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チェイサー ▲76

チェイサー’08年、韓国
原題:The Chaser 追撃者
監督・脚本:ナ・ホンジン
エグゼクティブプロデューサー:チョン・ウィソク、キム・ソニョン、チョン・スング
プロデューサー:キム・スジン、ユン・インボム
撮影:イ・ソンジェ
音楽:キム・ジュンソク、チェ・ヨンナク
美術:イ・ミンボク
編集:キム・ソンミン

キム・ユンソク  ジュンホ
ハ・ジョンウ  ヨンミン
ソ・ヨンヒ  ミジン

これは

すごい

見た後すぐに思ったのは、「日本映画って、もう、アっという間に韓国映画に抜かされてない?」という一言。
“韓流映画”だの何だのと言って「日本映画の昔のドラマを思い出す懐かしい、ベタっとしたテイスト」のものが多いな、とばかり思って油断している間に(もちろん、キム・ギドクは抜かして)、こんなにスゴイ映画がやって来るなんて、正直自分は戦々恐々とした気分になってしまいました。いやもちろんそれは、私がロクに韓国映画を知らないからそう思うだけであって、本当は見るべき面白い韓国映画をまだ見ていないのかもしれない。そう思わせるぐらいの鬼迫が、この映画にはあった。

すごいのは、その“抜いた表現”と、“然るべきところを丁寧に描く表現”、これが狙って作られている、としか思えないこと。
だから余計怖いし、テンポもキチンと計算され尽くされているように思える。もう、「こんなに完璧な映画ってまずないような気がする」と思ってしまった。もう、本気で怖かったよ。

まず、“然るべきところを丁寧に描く表現”、これが本当にちゃんと出来ているからこそ、面白く、そして怖く感じるのね。
たとえば、捕らえられた女性;ミジンが後ろ手・後ろ足を縛られて、その格好で頭に釘と金づちで打ち付けられそうになるシーン。ここは最初の残虐シーンに当たるので、ここをアッサリ描かれてしまっていたら、もう逆に観客の気持ちが麻痺してしまって、これ以上何かが起こっても、もはや驚きも新鮮に感じられないし、確かに怖いけれど、何かを超えてしまうので、おそらくそれほどすごいとは思えなくなってしまったかもしれない。
それだけの重要なシーンを、丁寧に描いている。「アッサリ殺されるからこそ、逆にこの手の映画が怖く思えないんだ」ってことを、私は実感した。そうしたことを本当によく分かっていてやっているから、ただ金づちを振り上げただけで、それはそれは恐ろしく思えるし、こういう簡単なシーンで本当に怖く思えるなんて、ともう初めから惹きつけられた。

普通だったら、すぐに展開するべきところで、この映画ではなんか犯人がトチったり、追いかけるポン引きの方もしくじってみたり、ボンクラ君が鍵穴に鍵を一つ一つ入れてみるシーンでは、鍵穴がビンゴだったのに、いったん帰ろうとさえしたり、見ている方は思わず笑ってしまうようなところもある。
何より、“こちらが期待することを簡単に実現してくれない”という、もうこれですよ、これ!タメというか、呼吸というか、肝心なところで肝心なことダケを描くからこそ、映画をつまらなくしてしまっているんだ・・・。簡単に見ている方を楽にしてくれないんですよ、この人。そうか。そうだったのか。などと納得しながら、手に汗思いっきり握りながら、すっかりノメりこんでしまった。

一方、“抜いた表現”というのは、普通、たとえばハリウッドだったらここをこう描く、という部分が意外にもなかったりする。たとえば、何故そこまでたかが一介のポン引きであるジュンホが、デリヘル嬢をここまで必死こいて救おうとするのか、・・・それは元警官で、今は辞めてしまった立場で、・・・ふむふむ。そして以前の職場だった警察と一緒のシーンが描かれる。そこには以前の知り合いも居て、・・・だったら、この元警官・現ポン引きの過去あった事件だとか、トラウマだとか描かれるのだろう、せめて一言ぐらいの説明はあるだろう、と思って見ているんだけれど、そこはバッサリ描かれていなかったりする。
そのくせ、墓場で掘り起こし作業が進められているところで、大勢の警官を前にノミ一つで逃げようとしたり、墓場でワーワー追っかけっこがあって、ここは思わず陳腐で前代未聞で、「ジャッキーじゃねえし」などとちょっと笑ってしまったんだけど。
つまりなんだか、ハリウッド主義へのアンチテーゼ、みたいなことすらちょっと思ってしまったんですよね。サイコ・サスペンスをハリウッドの構造主義から思いっきり抜けたところで描こうとしているんじゃないか。逸脱というか、脱構築というか。

