ヤンヤン 夏の思い出 ▲129
’00年、台湾、日本
原題:Yi yi (A One and a Two)
監督:エドワード・ヤン
製作:河井真也、附田斉子
撮影:ヤン・ウェイハン
音楽:カイリー・ペン
ウー・ニンチェン NJ
エレン・ジン ミンミン
イッセー尾形 大田
ケリー・リー ティンティン
ジョナサン・チャン ヤンヤン
コ・スユン シェリー
’07年に59歳という若さで亡くなった、エドワード・ヤン監督の、最後の作品。
173分という長尺だけれど、その長さを全く感じさせない、とてもスケールの大きいヒューマンドラマだった。
構成が複雑で、とても見ごたえがある。タイトルにあるように、ヤンヤンという一人の少年のひと夏を描いた物語でありながら、彼のそれぞれの家族を描き、まるで群像劇のように、各の人生を感じさせるような作りになっている。
台湾を舞台にした映画を見ようと思った時に、まずこれから見なければ、と思って手に取った。いやあ、見て良かった。
とても誠実な映画だと、そう思った。
不器用なそれぞれの人物が悩みを抱える姿を描く様は、温かい人間味に溢れている。ラスト、じわりじわりと感動が広がって、後味がとても心地よい。
ある程度経験があり、人生に挫折したことがある人には、とても心に響く物語。
出来ちゃった婚をする叔父、アディの結婚式を境に、様々な出来事が起こり始める。脳卒中で倒れた祖母に向かって、一人ひとりが語りかける。
初恋の人に再会し、心が揺れる父。
「子供の頃は、それほど音楽が好きではなかった。だがある時から、音楽がとても意味のあるものになった。とある人に出会ってから。」と言う父・NJ。
NJが去ってから、心が粉々に砕け散った、というシェリーもまた、今何不自由なく幸せに暮らしているにも関わらず、本当は古傷を忘れることが出来ずに居た。
精神が不安定になり、新興宗教に走る母・ミンミン。隣家の少女のボーイフレンドとデートを始めるティンティン。
「人は、前から見ただけではその人の半分しか映らない」と、後ろ姿を写真に撮り始める少年、ヤンヤン。
イッセー尾形演じる日本人ビジネスマン、大田の台詞がまた、とても印象深い。
ビジネスの会談上とは言え、その人となりや哲学を感じる、人間味溢れる会話を交わすNJと大田の姿が心に残る。
最後、「青春をやり直すチャンスがあったが、結局は同じだった。人生は一度きりでいいのだ。」と言うNJ。
「あの時ああしていれば良かったのに」などとくよくよ思い返す私は、何故かフッと心が軽くなれたような気がした。
人は突如として、何もかもが前に進まなくなるように思えるけれど。
そう、人生は一度きり、前に進むしかないのだ。
ところで、日本のロケ地、「つるやホテル」の表玄関がバーンと映されているのだけれど、もしかしてひたちなかのつるやホテルかな?(つるやホテルはいくつかあるけれど)

ヤンヤンは祖母や両親、姉のティンティンと台北に住んでいる、ごく普通の家庭の少年。ところが、叔父の結婚式を境に、様々な事件が起こり始める。祖母は脳卒中で昏睡状態となり、母は精神不安定となり新興宗教に走り、父は初恋の人と再会して心を揺らす。姉は隣家の少女のボーイフレンドと交際を始めてしまう・・・
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コメント(6件)
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とらねこさん、今晩はコメントいただき有り難うございました。
この映画は台湾で見られたのですか、
私もかなり昔ですが仕事で1ヶ月台北に行った時に映画を見ました、
看板を見ても漢字表記で何の映画か良くわからないのですが
絵を見るとどうも「ポリスストーリー」らしいので見ました。
旅先で映画を見るのはなかなか面白いです、ハワイで見た「スターウオーズ」、NYCでは「ロボコップ」、LAでは「ターミネーター」
パリでは「バットマン」など等を見ましたが基本的に英語が聞き取れなくても物語が分かりそうな物を選んで見ました。
パリで見た「バットマン」は英語もほとんど聞き取れずフランス語字幕なので、日本に帰ってからもう一度見直しました。
往復の機内でやっている映画も日本で未公開の物も有り楽しみですね。
tatsuさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>この映画は台湾で見られたのですか
いや、これは、台湾で見たわけじゃないのです。紛らわしくてごめんなさい
旅行記の間に、DVDや映画館で見た台湾映画も挟んでUPしてしまおうかなあ、なんて思っていたんです。他に変なものも挟まってしまう可能性もあるんですが。。
>看板を見ても漢字表記で何の映画か良くわからないのですが
そうなんですよね、私も台湾で見た映画のポスター、漢字だったんですが「ん??」なんて予想だにしないものもありました。
意外に変な漢字が当てられていたりするんですよね。
へえ、『スターウォーズ』も『ロボコップ』も『ターミネーター』も、海外でご覧になったんですか!それは特別な経験になりそうですね。
私は、ついつい観光や呑みの時間で時間が潰れてしまうので、海外っで映画館に行ったことはないのですが、
ミュージカルは本当に面白かったなあ、なんて思い出します。それに、日本で見るより安いのがいいです〜!
きっと、海外で見ると、また特別に違った経験になるのでしょうか。
機内で見る映画も楽しみですよね。
ただ、今回はJALだったので、劇場公開していないものがなかったのが残念でした。
『ウルヴァリン』は機内で見たのですが、迫力がいまいち伝わらなかったので、ガッカリでした。。機内で見るには、アクションものはやっぱりダメですね。
「ヤンヤン 夏の想い出」エドワード・ヤン
ヤンヤン 夏の想い出ポニーキャニオンこのアイテムの詳細を見る
A ONE AND A TWO
2000台湾/日本
監督・脚本:エドワード・ヤン
出演:ジョナサン・チャン、ケリー・リー、イッセー尾形、ウー・ニエンジェン、エイレン・チン
さきごろ亡くなったエドワード・ヤン(楊…
こんばんは〜
まだ日本にいるmanimaniです^^;
この映画、すばらしいですよね〜大好きです。
だいぶ忘れつつあるのでまた観たくなりました。
儀式で始まり儀式で終わるところがよいですね。イーストウッド『グラン・トリノ』のようです。あ、『グラン・トリノ』が『ヤンヤン〜』に似ているのか・・
エドワード〜なんでそんなに若く亡くなってしまったの?・・残念
manimaniさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
manimaniさんもこちら、気に入られましたか!私はこの作品、「これまた早く見ておくべきだった!」と悔しい思いを、またしてもしてしまいましたよ。
「儀式で始まり儀式に終わる」おっしゃる通りですね。
その間の出来事とは言え、人間、生きていると、人生模様は様々に変化してゆく‥
皮肉的でなく、人生を紡いでゆく描き方が好きでした。
60前で亡くなってしまうなんて、早いですよね。
「ヤンヤン 夏の想い出」 DVD
こうして久しぶりに観てみると、台湾のエドワード・ヤン(楊徳昌)監督のこの映画は、時の間隔を置いてみて繰り返して観るのにぴったりの映画ですね。
タイトルと少年の顔の写真だけを観て判断すると、単なる子供を主人公にしたカワイイ系の映画と勘違いされそうです( – …