幸せはシャンソニア劇場から ▲134
’08年、フランス、ドイツ、チェコ
原題:Faubourg 36
監督・脚本:クリストフ・バラティエ
製作:ジャック・ペラン、ニコラ・モベルネ
原案:フランク・トマ、ジャン=ミシェル・ドレンヌ、ラインハルト・ワグナー
撮影:トム・スターン
美術:ジャン・ラバス
音楽:ラインハルト・ワグナー
ジェラール・ジュニョ ピゴワル
ノラ・アルネゼデール ドゥース
クロビス・コルニアック ミルー
カド・メラッド ジャッキー
マクサンス・ペラン ジョジョ
母と映画を見るとなったら、私としては、出来れば失敗はしたくない。母は映画好きを自称している癖に、少々嘆息してしまうようなセンスの持ち主ではある。いつだったか「最近、何が良かった?」と聞いたら「『マリと子犬の物語』。動物が出てくる映画って、お母さん好きだわ。」などと言うので私は「あっそ。」と言ったきり、会話がそれ以上続かなくなってしまったことがあるのだけれど。・・・とは言え、前回一緒に見た『剱岳 点の記』がなかなか好評だったのに気を良くして、「母にはもっといい映画を見せなければ」なんて思ったりもする、親孝行娘な私なのだ。
今回は、「『ココ・アヴァン・シャネル』が見たい」と母が言ったのだけれど、公開一日前だったので、「そうか、フランスモノも見れるのか」、なんてコチラをとチョイス。母には少々難しいかな、と思ったけれど、ちゃんとエンタメしていたし、とても心温まる素敵なお話で、私はとっても嬉しくなった。
見る前は、『今宵、フィッツジェラルド劇場で』を思い出させるような作品なのかな、と想像していた私だけれど、見てみたらどこととなく『ムーランルージュ』に似ていた。
この作品、私はとっても大好きで、比べられないのだけれど、『ムーランルージュ』のようなケバケバしさ、派手さのない、とても良質のエンターテイメント。
これぞ、フランスはパリの、大衆的な娯楽性と言ったテイストで、昔のパリの温もりを感じる。『ムーランルージュ』でコラージュされていたような、MTV的な落ち着かなさはここには見られない。同じように、落ちぶれ始めた劇場があって、パトロンが出てくるけれど。
近代性というよりは、懐かしさを感じる、より地の足のついたエンターテイメント。
去っていった妻の残した一人息子、ジョジョのために、定職に就こうとするピゴワル。失業者たちの繰りなす、劇場再建のための決死の努力が、空しく空回りする。これらも、クライマックスを盛り上げる要素になっていて、悲劇を際立たせる。
初めは私怨でバラバラだった、衝突する仲間たちが、劇場再建に次ぐ、そのまた再建のミュージカルで、一つになる様は、本当に喜ばしい思いでいっぱいになった。
ここでアコーディオンを弾いていた少年、ジョジョ役のマクサンス・ペラン君は、製作のジャック・ペランの息子なのね。
瞳の印象的な子だった。どことなく、『T2』の頃のエドワード・ファーロング君を思わせるような、素敵な子。

1936年、パリにあるミュージックホールのシャンソニア劇場は、経営不振のため閉鎖となる。30年以上この劇場で幕引きを務めたピゴワルは妻にも逃げら れ、息子のジョジョとも引き離されてしまう。失意の日々を送るピゴワルだが、芸人仲間のジャッキーとミルーと一緒に、再度営業を始めようと劇場を占拠して しまう。そこに、歌手志望の美しい娘・ドゥースがやって来る。ドゥースはアナウンス嬢として採用されるのだが・・・
2009/09/26 | 映画, :音楽・ミュージカル・ダンス
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コメント(9件)
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『幸せはシャンソニア劇場から』 Faubourg 36
パリの下町にはアコーディオンの調べがよく似合う。ノスタルジックな風合いのあたたか人情ドラマ。
1936年、パリ郊外の下町にあるミュージックホール「シャンソニア劇場」は、経営不振で閉鎖となったが、長年ここで働いてきたピゴワルは、仲間とともに劇場の再建に乗り出…
とらねこさん、ぼんじゅーる。
お母さんとご覧になったなんてステキ♪
ココよりこちらの方が楽しんでもらえたに違いないです。
そうそう、温もりがあるんですよねぇ。
はアコーディオンの音色っていいなぁとしみじみ。
フランス、パリはどこの風景もすきだけど、この時代のモンマルトルな感じはたまらなく好きでっす。
幸せはシャンソニア劇場から
1936年のパリの下町が舞台。この頃、周辺国のドイツやイタリアがファシズム国家となる中、フランスでも右翼運動が起こるも、労働者側の人民戦線が政治的に力を得てくる。しかし尚、持てる者と持たざる者の差は大きく、不景気もあって下町の人々は職を見つけて生きることすら…
かえるさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
はい、母と見て来ました〜!
ココ、私は面白く見れたんですが、今頃母親は楽しんでいるかなー?なんてちょっと不安に思ったりもします。
アコーディオンの音色、この映画にピッタリ合ってましたよね!
モンマルトルっていうと、芸術家がタムロする場所、もしくは直接的に墓地という貧困なイメージしかない私だったのですが、今後、ファブールの大衆の底力な印象が強く心に残りそうでっす。
幸せはシャンソニア劇場から♪FAUBOURG 36
そして、幕が開く──再び笑顔があふれだす。
10月2日、上映最終日滑り込み!気になっていたが、なかなか観れず・・・。ようやく鑑賞出来ました。良かった〜〜♪
パリ〜〜♪パリ〜〜ドゥースの素敵な歌声に酔いしれてブラボーと拍手を送りたくなる。前半はそこまで乗…
「幸せはシャンソニア劇場から」女神の誕生
シャンソニア劇場が復活すれば、息子と一緒に暮らせる、シャンソニア劇場が復活すれば、かわいいあの娘と一緒になれるシャンソニア劇場が復活すれば、俺の芸が活かせるシャンソニア劇場が復活すれば、わたしの夢が叶う監督・脚本:クリストフ・バラティエ出演:ジェラール…
「幸せはシャンソニア劇場から」の魅力はイーストウッド組のトム…
まず、殺人を犯したとされる、しかし、決して凶悪な犯罪者には見えない男の告白から始まる。ここで観客は、この善良そうな男が殺人を犯す経緯や動機は何なのか、あるいは冤罪かと物語に引き込まれる。その観客の映画への引き込みを一気に加速するのがキャメラワークである…
『幸せはシャンソニア劇場から』よみがえる
【ネタバレ注意】
巴里の空の下、建物の屋根が連なる。カメラはゆっくりと下がり、街角の石畳を映し出す。
そこに流れる懐かしい音楮..
幸せはシャンソニア劇場から / 81点 / FAUBOURG 36
こんな自分でも幸せを感じていいですか?
『 幸せはシャンソニア劇場から / 81点 / FAUBOURG 36 』 2008年 フランス/ドイツ/チェコ 120分
監督 : クリストル・バラティエ
製作 : ジャック・ペラン
脚本 : クリストル・バラティエ、ジュリアン・ラプ