ダイアナの選択 ▲49
公式HPでは、『クライング・ゲーム』や『ユージュアル・サスペクツ』を想起させる、なんて書いてあったけど、この作品の一番感じ入ったところは、自分にはそんな“サスペンスの大どんでん返し”的なところではなく、むしろ静かに想像力を膨らませるような、このビジュアルにあった。

コネチカット州郊外の小さな町の高校で銃乱射事件が起きたとき、17歳のダイアナは親友のモーリーンと女子トイレでたわいないお喋りに興じていた。そこへ銃を持ったクラスメイトのマイケルが現れ、「どちらかひとりを殺す。どっちにする?」と非情な選択を迫り、ダイアナは「殺さないで」とつぶやくのだった…。15年後、教師をしながら夫と娘と閑静な住宅街に暮らすダイアナは事件の悪夢にいつも苦しんでいた・・・
’07年、アメリカ
ヴァディム・パールマン監督
ああ、この物語、なんだか私は好きだわ。後から思い出せば、全てがクリアーに繋がってくるそれぞれの伏線も、難解さで語るのではなくて、分かりやすさの方を優先されている。
私が一緒に見た友達は、「最後想像ついちゃったからなあ・・・」なんて言っていたけれど、私に言わせれば、物語の構造そのものや、サスペンスタッチな部分がこの作品の見所なのではなくて、このイマジネーション豊かな描写そのもの、ここがとっても好きだったの。
途中、ゴーギャンの作風を「想像と現実が入れ組んでいる」と授業の中で評するダイアナが居たけれど、そんな風に描かれるこの物語。
実は、英語の原題がそのまま答えになっていて、“The Life Before Her Eyes”。言ってしまえばそのものズバリな訳で、それより私は日本語のタイトル『ダイアナの選択』、こちらの方が、もう少し隠されていて好きだな。
一つ一つのあの瞬間の彼女・・・シーンを思い出せば思い出すほど、私は悲しくて。どの瞬間もどの瞬間も、とても自分に身近に感じることが出来るような、心の琴線を刺激するような、そんな撮り方。私はとても夢中になってしまった。
音楽の使い方や、映像にも、とても満足いく作品。
こんな作品について誰かと話す時、私は、いろいろな細かいシークエンスを拾って話がしたいんだな。だからこの先は、ネタバレで語ります。
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たとえば、ダイアナが若い頃に、ポール・マクフィー教授が賞を取ったスピーチを聞いているシーンがあるけれど、この教授が彼女のダンナとして描かれていること。そのスピーチが、過去を乗り越える力についてのことでありながら、未来を作り出す想像力であること。(つまり、どっちとも取れる)
彼女とモーリーン(エヴァ・アムーリ)が最後に話した朝の会話で、「ポールがデートに応じた」と話していること。
彼女が街で見かけた若い女が、振り向いた瞬間の映像は、つまりはこの日の自分を想像した姿だったのかもしれない、ってこと・・・。
彼女がメモリアルの会場に出向き、花束を数箇所に置くけれど、彼女の教室に置かれた一つの花束の机、あれは誰のものか、ってこと。(あの席は、もしかして・・・)
まるで自分自身の思い出のように、深く刻まれた幾つかのシーンは、とてももの悲しくて、美しくて、私はとても辛くなってしまった。
正しい選択をすること、最後は友情の物語だった、ってこと・・・。
彼女が感じるであろう、その後の人生の空虚さ、孤独感。
この辺りをヒシヒシと共感してしまった私には、痛いぐらい物語が身に沁みてしまったのだ。
2009/03/30 | 映画, :SF・ファンタジー
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コメント(19件)
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とらねこさん、こんにちは。
映画の日の一本目はこれを観る予定にしていたのですが、二日酔いにつき、これは断念して、チケットを取ってあるリリはちからにしちゃおうかなという迷いが生じ…。
が、とらねこさんの記事をチラ見して、これはやはり劇場体験しなくちゃと思ったのでした。
で、よかったです、とても。
オープニングから花の美しさにクラクラして、どっぷり浸っちゃいました。
しんどかったけど、同時にすごく面白かった!
ダイアナの選択
ダイアナの選択 (2008)今回の映画は、「ダイアナの選択」です。本作「ダイアナの選択」は、銃乱射事件に遭遇した女子高生の過去と現在を描いたサスペンス・ドラマです。監督は『砂と霧の家』のヴァディム・パールマン。高校生のダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド…
かえるさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おおっ!かえるさんは今日、こちらを見られたんですね♪
かえるの選択ですか!(敬称略すいませーん)
『リリはち』は私も面白かったですよ、あっちもあっちで面白いんですが、こちらはあまり見ている人がいないみたいで。かえるさんがこれをご覧になってくれて、とっても嬉しいです
話は変わりますが、私も週末に『レポ』見て来ましたよ〜★
花の映像、かえるさんは何を思いましたか?
