K-20 怪人二十面相・伝 ▲3
「怪人二十面相」と聞いたら、江戸川乱歩好きな私は、これは見なければ!と。
と言っても私自身、このシリーズにそれほど詳しい訳ではないのだけれど。
しかしこちら、原作はまた別の物語だったのね。
ストーリー・・・
1949年、帝都。社会は、19世紀から連綿と続く華族制度によって富める者と貧しき者の二極化がなされていた。曲芸手妻師・遠藤平吉(遠藤平吉)は、小さなサーカス小屋で人気を博していた。サーカス団のメンバーは、皆貧民街で暮らす人々だ。羽柴財閥の跡取り・羽柴葉子(松たか子)は、名探偵・明智小五郎(仲村トオル)との結婚を間近に控えていた。そんな折、二十面相から羽柴家へ一通の予告状が届く。「結納の儀、当日。羽柴財閥が持つ、ブリューゲルの『バベルの塔』を頂戴する」・・・
’08年、佐藤嗣麻子監督。
原作は、’89年、『怪人二十面相・伝』、北村想。
へえ〜これ、スタッフが『ALWAYS三丁目の夕日』だったんだ。
そう言えば、去年のお正月頃にも『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が公開されていたし、これは今後、日テレ映画としてお正月のお年玉作品を狙っていくのかな。
だとしたら、題材としては当たりだったのでは。
VFXを使って、派手な映像効果を見せつつも、古い日本情緒の画を映し出し、どこか懐かしさを誘う・・・
これらを基本に狙うとすれば、江戸川乱歩原作の少年探偵団シリーズを用いた、パロディ作品は、まさにピッタリの逸材だ。
ここでは、『ALWAYS』のような、凝って作り上げられた昭和初期の美術の代わりに、
「もし、第二次世界大戦が行われていなかったら」という別の世界を構築しているのね。
この大前提のおかげで、乱歩のパロディ作品として、好きなことをやってしまっていても、どこか許せてしまうような気がする?
物語の主筋で楽しませながらも、今回特に力を入れて描かれているのが、アクション。このアクションが、なかなかに見ごたえがあって、元々サーカスのスターだった遠藤平吉が、マジックを見せたり、身体能力の機敏さを見せつけるところなんて、娯楽色タップリで掛け値なしに楽しめる。
怪人二十面相に仕立て上げられてしまった自分の汚名を晴らすべく、経験値を上げて強くなっていく姿は、なかなかに楽しめるところ。
物語が進めば進むにつれ、次第次第に強くなっていく、明智小五郎に対する思い、これを見事に裏切ってくれて、こラストに至って、「オオ!」という驚きが。きっと原作で読めば、鮮やかに楽しめる、なかなかに良く出来た構成だったと思う。
この先ネタバレで語ります::::::::::::::::::::::
まあ正直言うと、冒頭近くに、二十面相の正体のシーンがあって、繰り返し現れ、十分なヒントになっている辺りで、気づいてしまう人も居そう。
だって明らかに「この人はこの中の誰か」というシーンが・・・。ドアを閉める直前に表情を変えるシーンは、怪しすぎて、十分過ぎる手がかりになっちゃってる。
途中で気づいてしまうというより、「実は最初に分かるようになってたんだ」ってところ。
でも、それを差し引いても、独自の物語展開を見せるところは良かったかな。
別の主人公(金城武)を置いて、彼を主軸に目が行ってしまう物語となっているので、
“その部分”だけに気を取られ、物語が楽しめずに終わる、ということがないのが、上手かったなあ、なんて。
正直、明智小五郎のイメージがあまりに違うので、ちょっとイラっとくる部分、
この辺りを上手く納得させてくれたのは悪くない感じ。
2009/01/08 | 映画, :アクション, :サスペンス・ミステリ
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コメント(28件)
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そうそう、私も「怪人二十面相」と聞いて、乱歩世界を
ワクワク待ってた口です。
あれ?なんか乱歩の美意識ある世界観と違うなぁ…
こんな明智さん、明智さんじゃないよ… と思ったら…
