屋根裏のポムネンカ ▲118
’09年、日本・チェコ・スロバキア
原題:In the Attic
監督・美術:イジー・バルタ
製作:ミロスラフ・シュミットマイエル
脚本:エドガル・ドゥトカ、イジー・バルタ
撮影:イバン・ビート
編集:ルツィエ・ハラモバー
音楽:マレク・ムシル
屋根裏のポムネンカ。原題はシンプルに“In the Attic”です。
まさに、「Toys in the Attic」。屋根裏に忘れ去られたおもちゃたちの世界。(ここでエアロスミスを思い出すのは私ぐらいかな・・)
初めは、私もそんなにかわいくないかな、って思ったんですよね。キャラクター達が。
クマはともかく、たとえば、粘土をこねくり回して作った、伸縮自在のシュブルト。
瓶のキャップが頭に被せられています。見た目がオジサンみたいで、伸び縮みするし、ちょっと不気味なんですよね。オヒゲが生えてるし。
彼らはみんな、私達がその場の思いつきでかわいがったり、ちょっとしたらすぐに飽きちゃったりして、記憶の彼方に放り込まれた、そんなお人形たちなんですね。
私は子供の頃、お人形たちが夜、知らない間に動いたりしていればいいのになーって思ってました。
私たちが見るといつも生命力を感じることはないけれど、命があったらどんなにかいいだろう、って。
初めのシーン、お人形たちがずっと動いているんです。
ポムネンカたちのいつも通りの一日が始まるんですが、ある日突然、陰謀が始まるんですね。悪の帝王に目をつけられてしまった、みんなの母親的・アイドル的存在のポムネンカ。今まで幸せだった彼ら人形たちの世界に、異変が訪れます。
ところが、そこへ何も知らない人間たちが紛れ込んでやってくる。彼らは彼らの世界があって、人形たちが「本当は動ける」ことを知りませんから、人間達は時々しかやって来ない。
彼らが来た時は、お人形たちは型どおりに「動けないふり」「人形のふり」をしなければいけないんですよね。
私はこのシーンを見て、うわあ、って嬉しくなりました。
だって、それは私が子供の頃、夢見たとおりだったんです。私たちの世界じゃないところにまた別の世界が存在している。子供である自分たちは、もしかしたら入れてもらえるかもしれない。だけどもしかして資格がなければ、入れてもらえないのかもしれない。・・・
人形たちが“人形の振り”をしなければいけないけれど、本当は人形界では大変な陰謀が巻き起こったその時であり、だけど人間界の住民は全くそんなことは知らない。
二つの世界が今まさに交差したその瞬間こそ、子供の頃の想像力をまざまざと思い出した私が居たのです。
何より、手作りの世界観が嬉しいんですよね。
粘土で作った時計。洪水は、布がサラサラと動いて行く。濁流と清流が混じってみたり・・・ポリ袋で作った海。
見ているものが、全部手作りなので、何が出てくるか、それを見ているだけで楽しい。何のフェチって言うんでしょう、こういうの。なんだか“フェチ感”なんですよね。
ただ話自体は、長編だからか、ありがちな冒険譚に思えました。
こういうのはやっぱり、短編の方が、鋭い洞察力に満ちた面白いものが見れそう。私は今後、短編だけ見ようっと。

屋根裏にある、使われなくなった古いトランクの中で暮らしているおもちゃたちがいた。帽子を被った女の子の人形ポムネンカは、体中ガラクタで出来たシュブルト、マリオネットのクラソン、クマのぬいぐるみのムハたちのために、毎朝花火付きのケーキを作っていた。ところが、屋根裏の果てに住む悪の親玉フラヴァはそんなポムネンカに目をつけ、ある日彼女をさらってしまう。ポムネンカを救うため、仲間たちは冒険の旅に出る。・・・
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コメント(12件)
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『屋根裏のポムネンカ』 Na půdě aneb Kdo má dneska narozeniny
ワンダフル。暗い屋根裏のガラクタにキラキラな世界。
屋根裏の古いトランクの中で暮らすおもちゃたち。ある日、青い目の人形ポムネンカが悪の帝王フラヴァにさらわれてしまい・・・。鼻が鉛筆で耳はボタンの妖精シュブルト、マリオネットのクラソン、くまのムハ、の仲間…
とらねこさ〜ん、大変ご無沙汰しております。
お仕事いかがですか??暑いですが、体調は??わたしのほうは、もう昨年突発性難聴をやって以来、弱虫になって(笑)何事にも無理せず、ゆるゆるとこなしてます。
だから、映画観賞も激減・・・というか、興味の対象がシフトしてしまったのかもしれないです。観る映画も、ちょっと好みが変わったかな?そのせいか、本作のようなクレイ人形ものにも興味が!CS放送されたら観ようと思います。
ところで、下の記事の「ベルヴィル」わたしも観た!これは不思議な話でしたが、祖母の孫に対する無償の愛に感動しました。印象に残る作品です。またまいりま〜す!
