セントアンナの奇跡 ▲114
’08年、アメリカ・イタリア
原題:Miracle at St. Anna
監督:スパイク・リー
製作:ロベルト・チクット、ルイジ・ムジーニ
製作総指揮:マルコ・バレリオ・プジーニ、ジョン・キリク
原作・脚本:ジェームズ・マクブライド
美術:トニーノ・ゼッラ
ラズ・アロンソ ヘクター・ネグロン伍長
マイケル・イーリー ビショップ・カミングス二等軍曹
デレク・ルーク オーブリー・スタンプス二等軍曹
オマー・ベンソン・ミラー サム・トレイン上等兵
マッテオ・スキオボルディ (その後) ルイジ・ロ・カーショ
アンジェロ・トランチェッリ
ヴァレンティナ・チェルヴィ レナータ
ピエル・フランチェスコ・ファヴィーノ ペッピ“ザ・グレート・バタフライ”ブロッタ
セルジオ・アルベッリ ロドルフォ
オメロ・アントヌッティ ルドヴィコ
ジョゼフ・ゴードン・レヴィット ティム・ボイル
ジョン・タトゥーロ アントニオ“トニー”リッチ刑事
ジョン・レグイザモ 美術商エンリコ
『マルコムX』からスパイク・リー作品を見始めた自分には、これが「スパイク・リー監督作品」と聞かされずに見たら、後から知ってもにわかに信じがたかっただろうと思う。最近の方向性がすべからく予想外なことが多かったにしても、これは・・。
まるで往年の名作でも見るかのようなデジャヴ感に、クラクラする。堂々とした味わいのあるしっかりしたテイストに、驚くばかりに惹きつけられる。
この映画、2時間40分とかなりの長尺だ。しかし、それを補っても余りあるパワフルな作品であることには違いない。この夏もしかしたら一番の問題作!?になりそうな予感がする。これは事件になりそうだ・・・!この辺りがやっぱり、スパイク・リーたる所以なのか・・・。
第二次世界大戦下のイタリア。そこへやって来たアメリカ軍“バッファロー・ソルジャー”。バッファロー・ソルジャーとは、まだ差別の残るアメリカで、アフリカ系アメリカ人によって編成され、イタリアに派遣された「第92歩兵師団」のニックネーム。
イタリアはイタリアで、前任のムッソリーニがナチス・ドイツと手を組んだことにより戦火に見舞われ、さらにパルチザンが革命活動を行っていた時代。内乱と大戦とでイタリア庶民は貧困に喘ぐ。
イタリアの田舎の美しい風景に登場するのは、それぞれの理由により戦う人々たちだ。だが、“出会いの物語”でもある。適度にユーモアのセンスの感じられる描写は温かい目線が感じられる。人と人の絆が描かれ、物語が進むに連れ、誰が何のために始めた戦争で、それぞれ個々として、何のために戦っているのか、大きな疑問が浮かび上がってくる。中盤の物語からは、最終的にどこへ行くのか及びもつかない。
この感覚こそ、自分が映画に求めるものだったりする。完成度の高さとは関係なく、物語が持つ訴えかける原動力、とてもパワフルで個人的なものになり得るフック。
ただ残念なポイントが二つだけある。一つは、終盤の丁寧な説明口調だ。いかにもハリウッド大作調の、何が何でも説明しなければ気が済まないあの感じ。
それからもう少し描き方を変えれば、少年の存在をもっとミステリアスなものに感じることが出来ただろう。ここが二つ目。
これさえ少し違った描き方をされていれば、自分にとって『ミツバチのささやき』にも似た、大傑作になったかもしれない。・・だからこそ残念に思う。
と言いつつ、毎回なんだかんだ気になる人ではある。やっぱり好きなのかも、スパイク・リー。

ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員が、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。男の名はヘクター。前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった。・・・
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コメント(16件)
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セントアンナの奇跡
『女神は<奇跡>を、 人に託した 運命より強く、 この子を守りたい』
コチラの「セントアンナの奇跡」は、第二次世界大戦下の1944年のフィレンツェと現代1983年のニューヨークを舞台に、実話を基にしたスパイク・リー監督による7/25公開のR-15指定の戦争サスペン….
とらねこさん、こんにちは、TB載せさせてもらいました。
スパイク・リー監督らしいテーマがあり、人種問題については
解りやすく描かれているのだが、実話から生まれた物語と言われると
違うだろとは言い難いが、2時間40分は正直長く感じた。
冒頭のNYの郵便局の窓口で担当の男にいきなり銃撃された男
それをニュースで伝える新聞をローマ?の街角で偶然手に入れ
驚愕して走り出す男、この男たちが何者なのか最後まで分らない
それにこの二つの出来事が偶然にしてはあまりに唐突過ぎないか。
この脚本はちょっと引っ張りすぎだろう、もう少し分りやすい流れで
2時間くらいにまとめてくれたら良かったと思うが。
映画 「セントアンナの奇跡」を見てきました。
{/m_0058/}映画 「セントアンナの奇跡」@TOHOシネマズ シャンテ
アメリカ・イタリア合作 監督:スパイク・リー(「マルコムX」監督)
出演:デレク・ルーク、他
セントアンナの奇跡 – goo 映画
写真はクリックすると大きくなります。
{/m_0167/}実話から生まれた…
tatsuさんへ
こんばんは!コメントありがとうございました。
そうですね、この物語、時間的に結構長いんですよね。最近だとバーダー・マインホフも2時間半とかなり長かった作品でした。
確かに編集の腕が少しいまいちかな、と思える部分もありましたね。
でも実際、自分はハリウッド映画のようないかにも上手にまとまった物語でないところ、がこの作品を気に入ったポイントだったりしました。(ラスト部分は説明しすぎで嫌でしたが。)
入り込むがゆえに編集することも出来なくなってしまったのかな、というところ。自分はこういうのは最近、特に気にならなかったり、逆に話が破綻していればいるほど、いよいよ前のめりになって喜んで鑑賞してしまう傾向にあります。
なので、もっともっと訳の分からない作品だったら良かったのに、なんて思います。
スパイク・リー監督作☆ 『セントアンナの奇跡 / MIRACLE AT ST. ANNA』 ☆
実話を元にした映画という事だけど、どこまでが実話なんだろう?