何にもしないでこれじゃ安楽椅子探偵じゃん…
って思っていたら、キャラだけ借りた、全く別物の原作でした(汗)
それでも冒頭の、飛行船から始まる、レトロフューチャーな
作りこみは結構好みです。
冒険活劇ものとしてみれば、充分楽しいし、そもそも
冒険活劇ジャンルって、日本では、アニメでは沢山あっても
実写では少ないので、貴重だと思いました。
とらねこさん、こんばんは。
正直、あまり期待してなかったので思いの外に楽しめました(笑)
邦画ってバンバン宣伝するほどハズレが多い気がするので(もちろん例外もあるけど)
アクションとか意外にちゃんとしてたり、レトロな風景も良かったなぁ。
お正月映画として十分楽しかったな☆
ところで、先程『ぼっけえ、きょうてえ』を観ました。
拷問シーンの時の自分の足裏の汗の量に笑いました。
痛かったよ〜★
K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝
【2008年・日本】試写で鑑賞(★★★☆☆)
江戸川乱歩が生み出した世紀の大怪盗・怪人二十面相。
その二十面相の秘密に踏み込んだ、北村想原作の同名小説を映像化。
現在と全く違った発展を遂げた日本。架空都市≪帝都≫。19世紀から続く華族制度により極端な格差社会が生…
こんばんは、とらねこさん♪
『二十面相はこの中にいます』的なワクワクする推理とかはありませんでしたが、冒険活劇としてそこそこ楽しめた作品です♪
佐藤監督は映画「エコエコアザラク」を観た時から、女性監督でこんな感性で撮る人がいたんだ〜って、気になっていた人なので、多少採点は甘いですけど、次回作が楽しみな監督さんです♪
続編もできるみたいなんで、楽しみですわん。
ochiaiさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>って思っていたら、キャラだけ借りた、全く別物の原作でした(汗)
そうなんですよ!私も、ちょっと勘違いしてました
でも、その「ちょっと違う感」が「そういうことか!」って違う方向へ向かうから、
この原作は逆に、乱歩ファンから文句が出ないんでしょうね、きっと(笑)
>冒頭の、飛行船から始まる、レトロフューチャーな作りこみ
そうですよね!うんうん!私もこの辺りは嫌いじゃないです、ちょっと古いテイストが好ましいんですよね。
ああなるほど、確かに実写では珍しい“冒険活劇”でした♪
そういう言い方がシックリ来ますね。
ただ、もう少しテンポが良かったらもっと楽しかったんだけどな〜。
ヨゥ。さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
お正月はいかがお過ごしでしたか??
飲んで過ごしてそうだけど(笑)
>邦画ってバンバン宣伝するほどハズレが多い気がする
あー言えてるかも(笑)
確かに、“お正月映画”ってことで、あまあまな感じで点数つけちゃったかなって思うんだけどw
気軽にホイって見れちゃう感じでおk。
え、『ぼっけえ〜』見たんだ!ヨゥ。さんの好みのタイプじゃーないとは思うんだけど、
この映画のところで言われると(笑)・・・、もう私アッチが断然好みだから!
ともやさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>『二十面相はこの中にいます』的なワクワクする推理とかはありませんでしたが
「あれー?おかしいな、どうも」と思ってた辺り、あんな風にオチてくるとは★でした。
そうそう、そこそこ楽しめましたよネ。
へえー、ともやさん『エコエコアザラク』大好きだったんですね!
私、ものすごく好きな漫画なんで、絶対無理だなーって思って、今まで見れなかったんですよ(アセアセ)
あ、これ続編もあるんですね〜。知らなかった★
映画「K-20 怪人二十面相・伝」
太平洋戦争・第2次世界大戦を回避した後の日本が舞台というのは面白い、回避したらどうなるのか説明は少ない、まぁそれが主題の物語ではないけどね??
第2次世界大戦を回避した後の帝都、なんだか東京タワーみたいなのと羽柴財閥のタワービルが一際高くそそり立つ…
別ってなに?