執拗に、そして際限なく描かれる“そのものズバリ”な追撃シーン、これをずっと見ているうちに、見ているこちらまでグルグル虚無感が回ってくるように感じられた。負のスパイラルを、身を持って感じてしまった。

もう脱帽しました。

ストーリー・・・
街では連続猟奇殺人事件が起こっている頃、元刑事でデリヘル嬢の斡旋を生業としているジュンホは、彼の元から行方をくらませた2人の女の行方を探っていた。その手がかりを握る男を見つけるも、探りを入れさせたデリヘル嬢ミジンも失踪。だが偶然ジュンホは疑惑の人物ヨンミンを見つけ、捕獲する。すると警察でヨンミンはとんでもない告白を始めた。「女たちは自分が殺した。そして最後の女はまだ生きている」と・・・

チェイサー@映画生活

 

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コメント(40件)

  1. チェイサー/キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ

    ここ最近の韓国映画の中ではかなり期待値の高い作品です。予告編の内容以上に詳しい作品情報は得ないようにしていたんですが、あの予告編だけでもこれは何か凄そうという予感でゾクゾクしてきちゃいました。既にリメイク権を得ているというレオ君はさすがです。ホントなら初….

  2. こんにちわ。
    ホントに「スゴイ!」の言葉が何よりも先に発せられる映画ですよね。最初から最後まで呼吸するのを忘れてしまいそうな緊迫感の充満し続ける映画でした。
    私の友人にも映画大好きだけど韓国映画は苦手という方がいて、その人とは韓国映画の話題は普段ほとんどしないのですが、この映画は自信を持ってオススメしちゃいました。
    来週にでももう一度観ておきたいなと思ってるところです。

  3. 序盤で犯人のヨンミンがカナヅチで自分の手を傷めてしまうシーンがありましたが、ああいう人間臭いところがありながら、犯しているのは人間とは思えない残虐なこと。
    この対比もヨンミンの恐ろしさを強調する見事な演出でしたよ。

  4. 『チェイサー』

    とんでもない韓国映画を見た。久しぶりにそう思える傑作でした。実在の事件をベースにしたとはいえ、あの『殺人の追憶』を凌ぐ緊迫感に終始圧倒されるこの面白さは必見。レオナルド・ディカプリオがリメイク権を獲得しているそうですが、正直韓国映画好きとしてはリメイク版….

  5. とらねこさんも高評価ですねー☆
    多少脚色はあるでしょうが実話というところで
    リアルにこわいですょね!

  6. チェイサー /追撃者 THE CHASER

    {/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/}
    ←please click
    てっきりカーチェイスの映画かと思って今月の観たい映画からはハズしちゃってた{/ase/}
    チェイサーっ名前の車もあるし?
    まさかこんなサスペンス映画だったとは。…

  7. かのんさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    いやー、緊張感がここまで持続するなんて、本当にすごいですよね!あらゆる箇所で、「こりゃすごい!」とつぶやきそうになりましたよ。
    かのんさんとお友達の立場は、私と逆だったのですね。
    いや、私は「こりゃ、韓国映画を今後はもっと見なければ」なんて決心して、つい昨日も『シークレットサンシャイン』を見まして、すっかり感動してしまいましたよ〜!
    これもう一度見たい、という気持ちすっごい分かります。飲みながら、この映画のどこが面白かったか、私が興奮気味に語ってたら、私の友達は「も一回見る!」と話も終わらないうちに言ってました(爆)

  8. にゃむばななさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    いやー、かなづちを自分の手に打ちつけちゃった時は、「手元狂いすぎだろー!」と言いそうになってしまったんですが、実際自分も大工仕事とかしたら絶対自分の手を叩いてしまいそうです・・。

  9. migさんへ
    こちらにもコメントありがとうございます〜♪
    そうですね、実話を元にした、と聞いてより恐ろしくなりましたよね。
    普通だったら、「事実をベースに描いた物語です」という一言がつきますよね、そういう“普通だったらやること”をスッ飛ばしてしまうんですよね、この作品て。かなりの硬派ですよ、これ。

