rss twitter fb hatena gplus

*

妻二人 ▲19

妻二人’67年、増村保造監督
原作: パトリック・クエンティン
出演: 若尾文子、岡田茉莉子、高橋幸治


夢を追っている頃の自分がかつて愛した女は、自由気ままに生き、だがいつも体当たりで不器用な順子(岡田茉莉子)。自分と別れた後、どうしようもなく男運の悪い女・・・。見返りを求めず、貧乏もものともしないが、常に愛に飢えている。


健三(高橋幸治)は夢を諦め、大きな雑誌社の社長令嬢である、道子(若尾文子)と結婚する。彼女は非の打ち所のない女で、常に清く正しく生きようとする。だが正直堅苦しく、自分には少し荷が重いような感じだ。


ある時、殺人事件が起こってしまう。それは本来正当防衛であったが、これが明るみに出ると、彼の生活の全て・・・妻道子と、雑誌社の商売全てを失うことになる。
道子の父親である社長、永井昇平(三島雅夫)の命令により、偽のアリバイを立てるが、これによって、自分がかつて愛した女、順子のアリバイがなくなり、彼女が警察に連行されてしまったのだった・・・。


なかなか面白く見れるミステリーだった。
一見幸せで完全無欠に思えた生活が、ある事件を追及していくに従って、それまで見えては来なかった、真実の裏側が見て取れることになる。


完璧な女性に見えた妻、道子がなんと頼りなく思えることだろう。
何も持っていない順子は、男運が悪く、どうしようもない男に自分を捧げ、いつもしくじってばかりいる。
だが、逆境にあって、なんと堂々として見えることだろう。


女二人は、正反対であるものの、その実、二人ともただ、愛されることを望んでいた。
これが分かるラスト間際では、何となくジーンと胸に来る。


主人公である健三(高橋幸治)より、見所となるのはこの二人の女性の方だ。
こちらが要、と言わんばかりに男の存在感がまるっきり薄っぺらい。演技も下手だ。だが、増村のことだもの、きっとこれは演出に違いない。

おかげで、二人の女性が生き生きと、際立って美しく見えた。
そのため、見事な構図が見て取れるのだった。

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

4,211

コメント(6件)

  1. こんばんは〜!アンバーです。
    行った店2軒とも気軽な値段なのに美味しくて、貧乏なわたしは覚えておこうと思いました♪
    完璧な妻はやっぱ堅苦しいんですね。血が繋がった家族までそう思ってるんですものね。
    乗り換えて成功したから恩は感じてたようだけど、なんか責任・義務みたいで哀しい夫婦だなぁ、なんて。
    TB失敗したかもです。。

  2. アンバーさん★
    おはようございます☆コメントありがとうございました。
    お付き合い下さりありがとうございました★
    今回は私のお気に入りのカジュアルで美味しい店にお連れしてみました♪
    でも本当はアンバーさんを連れて行きたいのは、「さぼうる」みたいに昭和初期のイメージの残る、日本の情緒あるお店が良いのですけど。また何か考えておきますね♪
    そうそう映画の話ですが、男にとっては悩める問題ですよね。
    若く成功していなかった貧乏な時代を支えてくれた昔の女を見捨てるのも、男らしくはないし。かと言って今の自分を愛し、何の落ち度もない理想の妻を裏切るにも忍びない‥

  3. 初めまして!
    アリバイ会社をやっているものです。
    面白そうな作品ですね!!!
    見てみたいと想います!!!
    不景気ですが、お互い頑張りましょう!!
    また遊びに来ます☆

  4. アリバイ会社さんへ
    コメントありがとうございました。
    申し訳ないのですが、URLを消去させていただきました。
    これ、面白いですよ!
    若尾文子が好きなら、必見です。

  5. コメありがとうございます。
    「妻?二人」は主役で印象に残りますが、社長や妹やお金を搾取している社員夫婦などの脇役も味がありました。

    角川シネマ新宿では、冬にまた若尾さんの特集をする(同じものかも)そうなので、その気になりましたらチェックしてみるのもいいかも。

    http://bojingles.blog3.fc2.com/blog-entry-2936.html

  6. ボーさん

    コメントありがとうございました。
    増村は、サブテキストがメインに対してがっちり機能していて、一つのテーマがより分かりやすくなるようなロジカルさがありますよね。

    若尾さんの特集、またやるんですね〜
    正直、角川じゃなくて別のところでやって欲しいな、なんて言うのもありますが…
    若尾さんファンというより、増村ファンな私ですが、
    チェックしてみますー




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。

前の記事:

次の記事:

Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