クリーン ▲126
’04年、フランス・イギリス・カナダ
原題:Clean
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
製作:エドワール・バイル、ニブ・フィッチマン、グザビエ・ジャノリ
撮影:エリック・ゴーティエ
音楽:ブライアン・イーノ、トリッキー、メトリック、デビッド・ロバック
マギー・チャン エミリー・ワン
ニック・ノルティ アルブレヒト・ハウザー
ジェームズ・デニス ジェイ
ベアトリス・ダル エレナ
ジャンヌ・バリバール
’04年のカンヌ映画祭の主演女優賞をマギー・チャンが獲った作品だというのに、今頃の公開なんだぁ・・なんて、楽しみにしていた作品。
折りしも、日本では、酒井法子や押尾学の事件で、芸能界と麻薬、ということが盛んに取り沙汰されている真っ最中。不覚にもタイムリーな皮肉。
この物語では、麻薬中毒・オーバードーズ、恋人と息子を失ってしまう女性を描いている。
そして再生。
これといった特別なことなど何もしていないのに、しんみりと心に染み入る物語。
私は、なんだかラストでは、言葉も出ないほどに感動してしまった。こんな言い方はとても陳腐なのだけれどネ・・・。
私は、オリヴィエ・アサイヤス監督とは、音楽の趣味が合いそうだ、なんて生意気にも思ったりする。
他の作品でもよく使われているSonic Youthといい、ここに出て来る最初のバンド・Metricといい・・・。Metricなんて、女性ボーカルを据えたジョイ・ディヴィジョンみたい!気に入ってしまったな。
でも、この映画的には、何と言っても最後の曲がホントに素晴らしくって!
他、ブライアン・イーノも参加している。
主人公がもがき苦しみ、再生してゆく姿をゆっくり映し出してゆく。それなのに、見ていて決して辛くて痛々しくなく、むしろ希望に満ち溢れているようにすら思える。誇張表現は少しも使われておらず、いわば何気なく淡々と過ごしてゆくかのように描かれているだけのに・・・。「私は変われる」という言葉は、その少ないキーワードであるかのよう。
私は、いろいろなことを考えながら、エミリーの姿を見ていた。
失ったもの、そして見えた大切なもの。
希望、希望、希望。
どんなことがあっても、これだけは、持ち続けていなければいけないもの。そんな気がする。
「私は変われる」というシンプルなそのフレーズが、なんだかとても切なく心に響いた。
ニック・ノルティ演じるお祖父ちゃんの温かい優しさがまたいい。常に最善の選択をしよう、とする人物。こんな人物が居れば、人をもう一度信用しよう、とすることが出来そうだ・・・。

かつてのロックスター、リーがドラッグの過剰摂取で急死し、妻のエミリーはヘロイン所持で逮捕される。幼い息子のジェイは以前からリーの両親に預けっ放し だ。半年の服役後、ジェイに会うこともままならず、家も仕事も失ったエミリーは再出発の地にリーと出会う前に暮らしたパリを選ぶ。孤独と挫折感に打ちのめ されながらも、なんとか職についた頃、念願の歌手デビューと、ジェイを取り戻すチャンスが舞い込む・・・
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コメント(12件)
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こんばんは。
この映画見たさに、初めての映画館探しに苦労しましたが観応えありました!
ストーリーだけかいつまんで言うと酒井法子事件とオーバーラップしそうだけど、決してお涙頂戴的なものではなく音楽といい映像といい、とっても斬新でオシャレなフランス映画と言う感じでした。
東洋の代表的な女優マギーチャンの感情を押し殺したような演技がステキ!あのおじいちゃんもいいですね〜(子供も)
しかし、大女優となると中国語、英語、フランス語を自由に話せるんだ〜と感心!
最後の歌はマギーチャン自身が歌っているの?
もしそうならスゴイ!
「花様年華」のときからマギーのファンですが、この作品でまた好きになりました。
inema_61さんへ
こんばんは〜♪cinema_61さんですよね?
少しお久しぶりですー、コメントありがとうございます!
