ワンダーラスト ▲16
マドンナには、完全に彼女なりのビジョンというものがあったのだろう。
よくよく考えれば、前夫が二人とも、映画監督として素晴らしく独特なテイストを持つ二人なんだなあ。
ストーリー・・・
ロンドンでルームシェアして暮らすAK(ユージン・ハッツ)、ホリー(ホリー・ウェストン)、ジュリエット(ヴィッキー・マクルーア)。それぞれ夢を追って日々を過ごす3人だが、巡って来ないチャンスを手にするため、次第に身を落としていく。ミュージシャンを目指すAKは、危険なアルバイトをしているため、怪しい客が毎日、彼を訪ねて来ている。バレリーナを夢見るホリーは、生活費を稼ぐためにストリップバーで働き始める。アフリカ難民を救済したいジュリエットは、勤務先の薬局から薬を盗み出していた・・・
’08年、マドンナ初監督作品。
イギリスで作った映画で、しかもどことなくインディペンデント風の作りを感じさせる辺り、マドンナにはきっとやりたいことや、撮りたいビジョンというものがハッキリ見えているのを感じる。
ただ、マドンナのその考える“行き着く場所”と言おうか、その辺りが、観客に冒頭からも見えちゃってる。
ここへ行きたい、これが表現したい、というのがあって。
でもそれはとりあえず大きな一まとまりとして持ち続けながら、そこへ行くためにコツコツとした努力を積み重ねないといけない、っていうところで、テーマが最初からバレバレになってしてしまっている。
そのため一本調子になっていて、大きな波もなく、
大きな跳躍もないから、着地する喜びがなくなってしまった。
物語的カタルシスが感じられなかったというか。
ただ一人「表現者でありたい」マドンナの、散文的な瞬間瞬間の魅力があるのみ。
出てくる人はそれぞれに自己主張をするけれど、まるで、言いたいことを大声で主張せずには居られないマドンナ自身の姿のよう。
そのくせ、堕落の描き方には、まだまだヌルい気がしてしまって。
とても*せわしないカットは、前夫が撮っている背中を見て、それをお手本にしたのかな?なんて穿った見方をしたくなった。
それにしても、カットは細切れ過ぎるんじゃ?見ていてちょっと疲れた。
とは言え、見所はやはりマドンナが惚れこんで主演に据えた、AK役のユージン・ハッツ。
’08年のフジロックにも来たという、“ゴーゴル・ボルデロ”というジプシー・パンクバンドのフロントマンだとか。
彼のルックスも、歌も、申し分なし!
やっぱり、これだけカッコよく歌い上げられたら、それだけで何かを体現しているかのよう。
さすがマドンナ、実際、センスや目の付け所はいいんだよなあ、なんて思ってしまったり。
2009/01/30 | 映画, :青春・ロードムービー
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コメント(16件)
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>テーマが最初からバレバレになってしてしまっている。
>大きな跳躍もないから、着地する喜びがなくなってしまった。
なるほどぉ〜 確かに思い返してみると、山場というか盛り上がりはあまり感じられなかったです。
哀生龍は逆に、初監督作って事で頑張り過ぎて自分の技量以上の事をやろうとして失敗するより、確実に出来ること・得意な分野に絞ってまとめたところが見やすく感じたんです。
>見所はやはりマドンナが惚れこんで主演に据えた、AK役のユージン・ハッツ。
ハッツ目当てに見に行ったので、彼的に大満足♪♪
また彼のCDを買い足してしまいました(笑)
哀生龍の気持ちが彼に集中し過ぎて、作品全体の出来は気にも留めていなかったってことかも?
哀生龍さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
>初監督作って事で頑張り過ぎて自分の技量以上の事をやろうとして失敗するより、確実に出来ること・得意な分野に絞ってまとめたところが見やすく感じた
うんなるほど、それもありそうですね。
普通にデビューした映画監督さんだったら、一作目に自分がずっと今まで言いたかったことを、溜めて溜めて一気に噴出した、という感じなのでしょうけど。
私は、カッコいい映画を作ろう!カッコいい画を撮ろう!という気概は十分に感じられましたよ♪
>ユージン・ハッツ
哀生龍さんは、彼目当てだったのですね!確かに、すごくいい雰囲気を持った人でしたね。
誰かに似てそうなんだけど、誰だったかなー?とずっと思ってました。
CDまで購入されたんですね!映画でかかる感じですと、荒削りなサウンドがすごくいいですよね♪
とらねこさん、こんばんは。
僕はこの映画、映画館で観ようか迷ってスルーすることにしたんですが、評判はいいみたいですね。
でも、とらねこさんのレビューを読むと案外そうじゃないのかも?と思いました。
歌手のマドンナは大好きでライブにも行ったりするんですが、どうも映画関係のマドンナってあんまり魅力的じゃないんですよね。
脇役だった『プリティ・リーグ』辺りがいちばんいいポジションだったような気がします。
でも彼女の先物買いのセンスは抜群だと思うので、キャストは気になります。
ユージン・ハッツはビンセント・ギャロを思い出してどうも苦手ですが…。苦笑
『ワンダーラスト』を観たよ。
感極まって泣かずにはいられなかったシーンが、ひとつだけあった。
『ワンダーラスト』
“FILTH AND WISDOM”
2008年・イギリス・84分
監督・製作??.
Elijahさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
おお、Elijahさんは考え中なのですね!私は王子がどんな感想を書かれるか知りたい、という気持ちも山々・・・で、見てみて欲しい気持ちもあったりして♪
マドンナ、よく考えたら前夫が二人とも素晴らしいんですよね・・。マドンナと結婚時代は振るわない二人ですけど★
私も歌手としてのマドンナはすごく好きだったんですよー、中学生・高校生の頃。
今でもカラオケで歌えちゃうぐらい(笑)
で、マドンナの出演作で良かったのは、『プリティ・リーグ』ですか、うん確かにこれ良かったですね!私も結構好きでした。
あと、自分がマドンナが出ているにもかかわらず好きな作品は、『エビータ』『フーズ・ザット・ガール』『マドンナのスーザンを探して』『プリティ・リーグ』『フォー・ルームス』・・・かなあ、と。
ユージン・ハッツはギャロ似ですか、うん、確かにちょっと雰囲気とか、カリスマ性があるところが似ているかも!
あれ、王子はそんなにお好きじゃないですか、ギャロ・・
とらねこさん、こんにちは♪
>散文的な瞬間瞬間の魅力があるのみ。
>とてもせわしないカットは、前夫が撮っている背中を見て、それをお手本にしたのかな?
↑この辺、とても同感です。
カット割りが細かいせいか、忙しくて疲れる部分がある映画でしたね。だからといって、内容に重みがある、というわけでもなく……。
ただ、とらねこさんのおっしゃるようにセンスのよさは垣間見られるし、はっと目を惹く魅力的なショットもところどころにあるんですよね。
なので、もしマドンナがまた映画を作ることがあったら、きっと観てしまう自分がいそうです。
香ん乃さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>カット割りが細かいせいか、忙しくて疲れる部分がある映画でしたね。だからといって、内容に重みがある、というわけでもなく
そうなんですよね、カット割がすごく激しかったですね。意味なくたくさんカットしてましたね。
フィルムをブツ切りにするのを、なんだか喜んでやってそうな感じでした。
そんなにメッタ切りにするのが好きなら、ホラーでも撮ればいいのに・・・
でもおっしゃる通り、ハッとするような良いショットもありました。
大体がユージン・ハッツを捉えた画や、彼の音楽が流れるところ、この辺りが良いんですよね。
でも、彼のキャラクターを描くのに、もう少し自分で意識的にこうしようというラインを決めて描けていれば、
ホリーと最後に抱き合うシーンに意味を与えられることも出来たと思うんですよね。
それがないから、せっかくのあのシーンが、大して心に響くこともなく、唐突感があるだけだったんですよね。
次にマドンナが監督することがあったら・・自分はどうでしょう。DVDで十分かな、と思います。
その前に、ガイの『ロックンローラ』が見たいですね!
ワンダーラスト
ガイ・リッチーから才能を吸いつくした(毒)マドンナの初監督作『ワンダーラスト』を観てきました。
★★★★
やば、マジで吸いつくしたのかも。
マドンナと結婚してからのガイ・リッチーは才能が枯れた感がありますが、マドンナは初めてのメガホンでこんなに面白い映画を…
トラネコさん こんにちは〜
やはりトラネコさんなら コチラの映画観られているだろうな〜と思ってきてみたら、、ありました!
でもちょっと厳しい意見なんですね。
私は、そのゴチャゴチャした所、駄目な人が駄目な人なりに中途半端でも足掻いているけれど、それはそれで、楽しめました。
品のないところ、雑多なところ含めて、マドンナらしいなと思いました!
コブタさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
はーい、見ました〜
そうですね、ちょっと厳しくなっちゃいました。
>品のないところ、雑多なところ含めて、マドンナらしい
うーんそうですね、品がない作品が作りたかったのだと思うのですが、まだまだ堕落度が足りなく感じてしまいましたw
マドンナは、もっと本気出す必要があると思います。本気でこれが表現したくてたまらないんだ!これが言いたいんだ!という気合を感じなかったんで
すよね。
それより、「カッコいい映画を撮る私」が“一番言いたいこと”なのかもしれません。
ワンダーラスト を観ました。
お天気が悪いときは、特にプランBの発動の多い私です…。
ワンダーラスト
公式サイト。 マドンナ監督、ユージン・ハッツ、ホリー・ウェストン、ヴィッキー・マクルーア、リチャード・E・グラント。原題:Filth and Wisdom。映画の文脈で訳せば「淫らと真っ当」ぐらいだろうか。けれど、邦訳の元になったWonderlustの「たまらない渇望」ぐらいがむし….
ホリー・ウェストンの目が綺麗でした。ストリッパーやらせても品がいいから余計にいい。
佐藤秀さんへ
そうですね!ストリッパーと言っても脱いではいませんでしたけど。
ブリトニーの1stシングルを、まんまブリトニーのPV状態で踊るシーンが好きでした。高校生の制服姿で髪も二つ縛りで踊るホリーでしたね。
マドンナってそう言えば、ブリトニーのデビュー当時、すっごく褒めてましたが。あれって本気だったんですねー。
ワンダーラスト
センチメンタルな気分を引きずりながら、映画館へGO。
シネ・アミューズがヒューマントラスト渋谷って名前に変わってました。
なんか、ヒューマンって言葉嫌いなんだけど…
映画館の名前にまで文句言いたくなるなんて、どんだけ思春期してんだよ、自分!
『ワンダー….
ワンダーラスト
『ロンドンの片隅。恋をする。 現実を知る。でも、夢を見つづける。』
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