愛のコリーダ (ノーカット無修正 完全版) ▲115
’76年、フランス、日本
原題:L’empire Des Sens
監督:大島渚
製作:若松孝二、アナトール・ドーマン
撮影:伊東英男
音楽:三木稔
キャスト:藤竜也(吉蔵)、松田英子( 安部定)、中島葵( トク)、殿山泰司( 乞食)
とうとう見ました、愛のコリーダ、ノーカット無修正完全版。
これは北米版でボカシ無しのものを輸入したものです。
とにかくこの映画は名前だけはずっと有名で、「芸術か猥褻か」という議論になって裁判になった、という噂は昔に聞いたことがあった。
何より大島渚は、昔からTVに出すぎていたし、「変なことばっかり言うオジサンだなあ、こんな人が映画監督なのかぁ」というボンヤリした認識しかなかった。いつか機会があれば見ようかな、ぐらいに思っていたのだけれど、2chで「SEXシーンで本当にしている映画」の筆頭に挙げられていたので、「それは是非自分の目で確かめなくっちゃ」とは思っていた。
しかし、いやー、これは見て良かった!
コダワリ抜いて作られた映画だ、というのはとても感じられる。
素晴らしく良く出来た映画だった。日本の映画史上に残るだろう。
ここまでスキャンダラスに描いたら、それは確かに問題になるだろうことも承知の上で、あえて挑戦するかの如く描かれた、数々のSEXシーン。
なんたって、全編そればっかり!なんですよ。正直言うと「きっとこのまま最後まで、そのシーンばっかりなのだろうなあ。」と考え、半ばウンザリしてきた中盤辺り。だが途中から、夢中になって画面に食い入るように見入ってしまった。
定は欲望の留まるところを知らず、嫉妬も束縛もあまりに激しいので、途中少々嫌になったところがある。それは、むしろ自分の中にあって、見たくないものを見せられているような感覚だった。
全体的な映画の色使いや、雰囲気も本当に好みで、「グッとくるテイスト」。一本調子に思えそうなほどのその描写の連続は、実は、次第に増してゆく狂気に拍車をかける。映画のテンポとして維持するために、計算の上であるのがよく分かる。このテンションで最後までイクのだから本当に天晴れとしか言いようがない。
しかし、中でも数々の性描写、これが実は一番計算されている、とつくづく思う。体位やカメラの角度に工夫が凝らされているばかりではない。何が今、画として映っているか。女の露出度は今どの位か。狂気の度合いはどうか。
執拗に描き、一つ一つが画になるものばかり。こうしてたくさん描きながらも、退屈せず、思ったより飽きも来なかった。それどころか、途中からいよいよ夢中になって目が離せなくなってしまったのは、性描写が非常に画として優れていたからだ。
卵のシーン、これは、見た時に「これこそ、この映画をして、誰もが忘れられなくなった瞬間だ」と思った。もちろん、それだけでなく、忘れがたいシーンは数々にある。
そして、男性器の描き方。実はこれが一番、最初から最後まで、女の裸以上に強調されて描かれていた。何故ここまで“男根”が強調されているか、それは最後になって分かる。定が切断してまで、掴んで離さなかったもの・・・。
ここに絶対的な理由があったために、男性器を隠すことは不本意に思えたのだろう。
藤竜也が、こんなにいい役者だったんだ、とは最初の登場の時に初めて気づいた。滑舌はそれほど良くないように思えてしまったけれど、ぶっきらぼうで粗忽で、そして絶倫な(笑)、だが途方も無く包容力のある男。初めはただの色情狂かと思ったけど(笑)
定がこれほどまでに惚れ込んでしまった理由が、ラスト近くになってよく分かり、私たちに訴えかけてくる。定の無理難題を、何も拒否しようとしない。どうしてここまでするのだろう・・・。その時は不思議だったけれど、私は一日以上経って、後から思い出して泣いた。とても激しく。それは愛だった。
ただ、ほとんど自殺的とも言えるその最後には、他に理由が付与されている。この映画でそれまで吉が見せなかった、怪訝な目のUPから始まる、軍隊とスレ違うシーン。軍国主義一徹な日本の歩調から外れてしまった男の、居心地の無さを示すシーンだ。
ここだけは、少し文句が出てしまう。カット割も多いし、長すぎると思う。1シーン1カットに抑えて欲しかった。それで十分言いたいことは伝わるのに。完全版だったからかもしれないけれど。

昭和11年、軍国主義の黒い影が漂い始めた東京・中野。料亭吉田屋に住み込み女中として安部定という女がやってくる。定は吉田屋の主人・吉蔵に一目惚れ、吉蔵もしだいに定の色香に惹かれて愛し合うようになり、夜更けの応接間で離れの座敷で、激しい情事を重ねる。その仲が吉蔵の妻トクに知られるにいたって駆け落ちした2人は待合宿に身を置き、深く濃い愛欲の世界へと落ちていく・・・
2009/08/13 | :ピンク・ロマンポルノ, :ラブストーリー 大島渚, 藤竜也
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コメント(13件)
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哀生龍の見たバージョンは「愛のコリーダ2000」だったので、完全版とは何か違いがあるのかもしれませんが、きっと見比べても哀生龍には分からないと思います。
