大悪党 ▲72
’68年、日本
監督・脚本:増村保造
原作:円山雅也
脚本:石松愛弘
撮影:小林節雄
美術:下河原友雄
音楽:山内正
田宮二郎 得田仁平
緑魔子 太田芳子
佐藤慶 安井一郎
倉石功 島輝夫
内田朝雄 マネージャー
北村和夫 岡野検事

街のヤクザ・安井に犯され、監禁された挙句に売春を強要されてしまった芳子。弁護士の得田に助けを求めるが、彼は芳子を弁護するどころか自分が弁護すれば無罪になるから」と言って、安井殺害のための手ほどきをする悪徳弁護士だった。男と女が騙し騙され、息もつかせぬ逆転劇が繰り広げられる。本当の「大悪党」とは一体!?
久々のシネマヴェーラ!“緑魔子特集”で見て来ました。
増村監督と緑魔子のタッグでは、『盲獣』でもそうだったけれど、緑魔子・・・たまにしか服を着せてもらえません!(笑)
物語始まってまもなく、気づけばパンティ一枚(しかも、Hなヤツじゃなくて、グンゼっぽい白パンツ)、もしくはバスタオル一枚で、後半ぐらいまでずーっとそのまま。もう見事に。殴られたり、犯されたり、女優として演技する分にはすごく大変だっただろうな、と。
でも、そこは増村作品なので、ちゃんとこういう設定に意味があって、映画として、物語のテーマにガッチリハマってくるし、やっぱり増村って面白いなー、と納得してしまう。しかも恐ろしいことに、「なんて酷い!」とか思わず、気づいたらその世界にドップリ漬かってしまう。
『大悪党』というこのタイトル。悪人は誰か、と考えると・・・。もちろん最初にヒロイン芳子を、女学生の身分から一転して身を落としめた、ヤクザの安井も酷いけれど、芳子を助け知恵を授けるはずの弁護士得田(田宮二郎)も同じくらい酷い、という。
不思議に、緑魔子って、演出のせいも大いにあって、苛めたくなってくるのね。男や、社会に利用された弱者、であるはずなのに、なんかこう、苛めたくて苛めたくてしゃーない。なんでだろう。
バシンバシン殴られたり犯されたりしてても、ああ、可愛そう!なんてゼンゼン思えず、私の中の煩悩がちょっと満たされる感じがしちゃう。
『でんきくらげ』でしたたかに男を利用して生きる、ヒロインの渥美マリを心から応援してしまったのとは全く違っていたりして。
もう一人の悪党、弁護士の得田の方は、芳子の体を利用することはなく、しかしだからと言って紳士では全くなく。むしろ逆であるところもヤクザとは対照的。芳子に人の法をスリ抜け、殺人を示唆し、さらに社会を騙すということすらさせる。
だからこそ最後にヒロインが一転する辺りが面白く、スッキリするのね。
芳子がヤクザに目をつけられてしまって、可哀想・・・と思えない理由の一つには、もしかすると芳子が本気で男を愛したりしない人だからかもしれない。最初に付き合っていた、ボウリング場でデートしていた彼氏とも、深い関係ではなく、プライドが高く、体を許すことがない。しかし心を繋ぎ止めておく程の人間的情熱も持っていない。まあ、どこにでもいる、育ちが良くて危険も知らない女子。だからこそ、全く逆の男からしてみたら、こうメチャクチャにしてみたいような、簡単に利用できそうな気がするのかも・・・。
ああでも、この髪型かわいいなあ。私も前髪パッツンにしようかな。
でも美容師さんにこういう風に切ってくれ、というと結構嫌がられる髪型。なかなか分厚い前髪でパッツンにはしてくれないの。
でも、自分で切れそうだからやってみようかな。
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「大悪党」
映画の始まりはボーリング場での佐藤慶のアップ。引いていくと片隅のレーンでうつろに佇む緑魔子。
モノクロのこのシーンを見ただけで
服を着せてもらえなくても、コスプレさせても緑魔子伝説たまりませんわぁ〜
「芳子が本気で男を愛したりしない人だからかもしれない」同感。長野の世間体を気にしすぎるお堅い教育者に育てられた女の子。このキャラがこのストーリーに効果的でしたね。
今回は緑魔子のコスプレを楽しみにしていた「帰ってきたヨッパライ」を見逃してしまい残念です。
imaponさんへ
こんばんは〜♪imaponさん、お久しぶりです!
お元気でいらっしゃいましたでしょうか〜♪
緑魔子この作品でもメタメタにされてましたね(笑)これでも『盲獣』よりはマシなんですよね。だってあっちはバラバラにされちゃいますから!
いや、でもこの話のヒロインはそういう設定なんですよね。むしろ、強いヒロインであってはいけなくて。イジメられキャラでなくてはいけない(笑)
『帰ってきたヨッパライ』は、あんまり評判が良くないのかな、なんてチラ聞きしたのですが、imaponさん的には期待の作品だったのですね!
も・もしかして、imaponさんて、コスプレ好き・・・w
おはようございます〜♪
彼女の場合いじめたくなる、不思議とかわいそうに思わない、ってわかります。 最後の最後で逆転しちゃう展開はストーリー的におもしろいんだけど、それまでの長い期間は彼女がこてんぱんにされるのがス・テ・キ。
あまり登場人物が多くなく、特に悪い男2人と彼女が密にが絡み合うのもイイですよね♪
>パンティー1枚
きゃは〜。そうですね、白グンゼ的おパンツは彼女の役柄に合ってますネ。
アンバーさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
『盲獣』のお好きなアンバーさんは、こちらはどうだろう!?なんて思ってたんですよ。
そうそう、コテンパンにされるけれど、ここで酷い!とか思わずに、エロちっくに見えるところがいいんですよね〜!
こういうのも彼女ならではなんでしょうか。
>白グンゼ
似合ってましたね!変にエロいパンツじゃないところがポイントなんですよね☆
アンバーさんの髪型は、この人をイメージしてるんでしょうか??w