蟹工船 ▲97
監督・脚本:SABU
プロデューサー:宇田川寧、豆岡良亮、田辺圭吾
原作:小林多喜二
撮影:小松高志
音楽:森敬
美術:磯見俊裕、三ツ松けいこ
編集:坂東直哉
松田龍平 新庄
西島秀俊 浅川監督
高良健吾 根本
新井浩文 塩田
柄本時生 清水
木下隆行(TKO) 久米
木本武宏(TKO) 八木
三浦誠巳 小堀
皆川猿時 雑夫長
山本浩司 山路
谷村美月 ミヨ子
’08年、流行語大賞にもなった、『蟹工船』。何故、大正時代末期から昭和初期に流行したプロレタリア文学の傑作が、突然流行語になったのだろう。・・・と思いつつ見てきた。
青空文庫でチラと読んだだけで、途中でその読みずらさに諦め、原作もロクに読まずに臨んだ不勉強な私には、今回の映画化はとても面白く感じた。
変に現代的になっていて、メッセージも伝わらない、骨太さのない作品になっていたら、これを今映画化する必要もないところ。テンポよく作られていて、共感できる見易さもあり、かつ、テーマもきちんと伝わってくる良作だった。私はすっかり嬉しくなった。
蟹工船という船の中は、一つの閉ざされた空間。そこには支配者と
被支配者しかないヒエラルキー。鬱屈さを感じるこの“三角”の船の中で、絶望の空気が満ち溢れていく様を、十分理解可能なものとして映し出すことに成功していた。
SABU監督は、男だけのそのムンムンする空気感を、ライブ感覚で現代の私達に伝えることで、作品を見事にリアリティある世界に作り上げた。
浅川監督がこの事業を行うのは「国のため」と信じきっている。だが一方で、新庄や根本始め、雇用者たちにとっては、単に一人の金持ちの私服を肥やしている、という極端に不公平なヒエラルキーの姿が浮かび上がるだけ。
こうした名目を雇用者誰もが信じていないところ、そうしたプロパガンダに対して少しも洗脳されてないところが面白く感じた。労働者の労働環境に注意を払わないような企業は、おそらく労働者と雇用者間での意識の違いが大きいのかもしれない。
松田龍平の圧倒的な存在感を感じる。役者としての魅力に満ちた素質はいうまでもなく。彼が次に何の台詞を言うのか、ワクワクするような“楽しさ”に溢れた演技人であるということ。
普通の人の役をやる時の彼は、特に何とも思わないのだけれど、妙な存在感を醸し出す人の役をやる時は、本領発揮する。そんなところが大好きだ!

船上で蟹の缶詰を加工する蟹工船。そこでは出稼ぎ労働者たちが劣悪な環境におかれ、安い賃金で酷使されていた。監督・浅川は労働者を人間扱いせず、非道のかぎりを尽くしたが、労働者たちは過酷な労働に疲弊し、絶望の中、ただ言われるがままに働いた。しかし、労働者の一人・新庄がそんな環境に慣れてしまった労働者たちに「自分たちが変わらなければ何も変わらない!」と提起をし、労働者をまとめ支配者・浅川監督に立ち向かう・・・
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コメント(11件)
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蟹工船 (2009)
公式サイト。小林多喜二原作、SABU監督。松田龍平、西島秀俊、高良健吾、新井浩文、柄本時生、木下隆行、三浦誠己、木本武宏、竹財輝之助、利重剛、矢島健一。1953年にも映画化されており、新機軸でリメイク。
こんにちは!お久しぶりです。それで、「この映画は労働者と雇用者の話しだから観に行く?と言ってたんですよ。(実は私も原作は見事に挫折してしまいまして。主人は読んでいません)
いやぁ、もうご覧になられたんですね!!
この映画気になってました。
というのもですね。うちの主人が会社の労働組合の係をしていまして
とらねこさんの感想を読んでやっぱり観に行こうかなぁと思っているところです。
ところで、とらねこさんにお勧めしていただいたフランス映画を借りに行ったのに…
会社の先輩が海外ドラマにハマっているということで思わず「デクスター〜警察官は殺人鬼」というのを借りてしまいました。とらねこさんもいかがですか?って私はまだ観ていないのですが。血がたくさん出て来るっぽいです…
鉄犬子さんへ
こんばんは〜♪うわーっ、鉄犬子さん、ちょっとお久しぶりですー!
