サンシャイン・クリーニング ▲105
’08年、アメリカ
原題:Sunshine Cleaning
監督:クリスティン・ジェフズ
製作:ピーター・サラフ、マーク・タートルトーブ、ジェブ・ブロディ、グレン・ウィリアムソン
脚本:ミーガン・ホリー
撮影:ジョン・トゥーン
美術:ジョー・ギャリティ
編集:ヘザー・パーソンズ
エイミー・アダムス ローズ
エミリー・ブラント ノラ
アラン・アーキン ジョー
ジェイソン・スペヴァック オスカー
スティーブ・ザーン マック
メアリー・リン・ライスカブ リン
ケヴィン・チャップマン カール
『リトル・ミス・サンシャイン』の制作チーム・・ということで、安易に面白そうかな、なんて思ってしまった私。とは言え、見た後で調べたところ、
『リトル・ミス〜』の監督はジョナサン・デイトン、バレリー・ファリス、脚本:マイケル・アーント、撮影:ティム・サーステッド。この辺がカブっているわけでは全くないんですね。ただ同じ名前が出ているのは制作の数名で、ピーター・サラフ、マーク・タートルトーブ、ジェブ・ブロディの名は見かけたのでした(IMdbより)。
『リトル・ミス・サンシャイン』は大好きな映画だった。もう夢中になってしまって。
’06年の「一目惚れ映画」と言ったら、この作品!だったな。評判もとっても良くて嬉しかった作品。インディーズ映画にも、こういういい映画があるんだゾ、って普段ハリウッド映画ばかり見ている人にも分かってもらえるかな、って間口が広がりそうな気がした。その『リトル・ミス〜』と比べてしまったら、正直落ちるかな、という印象もあるけれど。上記にも書いたように、製作陣にカブる人が数名いるだけで、同じ監督でも脚本でも全くないのだし、期待しすぎる方が間違いよね。
『リトル・ミス〜』と共通点があるところと言ったら、まずこちらの作品にも、“サンシャイン”という名が使われているところ、だけでなく。
一人ひとりではダメダメな負け犬人生を送る人たちが、家族で寄り添って生きていく物語。そこには葛藤もあり、その中で家族間での心のちょっとしたスレ違いも乗り越えていく。
本当はお互いの生き方を認めているわけではない姉妹同士が、それでも、家族ならではの優しさから、一緒に仕事をしたりする姿に、何よりほっこりした気持ちになる。
そして途中、自分たち自身の母親の死を乗り越えていくところが、『おくりびと』状態だったりして。『おくりびと』でも、主人公が偶然選んだ、現在の職業というものが、実はいつしか自分の父親の存在のトラウマと対峙する形になり、父親を送り出す心構えに自ら近づいていき、自己の生長、職業意識も含め、共に大きく成長していく。
しかし自分としては、“負け犬人生をテーマにしました”、という辺りに、少しの恣意性と狙いを感じてしまった。
『リトル・ミス〜』で描かれた“変人ではあるけれど、個性的で憎めない人たち”という愛すべきキャラクターたちや、『ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた』で感じたような、主人公たちに対する上から目線の決してない、曇りのない優しさ・・・それらと比べると、なんとなくしっくり来るものを感じなかった。
私が少し厳しい意見の持ち主だからなのだろうか?
「負け犬を描くことを前提にして、一本作ろうか、このテーマでもう一つぐらい当たりそうだぞ」そんな風に思って製作に臨んだ姿が、ありありと思い描けてしまうのだった。
この先ネタバレ:::::::
そして、葛藤の描き方も、とても中途半端に思えたところが、自分にとってはマイナスポイントが大きかった。
たとえばローズが地元の同級生のベビーシャワーに行くため、虚勢を張るシーンがある。おそらくローズが不倫して私生児を産んだことは、小さな町であれば、地元の同級生には分かっていたかもしれない。でも、そうした描写に少しも突っ込むことはなく、またローズがマックとの長年の関係に別れを告げるシーンも、きっと長い間苦しんだ彼女なりの思いがあるだろうに、単なるキッカケでとても簡単に別れてしまう。そんなことであれば、なぜそれだけの長い期間離れられなかったのか、と思ってしまう。
また、ノラの母親に対する思いの描き方も、電車に向かってガーっと笑うシーンがあるけれど、幼い頃に母の死の現場を、見てしまったという凄惨な記憶があったら、そして自分たちが事故現場のクリーニングを始めたのであれば、その葛藤はもう少し違った形でもっと痛みがあったはずではないか・・・とも思ったり。
要するに、自分には、小綺麗にまとめるために、あってもおかしくないもっと突っ込んだ描写を、全て削り取った作品に思えてしまったのだ。上手に出来た作品を作ろうとせんがために。
とても、物足りない作品だった。

ローズは30代半ばのシングルマザー。ハウスクリーニングの仕事をしながら8歳の息子オスカーを育てている。妹ノラにオスカーを預けて不動産業の資格取得講座に出かけることもしばしばだが、実際に向かうのは元恋人で不倫相手の刑事マックと落ち合うモーテルだ。ある日、事件現場を清掃する仕事で大金が稼げると教えられたローズは、嫌がるノラを無理矢理誘って犯罪や自殺の現場の清掃業を見様見まねで開始する。・・・
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コメント(18件)
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映画「サンシャイン・クリーニング」
原題:Sunshine Cleaning
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それなのにハッピーエンドな家族再生の物語なんだよね、情緒不安定でアルバイトも長…
『サンシャイン・クリーニング』
□作品オフィシャルサイト 「サンシャイン・クリーニング」□監督 クリスティン・ジェフズ □脚本 ミーガン・ホリー □キャスト エイミー・アダムス、エミリー・ブラント、アラン・アーキン、ジェイソン・スペヴァック、スティーヴ・ザーン、メアリー・…
「サンシャイン・クリーニング」:西葛西六丁目バス停付近の会話
{/hiyo_en2/}ここにもきれいな公園があるのね。
{/kaeru_en4/}でも、こういう公園の掃除って、びんとか缶とかいろんな落し物があってたいへんだろうなあ。
{/hiyo_en2/}もっと、たいへんな掃除があるわよ。
{/kaeru_en4/}なに?