おや、cinema_61さん、イメージフォーラム初めてでいらっしゃいましたか?これは意外。
結構あそこでやる映画、いいものがかかることが多いですよ。
最近・・といか少し前に、イメージフォーラムの座席とスクリーンが、新しくなったんですよ。以前はいい映画がかかる割に、とっても見ずらい映画館だったんですが、改装以来すごく見やすくなりました。是非今後も行ってみてクダサーイ♪
そうですね、あらすじだけ見ると、本当に今話題のドラッグを扱った映画ですけれど・・。
本当に見ごたえのある、とてもいい映画でした!
そう、英語、フランス語、広東語(かな?)、とかなり言語が多様な作品でしたね!
マギー・チャンは、本当にすごい女優さんですよね!今回も本当に見違えるように別人で・・
そうそう、この作品、彼女が歌ってましたよね!
私、子供の頃からジャッキー・チェンの映画に出てくるので、他の人は知らなくても、この女優さんの名前だけは覚えてました。コメディエンヌとして素晴らしい女優さんだな、って覚えてたんです。何の役でもこなすんだから驚きますよねえ。
『イングロリアス・バスターズ』も楽しみですー。
「クリーン」:池袋駅東口バス停付近の会話
{/kaeru_en4/}ここって、何だったんだっけ?
{/hiyo_en2/}池袋の三越。
{/kaeru_en4/}ずいぶんさっぱりしちゃったねえ。
{/hiyo_en2/}クリーンになって、一から出直しね。
{/kaeru_en4/}オリヴィエ・アサイヤス監督の映画「クリーン」の主人公みたいにか?
{/hiyo_en2/}「ク…
クリーン
「命長辱多」(命長ければ辱多し)
長生きはめでたいことである。しかし、長き故に多くの屈辱を受ける。その屈辱を乗り切ったからこそ、長き人生が大きな喜びとなる。
【STORY】(MovieWoker様より引用させていただきました。)
フランス人監督オリビエ・ア…
とらねこさん。
落ちたからこそ、這い上がれる。
そんな気持ちにさせられました。
再生の姿に気持ちが熱くなってしまいました。
ニック・ノルティもいい演技。
こんなおじいちゃんのように、許す気持ちをもてたらいいのに。
これくらいの年齢にならないと出来ないことなのかなー。
クリーン◎Clean 京都駅ビル姉妹都市映画祭
京都駅ビル・国際姉妹都市映画祭にて先行上映!
観てきましたよ。関西ではここが最初の上映だそうです。19日から21日の限定上映で、RCSでまもなく上映されるらしいです。「夏時間の庭」のオリヴィエ・アサヤス監督の作品だったんだ。知らなかった(汗)そしてもう一つび…
deーnoryさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
速攻遊びに行っちゃいました♪
そうですね!彼女にとっては、おそらくそれまでの人生の全てを精算する、そんな気持ちだったのでしょうね。
どん底から這い上がる姿なのに、見ていて不思議と苦しい気持ちにならないのですよね。
おっしゃる通り、ニック・ノルティのおじいちゃんぶりがまた良いんですよね〜!
そう、人生の辛酸を彼も経験し、そしてだからこそ良き理解者で。
私もああなりたいものです。
こんばんは〜
やはりマギーは、逞しい「ラヴソング」が好きなので、本作では、ちょいとでしたが、ニック・ノルティが素晴らしすぎます。終盤の台詞に痺れます。
本人は、48時間2では、アルコール抜いているのに実生活では、色々あるようですね。だから、あんなにドラッグの義理の娘に甘い役?
クリーン
2009年9月26日(土) 16:10?? シアター・イメージフォーラム1 料金:1000円(会員料金) パンフレット:700円(買っていない) 『クリーン』公式サイト マギー・チャン主演の母子もの。マギーがロックシンガーらしい。感動作のようだ。助演女優賞を取ったらしい。と、…
レビュー:クリーン
『自分本位の母親に“Clean”な未来はあるのか?』 / 本作におけるヒロイン役のマギー・チャンの熱演は、第57回カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞も納得ものだし、ヒロインの義父を演じたニック・ノルティの深みのある演技も一見の価値がある。ヒロインの息子役のジェームズ・…
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