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屋敷女 ▲75

屋敷女’07年、フランス
原題:A L’interieur
監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
脚本:アレクサンドル・バスティロ
撮影:ローラン・バレ
音楽:フランソワ・ウード

ベアトリス・ダル  見知らぬ女
アリソン・パラディ  サラ
ナタリー・ルーセル  ルイーズ
フランソワーズ・レジス・マルシャン  ジャン=ピエール
ニコラ・デュボルシェル  警察その3
ルドビック・ベルシロー  警察その1
エマニュエル・レンツィ  警察その2
ジャン・バプティスト・タボウリン  マシュー

こ、これは・・・私が外してはいけない、フランス産ゴア・ホラー・スプラッタの(形容詞多すぎ?)傑作だった!
ホラーファンは、見逃すな!そして、妊婦は見るな!

いやいや、これは本当に凄い。

自分は、3度ビビりました。劇場では見ないでスルーしてしまった。はい、ビビったのです。正直に言います。

一つには、ベアトリス・ダルが出演している、ということに。
私にとって、ベアトリス・ダルとは、ある種のイコン。『ベティ・ブルー』での彼女は、圧倒的な美を誇っていた。精神的な脆さ、狂気・激しさ・繊細さ、傷つきやすさ・・・そんな微妙なバランスを秘めた美しい女性を見事に演じた人。(しかも当時、ポッと出の新人ですよ!すごい。)
さらに、『ナイト・オン・ザ・プラネット』では、目の見えない役でありながらも、女性らしいセクシーさを忘れない、すごく面白い盲人役をサラリ見事にこなしてて。4都市の中でも、一番のお気に入りパート。(その後、『ガーゴイル』や『裏切りの闇で眠れ』でも見たけど)
そんな彼女が、殺人鬼だなんて。「やめてケロー!」って・・・(泣)

次に、予告を見て。
これがまた、一切ハンパの無い血だらけの海で・・・(泣)。その上、何と“妊婦”!
妊婦が血ミドロにされるなんて、考えただけでも恐ろしくって。私は、絶対有り得ない!と思ってしまった。自分だったら、道徳的にまず許せないだろうと。私だったらきっと、怒り出しちゃうだろうな、と。

この二度のビビリで、劇場鑑賞を、スルーしてしまったのでした。
(さらに、ライズXという映画館が嫌いなので、DVD待ちでいいや、と。)

ちなみに、三度目にビビった、というのはもちろん、「見てビビった」。それは後ほど。

ストーリー・・・
クリスマス・イヴ。出産を間近に控えたサラは、自宅で一人、孤独に耐えていた。夫は4カ月前の事故で亡くしている。そんな彼女の家を見知らぬ女が訪ねてきた。不審に思いサラがとりあわずにいると、女は窓を割って進入を試みる。サラが警察を呼んだことで一時は撤退するが、深夜、彼女が陣痛で目を覚ますと、そこには自分に馬乗りになって、腹にはさみを突き立てようとしている女の姿があった・・・

この一切の妥協が微塵も見られなゴアっぷりに驚愕。普段ホラーが大好き!と言ってる私でも、泣きそうなほどに血だらけのスプラッタ。
そう言えば、私ってオバケとかゾンビは好きだけど、スプラッタ映画の血だらけなんて好きだったっけ!?とすら思ってしまった。
全編、これでもか、これでもかと血だらけ、とにかくハンパないので、これはよっぽどのホラー・スプラッタ好きでないと、絶対見ない方がいい、と断言しておく。
何より、“妊婦”や“母性”といった、ホラーやスプラッタの題材にするにしてはいけないようなアンモラルさを扱っている。そこがまずド肝を抜いてくる。にも関わらず、この表現の中途半端のなさ。

さすが監督・脚本家であるアレクサンドル・バスティロが、元ホラー専門の映画評論家だったというだけある。
でも普通、映画評論家だったからって、じゃあ「面白い映画が作れるか」と言ったら、「そううまくはいかないんじゃないか」って思うよね。
だから、やっぱりスゲー!と思うわけです。ホラーについてのその知識を生かして、たくさんオマージュとして散りばめる、みたいな“加える”方が得意そうに思うじゃないですか。『ザ・フィースト』みたいに。だけど、ここではそういうやり方はせず、むしろ“抜いた表現”になってるところがすごい。役者の演技も本当にいいんだけれど、それをちゃんと見せるそのやり方も本当に正しい!素晴らしい!!見せ方が本当に上手いから、これだけのシンプルな、・・・だって室内でずっと繰り広げられるわけですよ。逃げ場なんて限られてる。それをこれだけやれちゃうんだから本当にすごい。
日本では、町山が映画作ったらしい、というのは噂でチラっとだけ聞いたことがある程度なんですが。アレなんかはどうなんでしょうね?