  10. こんにちはー
    TB&コメントありがとうございます。
    いやぁ、本当に凄い作品でしたよねぇぇぇ
    そうそう、凄まじい迫力を感じました。
    そんじょそこらのB級ホラーよりも断然に怖くて戦慄しまくりだったのですが。(白いブリーフと水槽が今でも鮮明に焼きついて・・・)
    こんな風に映画に引き込まれてしまうのって、快感です。
    前評判が高いこともあって、ついつい楽しみにし過ぎちゃったのですが。
    期待し過ぎということはなく、期待以上に映画に引っ張られる結果となりました。
    映画を余り観ない人には「何がおススメですか?」と聞かれてもおススメしにくいテイストなんすけどねー

  11. チェイサー

    「チェイサー」THE CHASER/製作:2008年、韓国 125分 R-15指

  12. となひょうさんへ
    こんばんは!コメントありがとうございました。
    もう大満足でした。
    私は前評判の良さとか、実はほとんど気にしない人でして。韓国映画好きの友達が、今度実家の岩手に帰ってしまうことになってしまいまして、その前にしばらくたくさん一緒に映画を見ておこうって、見ることにしたんですー。悲しい。おかげでいい思い出に・・・なったかな?ハハハ、忘れない思い出にはなりましたよ(笑)
    ハ・ジョンウについてだけは、私の方が詳しかったです。『絶対の愛』と『ブレス』に出てる人だったので。ただ、名前覚えてなくて、「あの殺人鬼」とか「あの白ブリーフ」って呼んでましたけど(笑)
    確かにこれ、人にオススメするのはちょっと難しいですよね。暴力シーンがかなり怖かったですからね。

  13. 初監督作品で、これだけの物を作れたのが、すごいですよね。

  14. レビュー:チェイサー

    [クライムサスペンス][実話が元][猟期的][実写][洋画(韓国)][R15][シネスコサイズ]
    憤慨度:★★★★☆
    猟期的:★★★★☆
    社会批判:★★★★☆
    出演:
    キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ
    元刑事のデリヘル経営者の元から2人の女性が失踪を遂げ….

  15. “ハ・ジョンウ” に関する話題

    “ハ・ジョンウ” について書かれたエントリを検索してみました。
    レザボアCATs:チェイサー ▲76 – livedoor Blog(ブログ)’08年、韓国 原題:The Chaser 追撃者 監督・脚本:ナ・ホンジン エグゼクティブプロデ

  16. まりっぺさんへ
    こんばんは!コメントありがとうございました。
    もう今後の作品も楽しみですよね!
    「この監督の作品、全部見る!」と言って、家に帰って調べたら、デビュー作ですた・・・。

  17. ♪ドン、ドン、ドン、鈍器〜、鈍器〜ホーテー♪
    カナヅチの間違った使い方を世に啓蒙し続ける韓流クライムものにまたスゴイ傑作が加わりましたネ!
    もう、おまいらコワルスキー爺さんに正しい工具の使い方習ってきてー!て言いたくなる程の戦慄の間違えっぷりに震えました…
    浴室で頭押さえつける際の「ゴリッグリュッ!」感が出色でねぇ…
    映画観ながら延髄あたりにさぶいぼ立ちまくり!
    ココ確かに、かなりこってりトンコツ風味でしたネ
    反面、殺害後の死体=モノ扱いでカメラワークがまぁクールなこと…
    神父を尋ねてきた老夫婦
    雑貨屋のオバちゃん
    を、ただソコにころがってるモノみたくあっさり塩味で流すあたりがたまりません
    ん?水草…と思いきや…ギャッ!な水槽も大仰な演出せずパンで一舐めのみの潔さですからねー
    白ブリーフ=グンカジ=川俣軍司カジュアル
    ある意味殺人鬼の正装ですから

  18. みさま
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ドン、ドン、ドン、鈍器〜、鈍器〜ホーテー
    ほ〜にゃらら、ほにゃらら、激安天国ぅ〜
    あっ、思わず歌っちゃったじゃないですか!
    >もう、おまいらコワルスキー爺さんに正しい工具の使い方習ってきてー!
    アハハハハ!うん、確かに工具が出てきた時点でちょっと頭をヨギりましたネ。夢中になって記事書いてて、余計な文は入れることができませんでした。いつも見事なまでに拾ってくれてありがとうございます(笑)
    本当、サブイボ勃ちまくりでしたね〜!いやいや、素晴らしすぎ。
    おっしゃる通り、“ゴロン”てな感じに死体を投げ捨てる感じもオッソロシー!
    >水槽も大仰な演出せずパンで一舐めのみの潔さ
    そうなんですよね〜。こういうシラっとした冷たさがまたク-ルこの上なくて。たまりませんです。
    >白ブリーフ=グンカジ=川俣軍司カジュアル
    >ある意味殺人鬼の正装ですから
    へー!そうなんですね!さすがみさんだなあ。
    調べ方が丹念なのか、元々ご存知だったのか、いやいや、リアル日本の殺人事件との関連性、教えてくれてありがとうございます!うれしいです!

