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ロルナの祈り ▲30

ロルナの祈り上手く言えないんだけど、とても好きな話だった。

        ストーリー
アルバニアからベルギーへやって来たロルナ(アニタ・ドブロシ)は、この地で国籍を得て暮らしていくため、ブローカーのファビオ(ファブリツィオ・ロンジョーネ)の手引きで、ベルギー人青年クローディ(ジェレミー・レニエ)と偽装結婚し、共に暮らしている。クローディは麻薬に溺れる生活から抜け出そうと、ロルナに希望の光を見出していた。だが、ロルナを使って国籍売買しようとしているファビオには、ロルナが国籍を取得したら彼女を未亡人にしてしまう計画があった・・・

’08年、イタリア・フランス・ベルギー
ダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ)

初めこそ、ロルナは元々この計画を知っていてこれに参入したわけだから、クローディと結婚した時は分かっていてやったはず。
移民である彼女は国籍取得のために、重度の麻薬中毒者であるクローディと結婚。彼が死ぬのを待つという状態。
でも彼にとっては、ロルナの目的を分かっていたにしろ、そんな自分のそばに居てくれる存在で・・。彼女が自分の手助けをしてくれると普通に信じている。

ロルナもタフではあるけれど、普通に善意を持った人で、だからこそ、クローディが努力をしている姿を見ながら、その人の死を待つなんて出来なくなってしまったのだと思う。
それは普通に“ラブストーリー”なんていうものではなくて、人間の尊厳とか、一人の命の重さというものに近いように、初めは自分には思えたものだった。

彼女も初めは頑なに、クローディに対してほとんど素っ気無いやり方で、重度の麻薬中毒患者である彼の手伝いをする。恋人の居るロルナには、誰か他の人に触れられるのすら嫌がるような、そん風にすら感じられつつ。
だが、彼と離婚するのを強く望むロルナの姿の裏には、別の思いがあって・・・。彼女と結婚しているからこそ、クローディが死ななければならないのだとしたら、自分はこの人から離れなければならないのだ、と考え、そんな行動に出ているのだろうか。

暗い裏世界の話でトーンも重いのに、不思議に目が離せない。彼女は感情を隠しているので、ほとんどのシーンは無表情のまま、彼女の行動だけがスクリーンに映し出される。
その時の彼女の気持ちはどんなものだったのだろうとか、彼女がこういう行動を取るのはどうしてなのだろうとか、想像力を使いながら物語を見ることを、私達に強いる。こういうタイプの作品は好きだ。

彼女は想像妊娠をして、その子どもをクローディの子どもだと信じる。クローディを死なせてしまったことを悔やむ彼女の贖罪であるかのようでもある。
むしろそれは彼女の体内に残された唯一の良心であるかのようだ。彼女の内に芽生え、嘘だらけのこの世界の中でただ一つ大事にするべき、残された何か。

私は、『そして、一粒のひかり』や、『4ヶ月、3週と2日』、『堕天使のパスポート』をなんとなく思い出してた。『ある子供』も。

こうして今映画を見ている自分より、ずっと彼女の方が“生きている”という気がした。間違いを犯してしまったかもしれないけれど、死んだように生きている自分なんかより、“生きて、動いている人”、というような。

自分はそろそろ変わらなくては、と思った。

ロルナの祈り@映画生活

 

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コメント(11件)

  1. 『ロルナの祈り』 Le silence de Lorna

    赤ずきんちゃんは狼に食べられなかったよ。
    アルバニアからベルギーへやって来たロルナは、麻薬中毒のベルギー人青年クローディと暮らしていた。初っ端からお金のやり取りが映し出される。340ユーロ。銀行の窓口にいるロルナ。そして、帰宅して、代金をクローディから…

  2. とらねこさん、こんばんは。
    ケンローチは観なくても、BOY-Aなんかはご覧になっていたから、ダルデンヌ兄弟はどうかなぁと思っていたのですが、記事があがったので嬉しいです。
    というかダルデンヌ兄弟作品は観る枠なのね。
    でもって、好きな話ということも嬉しく。
    うーん、確かに、無為に日々をやり過ごすばかりの私よりも、ロルナの方が生きているってカンジ・・・

  3. どもっ
    ダルデンヌ兄弟ですね
    近場でやっていたら観たいんですけどね・・・
    作風をちょっと変えた(?)なんて、なにかで読んだか聴いたかしたんですけど
    どーだったですか?
    ぼくは「息子のまなざし」が好きです

  4. かえるさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    そうなんです、予告で見てずっと楽しみにしてました。
    実はこれ、二日目に見に行ったのですが、かえるさんは居らっしゃるかな?と思って、劇場をくまなく探しましたが、バッタリお会いできず。。でした!
    ロルナの生命力溢れるアグレッシブさが、行き場を無くしてしまう辺り、心が痛くなりました。
    私はBOY-Aより、どこかギドク的なものを感じたりしてました。
    不思議ですね、この作品について語るのってなんだか難しいのです。

  5. サイさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    へえ、サイさんのくださるコメントは意外なことが多くて、驚いてしまいます!
    私、まだ『息子のまなざし』は見てないんですよ・・
    前作の『ある子供』が初だったんです。なので、以前とどう違うのか、までは語れないんですが・・
    『ある子供』と比較して思うことは、こんなところでしょうか。
    人と人とのコミュニケーションの溝、思惑の違いから招く出来事・・そして結果、悲しい終わりを迎えますが・・
    こちらの作品では、かろうじて繋がろうとする人間の弱さ、哀しさ・・悲惨ではあるけれど、信念と希望とが感じられて、自分はこの作品がより愛おしく感じます。

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