ベルヴィル・ランデブー ▲117
’02年、フランス
原題:Les Triplettes de Belleville
監督・脚本:シルヴァン・ショメ
撮影:エリック・アドキンス
絵コンテ:シルヴァン・ショメ
グラフィックデザイン:シルヴァン・ショメ
すごく気に入ってしまった!何とも素晴らしい味のある逸品。
シュールでブラックで、独特なタッチの絵柄。セピア色を帯びた、懐かしさを感じる色合い。
アニメなのに、ほとんど台詞がなくて、あったとしてもほんのわずか。これがまた私の好みだった。音楽はふんだんに使われていて、とってもクールにスウィンギン!セピアタッチの絵柄に、スウィングの映えること、映えること!
ストーリーはというと、アニメ映像だけで語る物語なのに、ものすごい冒険譚なんですよ。
そのくせ、ありきたりなところがまるでないなんて不思議だなあ!
あらゆるシーンが意表をついていて、面白いの!
シュールでブラックと言ったけど、加えて言えば、全然かわいくないんだ!それがまた、楽しくて。ビタースイートな味。
子供向けのアニメでは決してない、毒が程良く効いたところがまた素敵。
孤独でおとなしい孫のシャンピオンは、ツール・ド・フランスの選手にまで育つのだけれど、帰ってくると、もうバテバテ。おばあちゃんが孫を一生懸命自宅でマッサージするんだけれど、これがまたすんごいの。家にあるものを使ってマッサージするんだけど、背中を転がしてるの、どうみてもそれって手動の芝刈り機。あと、お尻をグルングルンと揉みほぐすのも、ミキサー(生クリームとか泡立てる機械)を使ったりしてる。
それを見て、「おっ!この映画はどうやら面白そうだゾ」、と予感する。色合いから勝手に、セピアのほのぼの系物語だと思ってたものだから、自分の期待を裏切ってくれたことが嬉しい。
で、息子をマフィアにさらわれたお婆ちゃんが、後を追っかける!飼い犬だけを連れて。ここからがおばあちゃんの本領発揮。このおばあちゃん、ものすごい威勢がいいの!待て待てぃっとばかりに追っかけていくんだけれど、何があってもヘコたれない。
船に乗せられて自分たちの田舎から出ることになってしまうのだけれど、ちっとも動じず、すぐにレンタルボート(20分10フラン)を借り、嫌な顔をする店員を尻目に、船で追っかけていく。まるでのヒロイン、ゲルダみたい!ゲルダは追いかける時に湖で靴をなくしてしまうのだけれど、おばあちゃんはレンタルボートを10フランで強奪、ってところが可笑しいでしょ(笑)
そしてとうとう、ベルヴィルの街にまでやってくる。ここは、おばあちゃんがこれまでの人生で、おそらく来たことのないような、都会そのものの街。ここで、他の年寄り3人のかしまし娘、スウィンギングガールズに街角で出会うの。
彼女たちと出会って意気投合するのに、言葉を必要としない。みんなでジャムる、ってのがまたいいじゃない。
もちろん、楽器なんか無くて、おばあちゃんは単にその場にあった自転車の車輪(シャンピオンの車輪)を叩いているだけなんだけれど、それに合わせて超ヒップなアカペラでノってくる。手を叩いたり、タップダンスしたり。ここが本当に楽しくて。
彼女たちのアパートに転がり込むんだけれど、この人たち、夜のバーでショーをやってるのにロクなギャラをもらえないのか、文無し。池にいる蛙を爆破して捕まえてきて、調理しちゃう。これがまた楽しかったな〜!
蛙の姿煮のスープ、蛙の串焼き。デザートは、ドライ・オタマジャクシのポップコーン、とホントに蛙づくめ!ぎゃっはっは!!ちなみに、他の日の夕飯もやっぱり蛙だったから、蛙しかこの家では食卓に上らないのかも?