なぜかって、「卵のシーン」も「男性器の描き方」も、とらねこさんのようには心に響いていなかったから。
元々男優と男性キャラ中心に見てしまう上に藤竜也が昔っから好きだったせいもあって、ストーリーや演出の繊細なこだわりにまで気が回りませんでした。(言い訳 苦笑)
>男性器を隠すことは不本意に思えたのだろう
必要以上に見せる演出に“別にそこまで見せなくても”と思ってしまったのですが、“必要以上”だと思ったのは哀生龍の勝手な解釈で、監督は“必要だ”と思ったからそのカメラアングルで・強調して・何度も見せたんですよね。
とらねこさんの書かれていたことを読んで、えらそうなことを書いた自分に反省しました。
愛のコリーダ2000
コチラの映画はあの”阿部定事件”をモデルに日本で撮影してフランスで編集した1976年の映画なんだけど、日本では大幅に手が加えられていて製作意図を伝えることが出来なかったそうです。で、2000年にオリジナル・フィルムをフランスから取り寄せて修正を最低限に抑えて….
とらねこさん、こんにちは。
熱海秘宝館に続いて「愛のコリーダ」ですが、両方のネタに反応して
コメントを付けるのもオヤジ丸出しでどうなのか、と思いますが。
前に「愛のコリーダ」を話題にしましたが実は見ていませんでした
映倫でズタズタにされたのは見ても仕方が無いと思ってました。
今の時代ならアダルトビデオなど珍しく無いかもしれません
今だからこそ「完全版」の芸術性とアダルトの違いがはっきり
解るのかも知れません。
30年も前に日本の法律では公開不可能を承知の上で撮った作品と言う事ですが、
逮捕もあり得る状況で大島監督の反逆精神やカメラの前で実際に演じた
藤竜也、松田英子の役者根性が凄いなと思ってました。
哀生龍さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
あっ、なんだかとってもお久しぶりです☆
哀生龍さんが邦画をご覧になるなんて、かなり珍しいことですよね!しかもこの作品をチョイスされた、というのにまた仰天しちゃいましたよ(爆)
私はとても興味深く読ませていただきました。全然「えらそうなことを書いた」なんてそんな風に思いませんでしたけど?
『愛のコリーダ』と『〜2000』との違いについてなんですが、いろいろ調べたのですがこちらの文を読む限り
http://www.cinematoday.jp/m/movie/T0000233
「日本初公開時に問題とされたシーンも修正されること無く、監督の製作意図に限りなく近い全編ノーカット版」とのことですね。全編ノーカットであれば、もうあとはボカシだけ(が監督の意向と違う)ってことですよね。ボカシはかなり薄く入っているようですね。
卵のシーンは、正直「こんなに阿呆なシーンはないだろう」というインパクトがありました。突拍子もないからこそ、忘れられないというか・・。
「これこそ有名になった瞬間だ!」と、思ったと書きましたが実は叫んでました(笑)
tatsuさんへ
こちらにもコメントありがとうございます♪
オヤジ丸出し、大歓迎です(!?)
そうだったんですね、tatsuさんはまだご覧になっていなかったのですね。↑上のコメント欄にも書いたのですが、『愛のコリーダ2000』はボカシはあるものの、ノーカットですので、こちらでも十分であるかもしれません。これ、他の人の感想もいくつか読んだのですが、この2000年に出たバージョンを見たという中には、感動されたという方もかなりたくさん居たようですよ。
確かに、当時見ていたらこれセンセーショナルだっただろうなあ、と思います。今見てもかなりなものでしたよ。
AVとは自分は全く違うと思えましたが、この過激な性描写は確かにAVそのもの、と言えなくもない部分もありましたし、これが論争になったのはよく分かる気がしました。
この辺り、一体どう思うか、是非tatsuさんの感想も聞いてみたいですー。
大島渚は大口叩く変な人、というイメージだったのですが、すっかり見直してしまいましたw
2000は観てないけど完全版は観てますよ〜♪
本当にすごいと感激しましたし、好きデス。
いや〜それにしても卵のシーンで叫ぶほど印象的で忘れられないとおっしゃるとらねこさんはさすがだと思いました。
卵のシーン、フツーの嗜好の女性が毛嫌いしそうなプレイですが(実際に女性誌で映画ライターと名乗るヤツが「卵を使うと女のコが喜ぶと思ったんだろうけど、ちっともカワイイと思えない」とか言ってた!あほか!)、
濃い匂いの、お互いの愛の確かめ合いとしては卵好きの男のための重要ポイントだと思うのです。
熱海の秘宝たちも楽しめたようで何よりです♪
アンバー・タカコフスキーさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
いやーこの作品、自分はとっても面白かったんですが、コメントが少ないなあ、なんて淋しく思ってました!そんなところへ、ありがとうございます♪
アンバーさんもこれお好きでしたか!私もなんだかんだ言って、忘れられない映画の一本になっちゃいました。
>実際に女性誌で映画ライターと名乗るヤツが「卵を使うと女のコが喜ぶと思ったんだろうけど、ちっともカワイイと思えない」とか言ってた!あほか!