  19. 「チェイサー」

    実在の猟奇事件をネタにしたクライムサスペンスって事と、巷の評判がヤケに良いので珍しく韓国映画を鑑賞。「テハンノ・・・」に続く2本目。

  20. チェイサー・・・・・評価額1800円

    いやはや凄い映画がやって来た。
    「チェイサー」は、ソウルの裏通りを歩くのが恐ろしくなる、超ヘヴィーなクライムスリラー。
    2時間の間、殮.

  21. 本当に凄い映画なんですけど、この映画があっという間に終了してしまう事の悲しさ。
    対して「ルーキーズ」を初日二日目に観た人100万人というこの国の映画文化にため息が出ます。
    「チェイサー」がヒットする韓国、「グラントリノ」がヒットする米国、どちらも日本よりも大人の観客が多いんでしょうね。

  22. ノラネコさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あ、もう終わっちゃうんですね!随分早いなあ・・・本当、残念です。
    そして、『ルーキーズ』の動員数、そんなに多いんですね!『クローズZERO』の時、初日に来てた高校生のお客さんが、本当柄が悪いのにビックリしましたが、こっちの『ルーキーズ』の方はもっと一般的な高校生も来てるのかもしれませんね。
    >「チェイサー」がヒットする韓国、「グラントリノ」がヒットする米国、どちらも日本よりも大人の観客が多いんでしょうね
    あーそうですよね。日本での映画製作って、ターゲットとする観客を10代〜20代向きにした方が入るんでしょうか?

  23. チェイサー

     現在公開中の韓国映画、「チェイサー」(監督:ナ・ホンジン)です。六本木シネマート・スクリーン1で観賞しました。
     これ、5月に入ってからず〜っと「観たい!」と強く思っ…

  24. こんばんはー。
     とらねこさんの記事を見て「絶対観に行こう」と決めて2週間、ようやく観に行くことができました。いやぁ、自分の「普通の映画鑑賞時間」は23:00以降なので..。レイトショーでやってない映画はツライです。(^^;
     もう、とにかく「すごい」という言葉以外に形容しがたい作品でした。私は死刑反対論者なもので、「これを観て、こんな奴八つ裂きにして殺してしまえ」と噴き上がる輩が多いんだろうなぁ、などと観賞後ちょっと冷静になってから感じました。もちろん、私も感情では「そう思った」からなんですが。とにかく、こういう存在が定期的に表れることから逃れ得ない、しかしそれでもこういう存在による影響を最少化する努力を永久に続けなくてはならないポストモダン社会の「やるせなさ、仕方なさ、我々の無力さ」を感じずにはおれませんでした。
     とにかく、記事を書いてくださってありがとうございました。おかげで、大傑作を見逃さずにすみました。m(__)m

  25. マサルさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ゆうべはコメントいただく前に、サッサとお邪魔しに行っちゃいました(笑)
    ところで、そうなんですか、マサルさんが映画を見れる時間帯は、23時以降なんですね。でも、休日は取れないんでしょうか?
    私の友人も塾で働いている人がいるんですが、あんまり休めないみたいなんで、ちょっと気になりました。
    私の記事を読んでこの映画を見たくなった、と言ってくださりとっても嬉しいです♪
    フォント7の大きな文字で書いた価値がありました(笑)
    そうですね、こういう実在の殺人事件を元にした猟奇殺人ですと、そういうことを考える人も居るのかなあ・・。
    それより腹が立ったのは、二度に渡って証拠不十分で釈放してしまった警察の方ではありました。
    あと、何かにつけて“精神異常”を元に弁護が進められると、またか。。と思います。

  26. えと、いちおー経営者なもんで(いえ小さな小さな会社ですが)、どーしても会社に行ってしまいます。まぁ、月曜日と日曜の午後は休める体制にはしているのですが、フルで2日間休むのは月に1回あるかないか、ですねぇ。そのかわり、朝は早くないので、木曜深夜とか金曜深夜はよく六本木のレイトショーに行ってます。
    刑法第39条問題は、かなり難しいところですねぇ。一昔前とは全然違う社会になっています(いわゆる地域コミュニティの崩壊が大きいでしょうね)から、少なくとも心神喪失あるいは心神衰弱する人の数自体がかなり増えているハズで、実際に例えばうつ病の患者数は倍近くになっています。となると、39条が適用される数も倍というか倍以上になっていないとおかしいわけで、そういう点では自然なんですが、市民感情としては、それで無罪になる人が出ること自体に納得がいかなかったり、あるいは「演技じゃないの?」という疑念が出たりしますよね。ホントに難しいところです。
    (続く)