冷蔵庫は、楽器にしちゃうし、掃除機も楽器にしちゃってたしね(笑)
で、この彼女たち3人とおばあちゃんと犬とで、息子を奪回しに行くの。“3人の勇者+一人の勇者”と言ったらアレですよ!『ダルタニヤン物語』。(もっと知られた名前では、『三銃士』)。
それの、女版、いや違った、お婆ちゃん版。
ところで、シルヴァン・ショメって、何か聞いたことある、と思ったら、『パリ、ジュテーム』でパントマイムの男女の話を描いた、風変わりな物語を作った人じゃない!タイトルは『エッフェル塔』。これがすごく気に入った、という人も中にはいるんじゃないかな。あれもまた、童話的なテイストのキュートなお話だったな。
ジブリ美術館ライブラリーのこの作品、『王と鳥』もすごく面白くて、大好きだったけれど、こっちも負けず劣らず素晴らしい。
個人的に、この作品を好きな人には、いやいや、日本のアニメの『東京ゴッドファーザーズ』もなかなか負けてないよ!なんてオススメしたいな。

孤独な少年シャンピオンは、祖母のスーザが与えてくれたピアノやおもちゃに興味が持てずにいた。ある日、スーザが贈った三輪車がシャンピオンの人生を変える。時が過ぎ、トレーニングを積んだシャンピオンは、世界最高峰の自転車競技、ツール・ド・フランスに参加することに。ところが、シャンピオンと他2名の選手がレースの途中に何者かに誘拐されてしまう。スーザは愛犬ブルーノを連れ、シャンピオンを乗せた船を追って太平洋を超え、ベルヴィルの街にたどり着く・・・
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コメント(8件)
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あれ?!
まだこの作品、未見でしたかー! 意外です。
絶対好きそうな作品だと思ったので、公開時に見てるものかと。
私はもちろん、初公開時@テアトルタイムズスクエアに
勇んで見に行きましたよー。 勿論私も好きです(笑)
顔色1つ変えず、孫のためならどこまでも!のおばあちゃん!!
勢い良く、グイグイ物語は進んでいくけども、ちりばめられた
小ネタも楽しくって好き。マッサージもそうだし、
犬が電車に向かって毎回吼えるのは、幼少時に孫の
オモチャの電車にしっぽを轢かれたからだったり(笑)
サイコーにぶっとんだ素晴らしい作品です♪
シルヴァン・ショメ「ベルヴィル・ランデブー」
ベルヴィル・ランデブーブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントこのアイテムの詳細を見る
2002フランス/ベルギー/カナダ
監督・脚本・キャラクターデザイン:シルヴァン・ショメ
音楽:ブノワ・シャレスト
軽いタッチのアニメ・ノワール・コメディ
(そんな分類…
こんばんは
もっと長くてもいいなあと思った記憶あり。
あの犬が好きでした。
ぶっとびかたがフランスらしいというか、なんというか、どこか突き放したような感じがあって、そういう温度ってなかなか出せませんね。
好きですね〜そういうの。
ochiaiさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ああ、この作品はochiaiさんが気に入られそうな作品ですよねえ!
私は実は、それほどアニメに明るい人ではなくて・・。つい見過ごしてしまうことが多々あったりします。
これ、タイムズスクエアでかかってたんですね!おお、タイムリー。そうでしたか・・
この作品の小ネタ、本当に楽しかったですね!
そうそう犬が尻尾引かれたせいで、電車に吠えるの。
本当に、飽きずに楽しめる素敵な映画でした☆
私はSwinging Girls(ガールじゃないけど)が特にお気に入りです!
この作品、また忘れた頃に見たいです。
manimaniさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
manimaniさんも好きでしたかー☆
そうですね、楽しくて夢中になってしまったので、意外に短いような気になったかな?
私は、このブラックさがとってもフランスらしくて、ニヤニヤしちゃいました。
「どこか突き放した感」、確かにそうですね。すごく「媚びていない」姿勢を感じます♪
好みでした〜☆
これ、私もお気に入り。
作品の魅力がよく伝わるとらねこさんのレビュー、楽しく読みました。
音楽がとても良いのと、登場キャラの造形が脇役に至るまで魅力的。
叶わぬ願いではありますが、是非、フィギュア等キャラクター・グッズを発売して欲しい。
発売されてもかなり高価になりそうで手が出ないかもしれませんが・・・
DVD 「ベルヴィル・ランデブー」
「ベルヴィル・ランデブー」2002年 フランス/ベルギー/カナダ 監督:シルヴァン・ショメ
Les Triplettes de Belleville
戦後間もないフランス。内気で孤独な孫のシャンピオンを元気づけようとおばあちゃんはいろいろな物を買い与えたが、シャンピオンはどれにも興味を示そ…
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
imaponさんもこちら、ご覧になっていらっしゃったのですねー☆
’02年の映画なので、この頃だとあんまり同じ記事を書いている人が少ないかもしれないなあ、なんて思っていたんです〜♪
imaponさんもお好きでしたか!
この変でブラックな世界観を、快感に感じるところに、シンパシ〜
私の文はかなり長くなってしまって、我ながら分かりずらい文だったかなーなんて、ちょっと反省していたんですが、そう言っていただけて嬉しいです☆
この作品のフィギュアですか!うーん・・かわいくなさそう・・・。