下妻物語 ▲79
’04年、日本
製作:石田雄治、平野隆、小椋悟
監督・脚本:中島哲也
原作:嶽本野ばら
撮影:阿藤正一
美術:桑島十和子
音楽:菅野よう子
深田恭子 竜ヶ崎桃子
土屋アンナ 白百合イチゴ
樹木希林 祖母
阿部サダヲ “一角獣”リュージ
岡田義徳 Baby,the Stars Shine Bright店長
宮迫博之 父
篠原涼子 母
小池栄子 亜樹美
矢沢心 ミコ
本田博太郎 ヤクザ親分
『パコと魔法の絵本』がなかなか楽しかった中島哲也監督のデビュー作。『嫌われ松子の一生』を映画館で見る機会を得たので、予習ということでこちらも鑑賞。
自分にとってはこういう、“いかにも漫画っぽいテイストの映画”は一言で言えば「クドカン以降の邦画」ということで、一括りにしてた。それほど映画館で積極的に見に行きたいタイプではなかったのだけれど、『パコ〜』が意外にも楽しかったのね。後々まで忘れられない傑作、というわけではないにしろ、“スナック菓子を食べるような気分”で見れる邦画というものもイイもんだな、と思うわけです。
やっぱりこの物語の基本になっている、深キョン演じるロリータ全開の桃子と、土屋アンナ演じるヤンキー・イチゴの対比がすっごく楽しくて。
きっと自分も、ロリータかヤンキーかのどちらかに興味があったら、絶対とっくに見てたと思うんです。あと、茨城県民だったなら(笑)
女の子にとって、服がすごく大事な時期というのは本当にあるし、それは実は、単にファッションじゃない。生き方であり、ポリシーだったりするんですよね。
自分にとって“なりたい自分”に近づくのに、ファッションで体現する、っていうのは、自分の神話・幻想を自分で叶えることだったりする。
先ほど“神話・幻想”と言ったけれど、この映画で面白かったのは、そうしたことが物語中に、効果的に表現できていること。
レディース軍・舗爾威帝劉(ポニーテール)の伝説のカリスマ“妃魅姑(ヒミコ)”の話が、不良たちが共有していた“神話”であるなら、伝説の刺繍師“閻魔”の話は、イチゴ独自の神話。
一方、たった一人で人と群れずに生きていたはずの、実は心がドライでクールな、ロリータの桃子は、誰のことも信用することが出来ず、何にも心を動かされることのない人間。その彼女が、少しづつ変わっていき、イチゴを助けに入るラストで、彼女自身がデタラメの神話を騙る(かたる)、カタルシス。
何ものにも動かされなかった彼女自身が、自分の殻から破る一歩を踏み出すその姿に、爽快な感動が拡がった。
ところで、『ヤッターマン』で深田恭子にドロンジョをキャスティングした人は、ここでの彼女のコスプレ女王っぷりを見てのことに違いなし
ラストでブチ切れる様もなかなか素晴らしく、すっかり見直してしまった。
それにしても自分は、つくづく土屋アンナが好きみたいだ。
彼女のハスキーボイスなヤンキーっぷりは本当ステキ。『さくらん』では、ちっとも花魁の結い髪が似合ってなかったけど、ヤンキー役はめっちゃめちゃ似合ってる!

ココロはいつもおフランス! とばかりに、お気楽かつ享楽的な18世紀のロココ時代を信奉する主人公・桃子は、自分にとっておもしろいと思える生き方を幼い頃から貫いてきた。人間は所詮ひとりと達観し、「貸したものは戻ってこない。だからほんとに大切なものは貸さない」を信条にしていたのが、熱い血潮をたぎらせ突っ走る「借りたものは返す主義」のイチゴに出会い、クールで辛辣な観察者というポジションからの転換を迫られる・・・
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コメント(8件)
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下妻物語
や〜っと観ましたヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ 「天使」を映画館で観て、ますます深キョンかわい〜っとなったのですが、コチラもいいですねっ!ロリィタ・ファッションに身を包んだ深キョンもかわい〜っ(*・・*)ポッ
ちなみにロリータじゃなくってロリィタと表記したのは、グ…
下妻物語
「下妻物語」
昨夜TV放映されました、これ。これはひさびさにおもろかった。期待度5%、満足度100%、この落差が大きければ大きいほど幸せでございます。
私はフカキョンが好きではありませんし、野バラはキモイし、アンナは知らないし、全く興味はなかったのですが…
映画「下妻物語」
去年公開されたときには、映画館の前にロリータファッションの子が続々と集まってたし、どんな映画だろうと思いつつ観に行くことはなかったけど、想像と違う感動があったね。どちらかというとロリよりもヤンキー・レディースの方の物語がメインになってる気はするけど、竜ヶ…
『下妻物語』
脚本・監督、中島哲也。原作、嶽本 野ばら(小学館刊「下妻物語」より)。2004年
わわ!懐かしい映画!面白かったですねー。観たのがどんなにか昔なのに覚えている映画ってありますよね。この映画は凄く印象的!当時にしては結構新鮮でしたよね?「パコ〜」は観たいんですがまだ観てません
土屋アンナは可愛いですよね〜。どうしても漫画のNANAと重ねてしまう、、、。とても人間とは思えないって雰囲気ないですか?
アヤさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうだったんですね、当時は新鮮だったんですね★
自分は、思いっきりスルーしていました。
『嫌われ松子〜』がすごく良かったので、『パコ』は吹き飛んでしまいました。
でも、『パコ』もなかなか面白かったんですよ♪
土屋アンナ、確かにNANAっぽいですよね〜!本当、八頭身で、実物見たらすっごい綺麗でしたよ!映画で見るよりずっとかわいかったです。NANA役、中島美嘉も似合ってるけど、アンナも似合いそうですよね〜♪
私ね、『NANA』は原作が好きなので、返って映画が見れないんですよ〜(笑)
実物観たんですか〜?わぁーいいなぁー。
私もNANA好きです!最近はちょっと、うーんって感じですけど。最近のNANAについて語り合いたいです!笑
NANAの映画は、、、どっちも最悪でしたー。はは、、。
アヤさんへ
アハハ、最近のNANA!いやー本当、長くなっていくにつれて、ちょっとだけ読んでる方の気持ちが失速してしまいますね・・・。
いろいろ出来事がゴチャゴチャしすぎなんですよねー。確かにイイ男とイイ女で、ちょうどいい年齢の人間たちが集まれば、それこそいろいろ恋愛関係があるんだろうけど、・・・みんな仲間内ばっかで恋愛するなよー。もっと他でやれよー。なんて思ってしまいます。
あとねー、やっぱり女の子の友達を大事にする気持ち。自分も友情を大事にするタイプだったから、分からんでもないんですが、その友情を、恋心みたいな感じで描かれるところがちょっと気持ち悪いです。。。
でも、私まだ19巻か20巻までしか読んでない、ってことに気づきました!これはどっかで続きを読みに行かなければ!漫画喫茶だなー。
アハ、映画は最悪でしたか。私は松田龍平が大好きなんですが、危うく彼の文句を言ってしまいそうで、怖くて見れません・・・。