硫黄島からの手紙 ▲83
’06年、アメリカ映画
原題:Letters from Iwo Jima
監督:クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ、ポール・ハギス
製作総指揮:ポール・ハギス
製作:スティーブン・スピルバーグ、ロバート・ローレンツ、クリント・イーストウッド
原作:栗林忠道
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド
渡辺謙 栗林中将
二宮和也 西郷
伊原剛志 バロン西
加瀬亮 清水
中村獅童 伊藤
裕木奈江 花子
ジョイシネマさよならフェスティバルにて鑑賞。
『父親たちの星条旗』とこちらで、硫黄島二部作。こちらを映画館で見る機会を得たので、セットで鑑賞。
『父親たち〜』の方が、一枚の写真を元に、そのストーリーと、表と裏を描いた見事な構成をしていた作品だとすれば、こちらは硫黄島というその閉ざされた空間の内部、歴史に踏み込んでいく作品。日本兵の信じたものの絶対でない姿、無力な戦いの空しさが描かれていて、こちらも冷徹な目線が貫かれている。しかし、日本映画でないのに、どこか本当の“日本映画らしさ”、真摯な目線も感じすらした。
日本兵が「天皇万歳」を叫びながら、理不尽な自害を強要される様は、恐ろしいし、正直見ていて辛い、悔しくなる。メガンテ作戦というか、「ばくだんいわ」みたいに次々に日本兵が「くだけちった」。どうして最後まで戦おうとしないのだろう、と思ってしまう。死ぬまで敵兵に対し、撃ち方を止めない、ということであれば分かる。なのに何故無駄死にするんだろう、と悲しくなってしまう。摺鉢山を手放すことは天皇の意に反するとばかりに、栗林中将に従わずに、自ら無鉄砲な死を選んでゆくのだから。
正直自分はあちらの方が好き。こちらは日本人であるが故に、素直に見れなかった。
とは言え、画の美しさや、物語運びの上手さは素晴らしかった。悲しいかな、日本映画よりずっと、キャスティングが良かっただろうと思う。
特に、ジャニーズの二宮和也がここまで素晴らしく、この作品にしっくり来るなんて、誰が見抜けただろう。そしてバロン西役の伊原剛志の存在感!
加瀬亮も恐ろしいほど演技派に見える。食い入るような表情が凄かった。
ただ、二宮和也に関して、文句がないわけではない。「その当時の日本人というには、もっと個性を持った、少し世を斜めに見た若者」、ということだったのだと思うけれど、時々“今風の若者”にしか見えないところもあった。
栗林中将が、杖を鉄砲に見立てて海辺で稽古をする場面で、西郷が「見ろよ」と他の兵士に声をかけるけれど、そういうシーンは日本人だったら絶対作らないだろうと思う。いくらなんでも、一番下の下士官が、その当時の時代に、まして戦時中にそんな口をきくわけはない。
バロン西が手当てをした兵士の話は、見ている間は「本当かな?」なんて思ったのだけれど、事実だったと聞いて驚いた。
とは言え、全体的には本当に素晴らしい作品。

太平洋戦争最大の激戦地、硫黄島。米国にとっては日本本土空襲の拠点。日本にとっての本土防衛の拠点。陸上戦力、日本軍約2万人に対して、米軍は支援部隊含め約16万人。「この上陸作戦は5日間で簡単にかたがつく」と考えていた米国の予想をはるかに超える36日間という長きにわたった戦闘。その戦闘を指揮し、「アメリカを最も苦しめ、それ故にアメリカから最も尊敬された男」、硫黄島総指揮官・栗林忠道中将だった・・・
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コメント(20件)
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硫黄島からの手紙
『アメリカのきもち、日本のきもち、同じきもち―』
コチラの「硫黄島からの手紙」は、「父親たちの星条旗」に続く「硫黄島」2部作の第2弾、日本側の視点で硫黄島の戦いを描いた作品です。
決して届く事のない手紙をこの島で戦った日本兵たちが、家族に宛てて書き….
「硫黄島からの手紙」クリント・イーストウッド
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2006アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ
脚本:アイリス・ヤマシタ
出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛…
こんばんは〜
二宮くんについての感想はだいたい同じような感じです。くわしくはワタシの記事を(と誘導する(笑))
日本だったらむしろこういう作品にはジャニーズ系がばしばしキャスティングされちゃうんじゃないかなあ??総出演状態
もっと他の感覚の人も観たいよ〜と思ってしまう日本の芸能界。(タブーですかねこれ?)