K-20 (TWENTY) 怪人二十面相・伝
日本
アクション&アドベンチャー&ミステリー
監督:佐藤嗣麻子
出演:金城武
松たか子
仲村トオル
國村隼
【物語】
1949年、第二次世界大戦を回避した日本の都市、帝都。そこは、19世
紀から続く華族制度により極端な貧富….
こんにちは♪
>冒頭近くに、二十面相の正体のシーンが
あって、繰り返し現れ、十分なヒントに
なっている辺りで、気づいてしまう人も
居そう。
ホントこの部分は勿体無かったですよね。
この辺りもそうなんですがキャラの雰囲気
だけでも解っちゃいましたしね…。
なもんで、怪しいキャラがもう一人くらい
据えたほうがとも思えたんですよね。
>明智小五郎のイメージがあまりに違う
これに関しても同意見です。
ツッコミところは多々ありましたが、思い
っきり楽しんでしまった作品でした♪ (゚▽゚)v
風情さんへ
こちらにもコメントありがとうございます〜♪
そうなんですよー!犯人分かりすぎ。
まあそこは「開けてビックリのお楽しみ」ではなかったんだけど、親切設計ではあったのかな、なんて、都合良く解釈してあげるから、ありがたいと思え〜!なーんてw
>キャラの雰囲気だけでも解っちゃいましたしね
いやいや、あえてそこは、そんな曖昧性を無視し
、確実な証拠を挙げる私。
>明智小五郎のイメージがあまりに違う
そうそう、明智小五郎じゃないですしw
まあ、二十面相もあんなにアホじゃないけど(爆)
でも私もそこそこ楽しめましたよ★自分甘ちゃんかな、と思いますけどね^^
こんばんは!
そっか〜、とらねこさん、結構早くに二十面相の正体に気づいていたんですね。
私は全く気づかず、最後に、「えー!!」なんて驚いちゃいました。
えへへ、単純(笑)
つっこみどころもあったけど、今の日本とは別の世界っていうので
アリでしたよね
前のレスで
>次は、ひめさんは『慰めの報酬』辺りが楽しみなのでしょうか??
とありましたが・・・大正解です!!
コカコーラとのタイアップで、何本かコーラも買っちゃいました(笑)
K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝
監督:佐藤嗣麻子
出演:金城武、松たか子、仲村トオル、國村隼、高島礼子、本郷奏多、今井悠貴、益岡徹、鹿賀丈史…
「違う!オレは二宮.
とらねこさん 今年もよろしく〜
これ,とても楽しめた作品です〜
確かに明智さんも二十面相も乱歩氏の書いたイメージとは違ってましたね。
明智なんて全然推理しないし〜
でも,彼の正体は最後まで思いつきもしなかったです。
だってそれ(明智=●●)は禁じ手じゃん!って思いがどっかにあって・・・
私は小林少年が怪しいと思ってた・・・。
金城さんは,こんな風にちょっとヌケた二枚目の役
可愛いですね!
申し遅れましたが、あけましておめでとうございます。
私も、この映画見ました。
アクションがいいですね。フリーランニングのように建物から建物へ飛び移り、走りぬくシーンの半分は、本当にやっているように見えます。
サーカス団のアクロバットの名手が、このような超人的軽業をやってのけるという設定には説得力があります。
私、ちょっとだけですが体操やってましたんで。
現役当時は、ちょっとした高さから落下してもパニくることなく受身ができましたから。
(解り易く言えば、落ちた瞬間から地面に着くまでの時間が長く感じられるようになるんです。)
伸び縮み自在のワイヤーを利用した場面もいいですね。バットマンでも使ってましたっけ。
>明智小五郎のイメージが違うので、ちょっとイラッとくる。
全く同感です。
イヤミでアホっぽい明智君など、いりません。
私的には土曜ワイドの天知茂演じる明智小五郎が好きですね。
ひめさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
二十面相の正体、最初の警視庁に入っていくところで、「あ、この中のどれかだな」ってシーンがあったんですよ。
でも、それを抜きに楽しめるのもアリですよね♪
今の日本とは違う仮想現実っていう設定、面白かったですよね。
もっと生かして欲しかったな、って気持ちもあるんですけど。
>慰めの報酬
おーやっぱり♪ふふふ
コカコーラとのタイアップもやってるんですね。
私コーラ飲めないんですよ。お茶にはついてるかな。
ななさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうなんですよ、明智があまりにイメージと違うので、可笑しいぞって思ったらああいう結果になるんですよね(笑)
まあ正直のところ、二十面相のイメージとも違うんですが、そこら辺は諦めてあげました(笑)
>だってそれは禁じ手じゃん!
