リリィ、はちみつ色の秘密 ▲53
優しい気持ちと切ない気持ちに包まれて、気付いたらたくさん泣いてしまった。
温かくて素敵な物語だったな。

1964年の夏、14歳のリリィは幼い頃に自分のせいで死んだ母の愛を確かめたくて、父T・レイに黙って旅に出る。制定されたばかりの公民権法の甲斐もなく白人の嫌がらせを受け怪我をした挙げ句警察に連行された黒人家政婦のロザリンを助け出し、向かった先は母に縁のある町ティブロン。そこで2人はボートライト三姉妹と出会う。長女のオーガストは養蜂家で、黒い聖母像のラベルのはちみつを作っていた。・・・
’08年、アメリカ
ジーナ・プリンス=バイスウッド監督
はちみつに、小さい女の子が出てくる物語、と言ったらどうしたって『ミツバチのささやき』を思い出してしまう。
その辺りは意識していたのかもしれない、と思うのだけれど、それより物語自体は『キルトに綴る愛』のように、女性たち目線の、とてもハートフルな物語。
公民権運動が起こり、ようやくアメリカ全体としての動きは変わろうとし始めているにも関わらず、(これまた『ダウト』と同じ’64年。)まだまだ差別の多く残る南部の物語で、しかも女性と来たら、さぞかし生きるの大変だっただろう、と、初めから彼女たちに心を寄り添って見てしまったからかもしれない。
そんな時代にも関わらず、まっすぐに自分らしく、家族を大切にしながら生きる・・・そんな物語に、とても心を奪われてしまった。
特に好きだったのが、ピンクハウスで肩を寄せ合って生きる個性的なボートライト姉妹たち。
もう、見ているだけですっかり心を癒されてしまった。
「こんな家で子供時代を過ごせたら、どんなにいいだろう」って、少し彼女達が羨ましく感じてしまった。
教会に行くことが出来ないにも関わらず、自分たちだけで信仰心篤く生きているボートライト姉妹たち、一番上の姉のオーガスト(クイーン・ラティファ)が「黒い聖母が海を渡る話」をした時、「うわ、怪しい新興宗教みたい」と、初めは思ってしまった。
しかし、「そうやって心を寄り添い合って生きているのだ、彼女達の心の拠り所はここなのだ」、・・・そう考えたら、とても尊いものだ、ということに気が付いて、ハッとしてしまった。
まるで彼女達の姿は、原初的な教会の一つの形を見たような、そんなものなのだ、とすっかり感じ入ってしまって、人がこうして何かにすがる姿、というものがいかに尊いものなのかを改めて感じさせてくれた。
とても美しいシーンだった。
また、母親に先立たれ、愛しくて寂しくて、だけど彼女の愛すら疑って居たリリィ(ダコタ・ファニング)が、とても不憫で仕方が無く思ってしまった。もうすっかりノセられてしまっていたのよね。そんな辛い思いを抱えながらも、強く生きようとするリリィ。なんて頼もしいんだろうと思ったり、だけどやっぱり子供なのだな、と思ったり。
優しくてかわいい映画。
ところで、前も書いたんだけど、この作品にも登場しているジューン役のアリシア・キーズ。
彼女の最新アルバム、『As I Am』の中の曲が、エンディングにも使われていたけれど。
このアルバム、最近本当にお気に入りでね・・。
初めは私、何気なく流し聞いているだけだったんだけど、時間が経てば経つほど、楽曲の良さ心に響いてしまって。
今、一番ヘビロテする大好きなアルバムの一つになっちゃった。
特に、休日の朝にかけるこのアルバムは最高。
アリシア・キーズ、歌い方が本当にクールでね。Lauryn Hillを思い出しちゃう。
聞けば聞くほど心に沁みてくるの。
ほとんど“荘厳”とも言える美しいメロディの数々。もう大好き、このアルバム。
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コメント(15件)
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映画「リリィ、はちみつ色の秘密」
原題:The Secret Life of Bees
アメリカで1964年といえば7月2日の公民権法制定、ジョン・F・ケネディ亡き後ジョンソン政権下で成立、キング牧師も登場する時代背景に??様々な愛の形??