お元気でしたか?私も鉄犬子さんはお元気かなあ、なんて思っていましたよ〜。
ところで、この映画気になられていたのですね♪
そうですか、ダンナさんが労働組合の係をされているんですね!
これを見たら何て言うでしょう??w見られたら感想が聞きたいです。
私はなかなか面白くみられましたよ〜。頑張ってる邦画はいいですね!
で、フランス映画まだご覧になられてなかったのですねwあはは、いつでもいいんですが(笑)
『デクスター〜』ですか、海外ドラマでも面白いのかな?w
まだご自分でご覧になってないのをススメられてしまった(笑)
私はなかなか海外ドラマは、根気がなくて続かないんですよね・・。困ったことです・・。
蟹工船 意外にもまともな映画だった(←失礼か!?)
【 38 -8-】 思いも掛けないある方からの突然の頂いた鑑賞券(ありがとうございました、昨日、見てきました)。
プロレタリア文学の代表作とされている小林多喜二の原作「蟹工船」、大昔、労働組合の先輩に無理矢理貸し付けられて読まされたがそのこと自体を覚えていないか…
うわー、嬉しゅうございますが。CSi科学捜査班の次にハマりそうです。死体ダメな私でも観れました。そしてまた感想を書きに来ますね。
とらねこさんから「お元気かなー」と思われるなんて〜〜
いや、ブログは楽しみに読ませていただいてます。
ところで、「デクスター〜警察官は殺人鬼」(15歳未満禁止です)
昨日、観ました。一言で面白いとは言いにくいです。奥が深いというか。でも犯人が気になるので観てしまいそうです。実は私も海外ドラマは根気が無くて続かない派です
返しに行った時に、とらねこさんお勧めのフランス映画を借ります
あ、そうそう「蟹工船」主人に言いました。
組合員の執行部だったら松田龍平側について思い切り感情移入して観るだろうなぁとのことで。連れて行きたいと思います。(私はSABU監督がTKOを選んだとこがまた凄い人選したなぁと思いましたが。違和感なかったですか?)
蟹工船
叱咤激励ムービー。
鉄犬子さんへ
わーい!楽しんで読んでくれてありがとうございます♪
鉄犬子さんみたいに、ブログをやっていない方からコメントをいただくのって、本当にブログをやっていて嬉しいことの一つなんですー!
ちゃんと鉄犬子さんが来てくれたことも覚えているし、言ってくれたことも覚えているし。そう言えばどうしたかな?なんて思ってたんです〜。
で、デクスターは、犯人が気になるタイプのドラマなんですね!?れれ?“警察官は殺人鬼”って、犯人が最初から警察官じゃないんですか!?(爆)
CSIはお好きだったのですね!うーん、私の友人だったらすごくCSIに詳しかったんですが、・・マイアミだとかニューヨークだとか(笑)鉄犬子さんとお話が出来なくて残念
でも次はフランス映画ですね!どっちが先なんでしょう〜。とりあえず楽しみにしていますね!
あ、蟹工船ご覧になられますか♪それもまた感想待ってますね!
そうなんですよ、TKOは驚きますよね!でも、意外に良かったですよ-。特に木下の方なんか、立派に馴染んでいて好感が持てました!
「蟹工船(2009)」 イメージせよ、行動せよ
昨年からワーキング・プアや派遣切りなどの社会的問題の影響によって、ベストセラーと
蟹工船2009
反撃!!!!ーーーーーー!
上映最終日これまた滑り込みーーーーー。ようやく「蟹工船」鑑賞しました。今何故に?「蟹工船」がブレイクなのだろ?とよく考えたら、社会が抱える深刻な失業事情が、この作品を呼び起こしたわけだった。考えるともう何年も前からそんなに選ぶ…
蟹工船
●ストーリー●北海道の先、カムチャッカ沖でカニを捕り、船上で加工缶詰を作る蟹工船の博光丸。そこで働く労働者は、監督・浅川(西島秀俊)の暴力と酷使に耐えながら、低賃金で重労働についていていた。そんなある日、労働者たちは一斉蜂起するが、力及ばなかった。しかし…
蟹工船
「蟹工船」 感想
たまには日本映画のレビューもかかないと
今回観たのは「蟹工船」
小林多喜二の有名な小説を映画化した作品です。
…