JoJoさんへ
こんばんは〜♪おお!ちょっと久しぶり〜!コメントありがとうございました!
ああ、そうでした、JoJoさんはそう言えば、突発性難聴になって以来、映画を見るのを控えめにされたんですね。
映画なんて自分のペースで見ればいいんですもん。私も今後は、それほど映画見れないと思うんです・・・。私も、ちょっと趣味が変わってしまったような気もします。
ポムネンカも、温かくてすごく良かったですよ。特殊な分野なので、CS放送されるかは分かりませんが・・・。
『ベルヴィル・ランデブー』JoJoさんもご覧になったんですね。これ、独特なテイストのアニメでした。
そうそう、祖母の愛情がどこまでもまっすぐなんですよね。こういうアニメっていいですよね。
とらねこさん、こんにちは
ATTICってなんやねん・・・ と思って調べてみたら屋根裏のことなんですね。なるほど
わたしも見ながら子供のころに考えたことをいろいろと思い出したりしましたが、「ポムネンカ」という名前にはチェコ語で「思い出」という意味があるそうで
ポスターに大きく書かれてる「Napude」ってのはなんなんでしょうね・・・ やっぱ屋根裏のことなんかな
上から三つ目の画像がいいなあ。「オヤジ熊のくせに・・・ そんなかわいいところで寝てんじゃねー!」と腹立ちを覚えつつも萌えます(笑)
チェコアニメは他にはとある上映会で「空飛ぶ宝箱」という短編を一本見たきりで、ほとんど知らないんですよね。特におすすめというのがあったら教えていただけるとありがたいです
毎日が誕生日 イジー・バルタ 『屋根裏のポムネンカ』
♪ぽーむぽむぽむポムネンカ まん丸目玉のお人形 本日はチェコアニメ最後の巨匠(な
SGA屋伍一さんへ知りませんでしたよ。なんだかそう思うと、余計この映画の温かさをじわっと感じるような。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>「ポムネンカ」という名前にはチェコ語で「思い出」という意味があるそうで
おお、そうですか
いつもSGAさんはコメントを丁寧に書いてくれるんですよね。ありがとうです
>「オヤジ熊のくせに・・・ そんなかわいいところで寝てんじゃねー!
スリッパの中、熊のサイズにぴったりなんですよね♪
良く見ると履きつぶしたスリッパという感じがまたいいですね。
>短編のオススメ
イジー・バルタの短編の特集が8/28までやってましたね。それはSGAさん行きました?
