湖のほとりで ▲110
’07年、イタリア
原題:La Ragazza Del Lago
監督・原案:アンドレア・モライヨーリ
製作:ニコラ・ジュリアーノ、フランチェスカ・チーマ
原作:カリン・フォッスム 『見知らぬ男の視線』
原案・脚本:サンドロ・ペトラーリア
撮影:ラミロ・チビタ
音楽:テオ・テアルド
美術:アレッサンドラ・ムーラ
編集:ジョジョ・フランキーニ
トニ・セルヴィッロ サンツィオ刑事
ヴァレリア・ゴリーノ キアラ・カナーリ
オメロ・アントヌッティ マリオの父
ファブリツィオ・ジフーニ コッラード・カナータ
ネッロ・マーシャ アルフレード
アンナ・ボナイウート サンツィオの妻
アレッシア・ピオヴァン アンナ
事件を調べるのに、人を理解するところから始める・・・という、極めてアナログなミステリが、何ともはや、いいのだこれが。大味のミステリはすっかり食傷し、飽きてしまったけれど、人間をきちんと描いたガッシリしたヒューマンドラマテイストに進む作りには、「こういうミステリが一番見たかった」と、すっかり共感を覚えてしまった。
湖の映像が本当に美しくて、不思議な感じのサスペンスの魅力にぴったりマッチして、リラックスして物語を楽しむことが出来た。
特に前半は謎が多いのだけれど、その謎なテイストがまた魅力的。
小さな田舎町で起きた殺人事件を、丁寧に追う古いタイプの刑事、美しい死体、複雑に絡み合った人間関係と、被害者に憧れる男たち・・・こうして並べてみると、思わずローラ・パーマーのあの事件を思い出してしまう。
ローラ・パーマーは、「左腕が後ろに曲がるのよ・・・」とカイル・マクラクラン演じるプッツン(死語)刑事の夢の中に出てきたっけ。こちらの映画では首が不自然に曲げられていたところ、ここをどう見るかの人間観察が良かった。
『ツイン・ピークス』ほどの不思議テイストはないけれども、何となく思い出してしまう。
サンツィオ刑事自身の娘や、妻の話、家族の話が丁寧に語られているところにも好感が持てる。
普段はコワモテな、能力のある刑事サンツィオの別の顔。
誰も完璧な人間は出てこないし、それぞれの家族にはそれぞれの秘密を抱え、問題を抱え、だが皆不恰好ならではで何とかやっていく・・・。
最後、謎解きの部分であっけなく犯人が分かってしまったところ、この辺をもう少し丁寧に描いて欲しかった気が、しなくもない。あれよあれよと他の刑事が待機に駆けつけるところも、あれれいつの間に、という感じが。
いずれにせよ、前評判の高さ、ナンニ・モレッティの助監督だったということ、そうした噂のせいもあってか、この映画、連日混んでいて凄かった。
ここの映画館、テアトル銀座はただでさえいつも混むんだけれど、映画館自体のファンも多く居そう。ここに来るといつも「渋谷の方がまだ混んでなくて見やすい」なんて思ってしまう。
でも、ここのスクリーンは結構好きだし、傾斜もあって見やすいからしょうがないかな。

北イタリアの小さな村の湖のほとりで、美しい少女アンナの死体が見つかる。殺人事件として捜査の陣頭指揮をとるベテラン警部のサンツィオは、争った跡がないことから、顔見知りでしかも彼女を深く愛していた者の犯行と推測する。アンナを溺愛していた父親、第一発見者のマリオとその父親、恋人のロベルト、ベビーシッターをしていた赤ん坊の両親らの証言から生前のアンナの実像に迫りつつ容疑者を絞り込んで行くのだった・・・
2009/08/02 | 映画, :サスペンス・ミステリ
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コメント(21件)
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「湖のほとりで」:旧葛西橋バス停付近の会話
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湖のほとりで
公式サイト。ノルウェイの作家Karin Fossum原作、原題:LA RAGAZZA DEL LAGO。アンドレア・モライヨーリ監督、トニー・セルヴィッロ、アレッシア・ビオヴァン、ヴァレリア・ゴリノ、オメロ・アントヌッティ、ファブリツィオ・ジフーニ、ネッロ・マーシャ。イタリア・アルプス….
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『湖のほとりで』 @銀座テアトルシネマ
北イタリアの小さな村にある湖のほとりで、美しい少女アンナの死体が発見される。村に越してきたばかりの刑事サンツィオは、元気だったアンナの様子が、ベビーシッターをしていたアンジェロの死以降変わったとの情報を耳にする。しかも、捜査を進めていく中で、彼は住民たち
湖のほとりで
その昔、銀座線通勤だった頃、銀座テアトルシネマは京橋からちょちょいと。
浅草線通勤に変わってからは最寄駅は宝町。
宝町の地下鉄出口を地上にひょっこり顔を出してからは、
首都高の高架を目印にホテル西洋の白い建物まで、野生の勘で辿りつく。
どうも、方向音痴で….