「知らない田舎町にやって来た旅人がトンデもない目に合う」なんていう風に、ホラーにはお気に入りの定石とも呼べるシチュエーションがあるんだけど、これは「見知らぬ人が“自分の家”にやって来てトンでもない目に合う」映画。
『屋敷女』はこれまた別の意味で、ピカ一の作品だった。『ディセント』を思い出させる内容のようだけれど、監督チームであるアレクサンドル・バスティロ&ジュリアン・モーリーの二人は、『ディセント』が好きだったらしい。好きだったというより、「せっかくあれだけの面白い設定であったら、もっと凄く、もっと面白く撮れるはずではないか?」というところからヒントを得たのではないか?などと穿って見ている自分が居る。

ラストシーンは、その凄惨さ故か、アンモラル故か、見たこともない部分にボカシがかかっている。
私の場合では、女性である自分は、その部分にボカシが入っていたのを、本当に心からホッとしました!あー怖かった。

忘れられない傑作になりました。

 

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コメント(13件)

  1. おいっす
    自分はけーこー前にレンタルで見たんすけど、途中から
    「やりすぎじゃね!?」って感じで見てました
    これでもかというくらいの血、血、血しぶきでしたね
    なんか「ブレインデッド」を思い出しました
    今となっては血のりの印象しかなく(笑)どんな終わりだったっけ?・・・
    ぼかしはあれだったかな?救いのない感じの終わり方でしたよね?
    製作現場ではけっこー和気あいあいなんでしょーね、こーいう映画って

  2. サイ5150さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あはは、確かに私も途中まで、このやりすぎにはすっかりヤラレてしまって、血ミドロになっていく辺りで、もう何度も吐きそうになったり、気持ち悪くなりながら、見てました。本当、ブレインデッドもかくやの血ミドロっぷりでしたね。
    だけど途中から、“普通だったらここまでやらないだろう”って辺りをドンドン塗り替えていくところで、これマジですごいんでは!?と途中で気づいてしまいました。
    ま、何かを超えてしまったんでしょうね(笑)血ミドロで部屋中真っ赤になった辺りでしょうか、襲い掛かるシーンの一瞬のカメラとか、本当に何気なく撮っているのに、新鮮に感じるんですよ。使い古された表現であるはずなのに、一切退屈を感じてないのは凄いなって、思ってしまいましたです。
    でも、確かにホラーやスプラッタが嫌いな人には絶対オススメは出来ないですよねw
    ボカシはそうアレです。救いはない終わり方なんですが、犯人の異常なまでの執念の理由が分かるんですよね。
    アハハ、撮影現場は和気あいあいなんでしょうか?作り物とはいえ、これだけの凄惨な血ミドロなシーンのところで、正気で笑ってる人たちって怖いな

  3. とらねこさん☆
    来る時にムラがあってゴメンナサイ
    これわたしも劇場で逃しちゃって、気になっていたの!
    そこそこ怖がれそうかな??(笑)
    観たらまたお邪魔しますね!!
    それから映画祭にコメありがとうです、とらねこさんともいつかお会いしたいの♪
    伍一さん、シャーロットさんというメンバーで是非いつか☆
    あ、あとは睦月ちゃんも

  4. migさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    >来る時にムラがあってゴメンナサイ
    イエイエそんなことお気になさらずに。こちらこそ、あんまりお邪魔できてませんし。
    >そこそこ怖がれそうかな??(笑)
    ふふふふー、これはもう、ホラー好きには大プッシュします!これはなかなかスゴイですよ〜
    そう言えば以前私がススメた『●REC』、migさんご覧になってたけど、記事書いてらっしゃらないですよね?もしかしてダメだったのかしら・・・
    お?お誘いありがとうございマス
    いいですよ〜、集まり次第是非ゼヒ!
    その5人でお会いしたら面白そうですよね!みんな趣味がそれぞれバラバラかもしれませんけど・・
    いつでも声かけて下さいなー

