた一人の殺し屋が…
リミッツ・オブ・コントロール(2009)
THE LIMITS OF CONTROL
TWO ESPRESSOSNO MOBILENO SE〇 while WORKING
11月24日、京都シネマにて鑑賞。どうも今一つ評判がよくないという事を聞いていたのですが。確かに独特な世界を持つジム・ジャームッシュ作品、好き嫌いが完全に分かれるのは当然…
リミッツ・オブ・コントロール
リミッツ・オブ・コントロール’08:米
◆原題:THE LIMITS OF CONTROL◆監督:ジム・ジャームッシュ「ブロークン・フラワーズ」「コーヒー&シガレッツ」◆出演:イザック・ド・バンコレ、アレックス・デスカス、工藤夕貴、ティルダ・スウィントン、ガエル・ガルシア・ベ….
リミッツ・オブ・コントロール■ポイントブランク
「リミッツ・オブ・コントロール」はジョン・ブアマンの「殺しの分け前 ポイントブランク」に影響を受けて作られたという。製作会社の名前を「ポイントブランク」としていることからも明らかである。リー・マーヴィンが演じた主人公は目的に向かって一直線にそしてストイ…