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サガン 悲しみよこんにちは ▲88

サガン’08年、フランス
原題:Sagan
監督:ディアーヌ・キュリス
脚本:ディアーヌ・キュリス、マルティンヌ・モリコニ、クレール・ルマレシャル
撮影:ミシェル・アブラモビッチ
音楽:アルマンド・アマール
美術:マキシム・ルビエール
編集:シルビー・ガドゥメール

シルヴィー・テステュー  フランソワーズ・サガン
ピエール・パルマード  ジャック
ジャンヌ・バリバール  ペギー
ドゥニ・ポダリテス  ガイ
アリエル・ドンバール  アストリッド
リヨネル・アベランスキ  ベルナル
マルゴ・アバスカル  フロランス

去年公開の映画『エンジェル』の予告を見た時に、「この人、サガンみたいだなあ」と思ったのを覚えている。
若くして突然の作家としての大成功。私にとってのサガンは、『悲しみよこんにちは』一作で“天下を取った”というイメージ。

サガンを読んだ、などと言っても私はこのデビュー作『悲しみよこんにちは』のみで、読み終わった私がこれについて(例によって、例のごとく)アツく語っていたら、「でも一発屋なんだよね」と、大学生の頃の当時の彼氏に一言でブッた切られたのを覚えている。私はそれでちょっと傷ついたけれど、でも彼の方がサガンをよく読んでいたから、なんとなく「そんなもんかな」と思った。

このサガンという女性に、共感したという人は少ないかもしれない、と想像する。オシャレにも化粧にも無頓着。似合ってるのか似合ってないのか、豹柄のコートの下は男性みたいなシャツとパンツ。
「お金は嫌い」と言いながら豪遊し、賭博や酒、ドラッグに溺れていく。恋も行き当たりばったりみたいな、衝動的なものに思えた。
でも私にとってはすごく面白い女性。ちょっと男性みたいな人だ。文才はすごくあるけれど、それ以外のことにビックリするほど無頓着。体当たり、だけど不器用な人。
サガンを演じたシルヴィー・テステューのその演技は、シャイそうな佇まいが印象深い。ほとんど化粧っけもなく、はっきり目線を合わせない。髪をなでつけるように触るしぐさ・・・

彼女の愛、孤独・・・。心惹かれずにいられない。豪遊する、酔いどれのシャイな人。寂しがり屋で、誰でもいいから周りに人を置いておくのを好んだ。
なんだか“ロックンローラー”な人だなあ。「書くことしかできない」と言うように、それ以外のことに異常に無頓着であるが故に、狡さやしたたかさを感じないんだ。
ピュアで自由人。風変わりな人。時代の寵児。日本円にして何百億という金を稼いでおきながら、自己破産に陥った晩年。金の話を徹底的に嫌ったが故に、金をドンドン使ってしまう。金のために堕落してしまったのか、それともしていないのかすら分からない・・・。

彼女の周りの取り巻き達は、彼女にたかって遊んでいたかもしれないけれど、調べてみれば、雑誌の編集であったり、作家であったり、それぞれに仕事をちゃんと持っていたようだ。
私には正直、彼女の生き方が羨ましくもあった。私も大金持ちだったら、お気に入りの友人をどんどん連れてきて、一緒に大豪邸に住んで・・・。きっと楽しいだろうなあ。心ゆくまでパーティ三昧の毎日が過ごしたい(笑)

とても心に残った女性の一生だった。他の作品も、手にしてみよう。

ストーリー・・・
デビュー作「悲しみよ こんにちは」が世界的ベストセラーとなり、わずか18歳で有り余る富と名声を手に入れた作家、フランソワーズ・サガン。しかし、作品以上に注目されたのは、サガン本人の人生だった。ゴシップ誌を賑わすセレブとのパーティ三昧。生死をさまよったスポーツカーの事故。「破滅するのは私の自由」と発言して騒動になったドラッグでの有罪判決。勝っても負けても桁外れの金額だったギャンブル・・・

サガン —悲しみよこんにちは—@映画生活

 

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コメント(11件)

  1. とらねこさん、ボンジュール。
    フランスものとらねこさんにはやや優先順位低いのかなと思う中、さすがの文学少女、これはご覧いただき嬉しく。
    でも、そういう私は自分が「悲しみよこんにちは」を読んだ時の感想をよく覚えていない有り様…。
    学生とらねこさんの熱いサガン論きいてみたかったです〜♪
    彼女はそう、無頓着な感じでガツガツしてないところが好感もてました。
    その性格が災いしたこともあるのでしょうけどね。

  2. 『サガン -悲しみよ こんにちは-』 SAGAN

    アンニュイが好き。
    18歳で書いた処女小説「悲しみよ こんにちは」が大ベストセラーで時代の寵児となり、自動車事故、二度の離婚、多額の借金、ドラッグ中毒…と69歳で亡くなるまで話題は尽きなかった作家フランソワーズ・サガンの人生。サガンといえば、まず「悲しみよ…