私は行かなかったんですが。面白そうでしたよ。
あと、ここのお店
http://www.checkczech.jp/cafeano/
渋谷にあったチェコ料理のお店なんですが、月に2回、チェコアニメを上映しながらチェコ料理を食べる、という企画をやってました。
これに私、ずっと前から行きたくって。いろいろな人を誘って行こうとしてたんですが、なかなか相手が見つからなかったんですよ。月曜の夕方からで、仕事帰りに間に合わないぐらいでしたしね。SGAさん本当に好きそうですし、ここに一緒にいかがですか、・・・って言おうと思ったら、最近移転なんですね。
ここでやってたチェコアニメ、無知な私なんかは全く知らないような作家のものなども特集していて、すごく良さそうだったんです。
でも、オープンもまだ少し先ですし、チェコアニメ上映会に関しては全然載ってないですねえ。
こないだ熱海でお会いできなかったので、久々に・・なんて思ったのですが、ちょっと遅かったみたいですねえ。残念。
ども。いろいろ考えてくださってたんですね。おありがとうごぜえますだ(T T)
「ポムネンカ」の意味は「NAPUDE」の意味を調べてる途中で発見しました。で、「NAPUDE」の方は結局わからなかったんですが(笑)
バルタの特集上映は見たかったんですけどね。レイトオンリーだったもので、地方から来てるものとしては時間的に厳しくて諦めました・・・
代わりといってはなんですが、今度こんな特集上映があるそうで
http://www.ks-cinema.com/movie/cesko2009.html
実は最近出来たお友達がチェコアニメの好きな人で、一緒に見に行こうか、なんて話をしておりました
この特集の鑑賞の際、その方ともどもご一緒にお話できたら嬉しいですね。とらねこさんもお忙しい方なので都合があえば、ですけど、ご一考いただけたら幸いです
SGA屋伍一さんへ
いえいえ・・・どーいたみまして。
うん、『Napude』ってどういう意味なんでしょうね?やっぱ屋根裏なのかな。
チェコアニメの特集、そう言えばありましたありました。
私もチラシを持って帰っていたんですが、どこにあったか分からなくて・・ちょっと最近、チラシが増えすぎてしまって邪魔になって来ました
で、そうですね、チェコアニメ、そのお友達の方と一緒に見ましょう〜!
私も、あんまり先の予定が分からないので、1ヶ月先の予定を聞かれると、申し訳ないですが答えられないのです。でも、1週間前とか10日前の返答で良ければ、よっぽどでない限りキャンセルせずに済むと思います。
そんなわけで、日にちが決まったら教えておいてくださいまし〜。ただ、10月の日曜は二日間埋まってます。
「闇夜のヘヴィ・ロック」ですね。
名盤「ROCKS」の前でしたか。ROCKSはLP買いました・・・
コンサートはANGELだったかのバラードみたいなので、人気復活した時に行きました。「BACK IN THE SADDLE」で一人で「おー!」と盛り上がり恥ずかしい思いをしました。回りは知らないのでやんの。
で、映画ですが、チェコアニメは前衛的という先入観があるのですが、これは、手作り感爆発の素敵な作品でしたね。
屋根裏のポムネンカ
2009年9月7日(月) 17:20?? ユーロスペース1 料金:1200円(会員料金) パンフレット:600円(極小。買っていない) 『屋根裏のポムネンカ』公式サイト チェコの人形アニメ。 屋根裏に放置されたおもちゃたちのナイト・ミュージアム。人間は出てくるが、ほんの少しで…
「屋根裏のポムネンカ」
近頃、「森ガール」というクラスター(=種族)が話題だそうです。
それはAラインのゆるゆるワンピの重ね着に、ニットのモコモコ帽子を合わの..
バラサ☆バラサさんへ
こんにちは〜♪お久しぶりです!
不在にしていてコメント返信が遅れました!すいません><
>「闇夜のヘヴィ・ロック」ですね
>名盤「ROCKS」の前でしたか。ROCKSはLP買いました・・・
エアロネタに乗ってくださり、ありがとうございます♪
おお、ドーナツ盤をお持ちなんですね!
私は、エアロは『PUMP』からさかのぼったクチなんですが、’70年代のエアロも全部聞き込んでますよ〜。
コンサートも行かれてるんですね、私も行きました!
私が一番好きなのは『Back in the Saddle』なんですよ。この曲のエロさにやられました!
一番好きなエアロのアルバムは『ROCKS』なんですよ。
なので、バラサ☆バラサさんのコメントすっごく嬉しかったです〜^^*
で、この作品ですが(笑)
>チェコアニメは前衛的という先入観があるのですが、これは、手作り感爆発の素敵な作品でしたね。
そうですか!私のイメージでは、バラサ☆バラサさんは、ちょっと変わったホラーを気に入られる方、というイメージなのですが、こんなかわいい作品の良さが分かるなんて素敵です〜♪