この文、全くその通りだと思いますー。
こういうシーンは本当に、思いついてしまった人が凄いというか、“見た人が忘れられなくなる”シーンだと思います。ま、宴会芸としてはよくあること(!?)なのかもしれないんですが、実はどうなんでしょう?そういうのを映画に取り入れちゃおうっていうのがね、いいですよね。真似した人多いでしょうね。
>卵好きの男のためのポイント
むーん、アンバーさんはそう見ましたか^^;卵好きですかー。
私は、刺身の“しょうゆの代わり”シーンの次に来た“食べ物系アイテム”として、ユーモアタッチなシーンだなあとw
この女優さんがキモチワルくって好きです。
挿入時のカット割りが多いのは、意図的にではなく、チンコの調子に左右されたのだと思います。AVの本番とは違い映画撮影の中で勃起させ続けるのはかなりムツカシイと思うので、どーしても物理的にカット割りが多くなるのが仕方ないかなーと思います。でも、そーゆー失敗箇所がないと、ほんとーに完璧過ぎて嫉妬しちゃうやーん。「ああ大島渚でもチンコの調子に妥協せざるをえないんだなー」と微笑ましくなりました。
とにかくこの女優さんが素敵です。
藤竜也さんは抜群にヨイ役者さんですが、絶倫ではないとゆーのがこの映画でバレてしまいましたね。
gsさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
なるほど、勃起状態に左右されたのがあのカット割で、それはつまり藤竜也のソッチ方面での力量に拠るところが大きかったんですね〜。
そのご意見、ものすごく納得してしまいましたw
なーるほど。確かに、「何故そこでカットしてしまう!」という箇所があったのはそういうことかと・・。
プロのご意見なので参考になりますね〜。
>この女優さんがキモチワルくって好きです
本当に!思い込みが激しそうな、直情的で、しつこそうな、ゾッとする恐ろしげな女性を、最初から最後まで同じテンションで演じてしまいましたよね!しかも文字通り、体当たりで。
自分は、この人以外の定は、もはや思いつきません、すでにw
彼女より美しかろうと、エロかろうと、
ここまでまっすぐな人には見えず、物足りなく思ってしまいそう。
この映画、映画館で観ました。
でも卵のシーン、忘れたよぉぉ。
「そればっかっすか?」ってお口ポカーンでしたが、私の場合、松田英子さんにひきこまれちゃいました。
杉本彩さんも定を演じたみたいですけどちょっとセクシー過ぎでピンとこないな。
AnneMarieさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
わーい、アンマリーさん、ちょっとお久しぶり〜☆
アンマリーさんもこの作品、ご覧になりましたか!しかも劇場で!?
てことは、2000の公開当時かな、それともリバイバルかな。
意外なところに話食いついてくれると、すっごく嬉しくって
本当、「そればっかり!」と思っちゃいますよねえ!(笑)
でもだんだん慣れちゃったw。私もこの女優さんの鬼気迫る感じに、次第に圧倒されちゃって。
最後なんかさあ、いい笑顔してたんだよね。
抱き合ってる時、すごく嬉しそうな顔してさ、あの顔が忘れられないんだ。
私も杉本彩じゃ、ちょっと物足りないな。
『愛のコリーダ』の意味は?
クインシー・ジョーンズはみずからの大ヒット曲『愛のコリーダ』の意味を、「私はコリーダを知っている」だと思っていた。
というのは宮.
無修正版の冒頭前半に出てくる役者(殿山泰司)のズル剥けのチンポがすごく卑猥でエッチな気分になる。
しかも、亀頭が大きくて、しゃぶりたくて仕方ない気分になる。本当に卑猥で最高です。