喜劇 深夜族 ▲78
’69年、日本
製作:瀬島光雄
監督:渡辺祐介
脚本:宮川一郎、森崎東
撮影:荒野諒一
美術:佐藤公信
音楽:木下忠司
伴淳三郎 重盛平三
緑魔子 幸子
高松しげお 久一
財津一郎 菊池
西村晃 桜井
桜井浩子 美智子
都家かつ江 おみね
藤岡琢也 鬼頭
早瀬久美 ミヨ子
こちらは、『大悪党』と一緒にシネマヴェーラで見たものだったのだけれど、全然期待していなかったこちらに、大感激!
タイトルだけ聞いたら、何のことやら?という感じ。おそらくカップリングでなければ、見なかったかもしれない。でも、その期待していなかったカップリング作品が、本当に面白いことがこれまでも何度もあった。さすがはシネマヴェーラ!と、私はすごく満足して、おなかいっぱい、幸せいっぱいな気分でおうちに帰ることが出来るのでした。
一言で言えば、一昔前の日本情緒が溢れる、すごく粋な作品。
“喜劇”とバーンと題名に付けているだけあって、主人公の伴淳三郎が、いかにも昭和のコメディアンなのだろうな、という貫禄バッチリなのね。私はこの方を全然知らなかったのだけれど、なんだか“分かってる雰囲気”がそこかしこにあって。頑固な喜劇俳優、という感じが、見るからに漂っていて、その江戸っ子な口のききようには、思わず人をノセる雰囲気に溢れているんだ。
職業はポン引きなんだけれど、“ポンビキ”と言ってはいけないらしい。“ポンヒキ”と発音しないとダメだ、なんて言うのだけれど、何とポン引きが“伝統的な、芸ある職業”なんだと言う。ええっ、まさか!なんて思うのだけれど、この人は「人と人とを出会わせる、愛のキューピッド」みたいに言う。男と女がうまいこと話がまとまって、その部屋の灯りが消えると、「おめでとう」なんてニンマリ笑って立ち去るものだから、微笑ましいやらで、なぜかちっとも憎めない。
伴淳三郎は、滅びようとする最後のポン引きで、娘の緑魔子は、実はコールガールだった。父娘揃って相手を騙していて、てんやわんやアレコレ・・・という、“深夜族”のお話。
緑魔子の方も、あっけらかんとしていて、舌たらずな喋り方が何ともかわいらしいイメージ。コールガールではあるけれど、惨めな感じも暗い感じも一切せず。お互い何も知らない同士が父娘そろってカキ氷やそうめんを食べていたり、父親の方は娘をオクテで恋人の一人も出来ないと思っていたり・・
ここにさらにもう一人の存在が出てくる辺りが、また面白い。
ヤクザにクビにされたしょうもないチンピラの久一(高松しげお)が、伴淳に弟子入りし、その伝統あるポン引き芸を伝授してもらおうとする!
弟子入りのための登竜門として、作家の菊池(財津一郎)に美智子(桜井浩子)を引き合わせるのだけれど、このエピソードが本当に楽しい。財津一郎がまたすごくいい脇役ぶり。この人の若い頃、まるで劇団ひとりみたいな顔してる。“失神作家”、って名前からして楽しくてしょうがない。美智子役の桜井浩子も、とっても綺麗な人。緑魔子より正統派美人かも。ワンポイントになったし、目の保養になった。
弟子入りしたこの高松しげお、この人の顔も、まるで今田耕司にソックリ!いかにも演技達者で、面白そうな顔してるんだ。コメディをやらせたらピッタリ来そう!なんて、顔で判断できる人だから、余計にうれしくなってくる。
でも、個人的に一番嬉しかったのは西村公!西村晃の登場で、「やったああーーー!」と喜んでしまった。これまで見た古い邦画の中でも、私がとても大好きになってしまった俳優さん。『怪談せむし男』、『黒蜥蜴』、『修羅雪姫』、『黒薔薇の館』、『忍法忠臣蔵』、『眠れる美女(’68 日本)』、『でんきくらげ』。
こんなにたくさん見ていて、全て印象深い役柄なのに、コメディまでイケるのね!すごい役者さんだなあ。私は、古い邦画を見るようになるまでは、水戸黄門の印象しかなかったよ。(だからついつい“西村公”って言いたくなっちゃうんだけど。)
これからもこの人の作品なら、追って行きたいな!