私あの映像で、かなり心を奪われましたよ。見たことがあまりないような映像でしたよね。不思議で幻想的なCGでした。
「ダイアナの選択」
「ダイアナの選択」、機内上映で観ていました。
愛する夫と娘と暮らすダイアナは、高校に通っていた頃の自分を常に近くに感じながら暮ら…
ダイアナの選択
『「どっちを殺す?」 彼女の答えが引き金になり、 新しい人生が始まった、はずだった。』
コチラの「ダイアナの選択」は、不安定で多感な17歳のダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)、学校銃乱射事件で、親友か自分の「どっちを殺す?」という”選択”を迫ら….
わぁ〜。サスガ!とらねこさん。
素敵な感想ですね〜。
あたしはまだこの映画について考えがどうも
まとまりきってないような感じなのですが、
おっしゃるようにラストがどうとかこうとか言うよりも
さまざまな心理描写が冴えわたっておりましたよね〜。
ダイアナの選択
原題 THE LIFE BEFORE HER EYES
製作年度 2008年
上映時間 90分 映倫 PG-12
原作 ローラ・カジシュキー 『春に葬られた光』(ソニーマガジンズ刊)
脚本 エミール・スターン
監督 ヴァディム・パールマン
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ユマ・サーマン/エヴァン・…
ダイアナの選択 / The Life before Her Eyes (2度目鑑賞)
2007年トロント映画祭で観て来た、
永遠に大好きな女優、ユマ・サーマン主演のこの映画、ついに日本公開{/ee_3/}
今度は字幕付きで再観してきました。
都内14日から公開、全国順次ロードショー。
今回はネタバレで書くので、気になってる方は観たあとで読んでネ{/star/}
…
とらねこさん
こんばんは!
お久しぶりになっちゃいました!!
とらねこさんもこの作品、よかったみたいで嬉しいなー♪
フクザツなストーリーで重いケド
悲しみの残るラストが切なくて良かったナ。
miyuさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうですね、心理描写が良かったですよね。
考えがまとまってないですか。
私はヘヴィーな映画と言われるモノが、あまり重さを感じずすんなり見れちゃうんです・・何故か。
migさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
migさんこちら、二年も前から好きだったのですね!
タイトルが変わったことは、migさんの記事を読んで知りました。
本当、なかなか切なくて良かったですね。
migさん、こういうの結構好きなんですね!
『バタフライ・エフェクト』確かお好きでしたよね。
私も好きでしたよーw
こんばんは!
2つの人生の、現在の方に違和感を感じながらも、
あの花を持って受付を通り過ぎるまで自信がもてませんでしたので、
もう終盤はアタマフル回転でした〜。
17歳に訪れた試練でしたが、これが30であっても、、
その鋭い投げかけにちゃんと答えられるか、自信が無いですよね。
とっても好きな作品になりました
kiraさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
本当、最後になって、いろいろなシーンを頭に思い巡らせましたよね。
ただ、あの花を持って通り過ぎるシーンは、最初はダイアナの答えが聞こえないんですよね。
もう・・・そんな究極な質問するな!って感じですよね。
自分だけ助かればいいや、って助かって生きてたら、すごいトラウマになっちゃいそう・・。
ダイアナの選択
高校生のダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)は、退屈な毎日に不満を募らせる反抗的な不良少女。
内気でまじめなモーリーン(エヴァ??.
とらねこさん、こんにちは。
>振り向いた瞬間の映像
ここ気になっていたんです!
教授のポールと「ポールとデート」!
なるほど〜スッキリしました〜ありがとうございます♪
私も色とりどり様々な花の映像に最初から引き込まれました。
これにもちゃんと意味があったんですね…
良い映画でした。
オリーブリーさんへ
初めまして!コメントありがとうございました!
そうなんですよね、私も振り向いた映像は、気になりました。
「ポールとデート」は、あの日トイレに行く前に、渡り廊下で交わしていた会話がもう一度最後に出てくるんですよね。
花が幻想的な姿でクルクル変わる映像、とても魅力的でしたよね。
心を惹かれました♪
ダイアナの選択:THE LIFE BEFORE HER EYES
これは現実?それとも夢なのか?
「どっちを殺す?」彼女の答えが引き金になり、新しい人生が始まった、はずだった。
最後のドンデン返しに正直驚いた。それまではこの物語を素直に捉えていた。ところが、そうではなかった。ダイアナは本当に存在したの?(物語の中では存…
「ダイアナの選択」
これは、ネタばれなしで書くのは難しい映画です・・見終わって反芻すること幾度・・
ダイアナの選択
The Life Before Her Eyes(2008/アメリカ)【DVD】
監督:バディム・パールマン
出演:ユマ・サーマン/エヴァン・レイチェル・ウッド/エヴァ・アムーリ/オスカー・アイザック
「どっちを殺す?」
彼女の答えが引き金になり、
新しい人生が始まった、はずだった。
原…