  27.  しかし心神喪失者を生み出したのも「社会」なわけで、やはり彼らを包摂するのも社会の役割かなと思います。そういう意味では、刑法とか裁判の結果に一喜一憂するという「後ろ向きな議論」よりも、教育や新しい社会的包摂の仕組みを考えるといった「被害者・犠牲者を減らすための方策」のほうにアタマも予算も使うべきだと思うのですが、どうやらそういう方向には行ってませんねぇ。確かに、厳罰化を訴えたほうが市民にウケる(=選挙に勝てる)ので、どうしてもそういう方向になってしまうのですが…。この辺、どうしても私は民主主義の宿命というか限界を感じてしまいます。

  28. マサルさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    そうでしたか、経営者の方だったのですね。塾って朝は遅い割りに、夜の終わるのが遅いことが多いみたいですね?
    そうですか、六本木ですと、あ、あそこですね。確かにあそこなら、遅い時間までやってますもんね。
    そうですね、どうしても心神喪失、と言われるとそれがどこまで適用されるのかなあなんて思ってしまいます。
    マサルさんは、真面目な方なんですね。ただ議論の方向性として、「被害者・犠牲者を減らすための方策」というと、あまり具体的ではないかな、とコメントを読んだ限りでは思います。終身刑が何十年の禁固刑に軽減され、また社会に戻っていくことを恐れて、死刑執行を望むということに繋がっていくのではないか、と考えたりもしたり。
    私も死刑は反対ですが、「死刑にならない限りまた殺し続ける」と言っている金川真大なんかは、あそこまで裁判に対して言い切っている限り、もしこれでまた再犯ということになったら、あの時死刑にならなかったのがいけなかった、ということになりはしないかと。それが怖いですね。」
    とは言え、映画から随分離れた議論になってしまいました。映画が抱え持つ社会的側面や問題意識に対して、そこを切り取ってその部分を論じるより、映画の中で何が表現されているかを話す方が自分は好きです。
    たとえば、チェイサーで言うと、マサルさんのところにコメントを書いていた方もいらっしゃいましたが、教会が小高い丘になっていて、そこからまっすぐ道が伸び、途中の家から見上げる形になっていたとおっしゃっていましたっけ。
    教会が持つ映画の中における役割、あれは確かに私も考えた部分でありました。
    (つづく)

  29. マサルさんへ
    (つづき)
    それに関して自分も言いたいことがあったので、ここでついでながら言わせていただくと、
    ヨンミンが隠れていた場所がその神父の家で、そこで行われていたのがあの凶悪犯罪の数々だったわけですよね。そしてその10いくつの(本当はもっとあったんでしたっけ)死体を隠されていた場所が教会の庭なんですね。
    訪ねて来た信者の中高年の夫婦が、アッサリ殺されたのは言うに及ばず。
    しかし、ヨンミンが以前に隠れていたと思われる部屋の壁紙を破けば、そこにキリストの絵が壁一面に現れましたね。
    それを考えると、ヨンミンが殺しを行う際に、釘と金づちでもって行った、ということが、また別の面を覗かせ始めるのでした。刑事が尋問したように、殺しが性的不能から来る性に対する代替行為というだけではない何か、これを考えてしまいました。
    自分を偉大なるものに置き換えての尊大な妄想だったとは思うのですが、それにしてもヨンミンが教会に対して行ったことはあまりに惨く、目に余りますね。

  30.  小高い丘の教会に見守られる街、という構図はコメントをいただいて「ハッ」と気づいたという感じでした。この映画に関しては、上映時間中はその辺をコトバにして考える余裕がなくて、ただひたすら感情移入し、ただひたすら映像を「感じて」いました。あのコメントには、「まいった!」という感じがしています。
     死刑については、再犯防止という観点で言えば「終身刑を設定すれば良いだけ。以上」と思っています。今回も金川真大は「死刑になるために多数殺した」と言ってますし、死刑存続の論理的な妥当性はもはやないというのが私の意見です。
     ちなみに上で「社会的包摂」とか書いてますが、具体的にはなんてことはなくて、「基本行政単位を小さくすること」「スローフード運動(地元商店街でモノを買う生活への回帰)」「おカミがやってくれる社会から、自分たちでやらねばならない社会(小さな政府)への段階的転換」といったところです。いずれも、すぐに効果が出るものではありませんが、少しずつ「厚みのある、大きな社会」にしていくことが肝要かと。
     スミマセン、また映画から離れた議論をしてしまいました…。反省します。orz