  3. かえるさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    これすっごく良かったですよねー!久しぶりにグッと心を掴まれたフランス映画でした。そうですね、おっしゃるとおり、私はフランス映画で、しかもナチュラルテイストな感じのモノは、私の得意とするところじゃなかったりしますー。ゴメンナサイ。オリヴィエ・アサイヤスは『CLEAN』は楽しみですが、『夏の庭』はDVDでいいかな、って飛ばしてしまいました。でも、かえるさんがそんなに気に入られたなら、私も見てみたくなりましたー。
    サガンにはすごく惹かれましたよね。私の性格もちょうどあんな風な人かもしれない、なんて思ってしまいました。私もお金持ちだったらちょうどあんな風になりそうです(笑)あの偏った性格に興味を惹かれます。
    何より『悲しみよ こんにちは』が素晴らしくって!引用が出てきたシーンでは思わずシビれました。
    かえるさんは『悲しみよ こんにちは』それほどでもなかったんですか。そう言えば以前もカポーティの『冷血』で意見が分かれたことがありましたっけ。もしかしたら、かえるさんとは本の趣味が合わないのかも・・・。
    では他にはフランス文学は何がお好きですか?私はちなみにこの映画にも出てきたレイモン・ラディゲ、オノレ・ド・バルザック辺りが大好きです。特にバルザックは全部読みました!あとはモリエール、イヨネスコ、デュマとか。イプセンはまあまあ、モーパッサンは嫌い、スタンダールとヴォーヴォワールは難しくて。あ、ユゴーとサン・テグジュペリを忘れちゃいけませんね!かえるさんに「文学少女」などと言われたのでちょっと調子に乗りました。

  4. こんばんはー。
     この映画は観ていないのですが…。私も「哀しみよこんにちは」は読みました。理由は…ええ、「新潮文庫の100冊」に入っていたからで、薄いしクリアするのが楽かなーと。そういう動機付けで読んだ本の中では、結構面白かったのは覚えているのですが、細部は全く覚えていませんデス。やはりダメですね、そういう読み方は…。orz
     そうそう、1Q84ですが、さっそく買いました。今晩から(モンテ・クリスト伯を一時中断して)読もうかなと思っております。

  5. マサルさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    マサルさんもデビュー作はお読みになりましたか。いやー、やはり前に見たものは、細部までしっかりと覚えていないこともありますよね。でも、映画と一緒で、二度・三度と見たりするのは稀ですからね。
    そのためにもやっぱりブログに書いておくと忘れませんし(笑)もはや備忘録のブログww
    お、早速『1Q84』買われましたか!素早い!あれだけ話に上ると、すごく読みたくなってしまいましたよね。
    私も早いとこ読みたいのですが・・・うう、物を所有するのが嫌いな私は、「ハードカバーを買わない」ことを前提な本棚になっているものですから・・
    図書館に予約しておきまーす。

  6. サガンー悲しみよ こんにちはー

    18歳で鮮烈なデビューを果たし、数々のスキャンダルに彩られた伝説的な作家フランソア・サガン。その愛と孤独とはーーーー。
    「ノウイング」の前に、京都シネマにて鑑賞しました。「ディア・ドクター」は連日満員状態です。京都ではミニシアターのみの上映ということで、…

  7. サガン-悲しみよこんにちは-■サガンの人生を手際よく

    もし、ジーン・セバーグが生きていれば、晩年のサガンにキャスティングされたのではなかろうか?ふとそんなことを考えながらこの映画を見ていた。実は、これくらいのインパクトとか洒落っ気が欲しいところだ。サガンの墓碑銘には「人生と作品を手際よく片付けた」とあるが…

  8. 「サガンー悲しみよこんにちわー」

    HP
    こちら↓ 文庫版「悲しみよこんにちわ」の扉画像 
    サガニスト(こんな言葉あるっけ?)としては
    観客層はどんな?にも興味があ??.

  9. サガン 悲しみよ こんにちは

     『愛も、名声も、贅沢も─ ぜんぶ手に入れて、失って。』
     コチラの「サガン 悲しみよ こんにちは」は、そのタイトルの通りわずか18歳のデビュー作「悲しみよ こんにちは」で一躍人気作家となり、スキャンダラスな生涯を送ったとされるフランソワーズ・サガン(シルヴィ…

  10. 「サガン ー悲しみよ こんにちは-」

    フランソワーズ・サガン。こんな人だったんですねぇ〜

  11. mini review 10486「サガン -悲しみよ こんにちは-」★★★★★★☆☆☆☆

    18歳で文壇に華々しいデビューを飾り、生涯を通して自由人であった小説家の人生を追う人間ドラマ。破天荒な言動で世間を騒がせつつも、実は孤独で繊細(せんさい)な彼女の真の姿に迫る。まるでサガンの生き写しのような主人公を演じるのは『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜…




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