  5. >>アハハ、撮影現場は和気あいあいなんでしょうか?
    だって〜いいトシした大人が血みどろですよ!?
    「カット」の後は笑っていないと・・・というかリラックスした雰囲気じゃないと
    まいっちゃうんじゃないかなーと思って
    何の映画かは忘れたけどホラー映画の現場って笑い声が絶えないって
    メイキングかなんかで見たような気がしてね♪

  6. とらねこさん!
    ●REc確か書いたあとでとらねこさんのとこにおじゃましなかったかなー??!
    オススメしてもらって、レビューはまとめてDVDレビューの記事に書いたの!
    面白かったですよ!ありがとうです!
    わたし自分から招集の声かけるタイプではないけど(笑)ぜひいつか実現しましょう

  7. はじめまてコメントいたします
    凄かったですね〜ぇ マジで。
    >ライズXという映画館が嫌いなので云々
    私はライズXで見ました。あのへんてこなというか、おどろおどろしい劇場の雰囲気に作品がドンピシャ・・・かなり心地よく(?)観れました。
    うわさですが、
    日本で上映されたのは明度調整に失敗したプリントだったんだとか(確かに予告編の画像は普通)。
    DVDの画質(明るさ)は知りませんが、劇場上映画像は「暗すぎ」て何が起こってるのか全然わかんない状態。 故にスクリーンを注視してると・・・ガーン!ドヒャー!
    フレンチホラー恐るべし と再確認した映画でした。

  8. サイさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    >リラックスした雰囲気じゃないとまいっちゃうんじゃないかなーと思って
    うーんそうですね、ただフランス人ですからね。私たちが普段想像するようなホラー映画の現場の雰囲気とはまた別なんじゃないスかね!?ってないですか?
    >何の映画かは忘れたけど
    『封印殺人映画』見ました?これめっちゃ面白かったですよ♪

  9. migさんへ
    わーっっmigさん、ごめんなさい!!
    なんか、結構長い間待ってた気がして、すっかり忘れちゃってましたー。
    migさんちゃんとくれてたんですね、TB&コメント。
    記事にもわざわざ名前出してもらってたのに・・・本当ごめんなさいです
    ちゃんと確認しろ〜、自分
    許してくださーい。
    ところでオフ会ですが、実現させたいですね!
    普通にどっかの飲み屋、っていうのもイイんですが、実はそういうのって意外に、私自分からは誘わない方だったりします。何かこれっていう企画を考えておきますね♪

  10. Longislandさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あれ、Longislandさん、初めましてじゃないですよ〜。
    以前にも2,3度、コメントくださったことがありましたよね!?私ちゃんと覚えてますケドーww
    ハハハ、ライズXの雰囲気にバッチリでしたか。
    私もここで見た時は、いつも変な映画を見ていたせいか、何故かバッチリ覚えていたりします。
    でもやっぱり私、ここは苦手なんで、出来るだけ行きたくないんですよね〜。
    >日本で上映されたのは明度調整に失敗したプリント
    あ、これ私も聞きました。ただ、日本で劇場上映されたのは上記のライズXでしたけど、その前にフランス映画祭でやってたんですよ。その時はどうだったんだろう?
    >フレンチホラー恐るべし と再確認した映画でした
    いや、本当に。ところで『ヒルズ・ハブ・アイズ』はご覧になりましたでしょうか?私もーこれが大好きで大好きで。その年のベスト2に入れちゃったぐらいなんですよ。

  11. 屋敷女

     『この女、凶暴につき。』
     コチラの「屋敷女」は、世界各国の映画祭で賞賛されたR-18指定のフランス産ヴァイオレンス・ホラーです。ってか、ホラーは苦手なクセになぜか、この映画には惹かれるところがあって、見始めたのはいいけど、ハリウッド産ホラーと違って、じん….

  12. 屋敷女

    A l’interieur
    Inside
    2007年:フランス
    監督:アレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリー
    出演:ベアトリス・ダル、ニコラ・デュヴォシェル、リュドヴィック・ベルティロ、フランソワーズ=レジス・マルシャソン、ナタリー・ルーセル、エマン・サイディ、エマ….

  13. 屋敷女

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    監督:アレクサンドル・バスティロ、ジュリアン・モーリー
    出演:ベアトリス・ダル、ニコラ・デュヴォシェル、リュドヴィック・ベルティロ、フランソワーズ=レジス・マルシャソン、ナタリー・ルーセル、エマン・サイディ、エマ….




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