  31. マサルさんへ
    こんにちは。コメントありがとうございました。
    >小高い丘の教会に見守られる街の構図
    これ、そのものズバリなシーンが数回あったんですよ。一番最初に出てきたのが、長く続く小道の坂下から、ジュンホが出張ピンサロの店員のスキンヘッドのボンクラ君に鍵を渡して、「ここのどこかのアパートの鍵だ、一番上はあそこだ」と言って指差すシーンがありました。ここで私はハッと気づいた、という感じです。その後にも俯瞰のシーンがありましたね。俯瞰のシーンはもう一度くらい角度を変えて出てきたと記憶しています。
    >「基本行政単位を小さくすること」
    >「スローフード運動(地元商店街でモノを買う生活への回帰)」
    >「おカミがやってくれる社会から、自分たちでやらねばならない社会(小さな政府)への段階的転換」
    地域社会コミュニティの復興、というのは大事ですよね。地域社会コミュニティはもっと多くのことを請け負っていっていってもいい存在だと思います。

  32. チェイサー

    チェイサー
    ’08:韓国
    ◆原題:THE CHASER
    ◆監督・脚本:ナ・ホンジン
    ◆出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ、キム・ユジ??.

  33. チェイサー

    『アンティーク…』に続いて韓国映画で現地の予習。
    お子様に大ヒット中の『漆黒の…』とは違う方の『チェイサー』を観てきました。
    ★★★
    『殺人の追憶』みたいなものを想像してたら、ある意味正反対な話なので、あの映画を楽しんだ人も、楽しめなかった人も一度観てみる…

  34. 映画「チェイサー」

    監督:ナ・ホンジン(デビュー作にして、このレベル!やばい)
    出演:キム・ユンソク(◎)ハ・ジョンウ(凄過ぎる!)
    出演:ソ・ヨンヒ(◎)キム・ユジョン チョン・インギ 
    デリヘル嬢を呼び出しては、監禁殺害を繰り返す殺人鬼。
    そんな凶悪犯を、元警官の…

  35. mini review 09405「チェイサー」★★★★★★★☆☆☆

    10か月に21人を殺害した疑いで逮捕された、韓国で“殺人機械”と言われた連続殺人鬼ユ・ヨンチョルの事件をベースにした衝撃のクライム・サスペンス。狂気のシリアルキラーをたった一人で追う元刑事の追走劇が、緊迫感あふれるダイナミックかつハイスピードな展開で描かれる…

  36. No.210 チェイサー

    韓国で大ヒットしたサスペンス、日本ではこの手の作品は
    あまり作られることがないが、お隣の韓国では良質のサスペンス
    が・・・たまには外れているのもあるが、圧倒的な絶望感や暴力が
    観る人を引き付ける。

  37. TB有難うございました。
    日本映画ではお目にかかれない
    圧倒的な暴力、絶望感など観る者に
    衝撃を与えるほどの完成度に
    驚くばかりです。
    今度、訪れた際には、
    【評価ポイント】〜と
    ブログの記事の最後に、☆5つがあり
    クリックすることで5段階評価ができます。
    もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!

  38. シムウナさんへ
    こんばんは〜♪こちらこそTBありがとうございました!
    そうそう、本当にこの作品に出会った時の衝撃は凄かったですね。
    圧倒的に面白くて、その違いが歴然としているところが逆に、
    なんだか他の作り手の、才能ない人たちが可哀想になるばかりでしたよ・・。

  39. 『チェイサー』’08・韓

    あらすじデリヘルを経営する元刑事ジュンホの元から女たちが相次いで失踪。ジュンホは、女たちが残した携帯電話の番号から客の一人ヨンミンに辿り着くが・・・。感想『ディパーテッ…

  40. チェイサー(56点)評価:△

    総論:観客をサスペンスに陥れる巧妙な手腕。でも犯人像に致命的な蛇足がナ・ホンジン監督の長編デビュー作品。韓国で実際に起きたヘルス嬢連続殺人事件を題材にしたクライムサスペヮ…




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