ベンジャミン・バトン 数奇な人生 ▲34
若返っていく、か・・・。このアイディア、ある種の羨ましさを感じてしまわない?
少なくても、年を取っていくのは一つの恐怖だったりするから。
ストーリー・・・
1920年代にF・スコット・フィッツジェラルドが執筆した、80代で生まれ、そこから若返っていくひとりの男の姿を描いた短編の映画化作品。普通の人々と同じくベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)にも時の流れを止めることはできない。ニューオーリンズを舞台に、1918年の第一次世界大戦から21世紀に至るまでの、ベンジャミンの誰とも違う人生の旅路を描く・・・
’08年、アメリカ
デヴィッド・フィンチャー監督、脚本はエリック・ロス(『フォレスト・ガンプ 一期一会』
脇役やエピソードの描き方がいかにも『フォレスト・ガンプ〜』を思わせる作り。サラっとしているけれども、一人ひとりのキャラクター描写を捉えるのに嫌味がなく、それぞれの脇役に光るものがある。
そして、一人の長い人生を描いたもので、それぞれのエピソードに無理がなく、
軽く感じさせる割に、ゆっくりじわじわと良さが分かる辺りが。
一人の長い人生を描いた作品の中で、忘れられない作品の一つというと、私にとってはやっぱり『フォレスト・ガンプ〜』だったりする。甘い物語、と貶されてしまうこともあるだろうけれど、あの、時代を駆け抜けるあの感じが、大好きだった。
ベトナム戦争前後のあの感じも。
こちらの作品も、長い人生を描いた作品だからこそ、そのサラリとしたテイストが生きてくる気がする。デヴィッド・フィンチャーらしからぬ、正攻法で攻める物語。
ブラピのCGは、見ていて楽しくて、それだけで楽しめてしまう人も居そう。
何より、人より老成した姿のベンジャミンを見ているだけで、彼を応援したくなってしまうのが不思議だ。
ブラピにしろ、ケイト・ブランシェットにしろ、CGを使う箇所は使っているのだけれど、それぞれの役者の演技で見せよう、とする部分も十分に感じられる。
ケイト・ブランシェットなんか、ギリギリまで演技で見せてやる!という役者なだけに、最初のナレーションすら演技でこなそうとする。
『フォレスト・ガンプ〜』を思い出してしまうエピソードとして他の点を挙げるなら、一人の女性を一生かけて、本気で愛するところ、かな。
もちろん、他の女性との出会いもあるのだけれど。
こうして、長い人生で、一人の人を愛した物語を見ると、私は時々、切ない思いに駆られてしまう。
私たちは、長く続く時間の中で、本当はそれが限られたものだと知りながらも、一つの思いを貫くことが出来なくて、大事なものを見失ったり、純粋に愛する気持ちを失ってしまったりするから。
ベンジャミンが常に抱えていた、孤独な気持ちというものには、なんだか共感してしまったな。
人と基本的には隔たりを感じながらも、人を愛することを恐れない。ここが好き。
あと、一人前に冒険に出る姿、船乗りになるのを決心するところは、見ていて応援したくなった。
ネタバレで語らせてもらうと:::::::::::::::
元は老人の姿で生まれたベンジャミンも、少年になって記憶を思い出せなくなってしまう。それは、医師の判断で「認知症の症状」ということだった。確かに、若返って脳が“縮小”するのも、我々が老人になって、脳が“退化”するのも、同じなんだ。
私達が老人になって、子供へ戻っていくのと、どこか似通っていたね。
そんな風に描かれていたと思う。
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コメント(24件)
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僕達は産まれて、オムツをして育ち、またオムツをしたまま
この世を去るんです。
始点も終点も同じ、みたいな。
それはさておき、
主人公のセリフ「中身は変わらないさ」
この言葉は「エレジー」での老教授の自己分析と
重なるものがあり、考えさせられました。
あと、冒頭の時計職人のエピソードには不覚にも
涙が抑えられませんでした。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
『人生は素晴らしい。』
コチラの「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は、1920年代に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドの短編小説を基に、80歳で生まれ、若返っていく男の物語を映画化した2/7公開のヒューマン・ファンタジーなのですが、試写会で観て来ちゃ….
yesさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、人間は最後おむつをして終わる、
これ一緒なんですよね。
>中身は変わらない
私は、『エレジー』では「変わらない」と思っていても、変わることが出来たところが感動した、と思ってたりして。
ここで使われているのとはちょっと意味が違うかな、なんて思うんですよね。
冒頭のエピソードも、さりげなくてよかったですよね。
最後にちゃんとまたあの時計が・・・。
1年半ぶり位ですね!笑い^^!