確かにちょっとありますね。でもまあ、“仮想現実”を謳っているので、許してあげようかなとw
>私は小林少年が怪しいと思ってた・・・
確かに!小林少年は怪しかったですね。
どうせだったら、小林少年は“半分明智”の設定で、ものすごく頭のイイ子、という設定だったら面白いなって思ったんですが、
あの歌のシーンでそれは消え去りました(爆)
金城さんて、イイ男なだけじゃなくて、キュートで、喋り方もかわいくって・・・本当に素敵ですね♪
これでもっといい映画に出る俳優だったら、私の好みなのに。
わいさんへ
こちらにもコメントありがとうございます♪
>フリーランニングのように建物から建物へ飛び移り、走りぬくシーンの半分は、本当にやっているように見えます
確かに、本当にやっているように見えましたね!
「まっすぐ走る」って、なんて難しいんでしょうw
へえ、わいさんたら、すごい!高いところから飛び降りて、怪我せず受身が取れるなんて♪
猫みたいですね
身体能力が高い人って、羨ましいです。
私なんて、バレーボールですら、サーブを返そうとして、おなかに直撃したこともあるぐらいなんですよ(爆)
>イヤミでアホっぽい明智君など、いりません
まあ実際は明智じゃなかった訳なんですけど、それにしてもアホでした。
土曜ワイドは見たことないんです。勉強不足です・・。
あ、わいさんは『ウォンテッド』はご覧になられましたか?
あそこでも、超人的(つか不可能)な能力を手に入れるために、何度も死にそうになりながら、“特訓”するシーンがあるんですが、あそこがやけに楽しかったんですよ!
もしご覧になってなかったら、DVDで是非見てみてくださいまし♪
K-20 怪人二十面相・伝
無難にうまく作られた娯楽作品ですね。この作品をそれらしく見せているのが、架空の歴史の日本であるので、その面の美術の雰囲気と遊びで世界観は出ている。ただ悲惨な部分は、そうでない部分との対比がこの世界で価値観の歪みとして認識できてきて産まれ得るのかどうかとい…
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江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズ、ご多分に漏れず僕も小学生の頃、学校の図書館に
K-20 怪人二十面相伝(ワーナーマイカル鈴鹿ベルシティ)
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K-20 怪人20面相・伝 2009-02
「K-20 怪人20面相・伝」を観てきました〜♪
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とらねこさん、こんにちは。
鑑賞前にテレビで〝驚きの結末〟なんて言っているのを聞いたもんで、
ちょっとそっちの方が気になってしまいました
面白かったですけどね。
平吉の最後はそうなるのか、とちょっとスッキリ気分になりました。
そう言えば「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」を観ましたよ。
感想は・・1週間後ぐらいになるかなぁ・・・
347「K??20 怪人二十面相・伝」(日本)
帝都を舞台とした大サーカス
1949年、第2次世界大戦を回避した日本の都市、帝都。そこは、19世紀から続く華族制度により極端な貧富の格差が生まれ、ごく一部の特権階級が富を独占する社会となっていた。折しも巷では、そんな富裕層だけを狙い、鮮やかな手口で窃盗…
CINECHANさんへ★
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
「驚きの結末」ってTVで言ってたんですね‥あーあ。
その一言ってもう「言っちゃいけない一言」だって、素人の映画好きでも知ってることなのに‥トホホ。
『恐怖奇形人間』あー、昨日までだったんですよね!しまった!忘れてた!
ストレス解消活劇 「K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝」
「K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝」
傳・怪人二十面相
【公開年】2008年 【制作国】日本 【時間】137分 【監督】佐藤…