映画『硫黄島からの手紙』(お薦め度★★★)
監督、クリント=イーストウッド。脚本、アイリス=ヤマシタ。原作、栗林忠道『「玉砕
硫黄島からの手紙
評価:★★★★☆切々と響く、硫黄島への鎮魂歌。硫黄島からの手紙 [Blu-ray]
あらすじ:第2次世界大戦時の最も悲劇的な戦いと言われる&ldq…
映画「硫黄島からの手紙」
原題:Red Sun, Black Sand (Letters From Iwo Jima)
硫黄島に眠っていた、その手紙は61年ぶりに発見された、地中にあった硫黄島からの手紙、それは輸送爆撃機「一式陸攻」によって配達されるはずだった・・
時は1944年6月、指揮官として陸軍中将の栗林忠道…
manimaniさんへぐふふ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ンッ、どうやらmaniー氏は、ご自分の好きな監督の時のみ、颯爽と現れるのですね
いやいや、二宮君に関しては、私はおおむね絶賛なんです。
むしろ、脚本がいけないんだと思います。
個人主義に関する考え方そのものが、当時の日本との違いがあるんだろうと想像します。
で、タブーは気にしないで大丈夫です。ウチのブログでは(笑)
むしろウチのブログでのタブーは、三池監督の悪口です(キッパリ)
でもイーストウッドは、「俺が選んだんだ」って言ってたらしいですよ。ちゃんと映画を自分で見て、自分で決めたのだ、と。
イーストウッドはさすがに見る目があるなと思います!
「硫黄島からの手紙」
なんだかんだで3週間ぶりの映画でした。知らないうちに、ようやく「海賊版撲滅キャンペーン」の映像も替わりました。で、「硫黄島からの手紙」です。「父親たちの星条旗」の対になる作品ということで、淡々としたアプローチは同じなのでしょうけど、玉砕した敗戦国側から…
たびたびどうも
>どうやらmaniー氏は、ご自分の好きな監督の時のみ、颯爽と現れるのですね
いやいや、基本は自分が観てる作品のときに現れるのですよ。たぶん。
あとは、観たいなあと思っているヤツをご覧になっているときとか?(ウラヤマシッ)
二宮くんの違和感は脚本のせいもあるかもしれませんが、その脚本をあのような人間像にしたのは彼ですからね。彼も周りもあのような人間像にしようという意思があったのでしょうけどね。
少なくとも恥ずかしくない存在感があったことはすごいことですね。ニーノ。
こういう映画こそ日本が作らなければダメだったと思えるほど、素晴らしい映画でしたよ。
二宮クンに関しては彼が演じた西郷そのものが狂言回しの役割ですから、あれはあれでよかったと思います。
でも確かに言われてみれば現代の若者って感じがするところもありましたね。
硫黄島からの手紙
日本映画界では作れない、しかし日本が作らなければならなかった映画であり、クリント・イーストウッド監督を始めとするアメリカ人がこの映画を作ったことに感服してしまった素晴らしい作品でした。
改めて硫黄島の戦いのことを何も知らない自分を恥じるとともに、現在この….
manimaniさんへありがとーゴザイマスっ。
あ、了解です
で、二宮くん。んー、イーストウッド、スピルバーグ、ポール・ハギスというソーソーたるメンバーの作った作品にあって、主演である彼の演技が、監督その他の意に適わないものかどうか?私は演出のせいと考えました。二宮くんのせいにするのはかわいそうだろーと。
元々、西郷の役柄は“その場にそぐわない、元々はパン屋であり、国民としての責務を全うすべく、戦争に借り出されてきた人物”と描かれているのでしょうね。
彼は自覚的か無自覚的か、とにかく行かねばならないから来たのであり、この時代でなければ本来の彼は人間らしく一生を終えることが出来た。。
でも、それは他の人も同様で、人間らしい人物として一人ひとりが描かれているんですよね、栗林中将にしても。
私はやはり、日本人であるが故に、どこか受け入れがたいものを感じてしまいました。mani-氏おっしゃるように、私はプロトタイプの日本人を頭に思い描いているのでしょう。
もしかしたら、今村昌平監督が撮っていたら自分は納得していたかもしれない、それは分かりません。
にゃむばななさんへ
こちらにもコメントありがとうございます♪
>こういう映画こそ日本が作らなければダメだったと思えるほど、素晴らしい映画
本当にそうですよね!こういう映画こそ、日本で作って欲しかったと思ってしまいました。
日本人の監督にこれを任せる人がいなかったから、自分が仕方なくメガホンを取った、なんてイーストウッドが言ってましたね。
少し残念な気もします。
ええそうですね、二宮くんはすごく頑張っていたと思いますよ!
硫黄島からの手紙
硫黄島からの手紙’06:米
◆監督:クリント・イーストウッド「父親たちの星条旗」「ミリオンダラー・ベイビー」◆出演:渡辺謙 、二宮和也 、伊原剛志 、加瀬亮 、松崎悠希 、中村獅童
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『硫黄島からの手紙』
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■監督 クリント・イーストウッド■脚本 アイリス・ヤマシタ ■キャスト 渡辺 謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬 亮、中村獅童
□オフィシャルサイト 『硫黄島からの手紙』
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