湖のほとりで
イタリアでは賞を総なめにしたのだそうで、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ライフ・イズ・ビューティフル』の名前を引き合いに「10年に一度の名作」と銘打たれた『湖のほとりで』観てきました。
★★★
ごめんなさい、どこら辺がそんなにまで持ち上げる程良かったのか…
私もこの映画を見て、他の方の感想を読みにググっているのですが、レサボアCat’sさんの感想が一番ピッタリ来ました。
ストーリーについてあれこれ説明しちゃうとどうしてもネタバレになりがちですが、それには触れず、でも的確な言葉で丁寧に感想が書かれてあって、他のオススメの映画も見たくなりました。
また遊びに参りますねぇ〜
あっトラックバック送らせていただきました。よろしければこちらにも送ってください。
湖のほとりで
いやーーー久々に映画づいてるがっちゃん。3週続けてレディースデーで映画を楽しみました。いっつも不思議に思うんですが、イタリア映画って日本で公開されるのって、イタリア映画フェスティバルとか、ヨーロッパ映画祭などの映画フェアを除くと、年に10本もないぐらいんな…
がっちゃんさんへ
初めまして、こんばんは!コメントありがとうございました。
がっちゃんさんもこの作品、気に入られたのですね!
これ、結構評価が分かれる作品だったようですので、好意的な評価が何より嬉しいです。
ミステリだと、ついつい内容を言ってしまいそうになるんですが、どこまで書いたらいいか分からないんですよね。
時々思わず勢いでネタバレを言ってしまうこともあるんですが。
こちらこそ、どうぞ、これからもよろしくお願いしますー☆
『湖のほとりで』
夜まで時間があったので、昼間に銀座テアトルシネマに行って、『湖のほとりで』を観賞してきました。
予告を観てから、観たい度が上がっていた作品ですが、公開からおよそ1ヶ月でやっと観賞です。
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北イタリアの小さな村を舞台に、そこで起きた殺…
以前から観たかった映画で、イタリア・アカデミー賞10部門受賞にひかれて・・・まだ銀座テアトルで上映中と聞いて行って来ました!
さすがに観客少数・・・でも、鑑賞後は充実感ありです。ただ前振りが長く、思わせぶりな設定なので途中眠気をこらえるのに苦労しました。
題名どおり湖の景色がきれいで・・・・・。
cinema_さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
おお、こちら、まだ銀座テアトルで上映してましたか。さすがに長い上映期間ということで、集客数は減っているかもしれませんが、この作品をcinema_61さんがご覧になったとのこと、嬉しく思います♪
これは、好き嫌いが分かれるようですが、私はとても好きでした。
少し眠く感じられましたか、でも充実感アリとのことでヨカッタヨカッタです^^*
ミステリー的というより、心理を丁寧に描くところがとても私は好きで・・・
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【湖のほとりで】
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真実は深く、
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「イタリアの小さな村にある湖のほとりで美しいアンナなの死体が見つかった。
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ブログを回ってみると、なんだか評判が悪くって。
レサボアCat’s様は、良い感想だったので、うれしかったです。
住民の聞き取りによるお話で、その方の話を、説明映像もなく、
注意深く聞くことになるので、ものすごい集中して見ましたよ。
静かに、事件の本質が、浮かびあがってくる本格ミステリーという
感じで、観応えありました。
私は、この作品の雰囲気が、すごく良かったです。
湖のほとりで
静かに、ミステリーを楽しみたい。
イタリア郊外の美しい風景に囲まれる小さな街。閑静な住宅が立ち並ぶ、一見、日本の街並と変わわらな…
kinoさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
kinoさんも、こちらの作品に対して、高評価だったのですね!
ええ、私もこの作品、とっても気に入りました。
おっしゃる通り、状況説明的な台詞があまり入らず、心理描写がなされていましたね。
雰囲気がとっても良くて、静かなのに水面下で静かに波が立っている感じがしますね。
私の中では、こうした映画の評価は軒並み高くなってしまいます。
台詞でなく、映像で語るタイプの映画が大好きです!
kinoさん、よかったらまた、いらしてくださいませ♪
「湖のほとりで」
絵的にとても美しい作品でした
湖のほとりで
= 『湖のほとりで』 (2007) =
北イタリアの小さな村の湖のほとりで、美しい少女アンナの死体が見つかる。
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