π ▲91
’97年、アメリカ
原題:π
監督・脚本:ダーレン・アロノフスキー
製作:エリック・ワトソン
撮影:マシュー・リバティック
美術:マシュー・マラッフィー
音楽:クリント・マンセル
ショーン・ガレット マックス(マキシミリアン)・コーヘン
マーク・マーゴリス ソル・ローブソン
ベン・シェンクマン レニー
スティーブ・パールマン ラビ・コーエン
パメラ・ハート マーシー・ドーソン
サミア・ショアイブ デビ
’98年サンダンス映画祭最優秀監督作品、’99年インディペンデント・スピリット初脚本賞であるこの作品、当時なぜ自分がそれほどハマらなかったんだっけ、などと思いながら再見してみた。
自分がこの作品にそれほど感銘を受けず、監督の名前を覚えることもなかったのは(当時の私はサンダンス映画祭受賞作品が大好きだったのに)、「何となく『イレイザーヘッド』みたいな作品が作りたいんだろうなあ」なんて私、ちょっと斜に構えてしまったんだ。それと、同時期に公開されていた『CUBE』の後に見てしまったためだった様子。当時ハマりにハマった『CUBE』の後に見てしまったので、何となく二番煎じっぽい“数学モノ”と勝手に決めつけ、にしては『CUBE』には全然手も足も出ないよなあ、なんて。ヴィンチェンゾ・ナタリの名前はしっかり覚えたのに、ダーレン・アロノフスキーの名前は『レクイエム・フォー・ドリーム』まで覚えることのなかったワタクシ。
今見ると、すごく塚本晋也監督の『鉄男』にソックリだなんて思ったりもした。音楽の使い方も、塚本作品の良いところを抽出したみたいだったし。とは言え、自分のモノにしている感じもあって、この人なりの画の迫力もやっぱり感じる。何より、この荒唐無稽な物語で、これだけまとまりを見せているところが凄い。
頭痛の描写なんか、本当にこっちまで頭が痛くなってくるぐらい。
映像も、カルトっぽくてキッチュで、とっても私好み!
コンピュータでバグで虫が出て、・・・と来たら普通『裸のランチ』を思い出すでしょう。でも、この映画ではクローネンバーグ的に、というかバロウズ的にはならずに、鉄男に行くんですよね(笑)喫茶店での隣り合わせの人と話すうちに別世界を垣間見せる辺りなんかは、カフカっぽくてワクワク。
カルトっぽいエネルギーと不条理性を持たせるタイプの映像は、私だけでなく、きっと他にも大好きな人がいるに違いない。
「全てのエネルギーの形というものは“渦”である。」それはいつしか自分の中で常識になっていたのだけれど、そもそもこの映画を見た後に、そう思い至ったのだ!若い頃の自分は。忘れていてごめんよー。
遺伝子の形も渦だし、ホーキンスの宇宙論も、宇宙が均等な形である完全な円ではなくて、その形を破り宇宙が膨張することが出来たのも、卵の形が崩れて、・・・つまり全部この世界のエネルギーは渦を巻いていて螺旋なんだ!なんていう自分の“常識”、こういう考えを持ったのもこの映画の影響だったのでした。
ちなみに、ここでマックスが探す数字は216なんだけれど、実はその数字は218らしい。最初のバグも、数学でユダヤ教を読み解こうとしているレニーに手渡される数字も、本当は218なのだとか。
216をマックスが探そうとしたこと自体が、間違い。6×6×6=216なのであって、その666は“Number of the beast”、私たちも良く知ってる、あの悪魔の数なのでした。これはちなみに、当時は私は気づかなかったんだ。IMdbで知ったことだったよ。
でもさ、悪魔の数字、それを聞いて思わず「オオオオーッ」と嬉しくなると思わない!?そこな道行く『オーメン』好きの方!(って、誰に向かって話しているんだか・・・)
つまりさ、マックスの辿った道に悪魔の罠が仕掛けられていたんだ。
やっぱり、よく出来ている!
ちなみに、ダーレン・アロノフスキーに興味を持った人にはチェックして欲しい事項があるんだ。大学時代の教授・ソル役のマーク・マゴリスは、なんと、今のところ全てのダーレン・アロノフスキー監督作品に出演してるんだ。
『レクイエム・フォー・ドリーム』ではラヴォウィッツ氏、『ファウンテン』ではアリヴィア神父、『レスラー』ではレニー役。
何はさておき、マーク・マーゴリスの名前はチェックだよー。
2009/06/21 | 映画, :カルト・アバンギャルド
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コメント(2件)
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とらねこさ〜ん、またまたちょっぴりごぶさたです!
これ、わたしも観ました。・・・なんだか難解で、よくわかりませんでした(笑)ただただ、だんだんひどくなる一方の頭痛のシーンが印象的で。こちらまで頭が痛くなってきましたよ〜。
たしかモノクロ映画でしたっけ??音楽がシャレていたような記憶があります。よくわかってはいないのですが、サンダンス映画祭系の映画って、不思議なものが多いような気がします(笑)
psお仕事いかがですか??ご無理なさらないでくださいね!
JoJoさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おお、JoJoさん、とってもお久しぶりですー!お元気でいらっしゃいますでしょうか?
ウン確かに、ちょっぴり難解さを身にまとった作品ではありました。ただ、自分はこの作品は、理論的に分かるように作られていると思ったりもしました。
頭が痛くなってくるあの感じ、ガシガシ映像化されていましたねえ。偏執狂的になって自分を改造しようとするメカニカルなところは、『鉄男』みたいだったんですよ。そして音楽の使われ方も同じく鉄男チックでした。良かったら見てみてください♪
サンダンス映画祭受賞作品は、実は以前の自分は信奉者でした(笑)今はそんなことないんですけど。
仕事のこと、ご心配してくださりありがとうございますー。ゆっくりお話したいですねえ!機会があれば是非。