原作は全米で500万部以上、映画は全米3位スタートながらクチコミで広がり全米…
『リリィ、はちみつ色の秘密』
新宿明治安田生命ホールに、『リリィ、はちみつ色の秘密』の試写会で行ってきました。
今回の試写会は、この『リリィ、はちみつ色の秘密』のPRを担っている学生さんの有志団体「チームリリィ」の方にお声かけいただいて、参加させていただきました。
「チームリリィ」の皆…
「リリィ、はちみつ色の秘密」
甘いだけじゃない秘められた蜜の味。リリィは4歳のときに実母と死別した。悲しいことに、彼女の記憶には死の瞬間は鮮烈に残っていたものの、母との愛情の絆については何一つ確かなものがなかった。運命に導かれるように使用人のロザリンと家を飛び出し、たどり着いたのは…
リリィ、はちみつ色の秘密
1964年、アメリカ南部サウスカロライナ州。
14歳の少女リリィ(ダコタ・ファニング)は、4歳の時に誤って拳銃で母親を殺してしまった。
薄情??.
リリィ、はちみつ色の秘密
この映画に関しては、原作の「リリィ、はちみつ色の夏」を以前に既に読んでいたので、物語については概ねは崩さないだろうから、登場人物の個性が小説のように出ていればという前提でのみでほぼ安心して見られた。主人公の14歳の少女は実際同年齢の俳優であり違和感もなく、…
『リリィ、はちみつ色の秘密』 The Secret Life of Bees
飛べ飛べハッチ。
1964年の夏、サウスカロライナ州。母の死の記憶にとらわれていた14歳のリリィは、ある日父T・レイに黙って旅に出る。ダコタンもティーンエイジャーになっていたのねぇ。ハリウッドの人気子役主演のアメリカ製ヒューマンドラマというと、過剰にいかにも…
私もオーガスト姉さんのお世話になりたーいって思っちゃいました。
ボートライト姉妹たちがホントによかった。
月の名前っていうのがまたステキで。
信仰のことは、アリス・ウォーカーの「カラーパープル」を思い出したりー
かえるさんへ
こちらにもコメントありがとうございました〜♪
私もピンクハウスみたいな温かい家に住んでみたいなあ、って本気で羨ましくなりました。
月の名前の姉妹たち、ってイギリスやアメリカの大家族には本当にありそうですね。
「アナタはジュライって名前にしようかしら」って言われたジェニファー・ハドソンの気持ちを思うとじわりとしました。
なるほど、『カラー・パープル』ですか!確かに題材的に、思い出すものがありますよね。
私はこれ、大学の頃見ましたが、ズドーンと打ちのめされた記憶があります。
【リリィ、はちみつ色の秘密】
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
出演:ダコタ・ファニング、ジェニファー・ハドソン、アリシア・キーズ、クィーン・ラティファ、ソフィー・オコネドー
母はやさしい人だった。そして私を捨てた。
「10年前に母親の落とした銃を拾って渡そうとした
とらねこさん、おはようさんです
『ミツバチのささやき』はわたしも機会があれば見たいんですがねー またどこかでリバイバルしてくんないかな
ピンクのお家が印象的でした。「誰かが幸せになれるんだったら家の色だってどうだっていい」というオーガストさんは太っ腹ですね(体型的にも・・・)。三女は可哀想なことになってしまったけど、この家の思い出としていつまでも姉妹たちとともに生きていくんだろうな、と
次女を演じてた方はそんなにビッグネームだったんですか・・・ 音楽にはてんでうといもんで
ジューンさんに関して言えばツンデレって昔っからいたんだなーと(笑) 同僚の先生、きっと一生尻にひかれっぱなしだろーなー
時には、ハチを愛するように ジーナ・プリンス・バイスウッド 『リリィ、はちみつ色の秘密』
首都圏より三ヶ月ほど遅れて上映。 1960年代半ばのアメリカ南部。14歳の少女リ
SGA屋伍一さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>ミツバチのささやき
東京で、一番最近ですと、下高井戸シネマで5月にやってましたが・・
あ、そうそうミツバチハッチもマーヤも区別がつかなくってすいませんでした
ピンクのおうち、「かわいい」とはとても思えなかったですけど、衝撃的ではありましたw
ショッキングピンクって言いますもんね・・
三女のことは可哀想でした、姉妹の他の人の分まで彼女が傷ついていたみたいで。
アリシア・キーズ、デビューアルバムからこれまでのアルバム全てヒットチャートNo1なんですよ。すごいですよ。
私『As I am』のアルバムが本当に好きで。超ヘビロテしてこればっかり聴いてますね。
もう泣けるほどいいメロディなんですよ。
ツンデレ役は似合ってました〜
「リリィ、はちみつ色の秘密」
蜂蜜の色って、ほんとに綺麗だなぁ〜・・
リリィ、はちみつ色の秘密
母はやさしい人だった。そして私を捨てた。
リリィ、はちみつ色の秘密
「スラムドッグ$ミリオネア」と一緒に借りたんですが、こっちの方が良かったです。
どちらも悲しい過去を引きずる主人公でした。
ダギ..