祖国アメリカでは人種差別を受け、戦地でも白人の上官に無理難題を言われていた黒人兵士達が、戦地イタリアで人種差別という概念すらない敵国の人達に出会い、“自由”と“安らぎ”を身を持って体感する。
….
「湖のほとりで」から立て続けにコメントかきます。
実は私この映画、見終わった瞬間「誰か、誰か私に説明してくださいーーーーー」って思った映画だったので、すごい映画だとは思ったんですが、感想としては、???って感じでした。
最初の期待と違っていたのが大きいかもです。
こちらもトラックバック送らせて頂きますね。
セントアンナの奇跡
イタリア映画じゃないんですが、“イタリアを舞台にした映画”ってことで先週の『アマルフィ-女神の報酬』に続き、スパイク・リー監督作品、『セントアンナの奇跡』を観にいってきました。
がっちゃんさんへ
こちらにもコメントありがとうございました〜♪
おや、こちらはちょっといまいちでしたか。
確かにこれは、頑張っていろいろ詰め込みすぎて、ちょっと風呂敷が広がりすぎてしまった感はあるんですよね。
ただ、この観点から第二次世界大戦を描いた作品は見当たらないですし、その辺を割りと評価してしまったところもあります。
セントアンナの奇跡
冒頭から響く一発の銃声。
一体何が起こったか?
郵便局の窓口。銃を突きつけ引き金を引く男。倒れ込む男。叫び声。
画面は、一転して戦場。
サスペンスかと思いきや、戦争映画。
あっという間に、物語の世界へ引き込まれてしまった。
いろいろなことを考えさせられました…
とらねこさん。こんにちは。
この映画、たくさんの要素が入り込んでいる作品であると思います。
それを、「上手く軸を通した」って感じです。
これだけ詰め込んで、普通は失敗するでしょう。
そうなってないところにすごさを感じます。
de-noryさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうですね。いろいろと詰め込んでありましたね。
この長さ、これだけのことを端折らずに描きたくなってしまったのかなあ、なんて思いました。
>終盤の丁寧な説明口調
「そうだよ、ぼくダヨ」
「おまえ、おまえだったのか!」
て『20世紀少年』かっつー(笑)
いやー、本作面白かったですよ!
冒頭、抜群のツカミからギア変える度にクラッチが噛みあわない感じ…だがむしろそれがイイ!
新聞をポトリと落とす為だけに女といちゃつくレグイザモとか
無駄にエロっぽい枢軸サリーとか
キ○ガイレイシストのカキ氷屋とか
この物語でそこにそんなに尺いるか?っつー当然のツッコミをモノともしない堂々たる語りっぷりが素晴らしい!でもスパイク・リー監督、実直ですよね…
>少年の存在をもっとミステリアスなものに
ヤツの出番じゃね?シャマ…
ごめんなさいごめんなさい
でもなぜかヤツが撮ったらどんなだろと頭よぎったんですよね、不謹慎にも
お前黒人ちゃうやろ!てんのに出演
あさって感3割増しの珍作になっちゃうんでしょーけど(笑)
みさま確かに!確かに!と乗り切ってしまいました!
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>抜群のツカミからギア変える度にクラッチが噛みあわない感じ…だがむしろそれがイイ!
わっははー
相変わらずいい表現されるなあ、みさまはw
「ここは、こういう風にやりたいんだよね」ってのが伝わるんですが、何せ凸凹感があるんですよね。
でも私も、むしろそれが好きじゃ
そうかー、そして最後は『20世紀少年』だったとな!?
>新聞をポトリと落とす為だけに女といちゃつくレグイザモとか
もーここ、やられましたよねー☆ジョン・レグイザモって、印象に残る脇役なんですがだけど、割と報われない役が多かったりしますので、この役みたいに“美味しいだけの役どころ”を演じていることに、むやみに笑顔が出てしまう私が居ました。イタリアでラブラブ三昧な毎日ですからね、羨ましいッス〜
本当、この長さ、ただでさえあれこれ描いて破綻気味であるのに、割と無駄なエピソードが長くなっちゃってますね。しかもそこに味があるんですよね!
私も何か嫌いになれない作品でした。
確かにミステリアスぶりに実直さは相容れなかったりするかもですが・・・いやー、本当ごめんなさい。シャマランだけは勘弁したってー。
セントアンナの奇跡
女神は<奇跡>を、
人に託した
原題 MIRACLE AT ST. ANNA
製作年度 2008年
上映時間 163分 映倫 R-15
原作・脚本 ジェームズ・マクブライド
監督 スパイク・リー
出演 デレク・ルーク/マイケル・イーリー/ラズ・アロンソ/オマー・ベンソン・ミラー/ピエルフランチェスコ…
mini review 10438「セントアンナの奇跡」★★★★★★★☆☆☆
第二次世界大戦中のイタリアで実際に起きた虐殺事件を基に、兵士の葛藤(かっとう)と心の交流をサスペンスタッチでつづる戦争ドラマ。『マルコムX』のスパイク・リー監督が同名の小説を映画化し、リアルな戦闘シーンだけではなく、人種を超えた人間の尊厳と希望を見事に描き…
「セントアンナの奇跡」
そうか、そうだったのか!少しずつベールがはがされて・・