お久しぶりです!お元気ですか?
ダ・ビンチ・コードの解説のミナミの吟遊詩人です。覚えていらっしゃいますでしょうか?
ベンジャミン・バトン 数奇な人生ですか、う〜ん、成程!「リバー・ランド・スルーイット」依頼彼を見ていないな〜!笑い^^!
因みに、黒猫は原作を高校生の時に読んで(一部抜粋を)いましたが、今回映画になっているとは知りませんでした。是非とも見たいと想います。古いのは見たことありますが、さて如何に!?
そして、今年の5月に、ダン・ブラウン原作「天使と悪魔」が公開予定です。実は、こちらからダ・ヴィンチ・コードへとストーリィーが展開する運びになっています。私は、こちらの方を評価していましたが、嬉しい限りです。トム・ハンクスは問題外のミスキャストですが!?笑い^^!
ということで、「天使と悪魔の解説」という新ブログもすでに立ち上げちゃいました。笑い^^!
http://angels-demons.seesaa.net/ です。
いずれ来るべき日の参考になれば、・・・、と厚かましくも宣伝に、映画と云えば「レザボアCATs」なので来た次第です。125個目のブログです!笑い^^!
長々と失礼致しました。
グッドラック!!
The Curious Case of Benjamin Button (2008)
邦題:ベンジャミン・バトン 数奇な人生
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・フレミング、イライアス・コティーズ、ジュリア・オーモンド、エル・ファニング、タラジ・P・ヘンソン
….
とらねこさん、こんばんわ!
そうですね、フォーレスト・ガンプと結構並べてしまう作品でしたね。私はティム・バートンの「ビッグ・フィッシュ」とも少し似ているとも思ったんですが。
本当にあの人を愛する奇跡がと孤独が強くて、ベンジャミンが逆に年を取る事よりもそっちに何だか心を打たれますよね。
私は凄く好きな作品でしたが、とらねこさんも結構感動できた様子ですね?
ブラピの年をとっていく(若返っていく)様子も素晴らしかったですよね。
インナーな話であるとはいえ、今の技術だからこそ実現できた作品ですよね。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
仕事を早退させてもらって、新宿厚生年金会館に『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の試写会に行ってきました。
早退予定の時間前に3時間に及んだ電話でのテクニカルサポートの案件があって、予定時間に退社できないはその対応が長引いた分昼休憩もとれないで踏んだり蹴っ…
ミナミの吟遊詩人さんへ
こんばんは〜♪お久しぶりです、4度目ぐらいでしょうか。
こちらこそ、ご無沙汰しております。
私のこと覚えていてくださって、ありがとうございます!
今度新しいブログを立ち上げたのですね、営業活動、ご苦労さまでございます!
『天使と悪魔』、またロン・ハワードでトム・ハンクスのコンビなんですよね〜。私もつい2週間前に、お友達のブログでこの映画の情報を知ったところでした。
ダン・ブラウンがお好きなのですね〜。
私は『ダ・ヴィンチ・コード』はDVDで見たんですが、読書感想記事しか書いてないんですよね。
今度の作品も、映画はもしかしたら見に行かないかもしれない・・・という、頼りなさで申し訳ありません
もし見たら、TBさせていただきますね。
それにしても、125個めのブログですか、すごいですね!(笑)
アヤさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、普通に面白く見れましたよ。
そう言えばアヤさんは、こちらの作品がすごくお好きなんですよね!
フォレスト・ガンプは、みんなやっぱり思い出されるのでしょうか?