{/hiyo_en2/}殺人とか自殺とか、事件現場の掃…
サンシャイン・クリーニング
まだ人生を諦めていない人へ。まだ人生は頑張れる。まだ諦めるのは早い。そう温かく教えてくれる愛すべき映画でした。このプロデューサーたちの前作『リトル・ミス・サンシャイン』ほどの感動や笑いはありませんでしたが、それでも見終わった後に涙で心が洗われたような清々….
『リトル・ミス・サンシャイン』や『ウェイトレス』でもそうでしたが、主人公の人生は傍から見れば成功しているとは思えないのに、なぜか映画を見ていると心が温かくなるんですよね。
そんな温かさがこの映画にも確実にありましたよ。
サンシャイン・クリーニング
サンシャイン・クリーニング 272本目 2009-32
上映時間 1時間32分
監督 クリスティン・ジェフズ
出演 エイミー・アダムス エミリー・ブラント アラン・アーキン ジェイソン・スペバック スティーブ・ザーン
会場 TOHOシネマズ シャンテ
評価 6点(10点…
にゃむばななさんへ
こちらにもコメントありがとうございます。
>主人公の人生は傍から見れば成功しているとは思えないのに
「成功」が「幸福」とイコールではないですもんね。
サンシャイン・クリーニング
一緒にいれば、悲しみも洗い流せる
この際、身も心もクリーニング♪
公開2日目に鑑賞してきました。3連休ということもあってなのか?それと上映回数も1日に2度しかないのもあるのでしょう。2回の上映とも満席で立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。そういえばあの「デ…
「サンシャインクリーニング」
それでも日々は続いて行く。平たく言ってしまえば、「リトルミスサンシャイン」に続く負け犬応援歌第2弾。ただ前作に比べると、A.ブレスリンのダンスやA.アーキンの不良じいさんという飛び道具が抜けて、リアルでシビアな物語に仕上がっている。高校チアリーディング部の…
過去の自分を断ち切る勇気。『サンシャイン・クリーニング』
不倫を続けるシングルマザーの姉と仕事の長続きしない妹が人生の再生をかけて清掃ビジネスを始める物語です。
映画『サンシャイン・クリーニング』を観たよ。
「心温まる作品なんだろうな」とは納得したが、記憶には残らない。
『サンシャイン・クリーニング』
“SUNSHINE CLEANING”
2008年・アメリカ・92分
…
サンシャイン・クリーニング
不動産業を始める事を夢見て、ハウスクリーニングの仕事に精を出すシングルマザーのローズ。しかし一向にお金が貯まらない事に業を煮やしたローズは、不倫相手の刑事からの紹介で、事件現場専門のクリーニング業を妹のノラと始める。はじめは悲惨な仕事に戸惑う二人だった….
こんにちは。
『リトル・ミス・サンシャイン』や、本作と同じく他人から白い目で見られる仕事を描いた『おくりびと』のような作品を期待して観に行ったんですが、どちらとも違う内容になっていましたね。
『おくりびと』がそうですが、嫌なイメージや、他人の死がすぐそばにある仕事を題材にしたからこそ、コメディのような明るい方向に持っていくことで物語に広がりが出てくると思います。そういうのを期待していたので、普通のヒューマンドラマの域を出なかったのはちょっと残念でしたね。
>小綺麗にまとめるために、あってもおかしくないもっと突っ込んだ描写を、全て削り取った作品
それは大いにありますね。事件現場のクリーニングという点以外、特にオリジナリティがあるわけではなく、その点を深く掘り下げることもなく。どうにも中途半端な作品でした。主演の二人は頑張ってたんけどね。
えめきんさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、ついつい『リトル・ミス〜』や『おくりびと』と比べてしまいますね。
私は『リトル・ミス〜』や『おくりびと』の方が完成度は高いなあ、なんて思ってしまったんですよね。
どうもいまいち物足りなくて。
>事件現場のクリーニングという点以外、特にオリジナリティがあるわけではなく、その点を深く掘り下げることもなく
普通に見ている分には面白くないわけじゃないんですが、予想通りの範囲内を超えるわけでは、全くないんですよね。
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サンシャイン・クリーニング
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