THIS IS ENGLAND ▲50
この映画で初めて、’80年代のイギリスのスキンヘッド・カルチャーというのを知った。
’80年代のイギリスを知る絶好のチャンスだと思って見に行った・・・

サッチャー政権下の1983年、イギリス。フォークランド紛争で父をなくしたいじめられっ子のショーン(トーマス・グーターズ)は、ふとしたことからスキンヘッズの不良たちとつるむようになる。彼らと同じようなファッションに身を包み、仲間との生活を楽しんでいた。しかしある日、彼らのリーダーだった男・コンボ(スティーヴン・グレアム)が刑務所から出所し、事態は一変する。コンボは次第にネオナチ的思想に染まり始め…。
’06年、イギリス
ショーン・メドウズ監督
監督自身の子供の頃の話を、一時代を切り取った青春物語に語り上げた作品。
思えば、ショーン・メドウズ監督、ちゃんと主人公の少年も、ショーンて名前。
イギリスの片田舎の風景と、当時の最新(?)の若者ファッションが、マッチしていないような感じもあって、
こうした物語は国が違えど、誰しも同じような時を過ごしていた、そんな物語。
先ほど“ファッション”と言ったけれど、ただ単にそのファッションが流行りのスタイルなのではなくて。フォークランド紛争に対して当時の若者が抱えていた思い、反抗心。その当時に流れていた政治情勢に感じていたこと、彼らなりの気持ち、やり場のない思い・・・そんなものを体現させた、それがスキンヘッドなのだった。
ドクター・マーティンのブーツ。ベン・シャーマンのシャツ。フレッド・ペリーのポロシャツ。ロールアップ・ジーンズ。サスペンダー。クロンビー・ハット・・・。
正直、その時代を体感していない日本の今の私から見ると、どこがカッコいいのかよく分からなかったりするんだけど・・・、ちょっとダサいように思えてしまったりもして。だけど、流行やファッションて、そういう面もあるのかも。えてしてそういうものなのかな。
その時代の空気を切り取ったものだから、どの国にも当てはまる。日本で言えば、もしかしたら、浅間山荘事件や、学生紛争などのあった頃の時代とちょっと似ている面もあるかもしれない、なんて想像する。私自身は、村上龍の『69 -sixty nine-』を読んで、’60年代の日本を切り取った青春物語にいたく感動したことがあった。高校生の頃から忘れられないお気に入りの小説なのだけれど、うん、きっとそんな感じなんだろうな。
例えば私は見ていないけれど、日本で言う『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』なんかにも通じる部分があるかもしれない。
片田舎で、父親を亡くし、どこかやり場のない思いを抱えたショーンは、仲間と言える相手を見つける。彼らとつるんでいく中で、自分を見出し、自分の生きる場所を探そうとする。
仲間がいるからこそ、共有するその時間が急に生き生きと輝くようになって、大人の仲間入りをした気持ちになっていく・・・
胸を張って堂々と歩いていくショーンの姿は、とても誇らしげで、印象深い。
だけど、そんな仲間たちが、いつも正しいとは限らず、間違えた方向に突き進んでしまうことだってある。正直、そんなシーンは、見ていて楽しいものと断言できないけれど。
間違ったことをしてしまったけれど、その時の自分にはとても大事なこと。
青臭くて、痛ましくて、カッコ悪い青春の入り口なのだ。
日本人である私が、自分の学生時代を思い返せば、必ずそこに“教室”があって、そこで鬱屈とした時代を過ごしていたから、そんな物語になるだろうけれど。
学校以外の仲間たちと過ごした経験がある人には、何とはなしに理解できるのだろうか。
学校以外の友達、仲間を見つけた時に、急に違う世界が広がったように感じる・・・
そんなことを思った。
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コメント(2件)
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こんにちは!
これ、結構前に見ましたが個人的には好きな作品です。
うん青春ってこんな感じですよね。
甘酸っぱいのも青春だけど、こんな痛い苦いのもまた青春の一部なんですもんね。
日本でのたとえ、なるほど!と思ってしまいました。
ちなみに村上龍の69は、私も好きです。
すごく地元なのでなお更愛着がわいてしまいまして(笑)
あすかさんへ★
おはようございます〜♪コメントありがとうございました!
青春の入り口ですよね!痛くて、時に取り返しがつかなくて。
青くて、だけど自分なりに精一杯大人の階段を登り始めたあの頃、‥みたいな。
学校の友達から離れて、急に世界が広がり始める時って、すごく思い入れが深いものがありませんか?
あすかさんも村上龍の『69』、お好きだったんですね!
私も大好きなんです!
この小説に影響を受けて、教室の机を一夜のうちに校庭へ運び『69』の字に並べた人がいるんですよ。当時の新聞のニュースにありました。犯人は分からずじまいなんですが。