クライマックスの辺りで、今となっては観光地として超有名な、あの浅草の仲見世通りを、スリップ一つで、枕を持って、追いかけっこする緑魔子!
うわ、すごい!すごい!こりゃあぁワクワク。
最後には、へとへとになって、花やしきへ。
この当時の浅草、花やしきがまさか見れるなんて私は思わなかった。素敵なお土産までついて来るなんて、思わず感激しまくり〜。浅草の劇場なんかも、映るもんだから本
2009/05/26 | 映画, :コメディ・ラブコメ等
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コメント(6件)
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かなりお気に召したようで、なによりです。
西村晃!!
そう、シネマヴェーラは恒例の異形・妄執でもかなり西村晃をフィーチュアしようとするので、ここは一つ「西村晃特集」を期待したいですね。
とらねこさんが上げた以外で私のお気にいりを思いつくままに上げさせてもらうと
「悪の階段」「吸血髑髏船」いきなり死んじゃう「怪談蛇女」、緑魔子伝説からは、勝新とのコンビが楽しい「御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判」・・・
まだまだ怪演ぶりを探求したいですね。
だれも指摘していないようなので100%ダジャレ番長のわたくしが、この映画『喜劇深夜族』と昨年アカデミー賞を受賞しましたコーエン作『ノー・カントリー』との、まさかの共通点を血眼で探してみたのですが、見つかりませんでした。。。
これはもう知ってる? 去年、ふざけてバカにしたら、マジギレされてどんびきした、サム・ライミ監督『死霊のはらわた』が、な、なんとミュージカル化!! 主演は、な、なんと、諸星和己(カーくん)!!
光ゲンジ・ミーツ・サムライミ!!
ローラースケートで死霊から、逃げるのかもしれません。。。
http://www.evildead.jp/index.html
imaponさんへ賛成賛成!とってもうれしいです!チェックしておきますね〜♪ま、いいケド。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ハイ〜!とっても気に入ってしまいました。楽しかったぁ。良く出来ていますよね!
>ここは一つ「西村晃特集」を期待したいですね
それ、イイ〜
本当ですよね!いやまさに!
おっしゃるとおり、私“妄執・異形”見ているだけで、自然と西村晃をたくさん見ることになっちゃったんです!(爆)
『怪談せむし男』は、妄執・異形の人々の中でも特にプッシュされている作品でしたよね(笑)
imaponさんの西村晃オススメ作品、教えてくれてありがとうございます
ヴェーラでやるといいなあ。
ところでimaponさん、TB間違えられてますよ・・『怪談せむし男』にTBがいっちゃってます
ダジャレ番長天下御免=ガムリンさんへ私『死霊のはらわた』が大好きなの一番好きなホラーなのよね。ごめんね、ガムリン。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
うわっ、なんですか、これは!諸星和己が電ノコ持ってますね!
そしてミュージカルなんですね!へ〜。そして『死霊のはらわた』なんですね、コレ?
これだけ見ると『悪魔のいけにえ』みたいだけど。どうせだったら、『悪魔のいけにえ』にすればいいのにね?
ローラースケートで、殺しまくるんじゃない?リズミカルに。『ガラスの十代』とか歌っちゃったりして!(爆)
>ふざけてバカにしたら、マジギレされてどんびきした(〜中略〜)『死霊のはらわた』
あはは、あん時はごめんなさいね
>ノーカントリー
って、なんでキミはノーカントリーにこだわるの?
もーいいって・・・
あっ!
御供の粗忽。失礼いたしました。
imaponさんへ
イエイエ、どういたまして〜