『ビッグ・フィッシュ』いいですね、懐かしい!私も好きでしたよ。
ベンジャミンの生き方とか、感じ方が、素直でまっすぐでいいんですよね。
いいヤツだなーと思います!
まりっぺさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
そうですね、今の技術だからこそ、出来た作品ですよね。
CGも派手派手しく使われているより、こうした使われ方の方が、より面白く感じますね。
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を観たぞ〜!
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を観ました『セブン』『ファイト・クラブ』に続いて3度目のコンビを組んだデヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演で贈る感動ヒューマン・ファンタジーです>>『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』関連原題: THECURIO…
こんばんは。
私はこの作品を観たとき、「フォレスト・ガンプ」よりもむしろ、(映画じゃなくて小説ですが)「アルジャーノンに花束を」を思い出してしまいました。
やがて必ずやってくるであろう、他者とは違った形での「老い」が、しかも周囲と逆方向であるが故に、(子どもや妻との年齢差という点で)倍速度で進んでいく哀しみ。私も「絶対に永遠には続かない、今の幸せ」を感じれば感じるほど、「やがて失われてしまう」ことに深い喪失感を覚えてしまうタイプの人間であることもあって、その「絶対に抗えない変化への恐怖や哀しみ」に強く共感し、感涙してしまいました。
マサルさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
へー、『アルジャーノンに花束を』って、この話を思い出すような小説なんですね。
そう言えば、「忘れられない小説」に時々挙げられることがある作品ですよね、これって。
私は、高校一年の時、友達が読んでいたのを思い出しますが、自分はまだ読んだことないんですよね。
面白いんだったら、読んでみたいなあ。最近小説がサッパリ読めなくて。
マサルさんは、どうやらこの物語をストレートに感動されたのですね。
私は、老いがやって来ない部分に関しては、ほとんど心を動かされることがなくて・・。
逆に、世間並みの人と同じような感覚を持っていないところや、ある種の諦念ぶりに、無性に羨ましさを覚えたりもしました。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
『フォレスト・ガンプ 一期一会』の脚本家、エリック・ロスが本作の脚本を担当したことで、「マイノリティである主人公が多くの人々と心を通わせる、遍歴一代記」という点や、脚がつぶされたり切断されるところが泣かせどころだった
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
第81回アカデミー賞の最有力候補作品、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」です。TOHOシネマズ六本木のシアター2で観賞しました。
この作品、予告を観た段階から興味があったの…
えと、「アルジャーノンー」ですが、私はそれほど好きな小説ということでもありません…。嫌いというわけでもありませんが。ただ、なぜかこの映画の観賞中には思い出してしまいました。世間的には非常に評判のよい小説ですから、まぁハズレってことはないのではないかと思います。ハイ。
マサルさんへ
こんにちは、再度訪問ありがとうございます。
あ、それほど好きという訳でもなかったのですね。
なぜこの物語を思い出されたのでしょうね?
自分は『アルジャーノン〜』というと、氷室京介を思い出したりして・・・。
ベンジャミン・バトン??数奇な人生??
「ベンジャミン・バトン??数奇な人生??」を観てきました。
生まれたときから若返ってゆくベンジャミンと、その周囲の人々の人生を描いた感動作です。
この作品を観ながら、「老いる」ということを意味を真剣…
「ベンジャミンバトン 数奇な人生」
人生は教訓のてんこ盛り。「人生はチョコレートの箱のようなもの。食べてみるまで分からない」と言ったのはフォレストガンプの母(だったかな?)。本作の主人公・ベンジャミンの育ての母は「人はみな生まれて死ぬ。たどる道が違うだけ」と言う。ガンプと同じように、その…
ベンジャミン・バトン 数奇な人生(アメリカ)
ピチピチのビラッド・ピットが観られる!
ということで、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観ました。
( → 公式サイト
)
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・フレミング、イライアス・コティーズ…
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
人生は素晴らしい
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
文豪アーネスト・ヘミングウェイ同様、「失われた世代」に属する米国の著名な純文学作家、F・スコット・フィッツジェラルド(1896年―1940年)
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ベンジャミン・バトン
監督:デビット・フィンチャー 主演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット他 …